十勝自然保護協会 活動速報 › ヤチカンバ保護問題
2016年01月31日
更別湿原のヤチカンバ保全に関する要望書への道教委からの回答
更別湿原のヤチカンバ保全に関し、1月21日付けで北海道教育委員会に要望書を送付しましたが、これに対して以下の回答がありました。
十勝自然保護協会
共同代表 安藤 御史 様
佐藤与志松 様
平成28年1月21日付けの要望書について次のとおり回答します。
1 ヤマナラシ・シラカンバなど侵入樹木の除去には希少種への影響を考慮することもあり費用を要します。地元への財政的な支援をしていただきたい。
・文化財保存整備事業に関しましては、知事部局が所管する「地域づくり総合交付金」で、補助を行っており、道指定文化財については事業費の1/2以内、上限1億円、下限250万円となっております。
2 更別村教育委員会には学芸員等の専門職員が不在です。専門家の指導協力を強化していただき、学術関係者による調査検討機関の設置について財政的な支援も含め積極的に関与していただきたい。とくに、西別湿原ヤチカンバ保全と連携させる方策を考えていただきたい。
・1月22日に、当課文化財保護グループ主幹と担当者及び別海町の北海道指定天然記 念物「西別湿原のヤチカンバ群落」担当者、同保護対策検討委員会委員1名が村教委を訪れ、教育長及び担当者と、北海道指定天然記念物「更別湿原のヤチカンバ」の保全について打合せを行いました。
・村教委には、今回訪れた専門家らのご協力をいただきながら、現地調査や保全対策について検討を進めていただくことと、7月に開催されます別海町の保護対策検討委員会への職員派遣を要請いたしております。
・今回の打合せ内容は3月に開催いたします北海道文化財保護審議会に報告し、専門委員のご意見をいただくこととしております。
3 ヤチカンバの実生の生育を大きく妨げている原因は乾燥化により侵入しているミヤコザサの繁茂です。現状ではミヤコザサを地掻きなどで除去することは極めて困難であり、地下水位上昇によって衰退させるのが有効であろうと考えます。乾燥化の歴史的原因はの一帯の排水事業によるものであることは明らかです。指定地区の地下水位上昇のための「自然再生事業」の検討を国土交通省・北海道開発局に要請するなどの方策を考えていただきたい。
・昨年10月に開催されました別海町の保護対策検討委員会での現地調査や検討で、地点ごとに様相が大きく異なるため更に科学的なデータを得る必要があるとされておりますが、ヤチカンバの生育阻害要因で最も大きいのは、他の種に覆われて日照が不足することと考えられています。
・「更別湿原のヤチカンバ」指定地でミヤコザサが目立っていることは事実ですが、それによって他の樹木の種子が発芽することも妨げられているため、単純にササを刈ることが良いのかを含めて、充分な検討が必要です。
・「西別湿原のヤチカンバ群落」の現地調査で、最も高水位の地点にあるヤチカンバが、約40年前と比べて丈も伸びておらず、数も増えていないことが判明したことから、必ずしも高水位の環境が、実生を含めたヤチカンパの生育を促進させるとは言えません。
( 文化財保護グループ )
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教文博2 5 7 5号
平成2 8年1月2 8日
平成2 8年1月2 8日
十勝自然保護協会
共同代表 安藤 御史 様
佐藤与志松 様
北海道教育庁生涯学習推進局
文化財・博物館課長 長内純子
(公印省略)
文化財・博物館課長 長内純子
(公印省略)
北海道指定天然記念物「更別湿原のヤチカンバ」について(回答)
平成28年1月21日付けの要望書について次のとおり回答します。
記
1 ヤマナラシ・シラカンバなど侵入樹木の除去には希少種への影響を考慮することもあり費用を要します。地元への財政的な支援をしていただきたい。
・文化財保存整備事業に関しましては、知事部局が所管する「地域づくり総合交付金」で、補助を行っており、道指定文化財については事業費の1/2以内、上限1億円、下限250万円となっております。
2 更別村教育委員会には学芸員等の専門職員が不在です。専門家の指導協力を強化していただき、学術関係者による調査検討機関の設置について財政的な支援も含め積極的に関与していただきたい。とくに、西別湿原ヤチカンバ保全と連携させる方策を考えていただきたい。
・1月22日に、当課文化財保護グループ主幹と担当者及び別海町の北海道指定天然記 念物「西別湿原のヤチカンバ群落」担当者、同保護対策検討委員会委員1名が村教委を訪れ、教育長及び担当者と、北海道指定天然記念物「更別湿原のヤチカンバ」の保全について打合せを行いました。
・村教委には、今回訪れた専門家らのご協力をいただきながら、現地調査や保全対策について検討を進めていただくことと、7月に開催されます別海町の保護対策検討委員会への職員派遣を要請いたしております。
・今回の打合せ内容は3月に開催いたします北海道文化財保護審議会に報告し、専門委員のご意見をいただくこととしております。
3 ヤチカンバの実生の生育を大きく妨げている原因は乾燥化により侵入しているミヤコザサの繁茂です。現状ではミヤコザサを地掻きなどで除去することは極めて困難であり、地下水位上昇によって衰退させるのが有効であろうと考えます。乾燥化の歴史的原因はの一帯の排水事業によるものであることは明らかです。指定地区の地下水位上昇のための「自然再生事業」の検討を国土交通省・北海道開発局に要請するなどの方策を考えていただきたい。
・昨年10月に開催されました別海町の保護対策検討委員会での現地調査や検討で、地点ごとに様相が大きく異なるため更に科学的なデータを得る必要があるとされておりますが、ヤチカンバの生育阻害要因で最も大きいのは、他の種に覆われて日照が不足することと考えられています。
・「更別湿原のヤチカンバ」指定地でミヤコザサが目立っていることは事実ですが、それによって他の樹木の種子が発芽することも妨げられているため、単純にササを刈ることが良いのかを含めて、充分な検討が必要です。
・「西別湿原のヤチカンバ群落」の現地調査で、最も高水位の地点にあるヤチカンバが、約40年前と比べて丈も伸びておらず、数も増えていないことが判明したことから、必ずしも高水位の環境が、実生を含めたヤチカンパの生育を促進させるとは言えません。
( 文化財保護グループ )
2016年01月23日
更別湿原のヤチカンバ保全に関して北海道教育委員会に要望書を送付
北海道の天然記念物である更別湿原のヤチカンバ保全に関し、北海道教育委員会に以下の要望書を送付しました。
北海道教育委員会
教育委員長 様
教育長 様
当会は、2014年10月6日付で北海道教育委員会(教育委員長・教育長)あてに「更別村『更別湿原ヤチカンバ群生地』の保全についての質問書」を提出しました。その中で当地のヤチカンバが乾燥化にさらされ危機的な状況にあることから、指定者である北海道教育委員会と管理者である更別村(教育委員会)とに保全の対策を求め、その一つとして「専門家による学術的な調査を早急に行う必要がある」との当会の見解を述べました。
これに対する同年11月17日付回答の中で、「村教委としては来年度以降、土壌などの調査の実施を検討しており、道教委ではそれらの経過を見ながら、必要に応じ、北海道文化財保護審議会委員(専門家)による現地調査を行うなど、村教委と協力して対応策等を検討していきたいと考えています」との見解が述べられました。
当会はさらに2015年5月9日付で貴委員会教育長あてに2015年度を含め今後の事業について質問しました。その中で日本におけるヤチカンバのもう一つの自生地である別海町西別湿原の保全と合わせた専門家による学術的な調査組織を立ち上げる具体的な動きを尋ねましたところ、同年5月20日付で「ありません」との回答を受けました。
また、当会は2015年5月、更別村教育委員会に対し、2015年度を含め今後の保全事業について質問書を提出しました。回答では、保全事業について「移植苗に関わる調査、ヤマナラシ・シラカンバの除去の方策」などが説明され、合わせて「財政状況等によって実施が難しい」、「道や関係機関等の支援も得ながら進めて行ければ」との説明があり、また、当会の提起した「専門家による学術的な調査」については、これも「道や関係機関等の専門家のご指導とご協力を得ながら、保全事業を進めていければ」との説明がありました。
6月には、当会役員と植物研究者が移植苗の現況を指定地など4か所で視察し、村教委担当者の説明を受けました。
12月には再度村教委にその後の状況をうかがっていますが、「進入を禁止する看板を新たに設置」など以外大きな進展はありません。
なお、別海町教育委員会では西別湿原ヤチカンバ保全に関し昨年4月に「保護検討対策委員会」を立ち上げ、8月には大原雅氏(道文化財保護審議委員)ら6氏を委員に委嘱したとの情報を得ています。
当会は以上の状況を踏まえ、移植苗の育成は系統保存としては意味のあることだが、天然記念物としてのヤチカンバ群落保護を考えるならば、指定地内での天然更新こそが基本であり、その方策をこそ今考えるべきであるとの立場から、「更別湿原のヤチカンバ」の保全に関し指定者として貴委員会の積極的な関与を求め以下の要望をいたします。
1 ヤマナラシ・シラカンバなど侵入樹木の除去には希少種への影響を考慮することもあり費用を要します。地元への財政的な支援をしていただきたい。
2 更別村教育委員会には学芸員等の専門職員が不在です。専門家の指導協力を強化していただき、学術関係者による調査検討機関の設置について財政的な支援も含め積極的に関与していただきたい。とくに、西別湿原ヤチカンバ保全と連携させる方策を考えていただきたい。
3 ヤチカンバの実生の生育を大きく妨げている原因は乾燥化により侵入しているミヤコザサの繁茂です。現状ではミヤコザサを地掻きなどで除去することは極めて困難であり、地下水位上昇によって衰退させるのが有効であろうと考えます。乾燥化の歴史的原因はこの一帯の排水事業によるものであることは明らかです。指定地区の地下水位上昇のための「自然再生事業」の検討を国土交通省・北海道開発局に要請するなどの方策を考えていただきたい。
以上について貴職のご見解をうかがいたいと考えます。
ご多忙とは存じますが、2月29日までにご回答をいただきたくお願いいたします。
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2016年1月21日
北海道教育委員会
教育委員長 様
教育長 様
十勝自然保護協会
共同代表 安藤 御史
佐藤与志松
共同代表 安藤 御史
佐藤与志松
北海道天然記念物「更別湿原のヤチカンバ」保全についての要望
当会は、2014年10月6日付で北海道教育委員会(教育委員長・教育長)あてに「更別村『更別湿原ヤチカンバ群生地』の保全についての質問書」を提出しました。その中で当地のヤチカンバが乾燥化にさらされ危機的な状況にあることから、指定者である北海道教育委員会と管理者である更別村(教育委員会)とに保全の対策を求め、その一つとして「専門家による学術的な調査を早急に行う必要がある」との当会の見解を述べました。
これに対する同年11月17日付回答の中で、「村教委としては来年度以降、土壌などの調査の実施を検討しており、道教委ではそれらの経過を見ながら、必要に応じ、北海道文化財保護審議会委員(専門家)による現地調査を行うなど、村教委と協力して対応策等を検討していきたいと考えています」との見解が述べられました。
当会はさらに2015年5月9日付で貴委員会教育長あてに2015年度を含め今後の事業について質問しました。その中で日本におけるヤチカンバのもう一つの自生地である別海町西別湿原の保全と合わせた専門家による学術的な調査組織を立ち上げる具体的な動きを尋ねましたところ、同年5月20日付で「ありません」との回答を受けました。
また、当会は2015年5月、更別村教育委員会に対し、2015年度を含め今後の保全事業について質問書を提出しました。回答では、保全事業について「移植苗に関わる調査、ヤマナラシ・シラカンバの除去の方策」などが説明され、合わせて「財政状況等によって実施が難しい」、「道や関係機関等の支援も得ながら進めて行ければ」との説明があり、また、当会の提起した「専門家による学術的な調査」については、これも「道や関係機関等の専門家のご指導とご協力を得ながら、保全事業を進めていければ」との説明がありました。
6月には、当会役員と植物研究者が移植苗の現況を指定地など4か所で視察し、村教委担当者の説明を受けました。
12月には再度村教委にその後の状況をうかがっていますが、「進入を禁止する看板を新たに設置」など以外大きな進展はありません。
なお、別海町教育委員会では西別湿原ヤチカンバ保全に関し昨年4月に「保護検討対策委員会」を立ち上げ、8月には大原雅氏(道文化財保護審議委員)ら6氏を委員に委嘱したとの情報を得ています。
当会は以上の状況を踏まえ、移植苗の育成は系統保存としては意味のあることだが、天然記念物としてのヤチカンバ群落保護を考えるならば、指定地内での天然更新こそが基本であり、その方策をこそ今考えるべきであるとの立場から、「更別湿原のヤチカンバ」の保全に関し指定者として貴委員会の積極的な関与を求め以下の要望をいたします。
1 ヤマナラシ・シラカンバなど侵入樹木の除去には希少種への影響を考慮することもあり費用を要します。地元への財政的な支援をしていただきたい。
2 更別村教育委員会には学芸員等の専門職員が不在です。専門家の指導協力を強化していただき、学術関係者による調査検討機関の設置について財政的な支援も含め積極的に関与していただきたい。とくに、西別湿原ヤチカンバ保全と連携させる方策を考えていただきたい。
3 ヤチカンバの実生の生育を大きく妨げている原因は乾燥化により侵入しているミヤコザサの繁茂です。現状ではミヤコザサを地掻きなどで除去することは極めて困難であり、地下水位上昇によって衰退させるのが有効であろうと考えます。乾燥化の歴史的原因はこの一帯の排水事業によるものであることは明らかです。指定地区の地下水位上昇のための「自然再生事業」の検討を国土交通省・北海道開発局に要請するなどの方策を考えていただきたい。
以上について貴職のご見解をうかがいたいと考えます。
ご多忙とは存じますが、2月29日までにご回答をいただきたくお願いいたします。
以上
2016年01月11日
ヤチカンバ保全について更別村教育委員会からの回答
更別湿原のヤチカンバ保全に関する当会の質問に対し、更別村教育委員会から以下の回答がありました。
十勝自然保護協会
共同代表 安藤御史 様
佐藤与志松 様
北海道指定天然記念物「更別湿原のヤチカンバ」保全についての質問書への回答について
平成27年12月13日付け標記質問書について、下記のとおり回答いたします。
(1)今年度行った保全事業について
・今年度は、保護地域内への進入を禁止する看板を新たに設置しています。
(2)来年度以降予定している保全事業について
・今後の保全事業については、平成27年5月19日付けにて回答させていただいたとおりですが、引き続き、従来の調査結果に基づき、競合する樹木等の駆除方策等についての検討を進めていきたいと考えています。
(3)今年度の道教委・道文化財審議委員会からの助言等について
・道教委からは、別海町における保護対策委員会の開催状況等について、適宜、情報提供や助言をいただいておりますが、現段階では学術調査等の具体的な予定はありません。
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更 教 号
平成28年1月7日
平成28年1月7日
十勝自然保護協会
共同代表 安藤御史 様
佐藤与志松 様
更別村教育委員会
教育長 荻原 正
教育長 荻原 正
北海道指定天然記念物「更別湿原のヤチカンバ」保全についての質問書への回答について
平成27年12月13日付け標記質問書について、下記のとおり回答いたします。
記
(1)今年度行った保全事業について
・今年度は、保護地域内への進入を禁止する看板を新たに設置しています。
(2)来年度以降予定している保全事業について
・今後の保全事業については、平成27年5月19日付けにて回答させていただいたとおりですが、引き続き、従来の調査結果に基づき、競合する樹木等の駆除方策等についての検討を進めていきたいと考えています。
(3)今年度の道教委・道文化財審議委員会からの助言等について
・道教委からは、別海町における保護対策委員会の開催状況等について、適宜、情報提供や助言をいただいておりますが、現段階では学術調査等の具体的な予定はありません。
(社会教育係)
タグ :ヤチカンバ
2016年01月11日
更別湿原のヤチカンバ保全について更別村教育委員会に質問書を送付
更別湿原のヤチカンバの保全について、2015年12月13日付けで更別村教育委員会に以下の質問書を送付しました。
更別村教育委員会
教育長 様
当会は、北海道天然記念物「更別湿原のヤチカンバ」について、2014年、貴委員会担当職員より当地の現況や保全の対策の説明を受け、その後、指定者である北海道教育委員会に保全の対策を求めてきました。
さらに本年5月9日付で貴職に対し今年度を含め今後の保全事業について質問書を提出しました。
5月19日付の貴職の回答では、保全事業について「移植苗に関わる調査、ヤマナラシ・シラカンバの除去の方策」などが説明され、合わせて「財政状況等によって実施が難しい」、「道や関係機関等の支援も得ながら進めて行ければ」とのお考えも説明されました。また、当会の提起した「専門家による学術的な調査」については、これも「道や関係機関等の専門家のご指導とご協力を得ながら、保全事業を進めていければ」とのお考えを説明されました。
6月には、当会役員と植物研究者が移植苗の現況を保護区など4か所で視察させていただき担当職員の説明を受けました。その際、「移植苗の育成は系統保存としては意味のあることだが、天然記念物としてのヤチカンバ群落保護を考えるならば、指定地内での天然更新こそが基本であり、その方策をこそ考えるべきである」旨をお伝えしました。
つきましてはヤチカンバの保全事業について再度おうかがいいたします。
(1)今年度行った保全事業を具体的に教えてください。
(2)来年度以降予定している保全事業(新規・継続)を具体的に教えてください。
(3)今年度、道教委・道文化財審議委員会から何か助言等がありましたら教えてください。とくに学術的な調査または調査委員会などについて提案などがありましたら教えてください。
以上について、ご多忙とは存じますが、1月13日までにご回答をいただきたくお願いいたします。
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2015年12月13日
更別村教育委員会
教育長 様
十勝自然保護協会
共同代表 安藤 御史
佐藤与志松
共同代表 安藤 御史
佐藤与志松
北海道天然記念物「更別湿原のヤチカンバ」保全についての質問書
当会は、北海道天然記念物「更別湿原のヤチカンバ」について、2014年、貴委員会担当職員より当地の現況や保全の対策の説明を受け、その後、指定者である北海道教育委員会に保全の対策を求めてきました。
さらに本年5月9日付で貴職に対し今年度を含め今後の保全事業について質問書を提出しました。
5月19日付の貴職の回答では、保全事業について「移植苗に関わる調査、ヤマナラシ・シラカンバの除去の方策」などが説明され、合わせて「財政状況等によって実施が難しい」、「道や関係機関等の支援も得ながら進めて行ければ」とのお考えも説明されました。また、当会の提起した「専門家による学術的な調査」については、これも「道や関係機関等の専門家のご指導とご協力を得ながら、保全事業を進めていければ」とのお考えを説明されました。
6月には、当会役員と植物研究者が移植苗の現況を保護区など4か所で視察させていただき担当職員の説明を受けました。その際、「移植苗の育成は系統保存としては意味のあることだが、天然記念物としてのヤチカンバ群落保護を考えるならば、指定地内での天然更新こそが基本であり、その方策をこそ考えるべきである」旨をお伝えしました。
つきましてはヤチカンバの保全事業について再度おうかがいいたします。
(1)今年度行った保全事業を具体的に教えてください。
(2)来年度以降予定している保全事業(新規・継続)を具体的に教えてください。
(3)今年度、道教委・道文化財審議委員会から何か助言等がありましたら教えてください。とくに学術的な調査または調査委員会などについて提案などがありましたら教えてください。
以上について、ご多忙とは存じますが、1月13日までにご回答をいただきたくお願いいたします。
以上
2015年05月22日
ヤチカンバ保全に関する質問への回答
5月14日付けで北海道教育委員会および更別村教育委員会に送付したヤチカンバの保全に関する質問書に対し、以下の回答がありました。
十勝自然保護協会 様
北海道指定天然記念物「更別湿原のヤチカンバ」について(回答)
平成27年5月9日付けの質問書について次のとおり回答します。
(1)今夏に北海道文化財保護審議会委員の現地調査を予定しているか
・予定はありません。
(2)道指定天然記念物「西別湿原のヤチカンバ群落地」の保全と合わせた専門家による学術的な調査組織を立ち上げる具体的な動きはあるか。
・ありません。
更別村教育委員会からの回答
北海道指定天然記念物「更別湿原のヤチカンバ」保全についての質問書への回答
(1)現在行っている保全事業、今年度以降予定している新しい保全事業を具体的に教えてください。
【回答】
今現在進行中の調査事業等はございませんが、平成20年度に移植した苗の生育状況を昨年度追跡調査を行い、日当たりの良い環境にある苗の育成が比較的順調に生育していることがわかりました。今後は、苗の生育に影響する可能性のある日照条件以外の要因(土壌水分や土壌硬度等)についての調査や、生育を妨げる可能性のあるヤマナラシやシラカンバなどの樹木等を除去していく方策(樹木古殺法の試験的実施等)について検討していく必要性があると考えています。しかしながら、いずれの取組みにも相当の経費を要するため、財政状況等によっては実施が難しい状況にもあり、今年度についても予算化は見送られています。そこで、同様の調査をより小規模に実施できないか検討しているところではありますが、今後も村単費にて調査を継続していくことはなかなか難しいと考えられますので、必要により道や関係機関等の支援も得ながら進めていければと考えています。
また、日常的な管理として、見回りや笹刈などの簡易な作業については、村内の関係団体にも協力いただきながら進めていくことも、地域の保護意識醸成の意味でも有効と考えていますが、保護区域内にはヤチカンバ以外の希少生物もあるため、ある程度の専門的な視点は必要と考えますので、作業の実施にあたっては慎重に進めていく必要があるとも考えています。また、現在保護地区への立入りへの対策としてバラ線を設置していますが、補修等による整備を継続するとともに、今年度にあっては立入禁止の看板を設置する予定です。
これまでの調査結果等を受けて、移植苗の生育状況調査については5年程度、保護地域の現況調査については20年程度を目安に実施していくことが望ましいと考えていますが、これも予算的な事情等も関係してきますので、確約できる状況にはありませんが、できる限りの取組みができるよう努めていければと考えています。
(2)当会は専門家による学術的な調査を早急に行う必要があると考えています。貴委員会のご見解を伺います。
【回答】
昨年度、道文化財審議委員会や道教委の方にも現地視察として現状を確認いただき、今後の取組みについて様々な助言をいただくことができましたが、学芸員等の専門職員が不在である本村にとっては大変有意義な機会であったと考えております。今後も、道や関係機関等の専門家のご指導とご協力を得ながら、保全事業を進めていければと考えています。
また、村による調査の実施については前述のとおりですが、本村のヤチカンバを題材とした大学や関係機関の調査研究事業の実施については、道の許可が前提とはなりますが、保護を目的としたものであれば村としても歓迎し、調査結果等については今後の保全策の参考にさせていただきたいと考えています。
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教文博415第号
平成27年5月20日
平成27年5月20日
十勝自然保護協会 様
北海道教育庁生涯学習推進局
文化財・博物館課長 長 内 純 子
(公印省略)
文化財・博物館課長 長 内 純 子
(公印省略)
北海道指定天然記念物「更別湿原のヤチカンバ」について(回答)
平成27年5月9日付けの質問書について次のとおり回答します。
記
(1)今夏に北海道文化財保護審議会委員の現地調査を予定しているか
・予定はありません。
(2)道指定天然記念物「西別湿原のヤチカンバ群落地」の保全と合わせた専門家による学術的な調査組織を立ち上げる具体的な動きはあるか。
・ありません。
( 文化財保護グループ )
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更別村教育委員会からの回答
北海道指定天然記念物「更別湿原のヤチカンバ」保全についての質問書への回答
(1)現在行っている保全事業、今年度以降予定している新しい保全事業を具体的に教えてください。
【回答】
今現在進行中の調査事業等はございませんが、平成20年度に移植した苗の生育状況を昨年度追跡調査を行い、日当たりの良い環境にある苗の育成が比較的順調に生育していることがわかりました。今後は、苗の生育に影響する可能性のある日照条件以外の要因(土壌水分や土壌硬度等)についての調査や、生育を妨げる可能性のあるヤマナラシやシラカンバなどの樹木等を除去していく方策(樹木古殺法の試験的実施等)について検討していく必要性があると考えています。しかしながら、いずれの取組みにも相当の経費を要するため、財政状況等によっては実施が難しい状況にもあり、今年度についても予算化は見送られています。そこで、同様の調査をより小規模に実施できないか検討しているところではありますが、今後も村単費にて調査を継続していくことはなかなか難しいと考えられますので、必要により道や関係機関等の支援も得ながら進めていければと考えています。
また、日常的な管理として、見回りや笹刈などの簡易な作業については、村内の関係団体にも協力いただきながら進めていくことも、地域の保護意識醸成の意味でも有効と考えていますが、保護区域内にはヤチカンバ以外の希少生物もあるため、ある程度の専門的な視点は必要と考えますので、作業の実施にあたっては慎重に進めていく必要があるとも考えています。また、現在保護地区への立入りへの対策としてバラ線を設置していますが、補修等による整備を継続するとともに、今年度にあっては立入禁止の看板を設置する予定です。
これまでの調査結果等を受けて、移植苗の生育状況調査については5年程度、保護地域の現況調査については20年程度を目安に実施していくことが望ましいと考えていますが、これも予算的な事情等も関係してきますので、確約できる状況にはありませんが、できる限りの取組みができるよう努めていければと考えています。
(2)当会は専門家による学術的な調査を早急に行う必要があると考えています。貴委員会のご見解を伺います。
【回答】
昨年度、道文化財審議委員会や道教委の方にも現地視察として現状を確認いただき、今後の取組みについて様々な助言をいただくことができましたが、学芸員等の専門職員が不在である本村にとっては大変有意義な機会であったと考えております。今後も、道や関係機関等の専門家のご指導とご協力を得ながら、保全事業を進めていければと考えています。
また、村による調査の実施については前述のとおりですが、本村のヤチカンバを題材とした大学や関係機関の調査研究事業の実施については、道の許可が前提とはなりますが、保護を目的としたものであれば村としても歓迎し、調査結果等については今後の保全策の参考にさせていただきたいと考えています。
2015年05月14日
更別湿原のヤチカンバ保全に関する質問書
更別湿原のヤチカンバ保全に関して、北海道教育委員会および更別村教育委員会に質問書を送付しました。
北海道教育委員会
教育長 様
当会は、2014年10月6日付で北海道教育委員会(教育委員長・教育長)あてに「更別村『更別湿原ヤチカンバ群生地』の保全についての質問書」を提出しました。そのなかで当地のヤチカンバが乾燥化にさらされ危機的な状況にあることから、指定者である北海道教育委員会と管理者である更別村(教育委員会)とに保全の対策を求め、その一つとして「専門家による学術的な調査を早急に行う必要がある」との当会の見解を述べました。
これに対する同年11月17日付、北海道教育庁生涯学習推進局文化財・博物館課長の回答の中で、「村教委としては来年度以降、土壌などの調査の実施を検討しており、道教委ではそれらの経過を見ながら、必要に応じ、北海道文化財保護審議会委員(専門家)による現地調査を行うなど、村教委と協力して対応策等を検討していきたいと考えています」との見解が述べられました。
これに関わり今年度を含め今後の事業についておうかがいします。
(1)今冬、積雪期に北海道文化財保護審議会委員の現地調査が行われたとうかがっておりますが、今後夏季にはないのでしょうか。
(2)日本におけるヤチカンバのもう一つの自生地である別海町西別湿原の保全と合わせた専門家による学術的な調査組織を立ち上げる具体的な動きはないのでしょうか。
以上について貴職のご見解をうかがいたいと考えます。
ご多忙とは存じますが、5月29日までにご回答をいただきたくお願いいたします。
更別村教育委員会
教育長 様
当会は、北海道天然記念物「更別湿原のヤチカンバ」について、2014年、貴委員会担当職員より当地の現況や保全の対策の説明を受けました。また、同年10月6日付で指定者である北海道教育委員会あてに「更別村『更別湿原ヤチカンバ群生地』の保全についての質問書」を提出しました。そのなかで当地のヤチカンバが乾燥化にさらされ危機的な状況にあることから、指定者である北海道教育委員会に保全の対策を求め、その一つとして「専門家による学術的な調査を早急に行う必要がある」との当会の見解を述べました。
これに対する同年11月17日付、北海道教育庁生涯学習推進局文化財・博物館課長の回答の中で、貴委員会の様々な取り組みがあげられ、「村教委としては来年度以降、土壌などの調査の実施を検討しており、道教委ではそれらの経過を見ながら、必要に応じ、北海道文化財保護審議会委員(専門家)による現地調査を行うなど、村教委と協力して対応策等を検討していきたいと考えています」との見解が述べられました。
これに関わり管理者である貴委員会に今年度を含め今後の保全事業についておうかがいします。
(1)現在行っている保全事業、今年度以降予定している新しい保全事業を具体的に教えてください。
(2)当会は専門家による学術的な調査を早急に行う必要があると考えています。貴委員会のご見解をうかがいます。
以上について、ご多忙とは存じますが、5月29日までにご回答をいただきたくお願いいたします。
***************
2015年5月9日
北海道教育委員会
教育長 様
十勝自然保護協会
北海道天然記念物「更別湿原のヤチカンバ」保全についての質問書
当会は、2014年10月6日付で北海道教育委員会(教育委員長・教育長)あてに「更別村『更別湿原ヤチカンバ群生地』の保全についての質問書」を提出しました。そのなかで当地のヤチカンバが乾燥化にさらされ危機的な状況にあることから、指定者である北海道教育委員会と管理者である更別村(教育委員会)とに保全の対策を求め、その一つとして「専門家による学術的な調査を早急に行う必要がある」との当会の見解を述べました。
これに対する同年11月17日付、北海道教育庁生涯学習推進局文化財・博物館課長の回答の中で、「村教委としては来年度以降、土壌などの調査の実施を検討しており、道教委ではそれらの経過を見ながら、必要に応じ、北海道文化財保護審議会委員(専門家)による現地調査を行うなど、村教委と協力して対応策等を検討していきたいと考えています」との見解が述べられました。
これに関わり今年度を含め今後の事業についておうかがいします。
(1)今冬、積雪期に北海道文化財保護審議会委員の現地調査が行われたとうかがっておりますが、今後夏季にはないのでしょうか。
(2)日本におけるヤチカンバのもう一つの自生地である別海町西別湿原の保全と合わせた専門家による学術的な調査組織を立ち上げる具体的な動きはないのでしょうか。
以上について貴職のご見解をうかがいたいと考えます。
ご多忙とは存じますが、5月29日までにご回答をいただきたくお願いいたします。
以上
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2015年5月9日
更別村教育委員会
教育長 様
十勝自然保護協会
北海道天然記念物「更別湿原のヤチカンバ」保全についての質問書
当会は、北海道天然記念物「更別湿原のヤチカンバ」について、2014年、貴委員会担当職員より当地の現況や保全の対策の説明を受けました。また、同年10月6日付で指定者である北海道教育委員会あてに「更別村『更別湿原ヤチカンバ群生地』の保全についての質問書」を提出しました。そのなかで当地のヤチカンバが乾燥化にさらされ危機的な状況にあることから、指定者である北海道教育委員会に保全の対策を求め、その一つとして「専門家による学術的な調査を早急に行う必要がある」との当会の見解を述べました。
これに対する同年11月17日付、北海道教育庁生涯学習推進局文化財・博物館課長の回答の中で、貴委員会の様々な取り組みがあげられ、「村教委としては来年度以降、土壌などの調査の実施を検討しており、道教委ではそれらの経過を見ながら、必要に応じ、北海道文化財保護審議会委員(専門家)による現地調査を行うなど、村教委と協力して対応策等を検討していきたいと考えています」との見解が述べられました。
これに関わり管理者である貴委員会に今年度を含め今後の保全事業についておうかがいします。
(1)現在行っている保全事業、今年度以降予定している新しい保全事業を具体的に教えてください。
(2)当会は専門家による学術的な調査を早急に行う必要があると考えています。貴委員会のご見解をうかがいます。
以上について、ご多忙とは存じますが、5月29日までにご回答をいただきたくお願いいたします。
以上
2014年11月30日
更別湿原のヤチカンバについて北海道教育委員会からの回答
当会が2014年10月6日付で北海道教育委員会に送付した「更別村『更別湿原ヤチカンバ群生地』の保全についての質問書」に対して、北海道教育庁生涯学習推進局(文化財保護グループ)より11月17日付で回答がありました。質問とそれに対する回答(青字)を以下に掲載します。
村教委では、平成16年度の調査時と今年度の調査時点で、大きな変化はないものと考えられるとしていますが、来年度以降、移植地における土壌水分や土壌成分などの調査の実施を検討しています。
(2)「乾燥化」の原因は、水位の低下にあり、自然降水も保水されず周囲の明渠に流れ込んでいるものと考えます。明渠についてどのようにお考えか、保水対策をどのようにとっているのか、あるいはとろうとしているのか。ご見解をうかがいます。
土壌などの調査結果に基づいて、その影響や対策の必要性の有無について、村教委とともに検討致します。
(3)本来湿地に生育しない植物の侵入について、除去を行う考えはないのか。ご見解をうかがいます。
村教委では、来年度以降、指定地内でヤチカンバの生育を妨げる可能性のある樹木(ヤマナラシ、シラカンバなど)を除去する方策(樹木枯殺法の試験的な実施など)の実施を検討しています。
(4)更別村では、ヤチカンバの採種がおこなわれ、保護区外で苗が育てられていると聞いていますが、この点での長期的な方策をうかがいます。
村教委では、移植苗の生育状況調査を5年のスパンで実施すると共に、指定地内の現況調査を20年程度のスパンで実施する予定です。
(5)立ち入りが制限されている地域であるにもかかわらず、ワラビ採りなどが放置されて「道」ができ、乾燥化に拍車をかけています。この点での対策をうかがいます。
立ち入り制限地域の人の侵入については、村教委が10月16日に現地確認を行ったところ、7月1日から9月30日まで、受託業者が調査に入っている影響が考えられるとしております。村教委では、今後も区域内に人が立ち入ることのないよう随時パトロールを実施するなどして注意していく予定です。
(6)指定者である貴職と、管理者である更別村・更別村教育委員会との間では、どのような連携がとられているのか、具体的な事例を添えて教えてください。
道教委では、道指定文化財について現況調査を年に1回実施し、その報告をもとに、対策の必要があれば、その該当する市町村教委とともに対応しております。
(7)更別村は2004(平成16)年に調査会社に調査を委託し報告を受けていますが、北海道教育委員会は指定者としての立場で、専門家による学術的な調査を早急に行う必要があると当会は考えます。貴職のご見解をうかがいます。
村教委では来年度以降、土壌などの調査の実施を検討しており、道教委ではそれらの経過を見ながら、必要に応じ、北海道文化財保護審議会委員(専門家)による現地調査を行うなど、村教委と協力して対応策等を検討していきたいと考えています。
写真は2014年9月14日に撮影したヤチカンバ群生地。本来湿地に生育しない植物が繁茂している。
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(1)当会は、この地区の「乾燥化」がかなり進んでおり、ヤチカンバは危機的な状況にあると捉えていますが、貴職にあっては、この地区の現状をどのように捉えているのでしょうか。ご見解をうかがいます。村教委では、平成16年度の調査時と今年度の調査時点で、大きな変化はないものと考えられるとしていますが、来年度以降、移植地における土壌水分や土壌成分などの調査の実施を検討しています。
(2)「乾燥化」の原因は、水位の低下にあり、自然降水も保水されず周囲の明渠に流れ込んでいるものと考えます。明渠についてどのようにお考えか、保水対策をどのようにとっているのか、あるいはとろうとしているのか。ご見解をうかがいます。
土壌などの調査結果に基づいて、その影響や対策の必要性の有無について、村教委とともに検討致します。
(3)本来湿地に生育しない植物の侵入について、除去を行う考えはないのか。ご見解をうかがいます。
村教委では、来年度以降、指定地内でヤチカンバの生育を妨げる可能性のある樹木(ヤマナラシ、シラカンバなど)を除去する方策(樹木枯殺法の試験的な実施など)の実施を検討しています。
(4)更別村では、ヤチカンバの採種がおこなわれ、保護区外で苗が育てられていると聞いていますが、この点での長期的な方策をうかがいます。
村教委では、移植苗の生育状況調査を5年のスパンで実施すると共に、指定地内の現況調査を20年程度のスパンで実施する予定です。
(5)立ち入りが制限されている地域であるにもかかわらず、ワラビ採りなどが放置されて「道」ができ、乾燥化に拍車をかけています。この点での対策をうかがいます。
立ち入り制限地域の人の侵入については、村教委が10月16日に現地確認を行ったところ、7月1日から9月30日まで、受託業者が調査に入っている影響が考えられるとしております。村教委では、今後も区域内に人が立ち入ることのないよう随時パトロールを実施するなどして注意していく予定です。
(6)指定者である貴職と、管理者である更別村・更別村教育委員会との間では、どのような連携がとられているのか、具体的な事例を添えて教えてください。
道教委では、道指定文化財について現況調査を年に1回実施し、その報告をもとに、対策の必要があれば、その該当する市町村教委とともに対応しております。
(7)更別村は2004(平成16)年に調査会社に調査を委託し報告を受けていますが、北海道教育委員会は指定者としての立場で、専門家による学術的な調査を早急に行う必要があると当会は考えます。貴職のご見解をうかがいます。
村教委では来年度以降、土壌などの調査の実施を検討しており、道教委ではそれらの経過を見ながら、必要に応じ、北海道文化財保護審議会委員(専門家)による現地調査を行うなど、村教委と協力して対応策等を検討していきたいと考えています。
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写真は2014年9月14日に撮影したヤチカンバ群生地。本来湿地に生育しない植物が繁茂している。
2014年10月07日
ヤチカンバの保護問題で北海道教育委員会に質問書を送付
更別村のヤチカンバ生育地の保全に関し、天然記念物に指定した北海道教育委員会に質問書を送付しました。
北海道教育委員会
教育委員長 様
教育長 様
1963(昭和38)年に北海道教育委員会が天然記念物に指定した「更別湿原ヤチカンバ群生地」のヤチカンバは、今、危機的な状況にあります。
保護地区内では、そもそも湿地に生育しないミヤコザサ群落が広がり、ワラビ、オオイタドリなどの草本も繁茂しています。さらに近年、根萌芽で増えるヤマナラシが侵入しています。このため、ヤチカンバは被圧されつつあり生存が危ぶまれる状況となっています。また、立ち入りが制限されている地区にもかかわらず、ワラビ採りであろう人為的な踏み付け跡が幾条も見られます。
すなわち、湿地は明らかに「乾燥化」しているのが現状です。
ヤチカンバは、周知のように、日本において自生地が当地と別海町西別湿原の2か所しか確認されていない極めて貴重な種です。
指定者である貴職に対し、以下の質問をいたします。現状をどのように捉え、どのような保全策を講じているのか、ご見解を問うものです。
(1)当会は、この地区の「乾燥化」がかなり進んでおり、ヤチカンバは危機的な状況にあると捉えていますが、貴職にあっては、この地区の現状をどのように捉えているのでしょうか。ご見解をうかがいます。
(2)「乾燥化」の原因は、水位の低下にあり、自然降水も保水されず周囲の明渠に流れ込んでいるものと考えます。明渠についてどのようにお考えか、保水対策をどのようにとっているのか、あるいはとろうとしているのか。ご見解をうかがいます。
(3)本来湿地に生育しない植物の侵入について、除去を行う考えはないのか。ご見解をうかがいます。
(4)更別村では、ヤチカンバの採種がおこなわれ、保護区外で苗が育てられていると聞いていますが、この点での長期的な方策をうかがいます。
(5)立ち入りが制限されている地域であるにもかかわらず、ワラビ採りなどが放置されて「道」ができ、乾燥化に拍車をかけています。この点での対策をうかがいます。
(6)指定者である貴職と、管理者である更別村・更別村教育委員会との間では、どのような連携がとられているのか、具体的な事例を添えて教えてください。
(7)更別村は2004(平成16)年に調査会社に調査を委託し報告を受けていますが、北海道教育委員会は指定者としての立場で、専門家による学術的な調査を早急に行う必要があると当会は考えます。貴職のご見解をうかがいます。
以上について、ご多忙とは存じますが、10月27日までに文書で回答していただきますようお願いいたします。
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2014年10月6日
北海道教育委員会
教育委員長 様
教育長 様
十勝自然保護協会
更別村「更別湿原ヤチカンバ群生地」の保全についての質問書
1963(昭和38)年に北海道教育委員会が天然記念物に指定した「更別湿原ヤチカンバ群生地」のヤチカンバは、今、危機的な状況にあります。
保護地区内では、そもそも湿地に生育しないミヤコザサ群落が広がり、ワラビ、オオイタドリなどの草本も繁茂しています。さらに近年、根萌芽で増えるヤマナラシが侵入しています。このため、ヤチカンバは被圧されつつあり生存が危ぶまれる状況となっています。また、立ち入りが制限されている地区にもかかわらず、ワラビ採りであろう人為的な踏み付け跡が幾条も見られます。
すなわち、湿地は明らかに「乾燥化」しているのが現状です。
ヤチカンバは、周知のように、日本において自生地が当地と別海町西別湿原の2か所しか確認されていない極めて貴重な種です。
指定者である貴職に対し、以下の質問をいたします。現状をどのように捉え、どのような保全策を講じているのか、ご見解を問うものです。
(1)当会は、この地区の「乾燥化」がかなり進んでおり、ヤチカンバは危機的な状況にあると捉えていますが、貴職にあっては、この地区の現状をどのように捉えているのでしょうか。ご見解をうかがいます。
(2)「乾燥化」の原因は、水位の低下にあり、自然降水も保水されず周囲の明渠に流れ込んでいるものと考えます。明渠についてどのようにお考えか、保水対策をどのようにとっているのか、あるいはとろうとしているのか。ご見解をうかがいます。
(3)本来湿地に生育しない植物の侵入について、除去を行う考えはないのか。ご見解をうかがいます。
(4)更別村では、ヤチカンバの採種がおこなわれ、保護区外で苗が育てられていると聞いていますが、この点での長期的な方策をうかがいます。
(5)立ち入りが制限されている地域であるにもかかわらず、ワラビ採りなどが放置されて「道」ができ、乾燥化に拍車をかけています。この点での対策をうかがいます。
(6)指定者である貴職と、管理者である更別村・更別村教育委員会との間では、どのような連携がとられているのか、具体的な事例を添えて教えてください。
(7)更別村は2004(平成16)年に調査会社に調査を委託し報告を受けていますが、北海道教育委員会は指定者としての立場で、専門家による学術的な調査を早急に行う必要があると当会は考えます。貴職のご見解をうかがいます。
以上について、ご多忙とは存じますが、10月27日までに文書で回答していただきますようお願いいたします。
2014年09月23日
ヤチカンバに迫る危機
9月14日十勝海岸で開催された植物観察会の帰りに更別のヤチカンバ自生地に寄ってきました。ヤチカンバが隠れるほどに他の植物が茂り、ヤチカンバの生存は風前の灯火のように思えてきました。
更別村が調査会社に委託して作った報告書(「平成16年度 ヤチカンバ保護地域内現況調査委託業務報告書」)によると、ヤチカンバ保護地域の土壌調査の結果、泥炭層や斑紋(筆者注:酸化鉄や酸化マンガン化合物の土層中での沈積形態の総称)がなく、湿原にはない十勝坊主があったからここは湿原ではなかったとし、排水路の埋め戻し等によって水位を高め、以前の湿原状況を再現する方法は、保全地域内では妥当な対策とは考えられないから、保全対策案として、地掻き放置区(ミヤコザサを刈りはらった表層を耕起して放置)、播種区(地掻き放置区と同様の処理後播種)、苗移植区(地掻き放置区と同様の処理後苗を移植)をつくるべきだというのです。
2004年の調査時にすでにオオイタドリ・ミヤコザサ・イヌコリヤナギの侵入が認められていましたが、現在はヤマナラシが侵入し森林へと遷移する段階に至っています。もはや地掻きでヤチカンバを保護できる段階ではありません。
ヤチカンバが発見された半世紀前のヤチカンバ生育地はどんな様子だったのでしょうか。ヤチカンバを発見し、新種として発表したのは渡辺定元・大木正夫の両氏でした。彼らの「北海道産カバノキ属の一新種」(植物研究雑誌34:329-332)には、ヤチカンバの生育地について次のように書かかれています。
「更別泥炭地は周囲約10㎞面積ほぼ600ha,流水の箇所にはハンノキ,ヤナギ林がみられる他大部分は“やちぼうず”によって占められている。ヤチカンバは湿原の外縁部の“やちぼうず”上に生じ,特に西側では幅20~100m,長さ1500mの大面積に亘り群落を形成している。したがってヤチカンバは,過湿な“やちぼうず”上には生えず,やや乾燥せる“やちぼうず”上に叢生している。5月初旬開花時に当地を訪ねた時は中央部は湿地であったがヤチカンバの生ずる“やちぼうず”の間は水が枯れていた。この地域の住民の話によると,6月になると湿地化するそうである。」
調査会社は、保全対策の項で「従来、文献などにおいては、保護地域は湿原内に形成された群落が、その後の農地造成事業などの排水整備により乾燥化を経て、現在のミヤコザサやイタドリの優占する状況に至ったものと述べられている。しかし、土壌調査の結果、まとめの項で述べてあるように保全地域は湿原であった可能性が低いと考えられる。」とし、だから、「排水路の埋め戻し等によって水位を高め、以前の湿原状況を再現する方法は、保全地域内では妥当な対策とは考えられない」と主張しています。
しかし渡辺・大木氏は、ヤチカンバが湿原の外縁部のやや乾燥したヤチ坊主上に生育し、(住民の話として)6月に湿地化するといっているのです。つまりヤチカンバの生育地は湿原の外縁部のヤチ坊主ができる湿地だったのです。湿地は水位が高いから湿地になるのです。水位の高さゆえ樹木の侵入が制限され森林へ移行できなかったと考えるのが妥当でしょう。もしそのような条件がなければ、森林化によって陽樹の低木であるヤチカンバは光を奪われ絶滅していたに違いありません。したがって保全地域が湿原でなかったから水位は関係ないというのは皮相な見方です。乾燥化が進んだから根萌芽するヤマナラシやミヤコザサなどが侵入し、危機が訪れているのです。したがって、かつての湿地状態(湿原ではない)に戻すというのが理に適った保全策です。
ヤチカンバ自生地の水位低下は北海道開発局が巨費を投じて行った排水事業が目的を完遂したことを意味します。しかしその副作用として、ヤチカンバを被圧しヤチカンバの生存に危機をもたらすミヤコザサやヤマナラシなどの侵入を引き起こしてしまったのです。したがって原因者である北海道開発局は生物多様性保全の見地からヤチカンバ自生地を保全するための対策に着手すべきなのです。