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十勝自然保護協会 活動速報

2024年03月18日

日高山脈を含む新国立公園の名称に「十勝」を入れないよう求める署名を始めました

 北海道自然保護連合に加盟の5団体(十勝自然保護協会・大雪と石狩の自然を守る会・ユウパリコザクラの会・南北海道自然保護協会・一般社団法人北海道自然保護協会)は、環境大臣宛てに、日高山脈を含む新国立公園の名称に「十勝」を入れないことを求める署名活動を始めました。
 以下に署名の趣旨(署名用紙の前文)とその理由について掲載します。賛同いただける方のご協力をお願いいたします。締め切りは2024年4月12日です。
 署名用紙の入手は、右側のサイドバーの「オーナーへメッセージ」から、住所、氏名、枚数をお知らせください。署名用紙一枚に5筆記入できます(5筆に満たなくても構いません)。メール添付をご希望の方はその旨をお知らせください。


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環境大臣 伊藤信太郎 様

日高山脈を含む新国立公園の名称には「十勝」を入れないでください

 日高山脈襟裳国定公園の国立公園化に伴い、2月22日の中央環境審議会自然環境部会で「日高山脈襟裳十勝国立公園」案が多数意見として承認されました。しかし「十勝を入れる」理由が「観光客や利用者に地理的な位置を分かりやすくする」ということでは国立公園の意義を損なうものです。
 名称に「十勝を入れない」という声は、パブリックコメント提出意見14件のすべてにもあります。北海道内の自然保護団体・山岳団体も要望書を提出しています。また、日高地方の方々の声を反映する日高町村議会議長会も十勝を含めない旨の要望書を提出しています。
 「十勝を入れない」理由には、「日高山脈は日高と十勝にまたがっており、日高山脈の名称の中にすでに十勝が内包し十勝を入れることは屋上屋を架す」、「日高山脈に内包されていない十勝、つまり十勝平野には海岸部を除き国立公園として保存すべき貴重な自然はない」などがあげられます。
 しかし、自然環境部会にはそれら「十勝を入れない」との要望文書すら資料として提出されておらず、極めて公平性に欠けるものです。十分な資料を委員に提供し再度の審議を求めます。


この署名を環境大臣宛に提出する以外の目的に使用することはありません。

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日高山脈を含む新国立公園の名称になぜ「十勝」を入れるべきでないのか

北海道自然保護連合(十勝自然保護協会・大雪と石狩の自然を守る会・ユウパリコザクラの会・南北海道自然保護協会・一般社団法人北海道自然保護協会)

環境省は日高山脈をどうとらえているのか
 環境省は、2023年11月9日発表の「日高山脈及び襟裳岬並びにその周辺地域を構成地域とする国立公園(名称未定)の指定及び公園計画の決定並びに日高山脈襟裳国定公園の指定の解除及び公園計画の廃止に関する意見の募集(パブリックコメント)について」の中で「1.背景」として、次のように述べています。
 「北海道中央南部に位置する日高山脈は、新第三紀以降に大陸プレート同士の衝突によって生じた大起伏山地です。稜線部から山麓部にかけては自然度の高い森林や河川が存在しており、シマフクロウやクマタカ等の生態系上位種や、特異な地質や環境に対応した固有種及び希少種の生育地等となっています。海岸部には襟裳岬等の発達した海食崖や海成段丘が見られ、浅海域から高山帯に至る生態系が流域単位で健全な状態で存在しているなど、多様で良好な自然環境を擁しています。
 日高山脈の稜線部には北海道で唯一の典型的な氷食地形が分布しており、カール(圏谷)などのダイナミックな地形と高山植物や雪氷とが織りなす山岳景観は、当該地域における景観要素の核心です。(中略)
 このように、本公園は地殻変動を受けて形成された非火山性連峰を基盤に、山地を核として育まれた深く原生的な森林生態系及び我が国最大の原生流域面積を持つ河川を軸として、これらが海域まで一体的につながる景観を有する、我が国を代表する傑出した自然の風景地であることから、国立公園として新たに指定するものです。(後略)」
 まさに、これが日高山脈の国立公園化の意義のすべてを述べています。原生的自然が現国定公園よりも大きく拡大し日本最大になり、また、飛び地状態だった襟裳岬周辺、アポイ岳周辺と一体化しました。この説明自体から新国立公園の名称は「日高山脈国立公園」が最適であるといっていいでしょう。

名称に「十勝」を入れるべきではない理由
 2024年1月のパブリックコメント結果公表以降、2月になってから、名称を「日高山脈襟裳十勝国立公園」とし、「十勝」を入れるべきとする要望が周辺13市町村首長から提出されています。以下にその非合理性を指摘し、論理的にも、常識的にも、また国立公園における行政的視点からも新たな国立公園の名称は「日高山脈国立公園」が最適である理由を述べます。
1 日高山脈という名称は定着した地理的固有名詞です。日高山脈の領域は、地理的・行政的に日高(振興局)と十勝(総合振興局)にまたがっているので、日高山脈の名称の中にすでに十勝は内包しています。したがって、十勝を入れることは、屋上屋を架すこととなり、論理的におかしいことになります。
2 日高山脈という名称は、小中学生の地図帳にも明確に記載されております。したがって、周辺市町村長会の要望理由のように、十勝を加えることで「観光客や利用者に地理的な位置を分かりやすくする」必要もありません。
3 「日高山脈」と「十勝」を並置するならば、日高山脈に内包されていない十勝、つまり日高山脈に近接する十勝平野には国立公園として保存すべき貴重な自然がある必要があります。しかし、私たちは十勝平野には、湿地・湖沼群を有する海岸部を除き、そのような貴重な自然はないと考えます。十勝平野は、広大で整然とした畑作・酪農を中心とする日本の代表的穀倉地帯であり、本来の意味での自然はほとんど残っていません。したがって、国立公園の名称にはふさわしくありません。むしろ「農業王国・食糧基地・広大な平野」というイメージの強い「十勝」を加えることによって、上記の原生的環境を特色とする公園計画の本質が極めてあいまいになります。国内の国立公園の名称には2つあるいは3つの地域名が並置されているものがありますが、それは、それらの地域が飛び地になっており、またそれぞれの地域に国立公園として保存されるべき貴重な自然があるためと考えられます。
4 「十勝平野から眺める山並みは雄大」です。しかし、西方に日高山脈の山並みが見える十勝平野中央部からも、北方には、十勝岳連峰、トムラウシ山、然別火山群、東大雪を含め大雪山の雄大な山並みも見えます。これらの山々は大雪山国立公園に含まれ、位置的には新得町、鹿追町、士幌町、上士幌町の各町の範囲に入ります。しかし、この大雪山国立公園の名称に十勝を加えよとの声は全くありません。東方の阿寒摩周国立公園の雌阿寒岳・阿寒富士・オンネトー周辺は足寄町で、市街地には雌阿寒岳・阿寒富士が美しく見える丘があります。この二つの山は本別町からも見えます。しかし、阿寒摩周国立公園に十勝を加えよという声は全くありません。眺望を理由に名称に「十勝」を加えることは奇異と言ってもよいでしょう。
5 本来国立公園として保全すべき地域以外の地名を国立公園周辺市町村の要望によりその地域名を入れることは、環境省が本来行うべき環境・自然保護行政を歪曲するものです。そのような前例を作ると、今後国立公園周辺の市町村から同様の要望が出てくると認めざるを得なくなるのではないでしょうか。悪しき前例を作ることになります。
6 今回のパブリックコメント意見募集の結果によると、提出された意見は127通、その中で名称に関する意見は14件ありますが、そこには襟裳を入れて欲しいとする意見は2〜3通あるようですが、十勝を入れて欲しいとする意見はありませんでした。十分に尊重すべきです。

「襟裳」はどうする
 新しい国立公園の範囲は、公園計画では「日高山脈一帯、アポイ岳周辺、豊似湖周辺、襟裳岬やその周辺海域等」です。ここには「襟裳岬やその周辺海域等」が含まれていますが、地理的表現では一般に日高山脈は襟裳岬で太平洋に没していると言われているように、日高山脈の地理的範囲は、北の佐幌岳付近から南の襟裳岬まで約150kmです。公園の範囲になる日勝峠から襟裳岬まで日高山脈そのものです。
 今回は、指定地域の大幅な拡大により飛び地問題は解消され、文字どおり日勝峠から襟裳岬に至る日高山脈そのものになりました。「襟裳」は「日高山脈」に内包されており、「日高山脈襟裳国立公園」とする必要はないと考えます。
 なお、襟裳岬と周辺海域を今後は「海域公園」(海中・海上を含む海域の景観や生物多様性を保全するため国立・国定公園内に指定される保護区)として設定が想定されるかもしれないとの観点から残しても良いという見解もあります。

自然環境部会で審議のやり直しを!

 2月22日の中央環境審議会自然環境部会で「日高山脈襟裳十勝国立公園」案が多数の意見として承認されました。部会には自然保護団体・山岳団体や日高町村議会議長会の要望書など「十勝を入れない」との文書すら資料として提出されませんでした。「十勝を入れる」理由が「観光客や利用者に地理的な位置を分かりやすくする」ということでは国立公園の意義を損なうものです。
 私たちは、部会の進行が極めて公平性に欠けるため、十分な時間の確保と適切な資料を委員に提供したうえで再度審議するべきことを求めます。
  


Posted by 十勝自然保護協会 at 19:56Comments(0)日高山脈

2024年02月29日

日高山脈襟裳国定公園の国立公園化に伴う名称について環境省に質問および要望書を送付

 「日高山脈襟裳国定公園」の国立公園化に伴う新しい名称について、環境省の中央環境審議会自然環境部会は「日高山脈襟裳十勝国立公園」とする方針を了承しました。しかし、この審議は著しく公平さを欠いたものであったため、環境省自然環境局に以下の質問および要望書を送付しました。

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2024年2月26日


環境省自然環境局長 白石 隆夫 様
   国立公園課長 番匠 克二 様

十勝自然保護協会 共同代表  安藤 御史
佐藤与志松


中央環境審議会自然環境部会(第48回)に関する質問と要望


 2月22日、中央環境審議会自然環境部会(第48回)が開催されました。公開でしたが傍聴は直接できず、指定されたサイトから視聴しました。「議題(3)日高山脈及び襟裳岬並びにその周辺地域を構成地域とする国立公園の指定等について【報告】」に関し、とくに名称の審議については、長年にわたり使用される重要な案件にもかかわらず、事務方の説明と2人の首長の発言を含んで40分ほどの短い審議時間のうえ、関係市町村の要望書のみが資料として配布され、その要望に沿った審議に誘導するなど公平な進行とはとても言い難いものでした。当会は、十分な時間の確保と適切な資料を委員に提供したうえで委員全員の参加のもとに再度の審議をすべきことを要望いたします。また、多数の問題点について、以下に質問いたします。
 年度末で大変ご多忙と存じますが、3月14日までに回答いただくようお願いいたします。

1 審議には十分な資料が事前に早く届く必要があります。委員には、関係資料をいつ配信、発信したのでしょうか。日時をご教示ください。

2 パブリックコメントの結果、名称について14件の意見がありましたが、「十勝」を入れてほしいとする意見はありませんでした。これについて実施結果概要の「対応方針」は「名称については、地域の御意見を聴き、審議会において議論します。」と記載されています。「地域の御意見を聴き」とはどのようなことを言うのでしょうか。パブリックコメントは「聴き置く」だけで審議会での議論には反映させないことも含まれているのでしょうか。ご説明ください。

3 そもそも「日高山脈及び襟裳岬並びにその周辺地域を構成地域とする国立公園(名称未定)の指定及び公園計画の決定並びに日高山脈襟裳国定公園の指定の解除及び公園計画の廃止に関する意見の募集(パブリックコメント)」は何のために実施したのですか。ご説明ください。

4 2月14日付で十勝自然保護協会と北海道自然保護連合が要望書を提出しています。また、同16日付で北海道自然保護協会と北海道勤労者山岳連盟が要望書を提出しています。部会では、資料としても配布されず、一言の経過説明もありませんでした。「様々なご意見を地域からいただいている」というのであれば、なぜ審議にかけないのでしょうか。自然保護団体、山岳団体の要望を無視した理由をご説明ください。

5 「地域の意見」とはどのように考えているのですか。地元自治体の首長2人のみがオブザーバーとして出席し、発言の機会を与えられました。地元の自然保護団体や地元住民の意見も「地域の意見」ですが、自治体の首長がなぜ「地域の代表」なのですか。

6 自治体の議長もまた住民の代表です。日高町村議会議長会の要望書については経過説明として一言触れただけで資料として配布されなかったのはなぜですか。その理由を明らかにしてください。

7 審議の冒頭、「地域を代表する市町村長の名前が列記された要望書が提出されておりますので、本審議会では、その名称案を資料に載せさせていただいております。」と説明があり、関係13市町村の要望がそのまま「原案」となって審議が進んでいます。審議というものにかける以上、これは環境省が責任をもって提案する「環境省案」であるべきです。関係13市町村の要望書には理由として「観光客や利用者に地理的な位置をわかりやすくするため」とあります。環境省としてはこれが「十勝を入れる」理由として成り立つとお考えでしょうか。部会長は議論の締め括りに「名称の中に十勝を入れるということの意義について、あるいはその具体的な中身についてはもうちょっと説明が必要だ、ということのご意見をたくさんいただきました。」と発言されたように、「案」としては不適切だったことを意味します。なぜ環境省として責任を持った案を出さなかったのか、ご説明ください。

8 当会が2月14日に北海道地方環境事務所長に要望書を手交した際、所長は「名称を決めるに当たってルールはない」と明言しました。部会でも名称についての審議の冒頭に「国立公園の名称の決め方につきましては、法令や通知等に沿った手順というのはありません。」としながら「国立公園区域の指定案や計画案と合わせまして、地域の意見を踏まえて、審議会の意見をお聞きして決定をしてまいりました。」と過去の手続きを踏襲する説明がありました。規則はなくても従来からの手順があるということを強調し、審議が進み「3案について多数決を取る」流れになった時には、「地域の意見と審議会の意見が万一ずれた時には、決め方というのはちょっと簡単にはいかないかな、というふうに思っております。」と審議に牽制をかけています。これは委員の自由な討論を制限するもので審議会にふさわしいと思えません。「地域の意見」であればどのような内容であってもそれに合わせていくような審議を部会に望んでいるのでしょうか。

9 局長発言に「初夏ぐらいには船出をさせていきたいと思っておりますので、そういう立場から大変口はばったいことではあるんですけれども、やはり地方の13市町の連名で要望がされている案で、とりあえずは作業を始めさせていただけないか、というのが我々事務方としての思いでございます。まだ今日は決める場ではございませんけれども、決める場は正式に夏、春に決めますけれども、看板の準備とかがありますので、そういうことも含めて作業には入らせていただけないかな」とあり、初夏には発足させたい、そのための作業を進めるために今決めてくれ、という姿勢を強く表明しています。「作業」として「看板の準備とか」とありますが、どのようなことなのかご説明ください。

10 地元自治体の首長が2人オブザーバーとして出席したことに関し、一委員から「じゃあ反対の十勝の自然保護協会の方たちも来られたんですか。」との質問に部会長は「それはご要望がなかったからだと思いますけど」と答えています。まったく事実に反することです。当会はこのようなことがあることは直前になって知ったことで、「要望」などはあずかり知らぬことです。そもそも、上記要望書の件も含め、公園計画策定に関わって自然保護団体には一切意見聴取もなく、自然保護団体のほうから出向いて意見を述べるしかありませんでした。このことは指定後に発足するであろう総合型協議会の構成に偏りが出るのではないかと危惧するものです。なぜ自然保護団体の関わりを排除するのか、ご説明ください。

 以上のように著しく公平さを欠いた進行と、道理ある説明もないまま意味不明な「十勝」の名称を入れることを誘導した環境省の責任は重大です。自然環境部会は、十分な時間の確保と適切な資料を委員に提供したうえで、再度審議することを要望いたします。

  

Posted by 十勝自然保護協会 at 20:09Comments(0)日高山脈

2024年02月16日

日高山脈を含む新国立公園の名称について環境省に要望

 当会および北海道自然保護連合は、日高山脈を含む新国立公園の名称について環境省に以下の要望書を提出しました。

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2024年2月14日


環境大臣 伊藤信太郎 様

十勝自然保護協会         
北海道自然保護連合        
構成団体            
大雪と石狩の自然を守る会   
十勝自然保護協会       
南北海道自然保護協会     
ユウパリコザクラの会     
一般社団法人北海道自然保護協会



日高山脈を含む新国立公園の名称についての要望


 十勝自然保護協会と北海道自然保護連合は、今回の「日高山脈及び襟裳岬並びにその周辺地域を構成地域とする国立公園(名称未定)の指定及び公園計画」に関わって、すでにそれぞれ意見を提出していますが、本要望書において、とくに名称について改めて意見を提出します。

 北海道自然保護連合は、2006年3月18日に当連合を含む道内の11の自然保護団体の連名で当時の小池百合子環境大臣に「日高山脈と夕張山地を新たな国立公園に指定することの要望書」を提出し、日高山脈(日高山脈襟裳国定公園)と夕張山地(富良野芦別道立自然公園)を合わせて一つの国立公園に指定することを要望しております。さらに、今般のパブリックコメントへの提出意見のなかでも、名称について「日高山脈国立公園」が適切であると述べました。
 また、十勝自然保護協会は、2021年2月13日に当時の小泉進次郎環境大臣に提出した「日高山脈襟裳国定公園の国立公園化に伴う名称についての要望書」において「名称に十勝を入れることの不適切さ」を示しました。パブリックコメントへの提出意見のなかでも、名称について「日高山脈国立公園」が適切であると述べました。

 貴省は、2023年11月9日発表の「日高山脈及び襟裳岬並びにその周辺地域を構成地域とする国立公園(名称未定)の指定及び公園計画の決定並びに日高山脈襟裳国定公園の指定の解除及び公園計画の廃止に関する意見の募集(パブリックコメント)について」の中で「1.背景」として、次のように述べています。
 「北海道中央南部に位置する日高山脈は、新第三紀以降に大陸プレート同士の衝突によって生じた大起伏山地です。稜線部から山麓部にかけては自然度の高い森林や河川が存在しており、シマフクロウやクマタカ等の生態系上位種や、特異な地質や環境に対応した固有種及び希少種の生育地等となっています。海岸部には襟裳岬等の発達した海食崖や海成段丘が見られ、浅海域から高山帯に至る生態系が流域単位で健全な状態で存在しているなど、多様で良好な自然環境を擁しています。
 日高山脈の稜線部には北海道で唯一の典型的な氷食地形が分布しており、カール(圏谷)などのダイナミックな地形と高山植物や雪氷とが織りなす山岳景観は、当該地域における景観要素の核心です。(中略)
 このように、本公園は地殻変動を受けて形成された非火山性連峰を基盤に、山地を核として育まれた深く原生的な森林生態系及び我が国最大の原生流域面積を持つ河川を軸として、これらが海域まで一体的につながる景観を有する、我が国を代表する傑出した自然の風景地であることから、国立公園として新たに指定するものです。(後略)」

 まさに、これが日高山脈の国立公園化の意義のすべてを述べています。原生的自然が現国定公園よりも大きく拡大し日本最大になり、また、飛び地状態だった襟裳岬周辺、アポイ岳周辺と一体化したことにより、私たちは上記の観点から、国立公園化に当たって名称は「日高山脈国立公園」が最適であることを改めて申し上げます。
 パブリックコメントの結果公表以降、2月になってから、貴省(環境省北海道地方環境事務所)に名称を「日高山脈襟裳十勝国立公園」とし、「十勝」を入れるべきとする要望が一部から提出されていますが、以下にその非合理性を指摘し、「日高山脈国立公園」が最適である理由を改めて述べます。
1 日高山脈という名称は、定着した地理的固有名詞です。日高山脈はその領域が日高と十勝にまたがっているので、日高山脈の名称の中にすでに十勝が内包しており、十勝を入れることは、屋上屋を架すこととなります。
2 日高山脈という名称は、小学生の地図帳にも明確に記載されており、十勝を加えることで「観光客や利用者に地理的な位置を分かりやすくする」必要もありません。そもそも「十勝」もまた、農作物・酪農を特色とする「農業王国」として全国的な知名度も高く、むしろ加えることによって上記の原生的環境を特色とする本質が極めてあいまいになります。
3 「十勝平野から眺める山並みは雄大」です。しかし、十勝平野中央部からは、北方には、十勝岳連峰、トムラウシ山、東大雪を含め大雪山の雄大な山並みが見えます。これらの山々は大雪山国立公園に含まれ、位置的には十勝の新得町、鹿追町、士幌町、上士幌町の各町の範囲に入ります。しかし、この大雪山国立公園の名称に十勝を加えよとの声は全くありません。東方の阿寒摩周国立公園の雌阿寒岳・阿寒富士・オンネトー周辺は足寄町です。雌阿寒岳・阿寒富士は本別町からも見えます。しかし、阿寒摩周国立公園に十勝を加えよという声は全くありません。眺望を理由に名称に「十勝」を加えることは奇異と言ってもよいでしょう。
 以上のように、十勝を入れる必然性がありません。

 十勝を入れない名称こそが、「日高山脈の価値を認識し、かけがえのない財産を次世代へ引き継いでいく意識」を作っていくものになると考えます。
 貴職の賢明なるご判断を望みます。

  

Posted by 十勝自然保護協会 at 20:36Comments(0)日高山脈

2023年12月13日

日高山脈及び襟裳岬並びにその周辺地域を構成地域とする国立公園(名称未定)の指定等への意見(北海道自然保護連合)

 北海道自然保護連合(構成団体:大雪と石狩の自然を守る会 十勝自然保護協会 一般社団法人北海道自然保護協会 南北海道自然保護協会 ユウパリコザクラの会)が環境省の「日高山脈及び襟裳岬並びにその周辺地域を構成地域とする国立公園(名称未定)の指定等への意見募集」(パブリックコメント)に提出した意見を掲載します。

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環境大臣
伊藤信太郎さま

北海道自然保護連合(共同代表:安藤御史・菊地宏治・西畑智光)


日高山脈及び襟裳岬並びにその周辺地域を構成地域とする国立公園(名称未定)の指定等への意見

 北海道自然保護連合では、今回の日高山脈襟裳国定公園の国立公園化に関わって、2006年3月18日に当連合を含む道内の11の自然保護団体の連名で当時の小池百合子環境大臣に「日高山脈と夕張山地を新たな国立公園に指定することの要望書」を提出し、日高山脈(日高山脈襟裳国定公園)と夕張山地(富良野芦別道立自然公園)を合わせて一つの国立公園に指定することを要望しております。

 このたび日高山脈襟裳国定公園が国立公園に昇格することで私たちの長年の要望の一端が実現し、喜んでおります。新たな国立公園が我が国最大の国立公園になることは大いに評価されます。貴職および関係者各位のご尽力に感謝申し上げます。

 今回の意見募集対象の「イ 日高山脈襟裳国定公園の指定の解除及び公園計画の廃止案」については特に意見はありません。「ア 日高山脈及び襟裳岬並びにその周辺地域を構成地域とする国立公園(名称未定)の指定及び公園計画決定案」については、日高山脈襟裳国定公園よりも面積が約2.4倍、特別保護地区は約3.8倍となるなど、評価すべきと考えていますが、以下のように意見を申し上げますので、ご検討くださるようお願いいたします。


1. 名称は「日高山脈国立公園」とすることを要望します。

 そもそも「日高山脈襟裳国定公園」は、襟裳岬周辺とアポイ岳周辺を合わせて指定された「襟裳道立自然公園」(1950年8月15日指定、1958年4月1日襟裳道立自然公園に移行)と、保護地域として未指定であった「日高山脈主稜部」を合わせて1981年10月1日に指定されました。この国定公園は襟裳岬周辺、アポイ岳周辺および「日高山脈主稜部」という互いに離れている3地域から出来ています。このことから、国定公園の名称は「日高山脈」と「襟裳」が併記されることになりました。

 しかし、今回の公園計画においては指定地域の大幅な拡大により飛び地状態は解消されて一体化し、新たな国立公園の範囲は日勝峠付近から襟裳岬に至る日高山脈を中核としてその東西の山麓を含む地域になっております。したがって、「日高山脈国立公園」が最適な名称と考えます。


2. IUCNが認める国際的基準の国立公園として我が国最高レベルの保全を要望します

 IUCN(国際自然保護連合)は、 『保護地域管理カテゴリーを適用するためのガイドライン』(2013)において、世界の保護地域を管理目的に応じて7つのカテゴリーに区分しています。日本の国立公園は、その多くが私有地などを含むためカテゴリーⅤ(景観保護地域)に区分されています。それに対して、新たな国立公園はそのほぼ全域を国有地(86.8%)と道有地(11.3%)が占め、地域住民の集落も存在しないため、カテゴリーⅡ(国立公園)、すなわち、「保護地域とは、その地域に特徴的な種や生態系の保全とともに大規模な生態学的プロセスを保護するための大規模な自然地域あるいは自然に近い地域で、それはまた環境と文化に調和した精神的、科学的、教育的活動およびレクリエーションと観光客の機会のための基盤を提供する」という国際的な国立公園の定義に合致します。日高山脈は、知床や大雪山の国立公園とともに、日本では数少ないカテゴリーⅡ(国際基準の国立公園)に該当すると判断されます。

 また、環境庁の第5回自然環境保全基礎調査 河川調査報告書(2000)によりますと、日高山脈襟裳国定公園の原生流域数は22河川を数え、原生流域総面積は約44,043haに及び、ともに全国第1位です。第2位の大雪山国立公園(流域数7河川,面積約16,820ha)に比べ、その原生流域の広大さは突出しています。現行の国定公園から面積を2倍以上と拡張する新たな国立公園はより明確な全国第1位となります。

 このように、日高山脈襟裳国定公園は未来に残すべき日本最大の原始境と言えますので、「公園の指定目的に反する開発や居住を排除する」(私有地がありますので、例外もありますが)など国の責任で厳正な保全と管理を図り、日高山脈の自然保護と生物多様性保全に効果的な対策が現状以上に講じられ、自然保護重視型の国立公園となることを要望しています。

 なお、管理にあたっては、国立公園の大部分が国有林および道有林であることから、林業・国土保全・生物多様性保全を目的に挙げている林野庁や北海道と連携を密にし、日高山脈を我が国最高レベルの国立公園にされることを期待します。


3. 夕張山地(富良野芦別道立自然公園)の編入を希望します 

 日高山脈と夕張山地は地質学的に見て「兄弟の山地」と言え、超塩基性岩(かんらん岩・蛇紋岩)、緑色岩類ならびに石灰岩という植物の分布・生育にとって「特殊岩」と呼ばれる地質が共通し、それぞれの地質に対応した固有植物や隔離分布種が非常に多く、しかも多くが共通する特徴があります。北海道固有植物(固有種・固有植物)の数も、日高山脈、夕張山地においては、大雪山や知床と比較しても圧倒的に数が多くあります。また、夕張山地は芦別川上流部、トナシベツ川上流部などに日高山脈に劣らない原生流域があります。1996年6月19日には天然記念物「夕張岳の高山植物群落および蛇紋岩メランジュ帯」として国の天然記念物に指定されています。

 環境省は、2007年〜2009年に国立・国定公園総点検事業を行い、その結果2010年10月に全国18か所の新規指定・大規模拡張候補地を公表しました。その後のフォローアップを経て、「日高山脈・夕張山地」が新規指定候補として選定されました。貴職にあっては引き続きこの考えのもとに両山地を合わせた国立公園にすることを望みます。


4. 公園計画(原案)に関わる要望および意見

(1)日高山脈南端部(幌満川流域)に見られる大きな非指定地域について

 公園計画図(全体図)を見ますと、様似町のポンニカンベツ川最上流からフチミ川、オピラルカオマップ川、キリプネイ川中流部、幌満川上流部、およびパンケ川上流部にかけて大きな非指定地域があります。この地域は道有林(一部は民有林?)と思われます。国立公園の中にこのような大きな空白地(非指定地)があるのはいかにも不自然で、奇妙に感じられます。このようになった理由を説明していただくとともに、この部分を速やかに新規国立公園に指定されるよう要望いたします。また、その一部は特別保護地区にも接しているようですが、特別保護地区がバッファーゾーンもなく、直接非指定地に接するのは、生態系および生物多様性の保全の上からも極めて大きな問題と思います。

(2)豊似湖周辺の整備について

 豊似湖周辺に園地あるいは歩道・散策路を設ける予定のようですが、この辺りには氷期の遺存種であるエゾナキウサギや高山植物のリシリシノブなどが生息・生育しており、湖畔に多様な自然林がみられ、生物多様性保全上非常に貴重なところです。しかし、近年マナーの悪い訪問者がみられ、当連合構成団体を含む4団体は、環境省北海道地方自然環境事務所長、北海道知事ほかに「日高山脈襟裳国定公園の『豊似湖』周辺における自然環境保全に関する要望」を提出しております。したがって、豊似湖周辺における生物多様性に悪影響を及ぼさない詳細な利用計画が必要です。そのためには、園地と歩道の整備を実施する前に、事前調査を実施し、その結果により利用計画を検討することを要望いたします。

(3)静内中札内線における車道整備について

 公園計画(原案)では、静内中札内線の日高側車道として、起点(静内高見・国立公園境界)から、終点(静内高見・東の沢橋)までの車道整備が挙げられています。この区間は脆弱な岩石から出来ており、過去に大規模な崩落・崩壊があったところです。今後も大規模な崩落・崩壊が予想されますので、安全に通行できる車道として環境省が整備するには相当の出費を覚悟する必要があります。したがって、ペテガリ山荘へのアプローチとしては、現在皆さんが使っているニシュオマナイ川上流の「神威山荘」からべッピリガイ沢へ尾根を乗っ越すルートが、アプローチが長くはなりますが、より安全なものと思います。

 なお、静内中札内線の十勝側車道は、起点の南札内・国立公園境界から終点の七ノ沢・歩道合流点までを整備するとされておりますが、札内川ヒュッテを過ぎると、札内川右岸沿いの砂利道です。地質的には日高側ほど脆いとは言えませんが、急崖ぞいの車道の維持・管理にはそれなりの費用の負担が懸念されます。

(4)稜線上の歩道(登山道)の整備について

 日高山脈は大雪山ほかの火山性の国立公園とは違い、その切り立った細い稜線がその魅力の一つです。そして痩せ尾根の根曲ザサの下や露岩帯にも高山植物や希少植物も見られます。沢登りが日高山脈の特徴的な登山形態となったのは、清冽な沢自体の魅力もありますが、その獰猛な根曲ザサの藪漕ぎが敬遠されたことにもあります。計画されている登山道がどのようなものなのか不明ではありますが、その利用形態、利用によるそれぞれの場所の自然への影響をあらかじめ調査・検討して造成計画を作成すべきです。

1)1839峰への登山道整備について

 日高山脈中部のコイカクシュサツナイ岳から1839峰への登山道整備については現時点では反対いたします。特に主稜線から支稜をたどり1839峰へ至る道は反対です。少なくとも、今回は造成せず、登山者による既存の登山道(これまでの踏み跡道)の利用形態を観察し、それによる周辺の生態系への影響をモニタリングし、その結果を検討してからにすべきです。

2)カムイエクウチカウシ山への歩道(登山道)の整備について

 この登山道は、起点が七ノ沢出合・車道合流点、終点はカムイエクウチカウシ山山頂とあるのみで、そのルートは不明ですが、現在登山者がルートとしている八ノ沢を遡行し、上流部の岩壁状の滝を高巻きしてカールにでるコースを想定しますと、結構危険なところもあり、中級者以上、あるいは初級者の場合は高度な登山技術を有した山岳ガイドを必要とするルートと思います。したがって、登山道の設定にあたっては現地に詳しい登山関係者の意見を聴取すべきです。

(5)日本最大の面積を有する国立公園にもかかわらず、自然保護官(レンジャー)が2名しかいないという問題について

 南北延長約140kmある広大な日高山脈の国立公園に自然保護官が2名しか予定されないことは大きな疑問です。新たな国立公園には、13 市町村が関わっており、日高山脈への入山口は概ね日高側では日高町・新ひだか町・浦河町・様似町・えりも町、十勝側では中札内村・帯広市・大樹町・広尾町などがあります。しかし、公園計画(原案)では、自然保護官事務所は帯広市と新ひだか町(静内)の2か所のみです。広大な面積とアプローチの長さを考えると、十分な管理を行えないことは明らかです。少なくても5か所は必要と考えます。

(6)国立公園の保護と保存および利用に関して、地域住民ほか多様な関係者などによる討議や協働ができる場について

 新たな国立公園は、道民や国民の貴重な財産であるとともに、地球規模において未来の世代に残すべき宝と言えます。その公園計画(保護・保存と賢明な利用)の策定にあたっては、道民や国民はもとより、日高山脈に慣れ親しんでいる地域住民の意見の反映が極めて重要です。一方国立公園の保全の意義とその実施についての地域住民の理解も欠かせません。そのため,国立公園の自然の保護と保全および利用と管理にあたっては、地域住民、自然保護関係団体、登山関係団体、あるいは日高山脈の自然を知る研究者等の意見を広く聞き,公園計画や管理運営計画の策定に活かすために,それらのステークホルダーも国立公園の管理運営にも参画する機会を設けていただきたい。

以上

  

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2023年12月13日

日高山脈及び襟裳岬並びにその周辺地域を構成地域とする国立公園(名称未定)の指定等への意見

 当会が環境省の「日高山脈及び襟裳岬並びにその周辺地域を構成地域とする国立公園(名称未定)の指定等への意見募集」(パブリックコメント)に提出した意見を掲載します。

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日高山脈及び襟裳岬並びにその周辺地域を構成地域とする国立公園(名称未定)の指定等への意見
十勝自然保護協会


はじめに
 日高山脈襟裳国定公園の特徴は、国際的国立公園の資質の可能性を有することと原始性にあります。
 これらの特徴を生かし、損なうことのないようにするには、国立公園の保護と利用の問題について、明確な見解をもって対処する必要があります。
 なお、本意見の対象は、日高山脈を対象の主眼とするものであることを予め承知願います。
 IUCN(国際自然保護連合)が定める新ガイドラインの国立公園に該当する資質の可能性を、日高山脈に発見したのは俵浩三さんであり、すでに当会から環境大臣宛要望書(2021年2月13日付け)の中で説明済みです。また、原始性についても、同様に説明済みですので、ここでは省略します。
 以下、具体的な項目を設け、意見を述べます。

1 公園の名称について
 十勝圏活性化推進期成会等(以下、「十勝の期成会等」)は、公園の名称に「十勝」を入れ「日高山脈襟裳十勝国立公園」とすることを要望しています。当会はこれに反対します。当会は「日高山脈国立公園」とすることを要望します。
〈理由〉
(1)十勝を入れる必然性がありません。
(2)十勝を入れることは、屋上屋を重ねる矛盾となります。
(3)名称に地名を併記した例はたくさんありますが、「日高山脈襟裳十勝」としたでは、全く意味合いが異なります。
(4)環境省原案のゾーニング全体図からも、十勝平野に独立した自然地域は認められません。
(5)結論として十勝を入れることは不適切です。
〈説明〉
(1)十勝の期成会等が十勝を入れようとする動機は、知名度にあやかり観光利用を図るという欲求からです。地元の関係者はその動機をあからさまに公言しています。
(2)日高山脈という名称は、伝統的に定着した地理的固有名詞です。日高山脈はその領域を日高と十勝で分け合っているので、日高山脈の名称の中に十勝が内包しているものと見るべきです(日高ポロシリと十勝ポロシリと区別して呼ぶように)。従って、十勝を併記して並べることは、ことばの重ね合わせとなることになります。
(3)例えば、「阿寒摩周」についてみると、併記された摩周は独立した自然地域であるという点です。
(4)環境省原案の全体図は国定公園の拡張(2.37倍)を示していますが、核心部を大きく特別保護地区とし、山麓を、日高側にも、十勝側にも付随的に拡張しており、これは言わば膨張であり、十勝平野に新たな自然地域を付加したものではありません。
(5)もしあえて十勝を入れるなら、異例のネーミングをすることになります。

2 日高山脈の取るべき道は保護優先の道
 2つの国立公園、「知床」と「支笏洞爺」の指定経緯は対照的です。知床は地元の陳情が全くなかった珍しいケースです。館脇操らの学術調査によってその自然の優れた価値が知られ、さらに当時の審議会委員がウィルダネス思想(1964年原始地域法成立 アメリカ)に傾倒して、「速やかに指定を」急いだのは、当時岬にロッジ建設の計画があったので、それを排除するためだったと伝えられています。
 支笏洞爺は戦後の第2号(第1号は伊勢志摩)として、(GHQへの忖度も多分にあって)札幌圏の観光集客の利便性を当て込んで、道南の温泉地を選定したと伝えられています。
 「知床」は保護型、「支笏洞爺」は観光利用型といえます。知床型を目指すべきです。

3 観光利用について
 十勝圏活性化推進期成会等の要望の本音は、観光利用にあります。国立公園という知名度にあやかり、経済的利益を得ることに傾倒しています。この観光利用に固執し、偏る傾向は、好ましいものではありません。保護の理念を欠いているからです。地元のこの熱心な傾向は、国(観光庁)の「明日の日本を支える観光ビジョン」や環境省の「満喫プロジェクト」と無縁ではなく、むしろ便乗したものと思われます。
 前者は外国人誘致と高級な施設設備を謳い、後者は阿寒摩周で行ったような非自然の、人工的演出を売り物にした、正常な観光・賢明な利用からほど遠い利用で、この傾向が十勝に今蔓延しようとしていることに危惧を覚えます。

4 保護の理念を欠いた観光利用がもたらす結果について
(1)「スニーカーを履いて日高の山を登ろうとする人がいたので、山岳会の人が注意した」(地元新聞に載った話)。安易な登山を目的とした観光利用は危険です。
(2)すでに建設が中止された日高横断道路の再開を望む動きを伝える地元新聞があります。日高横断道路は中止したものです。観光を目的とした動きは容認できません。
(3)「ロープウェイは観光の要」を見出しに地元新聞は黒岳のロープウェイに乗った老人が景観に感激した様子を掲載しました。原始境の日高山脈にロープウェイはふさわしくありません。ロープウェイ観光には反対します。
(4)多くの林道で車が入っているのが実態です。日高山脈を保護する上で車の侵入をさせないよう管理すべきです。
(5)利用拡大を目的とした、登山道の新たな開発や過剰な整備は抑制すべきです。

5 南端部の非指定区域について
 南端部に国立公園に指定されていない空白地があります。普通地域ですらありません、国立公園としてふさわしい資質に欠ける地域なのでしょうか。そうであれば経緯を公表すべきです。当会はこの地域も国立公園に指定することを要望します。
以上


  

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2023年12月13日

大樹海岸の自然の保全に関し大樹町長から回答

 当会の11月23日付の「大樹町の自然の保全に関する要望と質問」に対し、大樹町長から以下の回答がありました。

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樹 企 商 第 411号
令和5年11月29日


十勝自然保護協会 共同代表 安藤 御 史 様
              佐藤 与志松 様

大樹町長 黒 川  豊  


「大樹町の自然の保全に関する要望と質問」に対する回答について
 2023年11月23日付けで要望・質問のあったこのことについて、次のとおり回答いたします。



1 町道整備計画のカシワ林内直線化部分について
① 道路面を舗装するのであれば透水性の材質を採用することについて
現在計画している避難路整備については、令和6年度に設計を行い令和7年度から2カ年で工事を行う予定です。当該事業については、補助事業を活用し町道として整備することから、その材質等についても様々な面を鑑み検討を進めてまいります。
② 現道について
LC-1射場へのインフラ(電気・水道・ネットワーク)については、現道脇に埋設する予定です。このことから、インフラの維持管理において現道を活用していく予定であることから、現在のところ廃道にする計画はございません。
③ 電線の埋設について
②のとおり、LC-1射場へのインフラについては全て埋設する予定です。

2 スペースコタン社の発言について
 メディア等を通じ耳にされている拡張性については、特定の場所を指しているものではなく、LC-1射場含む周辺の町有地等を想定しているものでありますが、今後の整備に向け具体的に協議を進めているものではございません。
 スペースコタン社としては、会社の存在意義を果たすためにも大樹町の優位性を発信していく必要があるためこのような発言に至っていると考えますが、関係各位に誤解を与えないよう、発言においては十分注意する旨を改めて指導したいと存じます。
 なお、当町としては今後の拡充整備等においても、これまで同様、周辺環境に配慮した事業計画策定に努め、自然環境と共生を図る事業実施に向け検討していきたいと考えております。
(企画商工課航空宇宙推進室)

  

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2023年12月13日

更別湿原のヤチカンバ保全についての回答

 11月13日付の「北海道指定天然記念物「更別湿原のヤチカンバ」保全についての質問」に対し、更別村教育長から以下の回答がありました。

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更   教   号
令和5年11月29日


十勝自然保護協会
共同代表 安藤 御 史  様
     佐藤 与志松  様
更別村教育委員会   
教育長 細 川  徹


北海道指定天然記念物「更別湿原のヤチカンバ」保全に関わる質問書への回答について

2023年11月13日付け標記質問書について、下記のとおり回答いたします。



1 前回の質問に対する回答以降の保全対策の進捗状況について
・前回の質問書への回答では2022(令和4)年度実施の調査等(保護地域内植生図作成、オオイタドリ駆除試験)の結果までご回答差し上げたところです。
・その後、2023(令和5)年度には、有識者の指導を受けながら大きく分けて3つの保全事業を実施いたしました。
・1つ目はヤチカンバ保護優先区画の設定です。2021年度実施のヤチカンバ保護地域内現況調査において、保護地域内のヤチカンバ個体数が大幅に減少していた実態に鑑み、ヤチカンバの種の保護のため、周囲の他の植物の影響を受けない区画を設定し、優先的に保護を進め、また、保護地域への来訪者がヤチカンバを視認できるようにすることを目的に実施しました。具体的には保護地域内に2カ所の優先区画を設定しました。1カ所目は平成20年度にヤチカンバを移植した区画、2カ所目は道道210号付近のヤチカンバが生育する区画です。具体的な方法としては、区画内に生育する草本類を鎌や除草機で刈り取りました。また、ヤチカンバ移植区画の北・東側(オオイタドリ分布範囲側)には幅6mの防草シートを敷設し、オオイタドリの除草後の再生を抑制するための対策を行いました。これらの区画のヤチカンバ個体についてはシュート本数や地際直径等を次年度以降にモニタリングしていく予定です。
・2つ目は植生再生試験(地盤掘り下げ)の実施です。保護地域が「更別湿原のヤチカンバ」として北海道の天然記念物に指定されていることを踏まえ、湿原として保全していくことの可否を検討するため、土壌の掘り下げにより湿原植生が回復していくかどうかを調査することを目的に実施しました。具体的な方法としては、他の湿原での調査事例を参考にして、2m四方の地盤掘り下げ区画を3カ所設定し、それぞれ10cm、20cm、30cmの深さに掘り下げました。当該区画は次年度以降にモニタリングしていく予定です。
・3つ目はエゾヤマナラシの防除(伐採)です。過去の調査よリヤチカンバを被陰する高さまで成長する植物によるヤチカンバの生育阻害が確認されていることから、その1種であり広範囲に生育しているエゾヤマナラシを伐採し、ヤチカンバヘの日照を確保するとともに、保護区域内の景観も保全することを目的に実施しました。具体的な方法としては、過去に実施した調査にて保護区域内に生育を確認したエゾヤマナラシ全個体を対象に伐採を行いました。根株からの萌芽を抑制するため、根の栄養分が少ない展葉時期である夏季に伐採を行いました。伐採後の樹木は、現地で自然風化させるために玉切り等を行いました。

2 今後の保全対策について
・現在、本年度に実施した保全事業の結果を取りまとめている最中であり、また、次年度の保全事業の内容について予算の確保を確約できる時期にないことから、明確な事業内容についてお示しすることはできません。
・しかしながら、本年度に実施した保護優先区画内のヤチカンバのモニタリング調査、植生再生試験(地盤掘り下げ)のモニタリング調査については継続して実施していく意向があり、また、道道210号沿いに設置している説明看板の内容が更新されていないため、掲載内容の更新の必要性も感じているところです。
・本年度の保全事業にて保護優先区画を設定したこと、また、エゾヤマナラシの防除を実施したことにより、他の植物の繁茂によりヤチカンバの視認が困難な状況を多少改善できたと考えております。今後は、地域や来訪者の方に広く貴重種ヤチカンバを認識していただき、保全の意識を醸成していくため、創意工夫を凝らしながら保全事業を推進してまいりたいと考えておりますので、ご理解・ご協力のほど宜しくお願い申し上げます。

(社会教育係)

  
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2023年11月28日

大樹海岸の自然の保全に関し、要望および質問書を送付

 大樹町長に大樹海岸の自然の保全に関し、以下の要望および質問書を送付しました。

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2023年11月23日


大樹町長  黒川 豊 様

十勝自然保護協会 共同代表  安藤 御史
佐藤与志松


大樹町の自然の保全に関する要望と質問


 当会は、ここ数年にわたって大樹町の自然、とくに大樹海岸の自然(海岸海蝕断崖草原、海岸砂浜群落、海岸草原、カシワ林、湿原、湿生草原、希少地形十勝坊主など)について、生物多様性の保全、景観の保全を訴えて、貴町に要望・提言をおこなってきました。
 本年10月4日に航空宇宙推進室室長より当面する追加の事業について当会役員に説明がありました。
 当会はすでに新射場LC-1の建設にあたってカシワ林の開削に反対しており、その立場は変わらず、今後の開削にも反対です。カシワ林の海岸側草原には、多数のカシワの低木が生育し、またミヤコザサの下にはガンコウラン、ハマナスなどの植物が広がっています。ここに新たな射点を建設することは景観をさらに損ねるものです。
 この件に関して以下の要望と質問をいたします。
 ご多忙とは存じますが、12月15日までに書面にてご回答いただきたくお願いいたします。



(1)町道整備計画のカシワ林内直線化部分について以下の点を要望いたします。
① 道路面を舗装するのであれば透水性の材質を採用すること。
② いずれ廃道になる現道に敷設されている砂利は撤去し、カシワ林の回復を図ること。
③ 電線は埋設すること。
(2)スペースコタン社による射点の新規造成に関連して以下の点を質問いたします。
 貴町が筆頭株主であるロケット射場運営会社スペースコタンからは、イベント会場で、またメディアに対し「広いのでいくらでも作れる」、「大樹町には約150㎢の敷地に最大10か所の発射地点の整備が可能」、「ケープカナベラルにも伍していける敷地を持っている」などの発言が頻繁に見られます。とくに「約150㎢の敷地に最大10か所の発射地点の整備が可能」とは具体的にどの範囲のどの地点を指すのでしょうか。今回の造成地もこの中に含まれているのでしょうか。ご説明いただきたく存じます。
 スペースコタン社のこれらの発言からは、この地域の自然の貴重さを十分認識なさっておられるのか懸念がもたれます。「自然との共生」を表明している貴町の立場と矛盾はないのでしょうか。ご見解をうかがいます。
以上

  

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2023年11月21日

道道鹿追糠平線駒止湖区間の安全対策について鹿追町からの回答

 2023年10月15日付で、当会、ナキウサギふぁんくらぶ、日本森林生態系保護ネットワークが鹿追町長に提出した「道道鹿追糠平線駒止湖区間の安全対策(速度規制)に関わる要望」に対し、以下の回答がありました。

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鹿  町  住  号
令和  5年11月16日


十勝自然保護協会      共同代表 安藤 御史 様
                   佐藤与志松 様
ナキウサギふぁんくらぶ     代表 市川 利美 様
日本森林生態系保護ネットワーク 代表 金井塚 務 様

鹿追町長  喜井 知己
(公印省略)


道道鹿追糠平線駒止湖区間の安全対策(速度規制)の要望について(報告)

 初冬の候、貴職におかれましてはますますご清栄のこととお喜び申し上げます。また、平素より本町の交通安全推進につきましてご協力を賜り厚くお礼申し上げます。
 さて、令和5年10月 5日付け文書で要望のありました、道道鹿追糠平線のうち、駒止湖付近の30キロ速度規制について、11月6日付け文書で北海道釧路方面新得警察署へ要望したところ、11月13日に回答がありましたので、別紙のとおり報告します。

町民課 住民生活係 
TEL 0156-66-4031



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

別紙



■道道鹿追糠平線 駒止湖付近 30キロ速度規制要望に対する
北海道釧路方面新得警察署からの回答

□回答日時:令和5年11月13日 11:40

□回答方法:電話による。

□回答内容:
 道道鹿追糠平線の当該部分は幅員が狭あいであり、道路線形も厳 しく構造的に速度が出せず、30キロ速度規制は実効性に乏しいことから、速度規制は行わない。
  

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2023年11月21日

更別湿原のヤチカンバ保全について質問書を送付

 更別湿原のヤチカンバの保全について、更別村教育委員会に質問書を送付しました。

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2023年11月13日


更別村教育委員会教育長  細川 徹 様

十勝自然保護協会 共同代表 安藤 御史
佐藤与志松


北海道指定天然記念物「更別湿原のヤチカンバ」保全についての質問

 当会は、2014年以降、北海道指定天然記念物「更別湿原のヤチカンバ」の保全について、指定者である北海道教育委員会、管理者である貴委員会に対し要望等を提出し、回答をいただいてきました。
 2023年2月6日付の質問書では以下の内容の質問をいたしました。
・2021年度実施の「指定地全域のヤチカンバ分布調査」の結果概要について
・上記調査結果に基づく保全対策について
・2021年7月8日付質問書に対する回答以降の進展等について
 これに対し、2月15日付で回答をいただいております。
 つきましては、下記の質問についてご説明をお願いいたします。
 ご多忙とは存じますが、文書にて12月1日までにご回答いただきますようお願いいたします。



1 その後の保全対策の進捗状況についてご説明をお願いいたします。
2 今後の保全対策についてご説明をお願いいたします。
以上

  
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Posted by 十勝自然保護協会 at 14:09Comments(0)道路問題