10月1日付の北海道知事からの回答を受けて、以下の再質問書を送付しました。
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2020年12月14日
北海道知事 鈴木 直道 様
十勝自然保護協会共同代表 安藤 御史
佐藤与志松
一般道道モアショロ原野螺湾足寄停車場線についての再質問書
貴職への要望書や質問書において、当会は現在のモアショロ原野螺湾足寄停車場線で避難に対応できると主張してきましたが、貴職は新規開削による路線変更が必要だと主張しています。そこで、当会は現地視察を行い、現道を大きく改変せずに避難路として利用することは十分可能であること、また新規開削を行った場合、極めて大きな自然破壊が生じることを改めて確認いたしました。具体的には現道を以下のように改修することで、スムースな避難が十分可能であると考えています。
・幅員を広げることが可能な場所では幅員を広げ、対向車に備え待避場を多めに設ける。
・カーブは基本的にそのままとし、カーブ部分の幅員を広くする。
・路面はオンネトー湖岸の道路のような簡易舗装とする。
・崩落の可能性がある場所に関しては、環境に配慮した上でできる限り小規模の崩落防止工事をする。
10月1日付(道路第303号)の貴職からの回答について、上記の提案を踏まえた上で、再び質問をさせていただきます。項目ごとに回答できないような質問ではありませんので、必ず項目ごとにご回答ください。年末年始をはさみご多忙とは存じますが、1月14日までに回答くださいますようお願い申し上げます。
記
1 「『雌阿寒岳火山防災計画』では、噴火時の避難については、大規模な山体崩壊や火砕流、溶岩流、降灰などが発生する前の段階である噴火警戒レベル3になった時点で、雌阿寒温泉やオンネトー周辺など危険な区域から登山者や観光客が当該道路等を使用して避難を開始するとされております。」との回答がありました。
噴石や降灰が発生する前に避難を開始するのであれば、1分1秒を争うような迅速な避難をする必要はありません。新たな道路建設によって数分でも早く避難することにこだわる理由を説明してください。
2 「この計画においては、避難の安全・確実性を確保することが重要とされておりますが、整備を検討している区間は、急カーブの連続で見通しが悪いことや狭小幅員による対向車との交差が極めて困難であることなどが課題とされており、道としては、早急にこれらを解消する必要があるものと考えています。」との回答がありました。
(1)前項で指摘した通り、迅速に避難する必要がないので、カーブがあっても問題はありません。カーブ部分の幅員を広くすることで、出合い頭の事故の防止にもなります。異論や反論がある場合は具体的に説明してください。
(2)「狭小幅員による対向車との交差が極めて困難」との指摘がありますが、避難が必要な状況ならばゲートに電光掲示板を設けて「進入禁止」と表示すれば対向車の侵入は考えられません。現場の安全が確認できなければ救急車やパトカーなどの緊急車両も入ることはありません。まして、噴石や降灰が発生する前に避難するとのことであれば、救急車両が入る必要性は全くありません。また、仮に救急車が出動するとしても足寄町からゲートまでは約37㎞あるために、救急車が到着する前に避難すべき車両は幅員の狭小な部分を通り過ぎており、狭小部分で交差する可能性は低いと考えられます。異論や反論がある場合は具体的に説明してください。
(3)降灰があった場合は①降灰で視界不良になる。②前方を走る車両が巻き上げる降灰で視界不良になる。③滑りやすくなることが指摘されています。降灰で視界不良になることに関しては、「足寄町雌阿寒岳防災マップ」の「どこで・どんな災害が・・・?」の「小噴火および中噴火」の項に「視界不良による交通障害に注意」との記載があります。したがって、速やかに走行できる2車線で勾配の少ない道路を建設したところで安全な走行はできません。異論や反論がある場合は具体的に説明してください。
3 「当該道路の整備にあたっては、環境への配慮が必要であることから、ワークショップにおいて、有識者などの意見を伺いながら、現道利用案も含め比較したところ、現道利用は大規模な地すべり対策を必要とするなど、国立公園内の自然改変が大きくなることから、極力、公園区域外に新たなルートを整備する案で検討を進めています。」との回答がありました。
(1)現道を利用する場合、大規模な地すべり対策が必要とのことですが、これは現道を5.5mに拡幅することが前提となっています。現道の幅を大きく変えなければ、大規模な工事は必要ありません。然別湖畔の道道85号は大雨で崩落が生じましたが、景観に配慮しながら法面の工事を行っています。したがって大きな自然改変が必要な大規模な地すべり対策は不要と考えます。反論がある場合は具体的に説明してください。
(2)現道利用は「国立公園内の自然改変が大きくなる」という主張も現道を5.5mに拡幅することが前提であり、当会の提案する改変であれば周辺の自然にほとんど手をつけずに済みます。それに対し、新規開削案では、オンネトー駐車場付近より南側の第2種特別区域の約1㎞がほぼ全線にわたって切土・盛土による幅30~40mの法面が形成されるなど「国立公園内の大きな改変」があるほか、国立公園外でも広大な森林伐採が行われ希少植物の生育地も破壊されます。どちらが自然環境に大きな影響を与えるかは明白です。反論がある場合は具体的に説明してください。
4 「引き続き、ワークショップにて、周辺自然環境への影響や必要となる保全措置などについて、ご意見を伺いながら、検討を進めてまいりますので、ご理解、ご協力をお願いいたします。」との回答がありました。
(1)当会は当初からワークショップに参加し、生態系・生物多様性の保全、景観の保全の立場から、新規開削に伴って生じるほぼ全線にわたっての大規模な法面の出現が及ぼす自然環境の変化について多面的に問題点を指摘し、現道を利用しての整備案も提言し、まさに「周辺自然環境への影響や必要となる保全措置など」について発言してきました。
しかし、ワークショップでは、「環境調査結果に関する意見聴取、環境影響に関する意見聴取」に議題が限られており、「噴火現象に応じた避難と道路のあり方」についての議論などは行われず回を重ねてきました。
そのような状況を踏まえ、当会は、2019年4月以降、帯広建設管理部長あてに「噴火現象に応じた避難と道路のあり方」を論点にした質問書、要望書を提出しました。さらには貴職あてに「新規開削よりも環境破壊が少ない現道利用の整備の再検討」の要望も明確にしながら、「噴火現象に応じた避難と道路のあり方」を論点にした書面を提出してきました。
火山噴火の際の避難を目的とした道路計画である以上、噴火現象を踏まえた避難の議論は不可欠です。ワークショップではなぜそのような検討を行わなかったのか説明してください。
(2)当会は要望書や質問書において自然環境への影響がほとんど生じない現道利用案を提案しています。しかし「周辺自然環境への影響や必要となる保全措置など」を検討しているワークショップにおいて、当会の要望書や質問書は資料として配布されるだけで検討されたことはありません。「引き続き、ワークショップにて、周辺自然環境への影響や必要となる保全措置などについて、ご意見を伺いながら、検討を進めてまいります」との回答されているのですから、自然環境への影響がほとんどない当会の現道利用案を議題として取り上げないのは言行不一致になります。当会の現道改修案を議題にせず無視する理由を説明してください。