干拓地のようになったトムラダム
トムラダムが埋まりかけているということで、先日現場視察に行ってきました。
確かにそこには干拓地のような光景が広がっていました。トムラウシ川から大量の土砂が運ばれたようで、湛水開始時の流入地点から500メートルほども陸化していました。
河川学の教えによると、土砂が堆積するのは流速が衰える場合であるといいます。つまり、河川は止水域に流入すると流速を減じ、運搬した土砂を堆積してしまうのです。ここに展開する光景は河川学の教えを実証していました。
そのためわが国のダムではしばしば貯水池から土砂を取り出しています。トムラダムの下流に位置するいくつかのダムでもすでに浚渫が行われています。つまりダムに土砂がたまるのは河川学のイロハであり、常識的なことなのです。
この常識を無視してここにダムを作り、堆砂がひどくなったので運搬用のトンネルを掘らせて欲しいというのは非常識です。国立公園に堆砂運搬用のトンネルを掘らなければならないようなダムは、欠陥ダムといわなければなりませんし、このようなダムを設計した技術者の見識には欠陥があったといわなければなりません。それにも増して問題なのはこのようなところにダムを造らせた企業の河川に対する理解力の乏しさです。この企業は原子力発電もしていますが、心配になってしまいます。
そしてあらためて驚いたことは、十勝川源流部のほぼ全ての河川に取水堰がつくられ、ここでかき集められた水がこのダムへトンネルで送られているという事実です。つまり十勝川源流部の河川はトムラダムとその取水堰によりズタズタにされ魚類の移動は不可能な状態になっています。
もし、今日、このようなダムを計画したとしても社会的合意が得られないことは明らかです。このようにトムラダムは限りなく問題の多いダムであり、わが国のダム撤去の有力候補であると感じました。
(X記)
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