十勝川水系河川整備計画(案)に当会の意見は反映されたか(5)

十勝自然保護協会

2010年07月14日 06:44

6.河道掘削・河畔林伐採と計画高水位
 当会は、河道掘削・河畔林伐採と計画高水位について、以下のように指摘しました。

 原案の72頁には、「河道への分配流量を安全に流下させることができるよう河道の掘削を行う」と述べ、73頁には河道掘削のイメージ図(図2-3、図2-4)が載せられている。そして、このイメージ図には計画高水位の線が引かれている。
 今後30年の河川整備にあたっては、計画高水流量が過大であることから、戦後最大規模の洪水流量を安全に流下させる「目標流量」と「河道への分配流量」を設定したはずである。ならばこのイメージ図には「分配流量の水位」がなければならない。「分配流量の水位」を記載しないのは、不都合な事実の隠蔽といわれてもしかたがない。
 河道掘削の必要性は「分配流量の水位」との関係で判断するのが合理的である。したがって、当会は、この河道掘削の必要性が低いと考えており、再検討を求める。

 原案では、「河道内の樹木は、・・・・・・洪水時には水位の上昇や流木の発生の原因になる」ので「樹木が繁茂する前に伐採を行う」とし、河道内樹木の管理イメージ図(図2-17)を掲載している。ここでも計画高水位の線が引かれ、樹木が繁茂すると計画高水位よりも水位が上昇するとの説明がなされている。河道掘削同様、河畔林伐採の必要性は「分配流量の水位」との関係で判断するのが合理的である。また特に下流域の河畔林には流木捕捉効果が知られている。したがって、当会は、この河畔林伐採について、再検討を求める。

 これに対して、開発建設部は以下のような見解を掲載しました。

 現在の堤防の整備状況等を踏まえ、河川整備計画(案)では河道への配分流量を計画高水位以下で安全に流下させることができる整備内容を検討し、その結果を示しています。

 これは、とてもおかしな説明です。
 開発建設部は、この河川整備計画(案)が「十勝川水系河川整備基本方針に則し、十勝川水系を総合的に管理するため、河川整備の目標及び実施に関する事項を定めるもので、その対象期間は概ね30年とするものであり、洪水による災害の発生防止又は軽減に関しては、河川整備基本方針で定めた目標に向けて段階的に整備を進めることとし、十勝川流域において甚大な被害をもたらした戦後最大規模の洪水である昭和37年8月降雨(帯広地点より下流域)、昭和56年8月降雨(帯広地点より上流域)、昭和63年11月降雨(浦幌十勝川流域)により発生する洪水流量(以下「目標流量」と言う)を安全に流下させることを目標とする(P.66)こととしています。」と位置づけられていることを無視して、現在の治水の最終目標である十勝川水系河川整備基本方針にある計画高水位を持ち出したのです。河川整備基本方針との関係をもう一度整理して書き直さなければ、とてもお粗末な河川整備計画が確定することになります。首尾一貫しない河川行政は、国民にとって余りに不幸なことです。


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