当会と道内の自然保護団体は、10月5日付で北海道電力株式会社佐藤佳孝社長に対し、大雪山国立公園内にある富村ダムの堆砂処理について質問書を送付しましたが、これに対する回答が10月26日付でありました(下を参照)。しかしきちんとした回答になっていないため、12月8日付で下記の再質問書を送付しました。
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富村調整池(富村ダム)堆砂処理についての再質問書
当方の10月5日付、「富村調整池(富村ダム)堆砂処理について質問書」に対し、貴社から10月26日付で回答がありましたが、理解不能なところがありますので、再度質問させていただきます。なお、回答は12月22日までにお願いいたします。
1. 「ダムの安定性に関わる条件として、設計堆砂面がダム安定性を確認するための荷重条件となっていることから、設計を超える荷重がダムに作用すると、ダム設計上の安全率を低下させることになり、ダムの安定性に影響を及ぼす可能性があります。」とのことですが、ダム設計上の安全率がどれほど低下するのか数式を用いて説明してください。
2.「ダムの設置者は、常にダムに作用する荷重が設計を超えることが無いように、事前に土砂処理等の対策を講じています。設計堆砂面に達したような場合には、河川法に基づく定期検査などにおいて、土砂処理等の対策を講ずるよう指導されることがあります。」とのことですが、河川法の条項を明らかにしてください。また指導されることがある場合の基準について明らかにしてください。これまで貴社の管理するダムで指導をうけた事例があれば明らかにしてください。
3.「計画時の土砂流入量の推定は、近傍ダムの実績を基に決定しており」とのことですが、近傍ダムとはどこのダムを指すのか明らかにしてください。
4.「想定以上に堆砂が進行した理由としては、運転開始から3年後の昭和56年およびそれ以降発生した大雨の影響によるものと考えています。」とのことですが、大雨は予測される自然現象であり、降雨確率なども踏まえて堆砂量が推定されているのではないでしょうか。より具体的に説明してください。
5.「調整池上流河川の元河床高が上昇し」とのことですが、調整池上流河川の元河床高が上昇する地点を地図に示して説明してください。
6.「堆砂の進行による河床の上昇に伴い、洪水時等に富村ダム上流の調整池末端部付近において河川水位が上昇し、河岸の侵食等の影響が懸念されます。」とのことですが、河岸の侵食の影響が生ずるところを地図で示してください。
以上
以下は10月26日付の北海道電力の回答
【Al-a】
ダムの安定性を堅持するためには、予想される荷重に対して堤体が転倒、滑動、地盤支持力に対し安全であるかどうか確認する必要があります。
ダムの安定性に関わる条件として、設計堆砂面がダム安定性を確認するための荷重条件となっていることから、設計を超える荷重がダムに作用すると、ダム設計上の安全率を低下させることになり、ダムの安定性に影響を及ぼす可能性があります。
【Al-b】
ダムに作用する荷重が設計を超えることの無いように管理し、ダムの安定性を堅持してダム下流域に対する安全性を確保しなければなりません。
【Al-c】
ダムの設置者は、常にダムに作用する荷重が設計を超えることが無いように、事前に土砂処理等の対策を講じています。設計堆砂面に達したような場合には、河川法に基づく定期検査などにおいて、土砂処理等の対策を講ずるよう指導されることがあります。
【A2】
計画時の土砂流入量の推定は、近傍ダムの実績を基に決定しており、建設後30年が経過した平成20年現在の堆砂実績は,総貯水容量の約57%に達しています。
想定以上に堆砂が進行した理由としては、運転開始から3年後の昭和56年およびそれ以降発生した大雨の影響によるものと考えています。
【A3-a】
調整池への堆砂により、調整池上流河川の元河床高が上昇し、これに伴い河川水位も上昇することとなります。
【A3-b、c】
堆砂の進行による河床の上昇に伴い、洪水時等に富村ダム上流の調整池末端部付近において河川水位が上昇し、河岸の侵食等の影響が懸念されます。
【A4】
・現在の調整池の容量のみを使い最大出力で連続して運転した場合
建設当初と比較すると、現状は堆砂がかなり過行していることから、60%程度の継続時間と考えております。
・平常時の運転の出力と使用水量(富村、シイ十勝、トノカリ、ポントムラウシ)
発電所の出力および使用水量は、河川から調整池への流入量の変動と伴に日々変化するため一概に表わすことはできませんが、年平均すると最大出力・最大使用水量の50%程度となっています。なお、使用水量と取水量は同じとなります。
【A5】
資源の少ない日本において、エネルギー情勢に左右されずに安定して電気を供給することが重要な責務であります。このため、経済性や環境にも配慮しつつ、特徴の異なる電源をバランスよく組み合わせ、時々刻々と変動する需要にあわせた運用を行っており、急激な需要変動に対応できる調整池式水力は主にピーク時に稼動させています(下図参照)。
ピーク時発電量は日々変動するため、具体的な比重は表せませんが、富村発電所の発電量は道東地区の発電量の10%を占める重要な発電所であります。