帯広開発建設部長が3月に公表した
「音更川の河岸侵食対策について」には不可解な記述が散見されることから、当会は、7月7日付で帯広開発建設部長に以下の文書を送付した。
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専門的な知見や経験を有する学識者・研究者を交えて検討した結果をまとめたものだという「音更川の河岸侵食対策について」が3月28日に公表された。
当会は音更川の堤防洗掘に見解を明らかにしてきたことでもあり、この「音更川の河岸侵食対策について」に目を通したが、不可解な記述が目につくことから問題点を指摘する。なお、当会の指摘に納得のいかない場合は、反論いただきたい。
1.4枚目で「音更川は、『急な河床勾配を持ち速い流れが生じること、河岸や高水敷が侵食には弱い砂礫質の土質であること、流路変動を拘束する低水護岸の整備率が低いこと』など蛇行が発達しやすい河道条件にあることが原因と考えられます。」と述べている(「原因」の前に「今回の堤防洗掘の」を補うと理解できる)。
音更川の河床勾配が急なことも、河岸が砂礫質であることも、低水護岸の整備率が低いことも、分かりきったことである。学識者・研究者を交えて検討した結果、こんな分かりきったことを堤防洗掘の原因だといわれると困惑すら覚える。もし本当に学識者などから指摘されるまで分からなかったのなら、河川を管理する者としての見識が欠落しているといわざるを得ない。
2.5枚目で「図-7に示すように、音更川では出水時に蛇行の振幅を増大させながら、蛇行流路そのものが下流側へと移動する傾向があることがわかりました。」と述べている。
音更川は砂礫の多い網状流河川である。このような河川では出水に伴う砂礫の運搬と堆積によって蛇行が振幅を増大させ、下流へ移動することは釣り人など川を見ている人間ならば経験的に知っていることである。「音更川では出水時に蛇行の振幅を増大させながら、蛇行流路そのものが下流側へと移動する傾向があることがわかりました。」と、河川管理者がいまさら新知見であるかのように言うのは言葉を失うばかりである。
3.6枚目で「平成23年9月出水時には流路短絡や蛇行発達など特徴的な現象が発生しています。シミュレーション解析や模型実験の結果からも、音更川においては、
・平成23年9月出水の様な中規模出水によっても著しい流路の蛇行が容易に生じる
・流量ピーク前後で流路の短絡が生じ、洪水の低下期に蛇行が発達している
・蛇行振幅が増大すると共に蛇行流路そのものが下流に移動する
等の特徴があることが明らかとなりました。」と述べている。
音更川の特徴として3点挙げているが、これらは網状流河川では一般的にみられる現象であろう。もし音更川の特徴というのなら、ほかの網状流河川と比較のうえで結論付けなければならない。1点目の中規模出水によっても著しい流路の蛇行が容易に生じることが音更川の特徴であるというのなら、そのメカニズムについて学識者・研究者を交えた検討会で解明すべきであった。そうしてこそ、適切な音更川の河岸浸食対策が立てられるのである。
4.この「音更川の河岸侵食対策について」の最大の特徴は、河川管理者が常識として知っておかなければならない河川の特性を学識者・研究者を交えて検討した結果、はじめて明らかになったかのように記述している点にある。このような体裁をとったのは、中規模出水による堤防洗掘という河川管理の責任が問われかねない問題を曖昧にしたいとの意図が働いたためであろう。
5.9枚目で「河畔林の繁茂によって堤防上から河岸まで見通せない箇所において、見通し線を確保するための伐採を行います」としている。これに関して、当会は昨年7月に伐採計画の説明を求めたが、個別に説明する予定はないとの回答があった(2013年3月21日付)。国民が河川生態系に関心をもち説明を求めているにもかかわらず、説明を拒否する姿勢は河川法の趣旨にも反することであり、猛省すべきである。
以上