自然保護団体がトムラウシ地区での地熱発電計画中止を要望

十勝自然保護協会

2014年10月27日 14:05

 電源開発株式会社がトムラウシ地区に計画している地熱発電開発について、日本自然保護協会と道内の6団体が計画中止を求める要望書を関係省庁に送付し、地元自治体である新得町には面談のうえ手渡ししました。

 書面の提出先は経済産業大臣、環境大臣、林野庁長官、新得町長です。中止を申し入れた団体は新得おもしろ調査隊、大雪と石狩の自然を守る会、十勝川源流部を考える会、十勝自然保護協会、公益財団法人日本自然保護協会、一般社団法人北海道自然保護協会、北海道自然保護連合(五十音順)です。

 なお、事業者である電源開発に対しても、同主旨の文書を送付しました。

 提出文書(本文)は以下です。

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2014年10月27日



大雪山国立公園内トムラウシ地区地熱発電計画中止の要望書


 大雪山国立公園内トムラウシ地区において、電源開発株式会社により地熱発電開発が計画されています。
 大雪山国立公園は、今年で国立公園指定80周年を迎えておりますが、生物多様性、希少性に恵まれ、ここでしか見られない種が多数生息し、我が国の至宝と言える日本最大の国立公園です。そのため、この国立公園は、世界自然遺産およびラムサール条約湿地の候補に挙げられるなど、国際的にきわめて高く評価される地域です。
 とくに大雪山国立公園南部、トムラウシ山東麓の十勝川源流部には、国内で5地域指定されている原生自然環境保全地域があり、我が国ならびに北海道において、また大雪山国立公園においても、数少なくなった原生のままの亜高山針葉樹林が残されています。ところが、原生自然環境保全地域の西側に隣接する国立公園第二種および第三種特別地域に、問題の地熱発電開発が計画されています。ここは2013年4月には、北海道森林管理局によって、十勝川上流森林生物遺伝資源保存林に指定されております。しかも、北海道森林管理局は、すでに自然環境保全法による原生自然環境保全地域を「トドマツ・エゾマツ原生保護林」として、またその周辺地域を「大雪山原生林保護林」として指定しておりますので、この十勝川源流一帯が、我が国の中で、亜高山針葉樹林が良く残された重要な地域であることが明らかです。
 地熱は、再生可能な持続性のあるエネルギー源として、とても大切な資源であることに異論はありません。しかし、この地域における地熱資源がたとえ豊かであったとしても、その開発の是非は総合的に検討されなければなりません。地熱発電によって現世代が利便を得たとしても、我が国の自然を代表する地域において、生物多様性の屋台骨である原生自然環境保全地域の周辺で、第二種および第三種特別地域と十勝川上流森林生物遺伝資源保存林に損失を与えて、後の世代の享受を妨げることが有益であるはずがありません。
 大雪山国立公園では、かつて存在した原始的な森林が著しく減少した事実があり、その責任が私たちの世代にあることも認めなければなりません。このようななか、林野庁は十勝川原生自然環境保全地域の周辺地域で更生プロジェクトに着手し、本来の森林を復元する取り組みを始めたところです。
 私たちの世代で、大雪山国立公園の自然環境をこれ以上衰退させないよう、トムラウシ地区の地熱発電計画については、計画段階の初期調査を含め、計画そのものを中止することを強く要望します。


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