大樹町に以下の質問および要望書を送付しました。
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2019年2月6日
大樹町長 酒森 正人 様
十勝自然保護協会 共同代表 安藤 御史
佐藤与志松
大樹町海岸の自然環境の保全に関わる質問および要望
昨年12月11日付で管内の報道各社は大樹町の射場について「発射場新設 2段階で」「宇宙実験場の増設構想」との記事を掲載しました。この件に関し12月21日に当会役員が貴町担当職員と面談し説明を受けるとともに、当会の要望を口頭で伝えているところです。その後、1月25日の「北海道航空宇宙企画株式会社(仮称)」の設立準備会で、貴職が会長に就任したと報じられています。
このようなことから、改めて射場について書面で質問するとともに、ロケット発射時期について要望いたします。ご多忙とは存じますが、質問については2月28日までに回答くださいますようお願いいたします。
1 「構想」について
① 「現在の実験場を南に拡張する」ことについて
以前、防衛省が使用していた敷地が空地となっていることから、そこを使用し
てインターステラテクノロジズ(IST)社の次期開発機種に対応した関連施設を建てる考とのことですが、昨年のような事故が今後も起きないという保証はありません。周辺の海岸草原・湿原植生への影響が懸念されます。また、施設の状況によっては景観上の観点からも懸念が生じます。さらに、管理運営組織により海岸方面までを含めて一帯が一般の立ち入り規制の対象になるとすれば、研究者・調査者・自然観察者などの活動に多大な影響が出かねません。ご見解をおうかがいいたします。
② 「射点が拡張部分の南端に設置する」ことについて
射点の新設に伴う指令所の位置が提示されていませんがどのような構想でしょうか。現在、発射の目視が必要との理由で指令所が射点から615m離れた地点に敷設されていますが、新射点に対しても目視を必要とするのであれば、現在の位置に止まるにせよ、新たな地点に敷設するにせよ、視界を妨げる樹木の伐採が想定されます。周辺は大樹港近くから連続するカシワ林帯の北端です。また、指令所と新射点の間には、日本では最南端として記録されている十勝坊主(アースハンモック)群が広がっています。ご見解をおうかがいいたします。
③ 「3000m級滑走路」について
新設は物理的・技術的には可能との構想ですが、滑走路東端が上記カシワ林に近接すると考えられます。法律上伐採が必要とされる位置を避ける配慮がなされるのでしょうか。ご見解をおうかがいいたします。
④ 「自然環境との共生」について
すでに以前の文書において貴職からは「当縁湿原を含む『十勝海岸湖沼群』が環境省の『生物多様性の観点から重要度の高い湿地』に選定されていることも承知しておりますし、貴重な資源と考えているところでもあります。」との見解をいただいています。この立場に立つと、「現在の実験場を南に拡張する」構想については自然環境への影響が強く懸念され、「自然環境との共生」は極めて難しいと当会は考えます。IST社の商業打ち上げを軌道に乗せるための新射場設置は、南へ拡張することをせずに、ただちに自然度の低い別の環境へ設置するお考えはないのでしょうか。ご見解をおうかがいいたします。
2 IST社の次期ロケット発射時期に関して
発射する時期は明確になっていませんが大型連休を視野に入れた今春との情報もあります。当会は、昨年も2月22日付要望書の中で要望したところですが、射場周辺は多数の野鳥の生息地であり、この時期は繁殖期に当たります。とくに湿原周辺に生息する国指定天然記念物タンチョウは抱卵期ないし幼鳥歩行期に相当します。人の接近や騒音に対して敏感になっている時期です。すでに行われている準備作業を含め十全な配慮をすべきことを改めて要望いたします。
以上