中央環境審議会自然環境部会に関する環境省の回答に対し質問書を送付

十勝自然保護協会

2024年03月29日 19:37

 日高山脈を含む新国立公園の名称に関わり、当会は環境省に2月26日付で「中央環境審議会自然環境部会(第48回)に関する質問と要望」を送付しました。環境省からは3月21日付で回答がありました。その回答を踏まえ、北海道自然保護連合の5団体は環境省に以下の質問書を送付しました。

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2024年3月29日



環境省自然環境局長 白石 隆夫 様
   国立公園課長 番匠 克二 様

北海道自然保護連合 共同代表 安藤御史 菊地宏冶 西畑智光
構成団体                      
大雪と石狩の自然を守る会      代表 寺島一男
十勝自然保護協会  共同代表 安藤御史 佐藤与志松
南北海道自然保護協会        理事長 藤島 斉
ユウパリコザクラの会        代表 藤井純一
一般社団法人北海道自然保護協会   会長 在田一則


3月21日付環境省回答に関わる質問


 十勝自然保護協会は、貴職宛に2024年2月26日付で「中央環境審議会自然環境部会(第48回)に関する質問と要望」を提出しました。それに対し、3月21日付で貴省国立公園課より回答をいただきました。
 国立公園は国民の財産であり、地域だけの財産ではないとの立場から、北海道内の自然保護団体5団体(十勝自然保護協会・大雪と石狩の自然を守る会・ユウパリコザクラの会・南北海道自然保護協会・一般社団法人北海道自然保護協会)で構成する北海道自然保護連合は回答を精査しました。また、貴省の過去の資料からも検討しました。質問を提出いたします。
 年度末、年度始めのご多忙の時期と存じますが、4月22日までにご見解をいただきたく書面での回答をお願いいたします。


1 パブリックコメントに関し「名称について御意見を伺う趣旨で実施したものではありません。」との回答がありました。名称は国立公園指定・公園計画決定の案件の一つです。パブリックコメントの時点では名称未定です。しかし、名称についてはパブリックコメント前に複数の団体が貴省に要望をしてマスコミ報道にもなっていました。このような状況の中でパブリックコメントにおいて名称に関する意見があるのは当然のことであり、国民の意見として尊重すべきです。パブリックコメントを実施した結果出てきた意見も審議会で取り上げるべきではありませんか。ご説明ください。

2 貴省はパブリックコメント募集時には「名称未定」であったものを、なぜ2月22日の自然環境部会で明確な理由を示すことなく、「地域の要望」だからとして13市町村長の要望『日高山脈襟裳十勝国立公園』を名称案として出したのですか。ご説明ください。

3 「『地域の御意見を聴き』とは、本国立公園に関わる地域の市町村の御意見をお聴きすることを想定していました。」、「これまでの国立公園に係る指定においても、個別の要望を審議会に提出することは実施しておりません。」、「弊省としては、『日高山脈襟裳十勝国立公園』を地域から提案のあった名称案として審議会に提示しました。」との回答があります。回答によれば「地域の意見」というのは関係市町村の首長の意見だけであり、自然保護団体、山岳団体、地域住民、日高町村議会議長会の意見は「個別の要望」として対象外であると解釈できますが、なぜ区別されるのかご説明ください。また、なぜ地域の市町村長の要望書が他の団体やパブリックコメントの意見より「重い」のかご説明ください。

4 名称決定が関係自治体首長にゆだねられるのは「国立公園の指定作業において区域及び計画案については、市町村へ意見照会を行って案を取りまとめて」いることが理由ですか。ご説明ください。

5 貴省の国立公園行政は、関係自治体首長の意見だけを「地域の意見」とし、多様な意見を聴かずに排除することと理解します。このような姿勢は、公務員は国民のなかの一部の者の利益のために奉仕してはならないとする憲法15条第2項「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。」に反します。このような姿勢を今後も続けるのですか。ご見解をうかがいます。

6 「名称を決めるルールがあるわけではない」としていますが、そもそも自然保護法に「国立公園は我が国の風景を代表するに足る傑出した自然の風景地であって環境大臣が指定するもの」とあります。これが選定の基準(ルール)です。「十勝」を入れるとすれば「十勝」とはどの範囲を指すのでしょうか。また「十勝」には「傑出した自然の風景地」がどこにあるのでしょうか。ご説明ください。

7 日高山脈という名称は定着した地理的固有名詞です。日高山脈の領域は、地理的・行政的に日高(振興局)と十勝(総合振興局)にまたがっているので、日高山脈の名称の中にすでに十勝は内包しています。したがって、「十勝」を入れることは、屋上屋を架すこととなり、論理的におかしいことになります。ご見解をうかがいます。

8 周辺13市町村長会から提出されている要望書には、唯一の理由として、十勝を加えることで「観光客や利用者に地理的な位置を分かりやすくする」とありますが、日高山脈という名称は、小中学生の地図帳にも明確にその位置が記載されており、このようなあまりにも平易な理由で名称を決めることは貴省としては構わないのですか。また、観光客にとっては公園の範囲が分かりにくくなり、むしろ混乱を引き起こすものと考えますが、貴省としては問題を感じませんか。ご見解をうかがいます。

9 日高山脈周辺の国立公園化の価値はその「原生的環境」にあることは貴省の文書のいたるところに記載されています。「農業王国・食糧基地・広大な平野」というイメージの強い「十勝」を加えることによって、原生的環境を特色とする公園計画の本質が極めてあいまいになると考えられます。ご見解をうかがいます。

10 十勝の関係6市町村長から提出されている「要望趣旨書」には「十勝平野から眺める(日高山脈の)山並みは雄大」との一文があります。しかし、西方に日高山脈の山並みが見える十勝平野中央部からも、北方には、十勝岳連峰、トムラウシ山、然別火山群、東大雪を含め大雪山の雄大な山並みも見えます。これらの山々は大雪山国立公園に含まれ、位置的には新得町、鹿追町、士幌町、上士幌町の各町の範囲に入ります。しかし、この大雪山国立公園の名称に十勝を加えよとの声は全くありません。また、東方の阿寒摩周国立公園の雌阿寒岳・阿寒富士・オンネトー周辺は足寄町で、市街地には雌阿寒岳・阿寒富士が美しく見える丘があります。この二つの山は本別町からも見えます。しかし、阿寒摩周国立公園に十勝を加えよという声は全くありません。眺望を理由に名称に「十勝」を加えることは貴省としてはどのようにお考えですか。ご見解をうかがいます。

11 十勝の関係6市町村長から提出されている「要望趣旨書」には、「こうした特色(雄大な眺望)を活かしたアドベンチャートラベルや周遊観光など、国立公園の魅力向上が期待されるものであり、国立公園区域外の利用拠点等とも連携した新たなツアーの造成やPR 活動に取り組んでまいります。」ともあります。このような事業・活用は全国の国立公園周辺ではごく普通に行われているものです。ツアーの企画やPRなどにあたって名称に「十勝」を入れることが必要なのでしょうか。ご見解をうかがいます。

12 十勝の関係6市町村長から提出されている「要望趣旨書」には、「6市町村として国立公園の指定を機に自然をしっかりと守りさらに価値を高めていきたい」こと、具体的には「希少動植物の保護マナー啓発、ヒグマ対策、遭難防止対策、登山道の草刈りや避難小屋の手入れ、簡易トイレの設置や登山道の整備などに取り組んでいくこと、また国立公園区域外の利用拠点等とも連携したツアー造成やPR活動等に取り組んでいくこと」が強調されていますが、これらのことは名称に「十勝」を入れることと関係あるのでしょうか。ご見解をうかがいます。

13 「今後、関係市町村が積極的に関わってもらうから」、「誇りを持ってもらうため」などという理由もあると聞いています。「十勝側に円満に祝福していただく国立公園になってほしい」という激励の声がありますが、このようなことも「十勝」を入れる理由になるのですか。ご見解をうかがいます。

14 国立公園として保全すべき地域以外の地名を国立公園周辺市町村の要望により入れることは、環境省が本来行うべき環境・自然保護行政を歪曲するものと考えます。そのような前例を作ると、今後国立公園周辺の市町村から同様の要望が出てくると認めざるを得なくなるのではないでしょうか。悪しき前例を作ることになります。ご見解をうかがいます。
以上



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