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十勝自然保護協会 活動速報 › モアショロ原野螺湾足寄停車場線 › 道道モアショロ原野螺湾足寄停車場線の整備計画について北海道に要望書を送付

2025年01月06日

道道モアショロ原野螺湾足寄停車場線の整備計画について北海道に要望書を送付


 北海道自然保護連合は、北海道知事に道道モアショロ原野螺湾足寄停車場線についての要望書を提出しました。

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2024年12月22日


北海道知事 鈴木 直道 様

北海道自然保護連合 共同代表 安藤御史 菊地宏治 西畑智光

        構成団体
大雪と石狩の自然を守る会      代表 寺島一男
十勝自然保護協会  共同代表 安藤御史 佐藤与志松
南北海道自然保護協会        理事長 藤島 斉
ユウパリコザクラの会        代表 藤井純一
一般社団法人北海道自然保護協会   会長 在田一則



道道モアショロ原野螺湾足寄停車場線の整備計画に関する要望 


 現在、北海道が進めている道道モアショロ原野螺湾足寄停車場線の整備計画について、私たち北海道自然保護連合(十勝自然保護協会・大雪と石狩の自然を守る会・ユウパリコザクラの会・南北海道自然保護協会・一般社団法人北海道自然保護協会)は、当該事業計画がわが国の傑出した景観と生物多様性等を保全する重要な拠点である阿寒摩周国立公園を含む国有林の自然環境に大きな影響を与える恐れがあることから反対しています。雌阿寒岳・阿寒富士西麓一帯の当該地域の優れた自然を保全し後世に残すために、当該事業計画の見直しを強く要望いたします。
 年末年始のご多忙の時期と存じますが、以下の私たちの要望・意見について、ご検討いただき、貴職のご見解を1月24日までに書面にてご回答を下さるようお願いいたします。

1 雌阿寒岳が2014年に重点的な観測・研究を行う火山に指定されたことによる充実した火山観測体制を踏まえて、当該地域における避難体制を再検討し、あわせて当該道路計画を見直すべきです。


 2014年の御嶽山噴火により、文部省科学技術・学術審議会測地学分科会地震火山部会は雌阿寒岳含む全国9か所の火山を重点的な観測・研究を行う重点火山に指定しました。それに伴い、2015(平成27)年5月、雌阿寒岳火山防災会議は「足寄町道雌阿寒オンネトー線」を噴火時の避難路として位置づけました。その後の約10年間で、24時間観測も行われるなど雌阿寒岳の観測体制は当時よりも充実してきており、避難体制は再検討されるべき段階にあります。
 北海道は以下の点を検討して、雌阿寒岳火山防災協議会(以下「協議会」)の構成員として協議会に進言すべきです。
 噴火警戒レベルは現在段階毎に定められていますが、当該地域の状況を勘案して、必要ならばレベル2(火口周辺規制)の段階で一般車両に対し、ただちに域内脱出、進入禁止を実施する検討を要望いたします。
 雌阿寒岳で大規模噴火が起きた場合、火口の位置によっては、オンネトー南側は火砕流、土石流、泥流、溶岩流の通り道になりますので、こちら側に避難路を建設するのは不適切です。これらを伴わない小規模の噴火であれば、現道による避難で十分対応できます。また、噴石等の被害軽減にはシェルターが有効なことから設置を検討すべきです。
 これらの目的・必要性・効果について総合的に考えることが重要と思われます。

2 現在、北海道が進めている道道モアショロ原野螺湾足寄停車場線の整備計画における阿寒摩周国立公園第2種特別地域内の計画路線は、2015年環境省中央環境審議会自然環境部会自然公園等小委員会(第31回)が有効幅員等の変更を承認した「町道雌阿寒オンネトー線」とは異なる新規路線です。

 環境省は、2015(平成27)年12月22日、中央環境審議会自然環境部会自然公園等小委員会(第31回)(以下「小委員会」)において、阿寒国立公園事業の変更について、「町道雌阿寒オンネトー線(湖岸から公園境界)の有効幅員の変更(5.5m)」を諮問し、承認されました。その後、この町道は道道に昇格し、「道道モアショロ原野螺湾足寄停車場線の一部」となり、北海道(帯広建設管理部)が整備計画をたて、本年3月に第2種特別地域の新規開削を含む路線案(路線案候補の第5案)を確定しました。
 小委員会における事業変更の説明では、環境省は「拡幅部分は、シラカバ等の二次林であって、特に保護の必要な希少種等の生育・生息は確認されておりません」と述べておりますが、この説明は現道沿いのシラカバ等の二次林を対象としており、「現道の拡幅整備」が主眼となっています。つまり、現在帯広建設管理部が進めている計画路線とは全く異なるものです。
 計画路線は延長4.4㎞で、そのうちオンネトー南端のSp0からおよそSp1200までは、現道の南側を約1.2㎞にわたって国立公園第2種特別地域の森林を新規開削する計画です。阿寒富士からの玄武岩質溶岩流による凹凸の激しい地形を平坦な道路に造成するため、切土・盛土などで大きく改変することになっています。このため連続した広大な法面が形成され、幅30mから最大約50mの空間が大森林を切り開いて出現する計画になっています。
 この計画は、環境省が許可したものをはるかに超えています。

3 現在、北海道が進めている道道モアショロ原野螺湾足寄停車場線の整備計画は、地形や植生に特徴がある「風穴地帯の特異な自然生態系」を破壊し、阿寒摩周国立公園第2種特別地域の存在価値を失わせます。この計画はまた、Sp1200からSp4200までの国立公園に隣接する国有林等においても、上記と同様の特異な自然生態系を破壊します。

 路線は、計画起点から約Sp3200まで阿寒富士からの玄武岩質溶岩流上に計画されています。この溶岩流は、地形図上では緩傾斜の浅く広い溝に見えますが、実際には累積する溶岩によって凹凸の激しい地形を呈しています。とくに諸処に散在する凹地には多数の風穴が見られ、夏季でも地温が0℃に近い場所も少なくなく、地下に凍土の存在が推定できます。低温湿潤環境となる風穴周辺には、ミズゴケ属(ホソバミズゴケ、ゴレツミズゴケなど)をはじめとして、ダチョウゴケなど高山性ないし亜高山性の蘚苔類、コケモモ、イソツツジなどの高山植物が繁茂しています。
 以上の溶岩流は、凸地を含んでアカエゾマツ林に被われ、林床ではササ類を欠く代わりに多種の蘚苔類や高山・亜高山の維管束植物が生育しています。ここは、全国的に特記される生態系として「風穴地帯の特異な自然生態系」と呼ぶことができます。計画路線がこの特異な自然生態系が成立する範囲にほぼ絞られて設定されたことは、事前の自然把握と評価に不足があったと考えられますが、いずれであっても我が国の自然環境保全上大きな問題になります。そのため、この計画は、ぜひ考え直していただきたいと切望します。
 帯広建設管理部の計画路線上の植物リストによれば、本国立公園の指定植物のうち、蘚苔類2種、維管束植物82種の計84種が見られ、その中には環境省レッドリスト・北海道レッドリストに掲載された17種も含まれ、これらは保全上重要な種です。当連合も本年7月に専門家を含めて現地を視察しており、大開削によってこれらの貴重な植生が破壊され、生物多様性保全を主目的とする国立公園(第2種特別地域)の意義が損なわれることを確信しました。
 さらに、多数の切土・盛土により大きな空間が開削されることによるエッジ効果により、風穴を包含する優れた森林生態系は広範囲に大きなダメージを被ることが危惧されます。また、凍土の存在が推定される森林地帯での大開削は、かつて上士幌町十勝三股十四の沢の低標高にあった永久凍土が、林道工事(1972年)により融解し大規模な崩壊地を発生させていることから、当該地の環境に様々な影響を与えることが十分考えられます。

 なお、帯広建設管理部の環境調査について、とくに以下の問題点を指摘します。
 ・計画路線内について風穴の存在や低温環境は、すでに2016年に帯広建設管理部の調査によって明らかになっています。しかし、2020(令和2)年度第2回ワークショップでは風穴の存在を否定する認識を表明しておりますが、これはこの地域の低温環境の評価を無視するものですので、改めていただく必要があります。
 ・計画路線上の植生調査におけるコドラート設置は小サイズであり、森林環境の実態を十分に反映しておりません。実態が反映できるサイズのコドラート設置での再調査を求めます。このような調査でも、林床のコケ層はほとんどの調査地点において広い規模で確認されているように、林床全体に広がる蘚苔類をもっと重視すべきであり、環境評価を維管束植物だけの消失箇所の多少に偏らせるべきではないと考えます。

 計画路線の森林の改変面積は、帯広建設管理部の資料によれば、国立公園内が25,000㎡、国立公園外の保安林が82,000㎡、合計107,000㎡とあります。これは北海道大学植物園の敷地(133,957㎡)に近い面積の森林が一挙に失われるということです。
 森林の適切な保護はCO2吸収源となり、気候変動の緩和のためになります。北海道は、日頃から、脱炭素、また、SDGsを奨励しています。このような森林大開削はそのような精神に反します。

 本国立公園当該地域を含む計画路線について、避難路としての妥当性・原生的な自然環境の保持・生物多様性の保全・景観の維持の観点から、一度立ち止まって見直すことを強く要望いたします。
以上



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