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2022年07月22日

幌加調整池通砂バイパストンネル工事についての要望と回答

 電源開発は、幌加調整池(上士幌町)の堆砂対策として通砂バイパストンネルの設置工事を計画しています。当会は2022年3月6日に事業計画について説明を受け、その後、環境調査等について面談・書面でのやり取りを行い、最終的に7月4日に要望書を提出、7月12日に回答がありました。要望書と回答を掲載します。

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2022年7月4日

電源開発(株)水力発電部 東日本支店
上士幌電力所長  田畑 宏司 様
十勝自然保護協会    
共同代表  安藤 御史
佐藤与志松


幌加調整池通砂バイパストンネル工事についての要望書


 幌加調整池通砂バイパストンネル工事について、これまでの貴社からの説明を踏まえ、以下の要望をいたします。

1.幌加ダムでは竣工後7年目の1972年に110,800立方メートル、その9年後の1981年に106,000立方メートルの堆砂を記録しています。この堆砂量は貴社が言うところの「4台風」が襲来した2016年より多くなっています。国交省によると、幌加ダムでは2018年度に465,000立方メートルの堆砂があったとされ、総貯水容量に対する堆砂量の割合は北海道のダムではトップクラスとなっています。このように竣工直後から多量の土砂が堆積する幌加ダムはダムに不適格な立地であると言わざるを得ません。堆砂対策を考えるに当たり、このようなところにダムを存続させるべきかについて、撤去も含め十分検討すべきであると当会は考えています。これまでの堆砂状況から今後も多量の堆砂が続くと推測されますし、貴社からは通砂バイパストンネル工事を行ってもダンプによる堆砂除去が必要であるとの説明がありました。したがって、通砂バイパストンネルは堆砂対策として十分とは言えない可能性があります。その様な場合には幌加ダムの撤去も含めた検討が必要になると考えます。

2.貴社は「幌加ダム地点は、もともと小規模な滝地形ということもあり、ダムの建設以前からダム地点下流より上流への魚の遡上は困難な場所であったと考えております。」としていますが、幌加川の上流域にはムハンオショロコマの存在が知られております(町野陽一・宮内博三.1997.大雪山系からのムハンオショロコマ(salvelinus malma).ひがし大雪博物館研究報告25号)。この小さな滝を乗り越えオショロコマが上流にも分布していたと考えられます。貴社が希望するように通砂バイパスを通し、幌加ダムを存続させるというのであれは、魚道をつけるべきです。魚道の設置は流路を寸断したものが果たすべき責務であると考えます。

3.幌加ダム周辺にはオジロワシ・クマタカなどの猛禽類が生息しており、貴社がこれまで行ってきた堆砂除去作業も猛禽類の繁殖期を避けていました。工事にともなう騒音や車の往来など繁殖への人為的影響が懸念されます。モニタリングをしながら工事を行うと説明がありましたが、何等かの影響が生じてから対策をするのでは遅すぎます。オジロワシ・クマタカの繁殖期は工事を避けるよう求めます。

4.貴社は「生態学的混播・混植法による復元も検討することとする」としていますが、この手法は植生の遷移に基づいておりません。どのように植生が移り変わるかを踏まえたうえで、原植生の復元を目指すよう求めます。

なお、以上の要望については、環境省上士幌管理官事務所管理官に通知することを申し添えます。

以上



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上 電 発 第69号
令和4年7月12日



十勝 自然保護協会
 共同代表 安藤 御史 様
      佐藤 与志松 様

電源開発(株) 水力発電部 東日本支店
上士幌電力所長 田畑 宏司


「幌加調整池 通砂バイパストンネルについての要望書」について(回答)




(1)通砂バイパス トンネル設置後もダンプによる堆砂除去が必要であるとの説明があり、堆砂対策として十分とは言えない可能性がある。
 そのような場合には幌加ダムの撤去も含めた検討が必要となると考える。

 国産エネルギーの乏しい我が国においては、再生可能エネルギーである水力発電による電力の安定供給は、発電事業者の重要な責務と考えております。
 ご指摘の通砂バイパストンネル設置後のダンプによる堆砂除去の可能性については、先日ご説明差し上げた通り、2016年 にあつた災害クラスの大出水では、分派堰を越えて調整池内に流入する可能性を否定できないため、この場合にはダンプによる堆砂除去が必要となります。
 しかし、このような災害クラスの大出水であっても、通砂バイパストンネルにより、調整池内への土砂の流入は大幅に軽減できるために、早期復旧や電力の安定供給には大きく寄与できるものと確信しております。
 通砂バイパストンネルの設置後も、堆砂測量および河川環境のモニタリングを継続することとしており、これらの結果を踏まえて継続的にバイパス運用の改善を図って参ります。

(2)通砂バイパスを通し、幌加ダムを存続させるのであれば、魚道をつけるべきであると考える。
 水力発電事業の運営においては、環境との調和は重要な観点であると認識しております。
 幌加地点においては、通砂バイパストンネルを設けることにより、ダム下流河川環境の改善や、堆砂の掘削運搬のためのダンプトラック台数の削減など、環境負荷の低減が図られます。
 加えて、ご指摘の魚道については、更なる河川環境の改善のための対策と認識しております。幌加地点では、今後も水生生物および魚類の生息状況を含めた河川環境のモニタリングを継続して行うこととしており、これらの結果を踏まえて、更なる対策の必要性を含め、有識者および河川管理者のご指導を仰ぎながら検討して参ります。

(3)これまで行ってきた堆砂除去作業も猛禽類の繁殖期を避けてきた。通砂バイパストンネルエ事においても、オジロワシ・クマタカの繁殖期には工事を避けるよう求める。
 幌加調整池における堆砂の掘削・搬出作業については、気温が下がり調整池内の堆砂が凍結し重機の立入りが可能となる12月~3月で現場作業を行っておりました。
 今回の計画にあたり、これまでに環境調査を実施し、通砂バイパストンネル設置箇所といずれの営巣場所とは1,000m以上の離隔距離が保たれていることを関係行政、有識者および貴協会とも情報共有して参りました。
 これらの環境調査に基づき有識者のご指導を受けながら工事計画を立案して参りました。今後、工事期間中もモニタリングを継続し、得られた情報と結果をもとに環境対策の効果および改善点などを評価し、有識者のご指導を頂きながらPDCA管理を継続実施して参ります。
 通砂バイパストンネルエ事については、上記のように適切な環境対策、モニタリング、PDCA管理を確実に行うことで、周辺環境に配慮しつつ工事を実施することにより、周辺環境への影響を最小化することを目指して参ります。

(4)植生の移り変わりを踏まえたうえで、原植生の復元を目指すよう求める。
 ご意見を踏まえて有識者と相談した結果、群落組成調査結果から原植生の主要構成種と考えられるトドマツ、シナノキ、ハリギリ、ミズナラ、ドロノキ、ケヤマ八ンノキ等を対象とし、その中でもドロノキ、ケヤマハンノキ等の先駆樹種を主体とした樹林を形成させ、その後は自然の遷移に任せる計画として参ります。

※ 貴協会からのご意見、ご要望については、趣旨を簡潔に転記していることをご了承ください。

以上

  


Posted by 十勝自然保護協会 at 16:26Comments(0)河川・ダム

2016年06月17日

居辺川砂防事業への質問に対する回答

 4月4日付けの「2015年8月17日付居辺川砂防事業計画についての申し入れの回答への質問」に対し、十勝総合振興局より以下の回答がありました。

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平成28年6月8日


十勝自然保護協会 様

十勝総合振興局長


 「2015年8月17日付居辺川砂防事業計画についての申し入れの回答への質問」の回答について

 日頃、北海道の建設行政の推進につきましては、格別のご理解とご協力をいただき、厚くお礼申しあげます。
 2016年4月4日付け申し入れのありました「2015年8月17日付居辺川砂防事業計画についての申し入れの回答への質問」につきまして次の通り回答をいたします。

1・申し入れ
 「災害発生の原因である土砂の堆積に対する抜本的な対策とはなっていません。」とのことですが、抜本的な対策とは、2003(平成15)年の降雨を上回る雨量にも対応できる対策を言うのでしょうか。「抜本的な対策」が意味することについて説明いただきたい。
 ・回答
 今までも説明しておりますが、洪水とともに流下する土砂が堆積することにより、洪水の流向が河岸や道路部に向かい、河岸・道路が決壊したり、下流への土砂流出が生じることを防止する対策です。

2・申し入れ
 「再度災害を防止する」とのことですが、今後居辺川のどこでどのような災害が発生すると想定しているのか明らかにしていただきたい。
 ・回答
 今までも説明しておりますが、道路や橋台背後の浸食、河岸決壊、区間Ⅱの土砂堆積による洪水流の氾濫等を想定しています。

3・申し入れ
 1号床固工を設置する目的が曲線部に土砂堆積を促すことであるとの見解が示されました。ここの地形を見るとわかるように、右岸から流入する小河川が合流するため居辺川は水勢を弱め砂礫を堆積させています。つまり床固工をしなくともその目的が果たされているところです。河川の特性を見極めず横断構造物で河川を都合良くコントロールしようというのは人間の驕りであると考えます。異論があればきちんと説明していただきたい。
 ・回答
 今までも説明しておりますが、1号床固工区間は土砂堆積だけではなく、洪水の流向が、河岸や東居辺橋道路部に向かうことで、河岸・道路が決壊することを防止する目的です。

4・申し入れ
 「明渠末端部分の改良については、河床低下状況を確認し、必要かどうか今後検討していきます。」とのことですが、いつ頃を目処に検討を終えるのか明らかにしていただきたい。
 ・回答
 柏陽橋上流の河道拡幅・床固工・砂礫被覆施工後の河道状況を確認した後と考えています。

5・申し入れ
 「区間Ⅰより上流の源流部からの土砂供給は少ないが、区間Ⅰでは、山地や河岸・河床の浸食により土砂が流出することから、区間Ⅱへの土砂堆積は続きますのでその対策として、遊砂地は必要と判断します。」との回答がありました。
(1)貴職は、区間Ⅰ(上流居辺川-精進橋間)を砂礫供給不足区間としていますから、河岸・河床の浸食により土砂が流出するとしてもその量は限定されると考えます。異論があれば説明いただきたい。
(2)また山地から浸食により土砂が流出すると主張していますが、この流域に山地と言えるほどの起伏の大きいところは見あたりませんので、どこの山地からどれほどの量の土砂が流出すると想定しているのか説明していだだきたい。
(3)遊砂工が計画されている上流居辺橋の上流側は現在、砂礫の堆積により河道が大きく拡がっています。これはここで左岸から枝河が合流するために砂礫の運搬作用が減退するからです。このことは遊砂工が必要ないことを意味しています。異論があれば説明いただきたい。
 ・回答
(1)平成28年3月8日の回答通りです。
(2)東居辺橋下流左岸、東居辺橋上流右岸、柏陽橋上流左右岸、東大橋上流左右岸の山腹崩壊及び河床に貯まっている不安定土砂を含め約550,000m3と想定しております。
(3)今までも説明しておりますが、下流への影響を低減させることは出来ません。

6・申し入れ
 「下流での河床浸食については、今後対応策を検討していきます。」とのことですが、いつ頃を目途に検討を終えるのか明らかにしていただきたい。
 ・今後回答
 今後の調査や関係機関との協議結果を基に対応策の検討を行い、適宜川づくりワーキングに経過を報告していきます。

 居辺川の計画は、川づくりワーキングでの議論も含めていきますので、是非川づくりワーキングへの参加をご検討ください。
  


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2016年06月14日

平成27年度治水事業についての質問と意見に対する回答

 4月15日付けの帯広建設管理部への「平成27年度治水事業概要書(追加)についての質問と意見」に対し、以下の回答がありました。

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平成2 8年5月6日

十勝自然保護協会 様
十勝総合振興局 帯広建設管理部長


「平成2 7年度治水事業概要書(追加)についての質問と意見」の回答について

 日頃、北海道の建設行政の推進につきましては、格別のご理解とご協力をいただき、厚くお礼申し上げます。
 平成2 8年4月1 5日付けで、ご質問のありました「平成2 7年度治水事業概要書(追加)についての質問と意見」につきまして回答いたします。

 質問1の美生川の護岸工につきましては、過年度設置護岸箇所の上下流に施工するものです。既設護岸工と一体となり護岸背後の耕作地を護るため施工いたします。
 質問2のヌビナイ川の土砂掘削につきましては、写真(概要書に添付)のとおり左岸に堆積しております土砂を反対側の右岸側に寄せることにより、みお筋を左岸側に寄せて右岸側の民地を護るものです。
 意見1の渋山川につきましては、H27年度より開催しております「川づくりワーキング」の中で検討し、対策工に反映してまいります。
 意見2のヌビナイ川ダムにつきましては、魚道設置の整備に努めてまいります。
 また、概要書につきましては、読みやすくなるように今後工夫いたします。
 最後に今後も帯広建設管理部で実施いたします事業についてのご理解を再度お願い申し上げます。以上よろしくお願いいたします。
  


Posted by 十勝自然保護協会 at 14:53Comments(0)河川・ダム

2016年06月14日

平成27年度治水事業概要書についての質問と意見

 平成27年度治水事業概要書について、帯広建設管理部に以下の文書を送付しました。

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2016年4月15日


帯広建設管理部長 様

十勝自然保護協会
共同代表  安藤 御史
佐藤与志松

平成27年度治水事業概要書(追加)についての質問と意見


 平成27年度治水事業概要書(追加)についての質問と意見は以下の通りです。
 なお、送られてきた概要書は余りにも簡略であり、文字が小さく地形図が不鮮明です。治水事業対照表、各地形図等は縮小コピーのためか読み取りが不可能です。また積雪期のため現地を確認できません。改善していただきたい。
 ご多忙とは存じますが、5月10日までに回答いただきますようお願いいたします。

質問1.美生川の連結ブロック護岸は有効なのでしょうか。
質問2.ヌビナイ川の砂礫の除去は不必要であると当会は考えますが、掘削で出た土砂をどのように処理するのでしょうか。
意見1.渋山川は上流の治水ダムを撤去し、中下流に河畔林を造り護岸工で流速を弱める努力をすべきです。そして数々の工作物も徐々に撤去すべきです。
意見2.ヌビナイ川ダムに中ノ川に倣って魚道をつけるべきです。
  


Posted by 十勝自然保護協会 at 14:41Comments(0)河川・ダム

2016年04月09日

「2015年8月17日付居辺川砂防事業計画についての申し入れ」の回答への質問

 当会の2015年8月17日付居辺川砂防事業計画についての申し入れに対し、3月8日付で十勝総合振興局長から回答がありましたが、理解できないところがあることから4月4日付で下記の質問書を送りました。


「2015年8月17日付居辺川砂防事業計画についての申し入れ」の回答への質問

 当会の2015年8月17日付「居辺川砂防事業計画についての申し入れ」に対し、貴職より2016年3月8日付で回答がありました。この回答には理解できないところがありますので質問いたします。ご多忙とは思いますが、速やかに回答いただきますようお願いします。

1.「災害発生の原因である土砂の堆積に対する抜本的な対策とはなっていません。」とのことですが、抜本的な対策とは、2003(平成15)年の降雨を上回る雨量にも対応できる対策を言うのでしょうか。「抜本的な対策」が意味することについて説明いただきたい。

2.「再度災害を防止する」とのことですが、今後居辺川のどこでどのような災害が発生すると想定しているか明らかにしていただきたい。

3.1号床固工を設置する目的が曲線部に土砂堆積を促すことであるとの見解が示されました。ここの地形を見ると分かるように、右岸から流入する小河川が合流するため居辺川は水勢を弱め砂礫を堆積させています。つまり床固工をしなくともその目的が果たされているところです。河川の特性を見極めず横断構造物で河川を都合よくコントロールしようというのは人間の驕りであると考えます。異論があればきちんと説明していただきたい。

4.「明渠末端部分の改良については、河床低下状況を確認し、必要かどうか今後検討していきます。」とのことですが、いつ頃を目途に検討を終えるのか明らかにしていただきたい。

5.「区間Iより上流の源流部からの土砂供給は少ないが、区間Iでは、山地や河岸・河床の侵食により河岸・河床の侵食により土砂が流出することから、区間Ⅱへの土砂堆積は続きますのでその対策として、遊砂地は必要と判断します。」との回答がありました。
 (1)貴職は、区間Ⅰ(上流居辺橋-精進橋間)を砂礫供給不足区間としていますから、河岸・河床の侵食により土砂が流出するとしてもその量は限定されると考えます。異論があれば説明いただきたい。
 (2)また山地から侵食により土砂が流出すると主張していますが、この流域に山地と言えるほど起伏の大きいところは見当たりませんので、どこの山地からどれほどの量の土砂が流出すると想定しているのか説明していただきたい。
 (3)遊砂工が計画されている上流居辺橋の上流側は現在、砂礫の堆積により河道が大きく拡がっています。これはここで左岸から枝川が合流するため砂礫の運搬作用が減退するからです。このことは遊砂工が必要ないことを意味しています。異論があれば説明いただきたい。

6.「下流での河床浸食については、今後対応策を検討していきます。」とのことですが、いつ頃を目途に検討を終えるのか明らかにしていただきたい。
  

Posted by 十勝自然保護協会 at 16:42Comments(0)河川・ダム

2016年03月28日

北電の新得発電所建設計画環境影響評価方法書に意見書

 北海道電力が新得町の十勝川上流で進めている新得発電所建設計画の環境影響評価方法書に、当会と北海道自然保護協会は連名で意見書を提出しました。

新得発電所建設計画環境影響評価方法書への意見書

Ⅰ.方法書の不備について
 新得発電所建設計画環境影響評価方法書(以下、「方法書」)には、不備があるので指摘する。

1.「動物の注目すべき生息地」について
 方法書72頁の「ハ.動物の注目すべき生息地の概要」で、「動物の注目すべき生息地について既存資料により整理した結果、対象事業実施区域及びその周辺には確認されなかった」と記述しているが、これは事実誤認である。
 北海道の環境影響評価技術指針(以下、「技術指針」)には、動物の注目すべき生息地について以下のように記されている。
  
b 「植物」及び「動物」に区分される環境要素に係る選定事項
陸生及び水生の動植物に関し、生息・生育種及び植生の調査を通じて抽出される学術上又は希少性の観点から重要な種の分布、生息・生育状況及び重要な群落の分布状況並びに動物の集団繁殖地等注目すべき生息地の分布状況について調査し、これらに対する影響の程度を把握すること。
 
 つまり技術指針では「動物の集団繁殖地等」とし、集団繁殖地だけでなく注目すべき生息地の分布状況について調査することを求めている。
 事業者は「対象事業実施区域及びその周辺」について、方法書22頁で「対象事業実施区域及びその周囲における自然的状況及び社会的状況(以下「地域特性」という。)については、主な調査地域を対象事業実施区域の位置する新得町とし」としている。つまり、「その周辺」と「その周囲」と言葉の乱れがあるが、事業者は主な調査地域を新得町としている。
 したがって、事業者は新得町に動物の注目すべき生息地はないと主張していることになる。しかし、新得町にはシマフクロウ・ナキウサギ・イトウなどの注目すべき生息地があり、事業者の事実認識は間違っている。事実に即して修正しなければならない。

2.「植物の生育状況」について
 方法書73頁の「植物相の概要」は第3.1‐36表に高山植物が含まれていることからわかるように新得町全域を対象としている。しかし74頁の「植生の概要」は第3.1-16図から明らかなように新得町全域を対象としていない。つまり植物相と植生で対象範囲が異なっている。このように取り扱う理由をきちんと説明しなければならない。

3.「植物の重要な群落の概要」について
 方法書82頁で「植物の重要な群落について、既存資料により整理した結果、対象事業実施区域及びその周辺には確認されなかった」としているが、前述のように事業者は「主な調査地域を対象事業実施区域の位置する新得町とし」ているのである。新得町には国の特別天然記念物「大雪山」が所在し、ここには高山植物群落や高層湿原がある。さらに十勝川源流部には原生自然環境保全地域に指定された針葉樹林群落がある。これらの重要な群落を無視する理由を説明しなければならない。

4.「生態系の状況」について
 方法書83頁の「(3)生態系の状況」で、十勝川水系の河川の生態系の構成要素としてカゲロウ、トビケラ、ルリイトトンボ、エゾサンショウウオ、エゾアカガエル、ニジマス、ハナカジカ、カワガラス、ヤマセミ、オジロワシを挙げているが、十勝川上流の河川生態系においてシマフクロウやイトウが重要な位置を占めることは周知の事実である。つまりこの方法書には十勝川水系の河川生態系の重要な構成要素が欠落しているのである。したがってシマフクロウとイトウを記述するとともに、第3.1-17図食物連鎖模式図も改めなければならない。

Ⅱ.隠蔽の繰り返しについて
 十勝自然保護協会は2011年の新岩松発電所新設工事に際しての環境影響評価において、事業者である北海道電力がシマフクロウの生息事実を隠して手続きを進めようと画策したことを厳しく批判した。この批判を真摯に受け止めその後の環境影響評価に生かされることを期待したが、今回もシマフクロウとイトウの生息事実を隠蔽する方法書が作成された。このようなアンフェアな行為の繰り返は道民を侮るものである。自然環境に多大な負荷を懸けながら事業を行なっているということを肝に銘じ、事実を隠蔽することなく公正な環境影響評価をするよう求める。
以上
  

Posted by 十勝自然保護協会 at 22:45Comments(0)河川・ダム

2016年03月11日

居辺川砂防事業計画についての申し入れに対し帯広建設管理部から回答

 2015年8月17日付けの「居辺川砂防事業計画についての申し入れ」に対し、帯広建設管理部から以下の回答がありました。

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平成28年3月8日


十勝自然保護協会 様
十勝総合振興局長

2015年8月17日付け居辺川砂防事業計画についての申し入れ」の回答について

 日頃、北海道の建設行政の推進につきましては、格別のご理解とご協力をいただき、厚くお礼申し上げます。
 2015年8月17日付け申し入れのありました「居辺川砂防事業計画についての申し入れ」につきまして次の通り回答をいたします。

1 H15年のような被災への対策は、災害復旧事業により、旧東居辺小学校付近の護岸の強化、上流居辺橋の架け替えなどがなされており、すでに講じられていると考えるとの申し入について。
<回答>施工済みの工事は平成15年の災害により被災した施設の復旧工事が行われたにすぎず、災害発生の原因である土砂の堆積に対する抜本的な対策とはなっていません。そのために床固工や遊砂地を設置することで再度災害を防止する事業を実施します。

2 1号床固工については東居辺橋のすぐ上流の曲流部で水勢が弱まることから、床固工ではなく護岸工での対応を検討すべきであるとの申し入れについて。
<回答>河床低下を防止するためには河床勾配を緩くし、流速を落とす(水勢を弱める)ことが必要です。また、東居辺橋の保護のため、橋の直上流の土砂堆積を抑え、流向が東居辺橋の道路部に向かわないよう規制する必要もあることから、曲線部に土砂堆積を促す床固工が必要です。護岸工での対応では水勢が弱まらず、河道内の不安定土砂の扞止、河床低下防止を図ることはできないため、再度災害防止とはならないと考えます。

3 9~12号床固工区間の河床低下については、床固工だけに頼るのでは無く、明渠末端部分の流路幅を広げるとか明渠の出口を分岐させるなど洗掘の力を分散させることも検討されなければならないとの申し入れについて。
<回答>今までも説明していますが、柏陽橋上流は、床固工と併せて、河道拡幅、砂礫被覆を行うことで、河床低下防止を図ります。明渠末端部分の改良については、河床低下状況を確認し、必要かどうか今後検討していきます。

4 古期扇状地礫層からの砂礫供給箇所は限られており、区間Ⅱへの多量の土砂堆積が今後とも限りなく続く可能性は低い。朝陽橋~上流居辺橋の土砂堆積緩和対策としての遊砂地は必須ではないとの申し入れについて。
<回答>今までも説明していますが、区間Iより上流の源流部からの土砂供給は少ないが、区間Iでは、山地や河岸・河床の侵食により土砂が流出することから、区間Ⅱへの土砂堆積は続きますのでその対策として、遊砂地は必要と判断します。

5 居辺温泉付近から下流での河床侵食については、下流居辺橋のところの床固工に切り欠きを入れるなどの対策を要請するとの申し入れについて。
<回答>下流での河床浸食については、今後対応策を検討していきます。

 今後、川づくりワーキングでの、意見を踏まえ、事業計画を決定いたします。ぜひとも川づくりワーキングに参加していただき、ご意見を頂きますようお願いいたします。  
タグ :居辺川


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2016年02月09日

帯広建設管理部の当会への対応について知事に要望書を送付

 帯広建設管理部の「川づくりワーキング」に関わる当会への対応について、知事に以下の要望書を送付しました。

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2016年2月7日


北海道知事 高橋はるみ 様

十勝自然保護協会
共同代表  安藤 御史
        佐藤与志松

 
帯広建設管理部の河川行政についての要望


 当会は北海道の管理河川である居辺川と渋山川の河川整備について、2012年より帯広建設管理部と話し合いを重ねてきましたが、昨年来の帯広建設管理部の対応は公平公正を旨とすべき行政機関として看過できないものがあります。つきましては、下記に指摘する諸点について貴職から指導いただきたくお願いいたします。

1.帯広建設管理部は毎年度の「治水事業概要書」を各団体に送付し、不明な点があれば個別に対応することを方針としてきました。今年度もこの方針に沿って進められましたが、これまで話し合いを重ねてきた当会に事前の相談もなく、「不均衡が極力生じないように」などと意味不明の理由で「川づくりワーキング」なるものを昨年9月に立ち上げました。このように話し合いを続けてきた相手を無視して物事を進めることなどあってはなりません。

2.なぜ年度当初に川づくりワーキングの開催を周知しなかったのか質問したところ、「準備期間等時間を要したため、年度当初に提示することができませんでした。」と回答してきました。準備期間が必要なことは自明であり、年度当初に周知しないことの理由にはなりません。本当に年度当初にこの川づくりワーキングを計画していたのならば、すでに話し合いを重ねている当会に年度当初において知らせて然るべきであり、不誠実極まりない態度を改めるべきです。

3.居辺川では床固工を12基計画しているにもかかわらず6基で砂礫移動のシミュレーションを行ったことや切り欠きに流木等が詰まる可能性があることなどが当会との話し合いで確認されました。ところがこのことを川づくりワーキングで配布した説明資料には記載しませんでした。これは二枚舌の類であり、行政のとるべき態度ではありません。

4.川づくりワーキングの資料に記載されている河床覆礫工について質問したところ、「他の建設管理部で、河床低下部の埋戻し、帯工等の設置を行っている河川があります」との回答がありました。そこで河川名について質問したところ、「当建設管理部ではないことから、お答えすることはできません」との返答がありました。他管内でやっていることを知っているわけですから、河川名は容易に調べられるはずです。道民の質問を拒否するごとき不遜な態度を改めるべきです。

5.帯広建設管理部は「河道内での土砂堆積により流下能力が低下している状態」を河道閉塞だというのですが、これは「川をふさいで水の流れをせき止めることを河道閉塞」とする土砂災害防止広報センターの定義と異なります。そこで帯広建設管理部に出典を質問したところ、出典はないと回答してきました。すなわち帯広建設管理部は一般的に通用しない勝手な解釈のもと河道閉塞という言葉を使っているわけです。このようないい加減な用語の使用は道民に誤解を与え河川行政を混乱させることになり、やってはならないことです。

6.帯広建設管理部は川づくりワーキングの配布資料において、当会の2015年8月17日付申し入れを紹介しているのですが、勝手に曖昧な表現に変えています。すなわち当会が「すでに対策は講じられていると考える」と書いたものを、資料では「すでに講じられているのではないか」と疑問形に書き換えました。なぜ書き換えたのか質問したところ「要約した内容で説明しました」と回答してきました。文意を損ねる表現を要約だなどと詭弁を弄する態度は改めなければなりません。

7.当会は渋山川について2012年8月16日付で質問と申し入れをし、2012年11月29日付で帯広建設管理部から回答をもらいました。しかし、川づくりワーキングの資料にはこのやり取りが掲載されていませんでした。そこでなぜ掲載しなかったのか質問したところ、「今後のワーキングで説明をします」と的外れな回答をしてきました。道民の質問をきちんと向き合って答えるのが道職員のあるべき姿です。

以上

  

Posted by 十勝自然保護協会 at 15:10Comments(0)河川・ダム

2016年01月11日

川づくりワーキングの説明資料についての質問その2に対する回答

 2015年12月17日付けの「『第1回北海道の河川管理の川づくりワーキング』での説明資料についての質問 その2」に対し、帯広建設管理部より以下の回答がありました。

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平成28年1月8日


十勝自然保護協会 様

十勝総合振興局 帯広建設管理部長


「第1回北海道の河川管理の川づくりワーキングでの説明資料についての質問その2」の回答について

 日頃、北海道の建設行政の推進につきましては、格別のご理解とご協力をいただき、厚くお礼申しあげます。
 平成27年12月17日付けでご質問のありました「第1回北海道の管理河川の川づくりワーキングでの説明資料についての質問その2」につきまして回答をいたします。
 質問1について、明確な出典はありません。そのような表現といたしましたので、ご理解ください。
 質問2について、当建設管理部ではないことから、お答えすることはできません。
 質問3,5,6について、今後のワーキングで説明をします。
 質問4について、要約した内容で説明をいたしております。
 最後に、今後もご質問や貴重なご意見があると思いますので、是非とも川づくりワーキングへの参加をご検討ください。


  


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2015年12月28日

川づくりワーキング説明資料についての再質問に対する回答

 12月13日付けの当会の「2015年11月30日付回答についての質問」に対し、帯広建設管理部より以下の回答がありました。

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平成27年12月25日


十勝自然保護協会 様

十勝総合振興局 帯広建設管理部長


「2015年11月30日付回答についての質問」の回答について


 日頃、北海道の建設行政の推進につきましては、格別のご理解とご協力をいただき、厚くお礼申し上げます。
 平成27年12月13日付けでご質問のありました「2015年11月30日付回答についての質問」につきまして回答をいたします。
 質問1について、10月5日の話し合いや、その後4回のご質問・回答でお答えしているとおりです。
 質問2・3について、準備期間等時間を要したため、年度当初に提示することができませんでした。今年度から、開催になったことについて、ご理解ください。
 質問4について、言葉に、間違いがあったかもしれませんが、説明の行き違いが無いようにという意味ですので、ご理解ください。
 最後に、今後もご質問や貴重なご意見があると思いますので、是非とも川づくりワーキングへの参加をご検討ください。
  


Posted by 十勝自然保護協会 at 16:09Comments(0)河川・ダム