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2015年12月11日

然別湖北岸の風倒地の扱いについて要望書を送付

 然別湖北岸の風倒被害の取扱について、11月2日付けの十勝西部森林管理署東大雪支所からの回答を受け、北海道森林管理局と十勝西部森林管理署東大雪支署に以下の要望書を送付しました。

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2015年12月8日


北海道森林管理局長 様
十勝西部森林管理署東大雪支署長 様

十勝自然保護協会
 共同代表 安藤 御史
     佐藤与志松

然別湖北岸の風倒地の取り扱いについての要望


 2015年10月上旬の低気圧と台風23号によって然別湖北岸野営場の道道85号沿いの国有林で比較的規模の大きい風倒地が出現したことから、ここの取り扱いについて2015年10月25日付け文書で東大雪支署長に質問しました。
 東大雪支署長からは2015年11月2日付で「今後の取扱いについては、当方としても天然更新を期待し、かつ、法令等に則った適切な管理を行ってまいります。」との回答がありました。
 森林管理の地元の責任者から、天然更新を期待しているとの表明があったことを当会は評価しておりますが、念のため、当該地を天然更新に委ねることの妥当性について当会の考え方を伝えておきます。
 1.当該地の林床には多くの稚樹・幼樹があります。このことは学術論文でも報告されています(丸山ほか,2004.北海道の針葉樹林におけるトドマツ・エゾマツ実生の定着に対する林床植生とリターの阻害効果. 日本生態学会誌54(2) 105-115)。
 これに関連し、注目すべき報道がありました。2015年5月10日のNHKニュースは次のように伝えておりました。
 「トドマツの生産コストを減らすため北海道森林管理局は伐採した後の山林で植林や下草刈りをせずに自然に林を回復させる試みを今年度から行うことになりました。78万4000ヘクタールと道内の人工林の半分以上を占めるトドマツの多くはこれから伐採期に入ります。北海道森林管理局によりますと、人工林を伐採したあとには植林もあわせて行うことになっていますが、費用をいかに減らせるかが課題となっているということです。最近の研究で、トドマツは自生する力が強く日陰でもよく育つことから伐採した後に植林や下草刈りをしなくても林が自然に回復する場合が多いことがわかってきました。このため森林管理局は、どのような条件であれば植林しなくても林が自然に回復するのか、今年度から本格的な調査を行うことにしました。伐採した後の林を自然に回復させると生産コストの最大4割ほどを軽減できるということで、北海道森林管理局は『すべてのトドマツの林でこの方法が採用できるかはまだわからないが、このやり方が実現すればコスト削減の上で画期的な方法になる』と話しています。」
 つまり北海道営林局は一般的に天然林より後継樹が乏しいトドマツ人工林においても自然回復を期待するというわけです。この方針に沿うなら後継樹が多くある当該地での植栽が必要ないことはいうまでもありません。
 2.風倒木を林外に運び出し地拵えをして植林すると、エゾシカの行動が自由となり、植栽木などが食害を受ける可能性が高くなります。つまり意図した成林は困難となります。
 3.2013年に鹿追町は日本ジオパークに認定され、風穴などの然別湖周辺の自然現象を学習する場の提供に努めていると聞いています。北海道の針葉樹林は太古より台風による攪乱と再生を繰り返してきたと思われます。したがって風倒跡地が森林へと再生する過程を観察することは有意義なことでしょう。当該地は野営場にも近くアクセスが容易であることからジオパークの学習の場としても活用されるべきだと考えます。

 国立公園の森林管理者として忘れてはならないことがあります。2004年の台風により発生した幌加とタウシュベツの風倒地の処理が自然保護の観点から大問題となったことです。2008年6月に札幌市で開催されたシンポジウムで、現地を訪れた海外の著名な生態学研究者がタウシュベツでの風倒木処理を厳しく批判したことが新聞で大きく報道されました。このような批判を受ける愚行を繰り返してはなりません。このことを肝に銘じ、自然の摂理にかなった森林の回復を目指していただきたく要望いたします。
 なお、当該地の風倒処理の方針が決まりましたら、当会にもお知らせいただきたくお願いいたします。
以上

  

Posted by 十勝自然保護協会 at 09:51Comments(0)森林伐採

2015年11月05日

風倒被害について十勝西部森林管理署からの回答

 10月25日付けの当会からの質問について、以下の回答がありました。

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平成27年11月2日


十勝自然保護協会
 共同代表 安藤 御史  様
      佐藤 与志松 様

十勝西部森林管理署 
東大雪支署長

低気圧および台風により発生した風倒地の取り扱いについて


 初冬の候、貴協会におかれましては、ますますご清栄の事と存じます。
 さて、平成27年10月25日付けで照会がありました件について、下記のとおり回答させていただきます。



1について
 10月上旬における低気圧及び台風23号の影響により、東大雪支署管内においても風倒木等が発生しており、森林の被害状況の把握に努めているところですが、林道にも被害が発生しているため、その復旧を重点に対応しているところです。
 なお、今後、積雪状況により林道の通行ができなくなることから、今年度中の風倒木発生概要の把握は困難と考えております。

2について
 森林の被害状況については、前述のとおりであり、現時点において、規模の大小の判断は困難と考えております。

3について
 然別北岸野営場付近の道道85号(鹿追糠平線)沿いの風倒木等の被害発生についての報告は受けており、現地の詳細な状況を把握したいと考えておりますが、今後の取扱いについては、当方としても天然更新を期待し、かつ、法令等に則った適切な管理を行ってまいります。
 なお、然別北岸野営場内おいても風倒木等の被害が発生しており、これら被害木については、野営場の維持管理及び利用者の安全確保の観点から、次年度に処理することで検討しております。

  

Posted by 十勝自然保護協会 at 14:15Comments(0)森林伐採

2015年10月27日

風倒地の取り扱いについて十勝西部森林管理署に質問書を送付

 10月上旬の低気圧と台風により十勝西部森林管理署管内の国有林で比較的大規模な風倒被害が発生したため、風倒地の扱いについて以下の質問書を送付しました。

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2015年10月25日


十勝西部森林管理署東大雪支署長 様

十勝自然保護協会
 共同代表 安藤 御史
     佐藤与志松

低気圧および台風により発生した風倒地の取り扱いについて


 今月上旬の低気圧と台風23号により、貴支署管内においても風倒木が発生したことと存じます。当会も然別湖北岸野営場の道道85号沿いに比較的規模の大きい風倒地があることを確認しております。
 ついては、貴職に以下の質問をいたします。ご多忙のところ恐縮ですが、11月5日までに文書にて回答いただきますようお願いいたします。

1.東大雪支署管内における低気圧と台風23号による風倒木の発生概要について説明してください。
2.このうち規模の大きい風倒地とみなしている地点について明らかにしてください。
3.然別湖北岸野営地の道道85号沿いの風倒地について、当会は後継樹が多くあることから天然更新を期待すべきと考えておりますが、貴職の取り扱い方針について明らかにしてください。
以上



  

Posted by 十勝自然保護協会 at 16:10Comments(0)森林伐採

2010年09月11日

大雪山・日高山脈森林生態系保護地域設定案の問題点

 大雪山系から日高山脈にかけての森林生態系保護地域等を拡充する設定案について、9月6日開催の設定委員会(辻井達一座長)は、妥当との答申をしたとのことである。本当に妥当なのだろうか。まずこの設定案の問題点を指摘した意見書を北海道森林管理局に提出した当会理事の文書を掲載する。

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森林生態系保護地域等の設定案に対する意見

 設定案の問題点
 北海道森林管理局(以下、管理局)は、森林生態系保護地域の拡充案作成にあたって、まず希少種等の生息・生育が期待される潜在性(ポテンシャル)が高いと評価される区域を検討対象国有林から選び出し、ここから森林生態系保護地域に指定するための基準(「我が国の主要な森林帯を代表する原生的な天然林の区域であって、原則として、1,000ヘクタール以上の規模を有するもの」と「その地域でしか見られない特徴を持つ希少な原生的な天然林の区域であって、原則として500ヘクタール以上の規模を有するもの」)に合致するところを森林生態系保護地域に設定したという(第1回森林生態系保護地域等設定委員会配布資料1による)。
 このような手順によってできた設定案は、指標としていたはずの希少種であるクマタカとシマフクロウの潜在的繁殖域がほとんど含まれず、クマゲラの潜在的繁殖域がわずかに含まれる程度のものとなってしまった。
 また設定方針として「森林生態系保護地域は、上記ポテンシャルが高いと評価された区域を踏まえるとともに、原生的な天然林の区域において、脊梁部等の高山帯から比較的標高の低い森林、あるいは、針葉樹林や広葉樹林等多様な森林生態系を包括的に保護できるように設定」するとしていたのだが、設定案にはほとんど反映されていない。
 このようにお粗末な設定案となったのは、標高1000m以上の高標高域の森林帯を指標に入れたことと1,000ヘクタール以上の原生的天然林という1991年の基準に拘泥したためである。
 このように管理局が提出したこの設定案には、生物多様性保全の観点から大いなる欠陥があるということを、まず指摘しておく。

 設定案作成のあり方
 今回の森林生態系保護地域の見直しの端緒は、1993年の生物多様性条約の批准を受けて、2001年に森林・林業基本法を制定し、その第二条で自然環境の保全を規定したことにあると理解すべきである。このような理解に立てば、原生的天然林の面積にこだわるのではなく、絶滅危惧種の危機回避の方策としての森林生態系保護地域の拡充が検討されることになる。そして希少種等の生息・生育が期待される潜在性(ポテンシャル)が高いと評価される区域を標高や原生的な天然林の面積基準で切り捨てることなく設定できるのである。
 管理局が標高1000m以上の高標高域の森林帯を設定案作成の指標としたのは、これまでの過剰伐採により標高1000m未満では原生的天然林がほとんどなくなってしまったからである。管理局は、かつて成長量に見合った伐採をしていたと言っていたのだが、もはや北海道における天然林の過剰伐採の事実を覆い隠せなくなってしまった。
 このように大雪山国立公園の森林も伐採による撹乱をうけてしまったが、蓄積量の減少した林分も時間の経過によって原生林に近い状態に回復する潜在性(ポテンシャル)はある。そこで、1991年の基準を見直し、生物多様性保全という新たな基準によって森林生態系保護地域を設定すべきである。

 望まれる設定案
 大雪山系(ここでは大雪山国立公園のエリアとする)における森林生態系保護地域を設定するに当たってまず着目しなければならないのは、この地域の森林生態系を象徴する生物種が何かということである。
 脊椎動物でいうならミユビゲラ・キンメフクロウ・ミヤベイワナであろう。ミユビゲラ・キンメフクロウは、わが国では大雪山系でのみ繁殖が確認されている北方針葉樹林の鳥類であり、またミヤベイワナは然別湖とその流入河川にのみ生息し、ここで固有化しつつある魚類である。
 これら3種の生息域や潜在的繁殖域が森林生態系保護地域に含まれてこそ生物多様性保全の実があがるのである。しかし今回の設定案にはこれらの種の生息域や潜在的繁殖域がほとんど含まれていない。例えば、キンメフクロウの繁殖記録地の一つは、上士幌町幌加の国道273号の東側に位置しているが、ここは大雪山国立公園内であるにもかかわらず今回の設定案では検討対象国有林にさえなっていない。
 大雪山系森林生態系の象徴種を保全するための方策として、森林生態系保護地域を設定することが今日の社会の要請に見合った対応である。このことを踏まえ、今回の設定案を根本的に見直すことを求める。
  


Posted by 十勝自然保護協会 at 22:40Comments(0)森林伐採

2010年09月04日

ミユビゲラ保護対策を要望

 7月29日付け毎日新聞は、2006年に大雪山国立公園でエゾミユビゲラが確認されたことを報じました。これを受けて、当会も加盟する北海道自然保護連合は、農水大臣・環境大臣など関係機関にエゾミユビゲラ保護のための対策を求め、9月3日付けで下記の要望書を提出しました。

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エゾミユビゲラの生息確認に伴う大雪山国立公園での森林施業の

あり方についての要望


 7月29日付け毎日新聞は、エゾミユビゲラが大雪山国立公園の南部で確認されたことを報じました。このことについては貴職もすでにご承知のことと存じます。
 エゾミユビゲラは1942年に大雪山国立公園の十勝三股で風倒被害の調査が行なわれた際に発見され、1956年には同地でわが国初の繁殖も確認されました。その後、旭岳山腹でも目撃されましたが、1988年の十勝三股での目撃を最後に生息情報が途絶えていました。そしてこのほど、18年ぶりに生息が確認されました。今回の確認で注目しなければならないのは、本種の生息域が大雪山国立公園の十勝三股・幌加および旭岳の2地域から大きく広がったということです。
 今日、環境問題が人類にとって喫緊の課題となっています。このためわが国は、1993年に生物多様性条約締約国となりました。生物多様性条約は、生物の多様性の保全、つまり生態系や生息地を保全することを目的としています(同条約第1条)。わが国がこの条約を締約したということは、行政にとって生態系や生息地の保全が責務になったということであり、自然保護の枠組みのなかで開発行為をしなければならないということを意味します。このような認識については、貴職も異存ないことと思います。
 同条約第6条は、生物の多様性を保全するため、国家的な戦略あるいは計画を作成することと、部門別あるいは部門にまたがる計画や政策に生物の多様性の保全を組み入れることを義務づけています。このため政府は1995年に生物多様性国家戦略を、2002年に新・生物多様性国家戦略を、2007年に第三次生物多様性国家戦略を、そして今年生物多様性国家戦略2010を策定しました。
 林野行政においても1996年に林野庁から「自然保護等公益的機能の発揮をめざした森林施業の推進について」との通達が出され、2001年にこれまでの林業基本法を変えて森林・林業基本法を制定し、その第二条に自然環境の保全を規定しました。そして新・生物多様性国家戦略では「国有林においては、野生動植物の生息・生育環境の保全等自然環境の維持・形成に配慮した適切な森林施業を推進する」と明記しました。
 また国立公園行政については、自然公園法第3条に国や地方公共団体の責務として「生態系の多様性の確保と生物の多様性の確保」が加えられました。これまでの自然公園法は保護と利用がなかば対等に位置づけられていましたが、2003年4月からは生物多様性の確保つまり保護が前提となり、その枠内での利用が許されるということです。つまり生物多様性を損なう国立公園内での森林伐採は許されないということを意味します。新・生物多様性国家戦略でも「自然環境保全地域や国立国定公園等は、わが国における生物多様性保全施策の骨格をなすものといえます。これらの地域では、生物多様性の保全に向け、より一層の施策の強化を図ります」と明記しました。
 このような国内外の生物多様性保全の流れを踏まえ、貴職に以下の要望をいたします。

1.事前調査の実施について
 諸文献からミユビゲラは、北方針葉樹林、タイガを主な生息地とするキツツキであることが明らかになっています。現在のところ、わが国においては、北海道中央部の針葉樹林帯においてのみ生息が確認されていますが、これは旧北区の中緯度の山岳針葉樹林に分布する隔離個体群の一つとみなされます。大雪山国立公園の針葉樹林帯はわが国では最大の規模ですが、ミユビゲラの生息地としては、極めて狭小といえるでしょう。このことはエゾミユビゲラ個体群の存立基盤が脆弱である可能性が高いことを示唆します。
 今回の確認により本種の生息域が大雪山国立公園の全域に広がったことから、脆弱な個体群であるエゾミユビゲラの保護に当たっては、大雪山国立公園全体の森林での施業に細心の注意を払う必要があるということです。したがって、施業にあたっては事前に生息確認調査をすることを要望いたします。

2.風倒木・枯損木の処理について
 風倒木が発生すると、国立公園においても森林害虫防除を名目にこれまで風倒木処理がなされてきました。近年では、大雪山国立公園の幌加地区での風倒木処理がマスコミでも大きく取り上げられました(北海道新聞2008年6月19日付けなど)。
 しかし、風倒木の発生がきわめて自然な現象であることは論を待ちません。北海道の森林がいつから今日のような林相になったかはまだ十分明らかではありませんが、この間多く風倒木が発生してきたと推測されます。しかし、ここ百年の和人による略奪林業が進行するまでは良好な森林が維持されてきました。このことは風倒に伴う穿孔性昆虫の発生が森林の二次的崩壊をもたらさなかったことを示しています。
 風倒木の発生が太古から続いてきた現象であることから、生態系にとって意味のあることと考えられます。風倒木は、多くの場合、穿孔性昆虫のハビタットとなります。この穿孔性昆虫がキツツキ類にとって重要な意味を持っています。北海道森林管理局がクマゲラの採餌木を残すとの方針を打ち出したのもこのことを根拠にしています(北海道新聞2006年2月20日付け夕刊および4月26日付け朝刊)。
 1942年のエゾミユビゲラの発見は十勝三股における風倒被害調査によるものでした。また1988年の確認は、風倒に起因する採餌木で観察されたものです。今回の確認の詳細は不明ですが、風倒発生地ないしその周辺に出現したようです。このようなことから、エゾミユビゲラにとって、風倒木や枯損木は重要な意味を持ちます。したがって、大雪山国立公園における風倒木や枯損木を基本的に残置することを要望します。

3.エゾマツ(エゾトウヒ)の保存およびエゾマツ林の復元について
 ヨーロッパの文献によると、ミユビゲラはトウヒ属種からなる森林を好むとされています。トウヒ属種は北海道ではエゾマツ・アカエゾマツ(アカエゾトウヒ)ということになります。これらの樹木は材質の良さから選択的に伐採され、またエゾマツについては更新の難しさのため、アカエゾマツについては生育立地の特殊性のため、今日著しく個体数が減少しています(因みに十勝三股で1940年代に本種が採集された地点は、現在ルピナスが咲き誇る集落跡地周辺です)。つまりエゾミユビゲラの生存基盤が急速に失われているといえるでしょう。したがって、トウヒ属種の伐採は慎重に行うとともにエゾマツの優占する森林の復元に力を尽くすことを要望いたします。

4.大雪山森林生態系保護地域の見直しについて
 北海道森林管理局では生物多様性保全の観点から、現在、大雪山森林生態系保護地域の見直しを進めています。前述したことからも分かるようにエゾミユビゲラは大雪山森林生態系における象徴種(フラッグシップ・スピーシーズ)といえます。しかし、現在提案されている大雪山森林生態系保護地域の設定は、エゾミユビゲラの保全を考えるうえで、十分ではありません。特に針葉樹林帯の指定が不十分ですので、今回のミユビゲラの確認を機に大きく見直すことを要望いたします。また、大雪山国立公園に生息する絶滅危惧種はミユビゲラだけではありません。生物多様性保全を実効あるものにするとの観点から大雪山国立公園の天然林における伐採の中止を検討するよう要望いたします。

 以上の要望について、貴職の見解を文書で明らかにしていただきますようお願いいたします。
以上

  


Posted by 十勝自然保護協会 at 22:38Comments(0)森林伐採

2009年05月01日

「新たな森林環境政策」(素案)に対する意見

北海道は「新たな森林環境政策」(素案)に対する意見を募集していましたが、当会の提出した意見を公開します。

1 新たな森林環境政策の必要性について
(「Ⅰ森林をめぐる現状と課題」、「Ⅱ新たな森林環境政策の必要性」、「Ⅲ新たな森林管理の仕組み」について)

「Ⅰ森林をめぐる現状と課題」について
 「国有林、道有林では、・・・・・公益的機能の発揮に重点を置いた森林づくりを進めています」と書いているが、実態は保安林に指定された天然林で過剰な伐採が行なわれて生態系が大きく破壊され、乱暴な伐採によって土壌が撹乱されて河川の生態系にも悪影響がでている。たとえば、えりもの道有林では受光伐の名目で皆伐が行なわれたことで「えりもの森裁判」が起こされ、これによってさまざまな違法伐採疑惑が明らかになってきたが、被告の北海道は真実に眼を背け疑惑の否定に終始している。また国有林でも上ノ国町のブナ林で違法伐採が行なわれたほか、大雪山国立公園の特別地域内で風倒木処理の名目で皆伐が行なわれて大きな問題となった。足寄町ではナキウサギの生息地が施業によって破壊された。このように公益的機能の発揮と逆行する施業が営々と行なわれている。大雪山国立公園の森林を上空から見れば、「国有林」で公益的機能の発揮に重点を置いた森林づくりが進められていたかどうかは、一目瞭然である。「国有天然林を、すべて林野庁より環境省へ移管する請願署名」が10万筆に迫ろうとしている現在、「国有林が公益的機能の発揮に重点を置いた森林づくりを進めています」という文言は、その現実認識の欠如ゆえに、日本の森林の未来を憂慮している人々の激しい反発を招くものであることを知るべきである。公正な視点から国有林の実態を直視し、収奪的林業のあやまちを謙虚に反省しなければ、道有林行政への信頼は得られないことをまず指摘しておく。
 「本道の過去20年間の台風等による災害発生」が図示されているが、説明不足であり、不適切である。なぜなら、災害発生件数は開発域の拡大との関連から検討されなければならないからである。
 「3森林づくりの課題」の一番目に、伐採面積が植林面積を上回っているから安定的な木材の供給体制を構築する必要があるとされている。つまり、今回の政策でいうところの「森林づくり」とは林業振興であることを示している。これまで環境を破壊しつづけてきた林業が環境政策に寄与できるとは信じがたいということを指摘しておく。
 【手入れが遅れている森林】については、5行190字あまりに句点が1個という悪文になっている。道民の立場を考えわかり易い文としなければならない。
 「重視すべき公益的機能を発揮させるための適切な整備を進める必要があります」としているが、意味不明であり、わかりやすく説明しなければならない。

「Ⅱ新たな森林環境政策の必要性」について
 「公益的機能の発揮に支障が生じる前に」は意味不明であり、具体的に説明しなければならない。

「Ⅲ新たな森林管理の仕組み」について
 「本道の豊かな森林環境を保全し」とあるが、放置された人工林間伐が豊かな森林環境保全とどのように結びつくのかはっきりと説明しなければならない。前述のように林業が豊かな森林環境を築いたという事実をわれわれは知らないからである。

2 新たな森林環境政策で進める取組について
 (「Ⅳ新たな森林環境政策の仕組み」の「2新たな森林環境政策の仕組み」の各項目について)

(1)人工林の間伐、無立木地への植林について
 対象森林である私有林について、所有者の人数や、個々の所有面積・規模などの統計が明らかでない。つまり、どのくらいの山林を所有する、何人くらいが、「政策」の直接の受益者なのかが不明である。法人所有の森林についても同様に不明である。
 「居住地や道路、河川周辺にある森林を対象」とのことだが、そのような森林がどこにどの程度あるのか、具体的に示さなければこの事業の適否を判断できない。
 スギ林業に習い高密度にカラマツを植栽してきたわけだが、成長をうながし、二酸化炭素の吸収を高めようとするなら間伐が欠かせないのは当然である。今後は高密度植栽を見直さなければならない。
 「無立木地」などと一般に馴染みのない用語を使っているが、なぜ無立木地になったかをまず明らかにしなければならない。その上でそこにカラマツあるいはトドマツを植栽することが適切なのか、問わなければならない。
 カラマツやトドマツなどの単一樹種から成る人工林は、病害虫や風倒被害に弱いなどさまざまな問題点を抱えている。また、森林の公益的機能とは地球温暖化問題に関わる二酸化炭素の吸収の役割だけではない。災害の防止、生物の生息場所となるほか、地域住民の憩いの場を提供するなど様々な機能がある。森林環境政策を考えるにあたっては、このような様々な公益的機能を考える必要があり、従来の単一樹種の一斉林からなる人工林から、より天然林に近づけた森林での木材生産を行なうようにしなければならない。したがって、立地によっては潜在自然植生を復元すべきである。
 森林所有者に対し、協定違反があった場合には、税投入相当額の返還を義務付けるとのことだが、投じた時間もエネルギー(=二酸化炭素の排出)も取り返せないし、インフレが進行したなら税投入相当額は過小なものとなる。また、公的資金の投入を受けて林地の価値が上昇した時点で転売し、収益を上げるなどの行為も考えられる。したがって、個人所有林にこのような制度を導入することは不適切であるということを指摘しておく。

(2)1人30本植樹運動について
 単に樹をたくさん植えればいいというものではない。何のためにどのような森づくりをするかという目的やビジョンを明確にしたうえで、森林生態系を重視し、正しい知識のもとに森づくりを目指すべきである。「生態学的混播法」とか「かみねっこん」などいかがわしい緑化をしてはならない。なお、1人30本などと植樹の目標本数を掲げるのは愚かしいことであり、やめるべきである。
 屋上緑化や壁面緑化などに植栽した場合の植物の所有権について説明の必要がある。

(3)地域に根ざした森林環境保全活動について
 ここで謳っているのは自然破壊をいかに食い止めるかという問題である。現在の自然破壊の大半は、生態系や生物多様性の保全を無視した過剰な森林伐採、道路やダム建設など無駄な公共事業によってもたらされている。まずはこのような伐採や公共事業を行なってきたことを行政が反省し、改善するとともに、自然破壊をともなうこれらの工事を即刻中止すべきである。とりわけ人目につかない山奥で進められる、大規模な自然破壊をともなう「山のみち」(大規模林道)に、これ以上の道税を支出することは止めるべきである。
 「里山をはじめとする道民生活に身近な森林の荒廃」とあるが、「里山」の大半はカラマツなどの人工林と皆伐後放置された二次林であり、「森林の荒廃」がどういう状態をさしているのか理解しかねる。具体的に荒廃状態を説明しなければならない。

(4)森林づくりに対する道民意識の醸成について
 北海道には百数十年前には多様な生物を育む豊かな天然林があったが、その大半は急速に失われてしまった。私達は失われた本来の森林を復元することを目指さなければならない。そのためには、植樹や木育だけでは不十分である。里山など身近なところに本来の森林を復元させるような自然の理にかなった森づくりをし、時には天然林の生物多様性を垣間見る体験などで道民の関心を喚起することも、生物多様性条約の締約国である我が国の自治体の責務である。
 森林ボランティア団体の活動を支援するのに、市町村と連携しなければならないというのは理解しかねる。行政がボランティア団体をコントロールしようと意図しているならば愚かなことである。

3 新たな森林環境政策の財源と(仮称)森林環境税制度の導入について
(「Ⅳ新たな森林環境政策の仕組み」の「3多様な財源の活用」及び「4財源需用額」、「Ⅴ(仮称)森林環境税制度の概要 」の各項目について)

 「公益的機能の発揮に支障が生じる前に整備を進めるためには」とあるが、意味不明であり、具体的に説明すべきである。
事業費を記載しているが、その積算根拠を示さなければ、額の妥当性を評価できない。
 年間100万本の植樹・育樹活動とあるが、これは何年実施することを想定しているのか、不明である。
 「新たな森林環境政策は、森林の公益的機能の維持・増進を目的としている」と謳ってはいるものの、「その恩恵はすべての道民が等しく享受します」という実感を得ることは、このままでは困難であり、不公平感がぬぐえない。
 事業費111億円の70%にあたる77.6億円が私有林の間伐・植栽に使われるということである。個人の財産である私有林の整備のため、環境問題にかこつけて税金を徴収するのは道民を愚弄するものである。森林整備に税金を投入するのであるから、従来のように補助金などを当てるべきである。もしどうしても再提案したいというのなら、政策の実態に合わせて「私有林振興税」と銘打って提案し、道民の判断を仰ぐべきである。

4 新たな森林環境政策の透明性の確保する仕組みについて
 前項と同じ

5 その他
 すでに多くの問題点を指摘してきたが、改めて十勝自然保護協会の見解を述べる。
北海道の天然林が木材生産のために乱伐されたことで、かけがえのない原生的な森林がほとんど失われてしまった。森林環境政策を考えるなら、まずこのような林業の過ちを反省しなければならない。また、木材生産のためには人工林は必要不可欠であるが、これまでのような単一樹種による人工林のあり方の見直しも必要である。さらに、林業が低迷した原因を把握して建て直しを図らない限り、林業の発展は望めない。これらを棚にあげた森林環境政策は、行政の失敗を道民に押し付けることにほかならない。対処療法的に新たな税金徴収によって問題解決を図ろうとするのは筋違いである。よって当会は今回の提案に反対する。
 過去を反省できない民族に未来は語れないといった賢者の言葉をかみしめ、林業の未来を考えてもらいたい。
  


Posted by 十勝自然保護協会 at 14:33Comments(0)森林伐採

2008年11月01日

青空裁判で出てきた驚くべき資料

 31日の「えりもの森裁判」の野外裁判で、被告の北海道が配布した資料を見た原告は、そこに添付されていた小班、伐区、皆伐地の平面図を見て驚いた。裁判で対象としている10伐区の形が、これまで原告が情報公開で取り寄せた図と異なっているのだ。

 ひとつは一番北側の皆伐地である。情報公開で取り寄せた図より大きく西側に広がっている。ちょうど皆伐地にあわせて線引きをした形になっている。それともう一箇所、変わっている部分がある。

 10伐区の大半は林道の東側なのだが、不思議なことに中央付近の一部が西側に出っ張っているのだ。この部分も伐採が行なわれたところだ。

 これは何を意味するのか?

 本来、収穫調査を行うときには現場で伐区の範囲を確認し、その中で調査木を選ぶのである。だから、きちんと伐区の範囲が確認され、その中で収穫調査が行われていれば伐区を越えて伐採することはない。

 ところが、実際には伐区をはみ出る形で収穫調査が行われ、それに基づいて伐採されたのではなかろうか? 越境伐採である。普通ならそのような誤りが起こっても、公になることはまずないだろう。ところがこの現場では違法な伐採が行なわれたとして裁判になってしまったのだ。このままでは越境伐採が発覚してしまうと考えた被告が、伐区の境界線を伐採の実態に合わせて修正したのではなかろうか?

 もしそれが事実であるなら、これまで指摘してきたさまざまな疑惑に、さらに越境伐採の疑惑が加わることになる。

 これについては今後の裁判の中で明らかにされることになるだろうが、調べれば調べるほど疑惑が増えていくことに驚くばかりだ。

(M記)

  


Posted by 十勝自然保護協会 at 19:36Comments(2)森林伐採

2008年11月01日

えりもの森青空裁判傍聴記その2 

森林教育必要な「森づくりセンター」




 活力の衰えた老齢なトドマツを主体とする天然林を、水源涵養機能の高い活力のある森林にするために全面的に伐採し、後継林をつくるためトドマツの苗木を植えた。この施業を「森づくりセンター」では「受光伐」だといっています。

 さて、この世間では聞きなれない受光伐ですが、林業関係者の参考書(「森林・林業・木材基本用語の解説」北海道森林改良普及協会編)によると、受光伐というのは、漸伐(ぜんばつ)作業の一過程であるといいます。

 漸伐作業とは、「天然下種更新を前提として、成熟木を数回にわけて伐採し収穫する方法のこと。収穫と平行して天然更新が行なわれ、母樹の保護のもとで稚樹が成育される」とあります。そして、漸伐の一連の過程は、予備伐・下種伐・受光伐・終伐(殿伐ともいう)からなるというのです。

 予備伐については説明がありませんが、下種(かしゅ)伐とは、「母樹からの下種(種子の落下)を促し、稚樹の発生を図ることを目的とする上木の一部伐採のこと。稚樹が上木の保護を必要としない程度に発育したなら上木を伐採する」とあり、そして、受光伐とは、「稚樹の成長を図り更新を促すために、上木をすかす伐採のこと。この後終伐で最終的な収穫を行い、更新が完了する」とあります。ついでに皆伐の項をみると、「樹木の伐採を設定した区域で、立木の全部または大部分を一斉に伐採すること」とありました。

 今回の森づくりセンターが行なった伐採は、何回読み返しても漸伐作業にも、その一過程である受光伐にも合致しません。合致するのは「皆伐」です。また「北海道林業技術者必携」によると、漸伐つまり受光伐をする要件は、「下層には、後継林分となるに十分な量と大きさをもった稚樹が存在すること」だというのです。

 どうやら「森づくりセンター」は、これまでの伐採理論も知らず、「皆伐」して植栽し、苗木に陽光を当てることが「受光伐」だと思い込んでいるようです。この程度の森林知識ではとても税金で森づくりを任せるわけには行きません。森づくりセンターには森林教育が必要なようです。(X記)

  


Posted by 十勝自然保護協会 at 09:47Comments(0)森林伐採

2008年11月01日

えりもの森青空裁判傍聴記その1 

森をつくれない「森づくりセンター」

 えりも町の道有林の伐採の違法性をめぐって裁判が行われていますが、今回は、裁判所が現場へ出向いて被告の道有林側と原告、双方の見解を聞く青空裁判が行なわれました。

 現地での道有林課の浜田氏の説明によると、活力の衰えた老齢なトドマツを主体とする森林を、水源涵養機能の高い活力のある森林にするため受光伐と称して全面的に伐採し、トドマツの苗木を植えたといいます。




 植栽されたトドマツの様子が遠目にも尋常ではありません。よくみると樹形が盆栽状になっているのです。それも植栽木の一部というわけではありません。すでに枯れてしまった徒長苗のトドマツを除き、ほとんどの植栽トドマツが盆栽状なのです。

 皆伐により林床の草本が繁茂してシカを誘引し、シカがトドマツの苗木を採食したため、このような盆栽状となった、と原告が裁判長に説明しました。すると道有林課の浜田氏はとっさにそれは間違いですと言い放ち、この苗木はシカの採食ではなく、遅霜によるものです、とおっしゃった。周囲からは、食害と霜害の区別もつかないのか、と失笑がもれました。

 さて、この盆栽状のトドマツ、何年したら浜田氏のいうところの「水源涵養機能の高い活力のある森林」になるのでしょうか。

 シカの個体数密度が現在のレベルで推移したなら、この植栽地はトドマツ「盆栽林」になることはあっても、「水源涵養機能の高い活力のある森林」になることはないでしょう。

 今日、北海道で森づくりにかかわる人間にとって、シカの食害対策を考えて森づくりに取り組むことは常識です。シカのことを考えずに皆伐し植栽した北海道森づくりセンターの知恵足らずぶりには驚くほかありません。森をつくれない「森づくりセンター」に存在意義はあるのでしょうか。(X記)
  


Posted by 十勝自然保護協会 at 09:43Comments(0)森林伐採

2008年10月31日

えりもの森で・・・青空裁判

今日、「えりもの森裁判」で問題になっているえりもの森の現場に裁判官・原告・被告が集合した。
今回は裁判で問題にされている場所・・・「えりもの森」で行われたのです。
現地を視察しながら、原告・被告がそれぞれの主張をより具体的に裁判官に伝えることができる画期的な企画でした。

えりもの森裁判は、3年前から続いている。えりも町にある森の一部がバッサリと切られていたことからはじまった。





現地の視察は、朝9時過ぎから始まって2時過ぎに終了face02
ほとんど風もなく、朝からいいお天気icon01で、スケジュールもスムーズに進んだ。現地を歩きながら、切られた木の本数の記録が書類と実際とで一致しない点・必要な木を切る時に邪魔になってしまう木(支障木・・・シショウボク)の支障の理由がわからないものがあること・伐採すると決めた場所と実際切られた場所がずれている点等々、これまでの裁判の中で話し合われてきている点を中心に原告側・被告側がそれぞれ裁判官に主張を説明した。


ほとんど散ってしまっているけれど紅葉icon86を見たり、熊の爪の跡やシカの足跡、空を舞うハヤブサを見たりした。



原告側の一人として、今日の現地での裁判に参加しての感想は・・・
一番気になっていた、支障になっていないのに支障木として切られてしまった木の支障の理由が、なぞのままで終わってしまった。これは、残念だった。
今は切り株しか残っていない支障木。その木が立っていた時の枝の状況がわからないから、どう支障になったか推測するしかないという被告の主張だった。切り株とその周辺の状況をみると、支障木とされ切られた木の支障の理由がどうしてもわからない。簡単で単純な真実がありそうなのに、それはなかなか被告側に認めてもらえないことのようだった。

今日久しぶりに現地に行って感じさせられたことは、環境の変化だ。
えりもの森裁判がはじまったことで、えりもの森の伐採の作業は現在ストップしている。ということは、木が切られていないということで、現地の見た目がガラッと変わったということはない。
けれど、裁判がはじまってから3年経った今、木が切られて光が当たるようになった地面には芝の様な草がびっしり生えそろって草地になっていた。アメリカオニアザミというトゲトゲした外来種の植物が入っていたり、鹿が嫌いなハンゴンソウという草の立ち枯れが目立った。
裁判がはじまったころは、ほとんど草がなく、切り株からは樹液があふれ出し、木のにおいが周囲にたちこめていた。そんな皆伐の生生しさが伝えられなかったことも、ちょっと残念だなぁと思った。

裁判官が現地を視察するということは、結構めずらしいことらしい。
とても貴重な体験をすることができた。
裁判官の方は熱心に両方の話を聞いていた。
裁判とか裁判官さんとかを身近に感じることができた。

えりもの森裁判で、真実を明らかにしてくれることを強く願っています。


(報告者 Y)


  


Posted by 十勝自然保護協会 at 19:17Comments(0)森林伐採