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十勝自然保護協会 活動速報 › モアショロ原野螺湾足寄停車場線 › 道道モアショロ原野螺湾足寄停車場線の整備計画について環境省に要望書を送付

2024年11月27日

道道モアショロ原野螺湾足寄停車場線の整備計画について環境省に要望書を送付

 北海道自然保護連合は、環境省に阿寒摩周国立公園内に計画している道道モアショロ原野螺湾足寄停車場線についての要望書を提出しました。

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2024年11月24日


環境大臣 浅尾 慶一郎 様
環境省自然環境局長 植田 明浩 様
 国立公園課長 西村 学 様
 釧路自然環境事務所長 岡野 隆宏 様

北海道自然保護連合 共同代表 安藤御史 菊地宏治 西畑智光

       構成団体
大雪と石狩の自然を守る会      代表 寺島一男
十勝自然保護協会  共同代表 安藤御史 佐藤与志松
南北海道自然保護協会        理事長 藤島 斉
ユウパリコザクラの会        代表 藤井純一
一般社団法人北海道自然保護協会   会長 在田一則



阿寒摩周国立公園内道道モアショロ原野螺湾足寄停車場線の事業変更に関する要望

 現在、北海道により進められている標記の道道モアショロ原野螺湾足寄停車場線の整備計画について、私たち北海道自然保護連合(十勝自然保護協会・大雪と石狩の自然を守る会・ユウパリコザクラの会・南北海道自然保護協会・一般社団法人北海道自然保護協会)は、当該事業計画がわが国の傑出した風景と生物多様性等を保全する重要な拠点である国立公園の自然環境に大きな影響を与える恐れがあることから強く反対しています。雌阿寒岳一帯の当該地域の優れた自然を保全し後世に残すためには、現行計画の見直しは欠かせないと考えており、自然公園法に基づいて当該事業について協議をする貴省に対し以下の点を強く要望いたします。
 要望の案件について、年末の多忙の時期と存じますが12月27日までに書面での回答(見解)をお願いいたします。

1 現在、北海道が進めている道道モアショロ原野螺湾足寄停車場線の整備計画は、2015年環境省中央環境審議会自然環境部会自然公園等小委員会(第31回)が有効幅員等の変更を承認した「町道雌阿寒オンネトー線」(2016年道道モアショロ原野螺湾足寄停車場線の一部に昇格)とは、路線位置および線形・規模が多くの部分で異なる新規路線です。承認済み路線の経緯にとらわれず新規路線としての協議を要望します。

 貴省は、2015(平成27)年5月、雌阿寒岳火山防災会議が「足寄町道雌阿寒オンネトー線」を噴火時の避難路として位置づけたことから、同年12月22日、中央環境審議会自然環境部会自然公園等小委員会(第31回)(以下「小委員会」)において、阿寒国立公園事業の変更について、「町道雌阿寒オンネトー線(湖岸から公園境界)の有効幅員の変更(5.5m)」を諮問し、承認されました。
 その後、町道は道道に昇格し、「道道モアショロ原野螺湾足寄停車場線の一部」(以下「現道」)となり、北海道(帯広建設管理部)が整備計画をたて、本年3月に第2種特別地域の新規開削を含む路線案(路線案候補の第5案)を確定しました。
 小委員会における事業変更の説明では、「拡幅部分は、シラカバ等の二次林であって、特に保護の必要な希少種等の生育・生息は確認されておりません」と述べておりますが、この説明は現道沿いのシラカバ等の二次林を対象としており、「現道の拡幅整備」が主眼となっています。現行の帯広建設管理部の計画路線とは全く異なるものです。
 貴省は、帯広建設管理部が主催するワークショップにオブザーバーとして出席されており、この計画を十分に認識されていると思われますが、計画路線は全線約4.4㎞で、うちオンネトー南端のSp0からおよそSp1200までの第2種特別地域の森林を、現道を離れて約1.2㎞に渡って新規開削するものです。阿寒富士からの玄武岩質溶岩流による凹凸の激しい地形を平坦な道路に造成するため、切土・盛土などで大きく改変することになっています。このため連続した広大な法面が形成され、幅30mから最大約50mの空間が出現する計画になっています。
 これは小委員会が当初想定したものとは大きく異なっていると思われます。「実際の工事に当たっては、十分に注意をして工事を進めて、計画をしてまいりたいと現場では考えております。」と説明されていますが、この計画はそのような考えをはるかに超えています。

2 現在、北海道が進めている道道モアショロ原野螺湾足寄停車場線の計画は、周辺の貴重な地形や植
生を破壊し、第2種特別地域の存在価値が失われます。まれに見る当該地域の優れた自然環境を保全する
よう強く要望いたします。


 阿寒富士からの玄武岩質溶岩流による凹凸の激しい地形のとくに凹地では多数の風穴が見られ、周囲は低温環境になっています。夏季でも地温が0℃に近い場所も少なくなく、地下に凍土の存在が推定できます。この低温環境のもと、アカエゾマツ林が発達し、林床には多種の蘚苔類が広がり、とくに本国立公園の指定植物であるミズゴケ属(ホソバミズゴケ、ゴレツミズゴケなど)が風穴の周辺によく見られ、ダチョウゴケなど高山性ないし亜高山性の蘚苔類も多数見られます。また、低標高でありながら、コケモモ、イソツツジなど高山植物が繁茂しており、低温環境に依拠している植物が多いなど特異な場所となっています。
 帯広建設管理部の計画路線上の植物リストによれば、本国立公園の指定植物のうち、蘚苔類2種、維管束植物82種の計84種が見られ、その中には環境省レッドリスト・北海道レッドリストに載る17種も含まれ、これらは保全上重要な種です。当連合も本年7月に専門家を含めて現地を視察しており、大開削によってこれらの貴重な植生が破壊され、第2種特別地域の意義が損なわれることを確信しました。さらに、多数の切土・盛土により大きな空間が開削されることによるエッジ効果により周辺の低温環境による優れた森林生態系は大きなダメージを被ることが危惧されます。また、このような凍土の存在が推定される森林地帯での大開削は、かつて上士幌町十勝三股十四の沢の低標高にあった永久凍土が、林道工事(1972年)により融解し大規模な崩壊地を発生させていることから、当該地とその周辺の環境に様々な影響を与えることも十分考えられます。

3 2014年に御嶽山噴火で文部省科学技術・学術審議会測地学分科会地震火山部会が全国9箇所の重点的な観測・研究を行う火山に、雌阿寒岳を指定したことを含め、また最近の充実した火山観測体制を踏まえて、当該地域における避難体制の再検討とあわせて当該道路計画の見直しをする協議を進めるよう要望します。

 小委員会での事業変更承認後の約10年間で、24時間観測も行われるなど雌阿寒岳の観測体制も当時よりも充実してきており、避難体制は再検討されるべき段階にあります。
 噴火警戒レベルは現在段階毎に定められていますが、当該地域の状況を勘案して必要ならば、レベル2(火口周辺規制)の段階で一般車両に対し、ただちに域内脱出、進入禁止を実施することも考えられます。
 貴省は、オンネトー湖岸周辺は第1種特別地域であり、湖岸の風致を保護するため有効幅員4mとし、現道の舗装程度にとどめるとしていますが、現在の状態は大型バス(車幅約2.5m)が入れるようになっているため、湖岸部分においては普通乗用車(車幅約1.7m)とのすれ違いが極めて難しく、出合った場合普通乗用車が退避場所まで後退を余儀なくされています。対策として大型バス走行の禁止、あるいは噴石等を考えるなら被害軽減にはシェルターが有効なことから、このような施策を関係機関に進言すべきと考えます。
 また、雌阿寒岳で大規模噴火が起きた場合、火口の位置によっては、螺湾川沿いは火砕流、土石流、泥流、溶岩流の通り道になりますので、そもそも当該道路計画を含めて螺湾川沿いに避難路を建設するのは不適切です。これらを伴わない小規模の噴火であれば、現道の整備による避難で十分対応できます。これらのことを総合的に考えることが重要と思われます。

 貴省においては、今後、帯広建設管理部からの事業変更にかかる施設変更の協議については、本国立公園当該地域の原生的な自然環境の保持・生物多様性の保全・景観の維持の観点から、問題点を明確にして再検討を求めていただきたく強く要望いたします。

以上



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