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2010年09月06日

ペンケニコロの導水管工事を視察

 9月5日にペンケニコロ川の導水管の工事現場の視察が行われた。日本森林生態系保護ネットワーク、ナキウサギふぁんくらぶ、十勝自然保護協会の三者が8月28日に視察を要請していたが、大雨で林道の一部が崩壊したために5日に延期となっていた。この日は北海道開発局帯広開発建設部の永野課長ほか6名、自然保護団体から7名が参加した。





ナキウサギ生息地の破壊

 自然保護団体の最大の懸念事項はナキウサギへの工事の影響であるが、9月中旬にもナキウサギ生息地の真下を通るトンネル工事(ミニシールド工法)に着手するというのだ。前回現場に入った時には何もなかった発進縦坑の現場には、ミニシールド工法のための巨大な構造物が建設されていた。ここに縦抗を掘り、そこを起点に全長680メートルのトンネルを掘削するというのだが、この一帯はナキウサギの生息地である。





 開建が自然保護団体への説明に用いた図には、トンネルの位置とナキウサギ生息痕跡確認箇所が示されているのだが、黄色で示されたナキウサギ生息痕跡確認箇所は正確なものではないのだ。そこで、正確な図を出すように要求したのだが、「すぐに出すことはできない」「開示請求の手続きをとってほしい」などと、言い訳に終始した。ナキウサギ生息地の改変を避けるためにトンネル工法を採用したのだから、ナキウサギの生息痕跡確認箇所を記した地図などはすぐに示せなければおかしいではないか。どこに保管してあるかわからない、などという言い訳は常識的に通用しない。

 なお、15分ほどここの岩塊地に入ってナキウサギの痕跡調査をしたところ、ナキウサギが噛み切った植物が確認された。ここはナキウサギが定住しているといえる場所であり、今も生息している証拠だ。こういう場所で地下にトンネルを掘るというのだが、騒音振動についてのデータはわからないという。





 また今回の視察では、導水管の工事を行う前に、工事のための付帯工事(橋の強化)でナキウサギ生息地の一部が破壊されていることが発覚した。破壊されたのは、第二恵山橋の上流右岸である。ここで生息痕跡が確認されていたことは開発建設部の報告書にも書かれている。しかし、開建はここで我々に説明をした際、生息地を破壊したことはおくびにも出さず、「生息地に対し林道の反対側に導水管を通すことで配慮する」と説明したのである。トンネル工法だ、日よけ柵だとナキウサギへの配慮を謳っていながら、生息地そのものを破壊してなにくわぬ顔をしていたのである。我々が気づかないとでも思っていたのか。





 林道脇にナキウサギ生息地があるにも関わらず、林道の直下に導水管を埋設するところが2カ所ある。P3とP4である。ここは地形的にナキウサギ生息地を回避できないところである。目と鼻の先の重機による工事がナキウサギに影響を与えないなどということはあり得ない。目の前で重機が動いているところで、ナキウサギがおびえないとでも思っているのだろうか。

 導水管工事は低標高地のナキウサギ生息地を破壊し、工事による騒音や振動などが悪影響を与えることは間違いないのである。

自然破壊の取水施設

 トンネル掘削工事の上流部にある取水場所は、広々と伐開されていて、伐採前の面影などまったくない状態になっていた。取水には魚類の移動に配慮するとの理由で、集水埋渠方式を採用するという。メッシュ状のパイプを12本河床の2メートル下に埋設し、浸透してきた水をその管で取水する方式だ。しかし、メッシュに泥が詰まったら十分機能しないだろう。十分な検討の元にこの取水方式を決めたのか、はなはだ疑問だ。また、流量がそれほど多いとは思えないこの川で、大量の水(400リットル/秒)を取水したら、河川の生態系にも影響があるだろう。








隠ぺい体質の開発建設部

 開発建設部は、調査報告書の開示請求をしても、絶滅危惧種などについては黒塗りにしている。今回の視察でも、こちらから問いただしても一切種名は明らかにしなかった。しかし、この地域がナキウサギ、シマフクロウ、クマタカをはじめとした多数の絶滅危惧種や希少種の生息地であることは周知の事実だ。税金による工事であるにも関わらず、保護しなければならない生物の情報を黒塗りにし、開発行為を行う側だけが握ってしまうことはあってはならない。たとえば周年生息しているクマタカなどは、人が出入りするだけでも警戒心を強めるのである。たとえ繁殖期を避けても、このような工事は大きなストレスを与える。さまざまな生物への悪影響を考えるなら、このようなところに取水施設を造ったり、大規模な工事をすることは見直されなければならないはずだ。



(電柱の上にはシマフクロウ用の止まり木と思われるT字型の棒が取り付けてあった)

質問書に速やかに回答できない開建

 今回の視察では、8月 日に送付した質問書への早期の回答も求めたが、9月下旬になるとの返事であった。自然保護団体の質問をできるだけ先延ばしにし、その間に工事を進めてしまいたいという思惑がありありと感じられた。回答に時間がかかる質問事項はあとでもいいので、すぐに回答できるものは来週中に回答してほしいと求めたのだが、それはできないと頑なに拒否された。この姿勢からも、開発建設部の「環境に配慮」がいかにまやかしであるかがわかるというものである。
  


Posted by 十勝自然保護協会 at 17:20Comments(0)美蔓ダム

2010年09月03日

美蔓地区のかんがい事業で再質問書を送付

 8月4日に、美蔓地区国営かんがい排水事業に関して自然保護団体と帯広開発建設部が話し合いを持ちましたが、帯広開発建設部はこれまでと同じ説明を繰り返すだけで、自然保護団体の質問にほとんど答えられませんでした。これでは説明会の開催を求めた意味がありません。そこで、この日の質問にきちんと回答してもらうために、以下の質問書を送付しました。

**********


美蔓再質問書

2010年8月19日


北海道開発局長 高松 秦 様
北海道開発局帯広開発建設部長 鎌田 貢次 様

                      日本森林生態系保護ネットワーク
                       代表 河野昭一 事務局長 市川守弘  
                      十勝自然保護協会             
                       共同代表 安藤御史・松田まゆみ・佐藤与志松
                      ナキウサギふぁんくらぶ  代表 市川利美 


 2010年8月4日、音更町福祉センターにおいて、北海道開発局帯広開発建設部(以下開発建設部)と十勝自然保護協会・ナキウサギふぁんくらぶ・日本森林生態系保護ネットワーク等(以下NGO側)が、美蔓ダムに関する説明、交渉会をもった。
 開発建設部による、6月21日付農水大臣宛要望書に対する回答に対して、NGO側から、費用対効果やナキウサギの生息環境に与える影響等、事業の当否に関わる本質的な質問がなされたが、データを当日用意していないなどの理由から回答が先延ばしとされた問題が多々あった。
 このため、本質問書により、あらためて開発建設部ひいては北海道開発局に対して質問をするものである。

<1>ダムの必要性及び費用対効果について

1 美生ダムへの反省
 (質問者は芽室町民)美生ダムでは完成後に、帯広開発建設部の職員からダムの目的はなくなったと説明された。600億円も費用をかけ、町も27億円負担していたが、完成後は本来の目的に使われず家畜の飲み水、機械の洗浄等に使われるのみである。美蔓ダム建設にあたり、美生ダムの計画及び結果についての事後的にモニタリングや検証をし、それをこの事業に生かしているか。
2 水需要の見込み
 計画変更により受益者が306人から215人に減少し、貯水量は340万㎥から30万㎥(当初の約9%)に減少している。牧草地、畑のそれぞれにおいて、1ヘクタールあたりどれだけの水が必要であると想定しているのか。
3 水の具体的な必要性
 地域の営農方針を踏まえて、地域農業のために、ダム(貯水池)による水は具体的にどのような必要性があるのか。収益があがる根拠はなにか。
 費用対効果の算出基礎データを明らかにした上で、上記につき、各作物ごとに具体的に説明することを求める。
4 肥培灌漑の需要
 費用対効果の数値は1.04と算出されている。これは、全受益地においてダム(灌漑)の水を利用することを前提に算出されている。すなわち、(全受益面積の単収増による年利益、+作付け面積の増加による年利益)×41年÷事業費=1.04とされている。
 開発建設部は同意書が100%出ていることをもって、全受益農家がダムの水を利用すると断定し、そのことをもってダムの必要性があるとし、他方、個々の受益農家がスプリンクラー、自走式散水機など高額な投資をして灌漑用水を使うかどうかは知らないし、知る必要もないと回答した。
 また、北海道の資料(添付)によると、受益面積の約50%を占める牧草地の肥培灌漑について、「堆肥舎の整備が進んでいるから、肥培灌漑のための配水調整槽の造成実施にあたっては、既存の堆肥舎の利用実態や利用計画を把握の上、今後、施設規模につき、適切な調整を行う」とある。
 開発建設部は既存の堆肥舎の利用実態や利用計画を把握しているといえるか。既存の堆肥舎の利用実態や利用計画を把握した結果、肥培灌漑のための配水調整槽の造成規模が縮小されることがありうるのであれば、当初より、上記検討をした上で事業の費用対効果を算定すべきではないか。ダム(灌漑施設)を造ったあとで、肥培灌漑の規模を小さくして利用するのは本末転倒ではないか。
5 道の関連事業の見込み
 北海道が行う関連事業が完成しなければ、美蔓の灌漑事業は意味がないものとなるが、北海道がいつ頃までにどのような関連事業を行うのか把握しているのか。また、継続的に協議しているのか。把握しているとすれば、その内容はどういう事業内容なのか。
6 鹿追町で建設中の受水層のシートの単価はいくらか。

<2>ナキウサギ生息地の破壊について

1 ナキウサギへの影響が最も大きい地域から工事をなぜ急ぐのか
 開発建設部は、ナキウサギへの影響が大きく懸念される地域で工事を優先させて実施している理由を、工期が2年かかるため先駆けて実施する必要があったと説明している。
しかし、現在、予算上からも全体の工期が延長されている以上、ミニシールド工法の工事を率先して終わらせる理由はないのではないか。にもかかわらず強行するのは、問題があるところの工事を早く終わらせることによって反対の声を沈静化させることが目的ではないか。
 このような意図で破壊を急ぐことは、北海道開発局にとって、「自然破壊の開発者」というレッテルが永久的に貼られることになり、開発局の事業に対する世論の支持を得られなくなるのではないか。
2 ミニシールド工法がナキウサギに及ぼす影響
1)掘削に伴う騒音、振動の具体的な数値を教えてほしい。メーカーに問い合わせるとわかるであろう。
2)その数値がナキウサギに対して影響がないといえる根拠はなにか。
ミニシールド工法が都市部の地下鉄などに使われ人間への影響が少ないと言われて
いることは、ナキウサギへの影響が少ないことの説明にはならない。
野生動物への影響としては、超音波による影響も含めて、人間に対する場合とは異なる生態的、生理的な影響が考えられる。特にナキウサギはストレスや騒音、振動に弱いとされている。影響がないことの根拠を具体的なデータで示してほしい。
3)ナキウサギに精通している有識者は上記1)2)のデータに基づき、検討したのか。
 仮にこのようなデータがないままにミニシールド工法を肯定したとすると、その判断はおよそ科学的とは言えないのではないか。
4)そのような具体的なデータなくしてなされた開発建設部の結論は、自然環境に最大限(できる限り?)配慮するという開発局の方針にも反するのではないか。
5)ミニシールド工法では、ナキウサギの痕跡が多数確認され、「風穴」の存在も確認されているP2エリアの地下を掘削して導水管が通過する。平成18年度の調査では地質専門家の現地調査を受け風穴を調査したが、その結果、「本地点の十勝溶結凝灰岩は、少なくとも河床付近までは分布しており、その下底付近までが緩んでいることが推定されている。この推定が正しければ、風穴は河床以上の標高の斜面に広く分布する可能性がある」とされている。導水管が風穴及びナキウサギの生息に及ぼす影響は検討したのか。
6)地下にトンネル(口径1200mmの穴を680m)を掘ることにより、地下水脈を切断しないとは限らないのではないか。「切断がないとは言えないができるだけ軽減する」という回答だったが、地下水脈切断の影響は、一帯の乾燥化をもたらし、森林、河川の生態系に多大な影響をもたらす。できるだけの軽減では不十分ではないか。自然環境へのできるだけの配慮をしていることにならないのではないか。
3 ナキウサギの定着
 この時期(6月、7月)のナキウサギへの影響の配慮はあるのかという質問に対しては、「この地域にナキウサギは定着していない」から、出産、子育てなどへの配慮は不要であるという驚くべき回答だった。
1)そもそも「一時的利用」と「定着」の定義はなにかを説明されたい。
2)「定着個体がいない」という根拠はなにか。
 例えば、平成13年度の報告書(平成14年3月)では、秋に調査した結果から、「夏季調査で除去した一時的貯食が、夏季確認地点と同じ場所に、新たに貯食されていた。また、ペンケニコロ川では、本格的な貯食に近い、草本の溜め込みが確認された」と結論付けている(88頁)。
 さらに平成15年調査では、7・8月の調査において、9km地点で、単音鳴き2回、連続声を5回を確認し、また、痕跡調査でも、7.5km付近及び9km付近で、糞や多くの貯食を確認したことから、その「考察」において、7月調査では「一時貯食のみの確認で、「生息するとは判断できなかった」が、「8月調査では、起点から6.7~7km区間及び8~9km区間の林道周辺において、本種が利用している明らかな痕跡が確認された。」特に8~9km地点では、「ガレ場がこの周辺に散在しており、生息基盤は脆弱であるものの、生息可能な範囲であると考えられる。ただし、生息する個体数は極めて少ないと考えられる。」と結論している。すなわち生息を認めているのである。
 また、平成16年度においても、9月に鳴き声や複数の痕跡を確認し、その「考察」において、「本地区に生息する個体は非常に少ないと考えられる」と結論付けている。
 さらに、9.0km地点では、「このエリアの生息個体は、単独の可能性も考えられる。」と、単独もしくは複数の生息を認めているのである。
 また、平成18年度の報告書においても、「本年の調査ではペンケニコロベツ林道沿線で、分散的に生息痕跡が確認される特定哺乳類の生息は明らかではあるが、その個体数や、各地点の繋がり、周年行動などは不明のままである。」
 このように、調査を継続する中で、生息は明らかであると確認してきたにも関わらず、定着個体はいないとする根拠はなにか。
3)この地域に定着個体がいないというのであれば、この地域のナキウサギの活動はど
のように評価しているのか。
周辺の安定した生息地で越冬した後、春の繁殖期に、定着メスがいないこの地域にオスが訪ねてきているのか。しかし、川道武男氏によるとエゾナキウサギは秋に番を形成し、そのまま越冬して、春に繁殖するとされているから、上記の説明はナキウサギの生態からは合理的とはいえないのではないか。
さらに、秋にもナキウサギの痕跡が確認されていることをどのように評価するのか。
4)報告書では、この地域のナキウサギの活動を「分散」と表現している。分散とはな
にか。どのような意味で使っているか。
 例えば、平成13年、15年報告書では、ペンケニコロ川周辺で確認される痕跡について、「現在まだ確認できていない主な生息地から分散する過程で地区周辺に一時的に生息するか」「地区最上流部の主な生息域から既存林道沿いに分散個体が新たな生息域を探し回ってくる際に、一時的に生息するか」「新たな分散域が確保できず止む無くこのような、僅かな生息場所に分散するのではないかと判断される。」などと、検討されている。
 この最後のものは、「分散」というよりむしろ「新たな縄張への定着」であろう。春から夏の繁殖期にかけて行われる「分散」とはなにか。夏の終わりから秋にかけてその年に生まれたナキウサギが新たな縄張りを求めて「分散」することは知られているが、それ以外にどのような「分散」があるのか。
5)上記に関連して、「一時的貯食」とはなにか。春から夏の、周囲に植物が十分ある季節に「一時的貯食」をする理由はなにか。ナキウサギの生態を知った上で、一時的貯食という言葉を使っているのか。
4 データの隠蔽
 ところで、平成16年度国有林現況調査業務報告書以降の報告書の72頁の表3.10「ナキウサギの年次別痕跡確認推移」に、前記、平成13年度報告書における10月22日、12月11・13日の痕跡確認結果が掲載されていない。結果のみならず、調査があった事実そのものが載っていないのである。これは調査データの抹殺、隠蔽と言わざるを得ない。それ以降の過去の痕跡確認箇所を示す全ての図面にも表示されていないのであるから、単なる誤記とは言えないであろう。「本格的な貯食に近い、草本の溜め込みが確認された」と評価された13年10月、12月の貯食を不記載とした理由は何か。不都合な真実であるからか。
5 調査方法への疑問
 ナキウサギ調査方法には多くの疑問がある。
 その一例として、平成13年度の調査では、調査のため取り出した貯食物を調査後に岩穴に戻していない。(「夏季調査で除去した一時的貯食」「上記と同じ場所に新たに貯食されていた」などの記載がある。)貯植物を取り除いたまま戻さないというのは、ナキウサギの生息に大きな人為的影響を与えた可能性が大きいと考えないか。平成14年以降の調査では貯植物は戻しているのか。それとも取り除いたままであるのか。

<3>その他

1 当初計画の第一回目の変更にあたり、シマフクロウの存在は全く関係していなかったのか。シマフクロウの有無について言及できないなら希少野生生物の生息地の存在という表現でもいいのでこの点を明確にされたい。
2 国有林内の速度は2級林道であれば30kmの制限があるが、実際には工事車両は、狭い林道で、すぐ両脇にナキウサギ生息地が点在する林道を制限を無視して飛ばしている。これでは自然環境への配慮があるとは言えないのではないか。現在、改められたかどうか。
3 ナキウサギ調査のデータ隠蔽疑惑に関して、2009年10月9日から質疑応答を繰り返してきた。2010年3月17日付けで「当方の調査業務報告書における解析については、地域のナキウサギ生息環境の傾向をつかむための参考として、帯広畜産大学との共同調査の解析結果を記載した」との回答があったが、これに関して、以下の点について説明してもらいたい。
 アセス会社の平成19年度業務報告書では、評価解析には、① 森林環境リアライズの19年度の痕跡確認調査結果(61、63、64頁)と、② 畜大との共同調査データとして、パンケ(P5~P8)の5~7月のデータ及びつらなり地区のデータを総合して用いたと記載されている(99頁)。
 したがって、P4は、痕跡が確認された地点として評価された上で、解析結果が出ているはずである(109~110頁)。それにもかかわらず、この解析結果が、P4を痕跡が確認されない地点としている、畜大論文の解析結果と全く同じであるのはなぜか。
 108頁以降の統計解析において、P4を痕跡の確認がない地点として扱っているのではないか。そうだとすると、報告書の99頁以下はすべて嘘の記載だということになるが、そういうことか。

以上

  


Posted by 十勝自然保護協会 at 16:37Comments(0)美蔓ダム

2010年02月17日

帯広開発建設部の回答漏れに対する申入れ

 昨年11月30日の説明会でわれわれが質問しこれに回答できなかった点について、昨年12月24日付けで帯広開発建設部から回答が寄せられましたが、肝心な点に答えていませんので下記の申入れをしました。

*******************


2010年2月16日


北海道開発局長 様
帯広開発建設部長 様
                   
十勝自然保護協会会長    安藤 御史
ナキウサギふぁんくらぶ代表 市川 利美

                            
説明会(2090年11月30日開催)での質問に対する回答漏れについて


 昨年11月30日の説明会において我々が質問し、その場で回答できなかった問題について、平成21年12月24日付「美蔓地区の国営かんがい排水事業に係わる環境調査について(回答)」(帯広開発建設部農業開発第1課長佐藤善文名)により回答がありました。しかし、下記に指摘するとおり回答漏れがありますので、速やかに回答願います。
 
 1.我々は、昨年11月30日の説明会において、P4地点にはナキウサギの痕跡がなかったとしてロジスティク回帰分析した畜大論文(「大雪山系低標高域におけるエゾナキウサギによる小規模岩塊地の利用」のこと)の結果を導水路報告書(「美蔓地区導水路国有林使用検討業務報告書」のこと)にそのまま貼り付けたのはなぜか、と質問しました。これに対し、帯広開発建設部農業開発第1課の職員はわからないので今、説明できないと答えました。したがって、貴職はこの宿題となっていた問題にきちんと答える責任があったのですが、今回の回答文書では全くふれられていません。これは「美蔓地区導水路国有林使用検討業務報告書」の信憑性に関わる重大な問題ですので、事実関係を明らかにしてください。
 2.我々は、昨年11月30日の説明会において、ペンケニコロ川における絶滅危惧ⅠB類のサケ科魚類の「絶滅」原因について質問しましたが、答えられませんでした。貴職の調査以前に生息が確認されていた本種を、貴職の調査に基づいて絶滅と判断するのであれば、その判断の客観性を担保するために絶滅原因について言及しなければなりません。そうでなければ開発行為の妨げになる絶滅危惧種が恣意的に絶滅扱いにされてしまう事態すら生じかねません。この河川における本種の絶滅原因について、物事を客観的に判断できる見識をもった専門家に聞き取るなどして、絶滅原因についての貴職の見解を明らかにしてください。
 
 なお、一点目に関し質問の意味を十分理解してもらうため、以下に当会のブログの記事(2009年12月8日付)を転載します。

業者のデータ操作に対する研究者と行政機関の責任
 11月30日夜の帯広開発建設部の呆れた回答 は、「平成19年度美蔓地区導水路国有林使用検討業務報告書」の問題点を十分理解できないことに起因するのかもしれない(いやとぼけているだけかもしれないが)。そこで、ブログの読者にも理解できるよう、ていねいに経過をたどって問題点を明らかにしてみよう。 

1.2008年3月までに(あるいはそれ以降?)、林業土木コンサルタンツ北海道支所および株式会社森林環境リアライズにより作成された「平成19年度美 蔓地区導水路国有林使用検討業務報告書」(以下「導水路報告書」)が、発注者である帯広開発建設部に納入された。この導水路報告書によると「本調査実施に あたっては、国立大学法人帯広畜産大学環境総合科学講座野生動物管理学研究室との共同調査として、調査データの統合を行い統計解析して岩塊地規模等の利用 形態および季節変化などについて評価した」(111頁)とし、その結果を109・110頁に掲載した(表3.27~3.31)。
 
2.2009年3月に発行された「森林野生動物研究会誌」34号に、帯広畜産大学野生動物管理学研究室の佐藤周平・柳川久、株式会社森林環境リアライズの 石山浩一・谷津繁芳の各氏の連名で「大雪山系低標高域におけるエゾナキウサギによる小規模岩塊地の利用」(以下「畜大論文」)と題した論文が掲載された。 この論文の34・35頁に、ロジスティク回帰分析の結果として導水路報告書の109・110頁の表と全く同じもの(表4~8)を掲載した。そして、この論文の末尾には「本研究を行うにあたりデータの公表に関して御許可いただいた北海道開発局の高橋雄一氏ほか関係各位に厚くお礼申し上げます」との謝辞を載せた。
 
3.両者、すなわち導水路報告書と畜大論文の表が同じであるというのは、「共同調査として、調査データの統合を行い統計解析し」たというのであるから当然である。ところが、である。われわれが導水路報告書と畜大論文を丹念に読んだところ、両者の観察データには違いがあることが判明したのだ。導水路報告書では、P4地点において2007年5月15日に新しいオシダの茎と葉がそれぞれ30本、24枚確認されていた(63頁)。これに対し、畜大論文ではP4地点 において2007年5月に痕跡がまったく確認されていなかったのである(33頁)。
 
4.異なるデータを入力して、ロジスティク回帰分析の結果が同じになることなどありえない。このことは、株式会社森林環境リアライズの石山浩一・谷津繁芳 の両氏が、P4地点にはナキウサギの痕跡がなかったとしてロジスティク回帰分析された畜大論文の結果をそのまま導水路報告書に貼り付けたということを意味する。
 注)畜大論文の方が導水路報告書より後に発行されているが、畜大論文の原型は、第一著者の佐藤氏の2007年度卒業論文(2008年2月に提出か)であった。したがって、ロジスティク回帰分析結果は導水路報告書の完成前に出ていたのである。
 
5.そこで、導水路報告書と畜大論文の両方にかかわっている株式会社森林環境リアライズの石山浩一・谷津繁芳の両氏の責任を問いただすため、十勝自然保護 協会とナキウサギふぁんくらぶは、10月9日付で発注者である帯広開発建設部に「美蔓地区の国営かんがい排水事業に係わるナキウサギ調査の信憑性および調査員の適性についての質問書」を提出した。
 
6.これに対し11月30日夜、帯広開発建設部は「なお、質問書にあります『大雪山系低標高域におけるエゾナキウサギによる小規模岩塊地の利用』と題した論文については、研究者の名前で発表されたものであり回答する立場にないことをご理解願います」と、能天気に農業開発第1課佐藤善文課長名の書面を読み上げた。この日の話合いの中で、P4地点にはナキウサギの痕跡がなかったとしてロジスティク回帰分析した畜大論文の結果を導水路報告書にそのまま貼り付けたのはなぜか、との質問に対し、わからないので今、説明できないと答えた。
 
7. 12月2日、北海道新聞は十勝版で「ナキウサギ再調査要求」「説明能力の不足露呈」との見出しをつけ、6段ぬきで11月30日の話合いの様子を伝えた。さらに新聞社の取材に対し、帯広開発建設部は「報告書の信ぴょう性に問題はないと思っている。報告書と論文は解析はおなじだがデータの取扱い方が違うだけ。 必要があればコンサルにも確認した上であらためて回答したい」と、また、環境コンサルタント会社は「ある時期にはナキウサギの痕跡と考えられるものがあったが、別の時期には違う動物の痕跡と考えられるものもあったため、畜大との論文では痕跡地に加えなかった」とコメントした。

コンサルタント会社のモラル崩壊
 こうして経過をたどってくると、12月2日の北海道新聞に掲載された環境コンサルタント会社のコメントの重大性が理解できる。環境コンサルタント会社、 すなわち森林環境リアライズは、開発建設部から受託した導水路報告書にはP4地点のナキウサギの痕跡を加えたが、帯広畜産大学との共同研究にはP4地点の ナキウサギの痕跡を加えなかった、というのである。つまり、恣意的に取捨選択したデータを共同研究者に提供して、ロジスティク回帰分析をしてもらい、それ をこともあろうに導水路報告書に掲載したのである。客観的事実を記載しなければならない報告書に、恣意的なデータに基づく分析結果を掲載することが、社会 を欺く行為であることを理解していないのだ。こんなコメントをだせるのは、これに類したことが常態化していて感覚が麻痺しているのかもしれない。
 
研究者としての責任
 帯広畜産大学の佐藤・柳川両氏は、森林環境リアライズが恣意的に取捨選択したデータを使って分析し、科学論文として学術雑誌に発表してしまったのである。もしデータ操作の事実を知らなかったのなら、欺かれた側として同情されるべきかもしれない。しかし、このようにデータを恣意的に取捨選択したものが科 学論文に値しないことは論を待たない。研究者の責任において、全容を明らかにし、論文の訂正ないし抹消を掲載誌の編集責任者に申し出るべきである。

行政機関としての責任
 「データの取扱い方が違うだけ」などいう帯広開発建設部のコメントは、科学論文におけるデータのもつ重要性に無知であることを自ら証明しているようなものである。このコメントからは、彼らにとって事業の遂行こそがすべてであり、環境調査など付随的なものにすぎないとの本音も読み取れる。
 第三者が読んでもわかるように、ていねいに説明してきたので、帯広開発建設部農業開発第1課の課員も、「研究者の名前で発表されたものであり回答する立場にない」などということが、いかに無責任であるか気付いたであろう。公金による業務を受注した委託業者がデータを操作し、社会を欺く行為をしたのである。発注した公的機関としての責任を自覚し、厳正に対処すべきである。

****************


平成21年12月24日

十勝自然保護協会 会長  安藤 御史 様
ナキクサギふあんくらぶ 代表 市川 利美 様

帯広開発建設部         
農業開発第1課長 佐藤 善文


美蔓地区の国営かんがい排水事業に係わる環境調査について(回答)

 
平成21年11月30日の説明会における質問に関して、下記のとおり回答いたします。



1 ナキウサギの生息痕跡について
 平成19年度「美蔓地区導水路国有林使用検討業務報告書」におけるナキウサギの生息状況の確認については、痕跡調査等による生息状況調査を実施し、何れの調査地点においても、鳴き声、糞及び生体については確認されず、岩穴に引き込まれた特徴的な食跡のみを確認しております。当方の調査業務は、ナキウサギ等への配慮を目的としており、ナキウサギの生息痕跡として可能性があるものは、すべて「痕跡あり」として業務報告書に取りまとめ、その配慮としての対策を検討する基礎データに利用しています。
 一方、質問にありました「大雪山系低標高域におけるエゾナキウサギによる小規模岩塊地の利用」と題した論文については、研究者の名前で発表されたものであり回答する立場にありませんが、科学論文という立場から、地域(十勝岳低標高部)のナキウサギの一生息環境を解析するため、疑わしきデータは全て排除して、確信の持てるデータのみで解析していると聞いております。
 当方の報告書と大学の論文における痕跡地点数の違いは、調査結果の判断基準の違いによるものと考えております。
 なお、畜大論文に当方の業務を請け負ったアセスメント会社職員が共同著者として名を連ねているのは、当方が調査を実施した地域外の調査部分について関与していたためであると聞いております。
 また、当方の調査の結果、貴協会ご指摘のP4地点を含めた、ナキウサギ生息の痕跡のある地点について、有識者からの助言を頂き、①生息痕跡が確認された箇所を極力避ける線形の見直し②立木伐採を極力少なくし、日照条件が変化すると考えられる範囲には、遮光シートで日よけを設置③推進工法箇所において新技術を採用して中間立て坑を廃止し、地表部の改変を抑制④推進工法立て坑箇所は、生息箇所から100m以上離す等の対策を取っていることは、今回の説明会でご説明したとおりです。
 今後とも、環境との調和への配慮のため、環境調査を継続すると共に、有識者から助言を頂き事業実施に反映させていく所存です。

2 ナキウサギ調査における湿度データと考察について
 平成20年度「美蔓地区取水導水路施工計画検討業務報告書」における湿度調査データが100%を示すことについては、一般にはあり得ないとのご指摘でしたが、気体を冷却すると、その中に含まれる水蒸気量は変わらなくても、相対湿度は増加し、ある温度になると相対湿度は100%となり飽和に達します。当該調査地点は、その状態と考えられ観測機器でもそのような数値となっています。
 また、「平成20年度調査報告書で、ナキウサギの分散期は8月以降なのに5~7月の調査結果でナキウサギが定着していないと結論づけており疑問だ。」とのご質問ですが、平成19年度までの調査に於いて、5~11月までペンケニコロ川流域の4地点とペンケナイ川の4地点で実施した痕跡調査等の結果を踏まえ、定着した個体群は存在せず、分散個体によって一時的に利用される範囲と判断したところです。なお、平成20年度調査においては、過年度まで調査結果を踏まえ、7月後半以降の現地調査では生息痕跡の確認が少ないことから、5~7月に集中的に調査を実施しております。

3 魚類調査について
 美蔓地区における魚類調査については、取水河川のペンケニコロ川において採捕調査等を実施し、その調査結果を考慮し、魚類の生息環境へ配慮を行っております。
 そのうち、河川への直接的な構造物となる取水施設の構造については、魚類の降下遡上の障害となる落差を解消し、更に、取水により取水施設内に魚類の引き込みが無くなるよう、河床下に有孔管を埋設し浸透した河川水を集めて取水する「集水理渠方式」の取水施設を設置することとしています。
 先般の説明会でも説明させていただきましたが、今後も、環境との調和への配慮のため、魚類調査を実施し、これまでに確認されていない魚種が確認された場合には、有識者から助言等をいただき、事業実施に反映していきたいと考えております。

4 希少種の情報について
 国営土地改良事業の実施における「環境との調和への配慮」について、情報収集・意見交換を行う場として学識経験者等から構成される「環境情報協議会」を開催しています。公開している資料(環境情報協議会)は、広域的な周辺情報としているため、環境省RDB、北海道RDB種についても公開しております。
 一方、流域を対象とした限定された調査範囲の情報では、希少種の扱いは慎重に行っているところです。

5 工事の再開について
 以上のように、ご指摘を受けた点を改めて確認した結果、今回の工事が生態系に大きな影響を与えるものではないと確認したところです。
 なお、当方といたしましては、地元農家の方々からの強い要望もあり、工事を再開させていただきますが、その際にも、より一層の環境配慮に努めながら工事を実施してまいる所存でございます。
 ご理解のほど宜しくお願い申し上げます。

  


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2009年12月08日

業者のデータ操作に対する研究者と行政機関の責任

 11月30日夜の帯広開発建設部の呆れた回答は、「平成19年度美蔓地区導水路国有林使用検討業務報告書」の問題点を十分理解できないことに起因するのかもしれない(いやとぼけているだけかもしれないが)。そこで、ブログの読者にも理解できるよう、ていねいに経過をたどって問題点を明らかにしてみよう。 

1.2008年3月までに(あるいはそれ以降?)、林業土木コンサルタンツ北海道支所および株式会社森林環境リアライズにより作成された「平成19年度美蔓地区導水路国有林使用検討業務報告書」(以下「導水路報告書」)が、発注者である帯広開発建設部に納入された。この導水路報告書によると「本調査実施にあたっては、国立大学法人帯広畜産大学環境総合科学講座野生動物管理学研究室との共同調査として、調査データの統合を行い統計解析して岩塊地規模等の利用形態および季節変化などについて評価した」(111頁)とし、その結果を109・110頁に掲載した(表3.27~3.31)。
 
2.2009年3月に発行された「森林野生動物研究会誌」34号に、帯広畜産大学野生動物管理学研究室の佐藤周平・柳川久、株式会社森林環境リアライズの石山浩一・谷津繁芳の各氏の連名で「大雪山系低標高域におけるエゾナキウサギによる小規模岩塊地の利用」(以下「畜大論文」)と題した論文が掲載された。この論文の34・35頁に、ロジスティク回帰分析の結果として導水路報告書の109・110頁の表と全く同じもの(表4~8)を掲載した。そして、この論文の末尾には「本研究を行うにあたりデータの公表に関して御許可いただいた北海道開発局の高橋雄一氏ほか関係各位に厚くお礼申し上げます」との謝辞を載せた。
 
3.両者、すなわち導水路報告書と畜大論文の表が同じであるというのは、「共同調査として、調査データの統合を行い統計解析し」たというのであるから当然である。ところが、である。われわれが導水路報告書と畜大論文を丹念に読んだところ、両者の観察データには違いがあることが判明したのだ。導水路報告書では、P4地点において2007年5月15日に新しいオシダの茎と葉がそれぞれ30本、24枚確認されていた(63頁)。これに対し、畜大論文ではP4地点において2007年5月に痕跡がまったく確認されていなかったのである(33頁)。
 
4.異なるデータを入力して、ロジスティク回帰分析の結果が同じになることなどありえない。このことは、株式会社森林環境リアライズの石山浩一・谷津繁芳の両氏が、P4地点にはナキウサギの痕跡がなかったとしてロジスティク回帰分析された畜大論文の結果をそのまま導水路報告書に貼り付けたということを意味する。
 注)畜大論文の方が導水路報告書より後に発行されているが、畜大論文の原型は、第一著者の佐藤氏の2007年度卒業論文(2008年2月に提出か)であった。したがって、ロジスティク回帰分析結果は導水路報告書の完成前に出ていたのである。
 
5.そこで、導水路報告書と畜大論文の両方にかかわっている株式会社森林環境リアライズの石山浩一・谷津繁芳の両氏の責任を問いただすため、十勝自然保護協会とナキウサギふぁんくらぶは、10月9日付で発注者である帯広開発建設部に「美蔓地区の国営かんがい排水事業に係わるナキウサギ調査の信憑性および調査員の適性についての質問書」を提出した。
 
6.これに対し11月30日夜、帯広開発建設部は「なお、質問書にあります『大雪山系低標高域におけるエゾナキウサギによる小規模岩塊地の利用』と題した論文については、研究者の名前で発表されたものであり回答する立場にないことをご理解願います」と、能天気に農業開発第1課佐藤善文課長名の書面を読み上げた。この日の話合いの中で、P4地点にはナキウサギの痕跡がなかったとしてロジスティク回帰分析した畜大論文の結果を導水路報告書にそのまま貼り付けたのはなぜか、との質問に対し、わからないので今、説明できないと答えた。
 
7. 12月2日、北海道新聞は十勝版で「ナキウサギ再調査要求」「説明能力の不足露呈」との見出しをつけ、6段ぬきで11月30日の話合いの様子を伝えた。さらに新聞社の取材に対し、帯広開発建設部は「報告書の信ぴょう性に問題はないと思っている。報告書と論文は解析はおなじだがデータの取扱い方が違うだけ。必要があればコンサルにも確認した上であらためて回答したい」と、また、環境コンサルタント会社は「ある時期にはナキウサギの痕跡と考えられるものがあったが、別の時期には違う動物の痕跡と考えられるものもあったため、畜大との論文では痕跡地に加えなかった」とコメントした。

コンサルタント会社のモラル崩壊
 こうして経過をたどってくると、12月2日の北海道新聞に掲載された環境コンサルタント会社のコメントの重大性が理解できる。環境コンサルタント会社、すなわち森林環境リアライズは、開発建設部から受託した導水路報告書にはP4地点のナキウサギの痕跡を加えたが、帯広畜産大学との共同研究にはP4地点のナキウサギの痕跡を加えなかった、というのである。つまり、恣意的に取捨選択したデータを共同研究者に提供して、ロジスティク回帰分析をしてもらい、それをこともあろうに導水路報告書に掲載したのである。客観的事実を記載しなければならない報告書に、恣意的なデータに基づく分析結果を掲載することが、社会を欺く行為であることを理解していないのだ。こんなコメントをだせるのは、これに類したことが常態化していて感覚が麻痺しているのかもしれない。
 
研究者としての責任
 帯広畜産大学の佐藤・柳川両氏は、森林環境リアライズが恣意的に取捨選択したデータを使って分析し、科学論文として学術雑誌に発表してしまったのである。もしデータ操作の事実を知らなかったのなら、欺かれた側として同情されるべきかもしれない。しかし、このようにデータを恣意的に取捨選択したものが科学論文に値しないことは論を待たない。研究者の責任において、全容を明らかにし、論文の訂正ないし抹消を掲載誌の編集責任者に申し出るべきである。

行政機関としての責任
 「データの取扱い方が違うだけ」などいう帯広開発建設部のコメントは、科学論文におけるデータのもつ重要性に無知であることを自ら証明しているようなものである。このコメントからは、彼らにとって事業の遂行こそがすべてであり、環境調査など付随的なものにすぎないとの本音も読み取れる。
 第三者が読んでもわかるように、ていねいに説明してきたので、帯広開発建設部農業開発第1課の課員も、「研究者の名前で発表されたものであり回答する立場にない」などということが、いかに無責任であるか気付いたであろう。公金による業務を受注した委託業者がデータを操作し、社会を欺く行為をしたのである。発注した公的機関としての責任を自覚し、厳正に対処すべきである。
  


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2009年12月02日

劣化進む帯広開発建設部

 当会が10月9日付で出した「美蔓地区の国営かんがい排水事業に係わるナキウサギ調査の信憑性および調査員の適性についての質問書」に対する回答をしたいとの帯広開発建設部からの申入れにより、11月30日夜、音更町で面談の場がもたれた。当日は、当会とナキウサギふぁんくらぶから12名、そして開発建設部から5名が参加した。
 
 冒頭、回答文書(下に掲載)が配布され、質問もしていない事項―「1 事業の促進について」「2 環境配慮について」を回答だといって、パワーポイントで長々と説明しはじめたのには驚いた。そして最後の最後に、付け足しのように肝心の質問事項について「なお、質問書にあります『大雪山系低標高域におけるエゾナキウサギによる小規模岩塊地の利用』と題した論文については、研究者の名前で発表されたものであり回答する立場にないことをご理解願います」と回答にならない回答を読み上げた。
 
 「業務報告書(この報告書ではP4地点で多数のナキウサギの痕跡が記録されている)」に「畜大論文(この論文ではP4地点にナキウサギの痕跡がないとしてロジスティク回帰分析をしている)」の結果が、そのまま取り込まれているのはなぜかと質問すると、わからないから今は説明できないという。何のことはない、説明不能であることを報告するために回答と称して、われわれに面談を申込んできたのだ。面談の本当の目的は、自分たちの事業のプロモーションスライドを上映し、環境NGOに工事内容を説明しましたとアリバイを作ることにあったのだ。

 まともな回答をする気もないのに回答するといって国民を欺き、時間と交通費を浪費させ、その一方で自分達は時間外勤務で手当をもらう。この組織の劣化は、もはや止めようもない程に進行している。腐った組織は、分解され姿を消すしかない。

**********


平成21年11月30日

十勝自然保護協会 会長    安藤 御史 様
ナキウサギふぁんくらぶ 代表 市川 利美 様

帯広開発建設部
 農業開発第1課長 佐藤 善文


美蔓地区の国営かんがい排水事業に係わるナキウサギ調査の
信憑性および調査員の適性についての質問書(回答)


平成21年10月9日付け質問書に関して、下記のとおり回答いたします。



1 事業の促進について
  これまでも貴協会との打合せ及び文書でもご説明したとおり、この事業は畑地かんがい用水の確保及び排水改良を行うことで、農作物の安定的な生産等を可能とし、安定した農業経営の実現を図るものです。農業を基幹産業とするこの地域においては、農業経営の安定が地域経済の発展に繋がるものであり、また、受益農家はもとより関係機関もこの事業の促進を強く要望しており、受益者の100%の同意を得て、土地改良法の手続きに基づき事業計画が確定しているものであることを、繰り返しとなりますがご理解願いたいと思います。

2 環境配慮について
  平成21年8月7日付け文書でも回答してますが、本事業の施行に際しては、環境との調和への配慮のため、環境調査を実施するとともに環境に関する有識者を委員とする国営かんがい排水事業美蔓地区技術検討会等において、有識者や地元関係者から助言等をいただき施設計画及び施工計画を策定しております。
 ナキウサギの環境調査としては、目撃法、痕跡法、定点カメラ記録、気象条件調査等を実施し生息痕跡等を確認しております。また、ナキウサギ等の生息環境への配慮につきましては、既存林道の敷地内に管を埋設する工法を基本とし、生息箇所から出来るだけ離れた位置に路線を配置したり、部分的に開削を行わずに水路の設置が可能なシールド工法を採用するなど生息環境に配慮した導水路計画を策定するとともに、施工時には遮光シートによる生息箇所への配慮などを行うこととしております。
 また、工事実施中においても環境調査を継続し、引き続き環境に関する有識者の助言等をいただくなど、今後も環境へ配慮して事業に取り組んでまいりますので、ご理解願いたいと思います。

 なお、質問書にあります「大雪山系低標高域におけるエゾナキウサギによる小規模岩塊地の利用」と題した論文については、研究者の名前で発表されたものであり回答する立場にないことをご理解願います。



  


Posted by 十勝自然保護協会 at 21:59Comments(0)美蔓ダム

2009年10月10日

美蔓地区のナキウサギ調査で質問書を送付

 美蔓地区のかんがい事業に係わるナキウサギ調査について、当会とナキウサギふぁんくらぶは北海道開発局に以下の質問書を送付しました。

********************


2009年10月9日


北海道開発局長 様
帯広開発建設部長 様
十勝自然保護協会会長    安藤御史
ナキウサギふぁんくらぶ代表 市川利美


美蔓地区の国営かんがい排水事業に係わるナキウサギ調査の
    信憑性および調査員の適性についての質問書


 美蔓ダム建設(後に頭首工に変更)に係わる環境調査の一環として、工事予定地において2000年からアセスメント会社(林業土木コンサルタンツ北海道支所および株式会社森林環境リアライズ)によってナキウサギの調査が行われ、その結果が報告書にまとめられている。
 当該地域のナキウサギについて、「大雪山系低標高域におけるエゾナキウサギによる小規模岩塊地の利用」と題した論文が今年(2009年)「森林野生動物研究会誌」34号に掲載された。この論文の著者は帯広畜産大学野生動物管理学研究室の佐藤周平・柳川久、株式会社森林環境リアライズの石山浩一・谷津繁芳の各氏である。以下この論文を「畜大論文」という。
 私たちが開示請求で手に入れた「平成19年度美蔓地区導水路国有林使用検討業務報告書」(以下「導水路報告書」という)によると「本調査実施にあたっては、国立大学法人帯広畜産大学環境総合科学講座野生動物管理学研究室との共同調査として、調査データの統合を行い統計解析して岩塊地規模等の利用形態および季節変化などについて評価した」(111頁)とされている。
 畜大論文の著者に名を連ねる石山浩一および谷津繁芳の両氏は、平成19年度美蔓地区導水路国有林使用検討業務に携わっている人物である、と私たちは認識している。なぜなら石山浩一氏は、十勝自然保護協会と帯広開発建設部の話し合いの場にも出席し、私たちに環境調査について説明をしているからである。
 導水管報告書によれば、帯広畜産大学環境総合科学講座野生動物管理学研究室と「調査データの統合を行い統計解析し」たことになっており、導水路報告書のデータと畜大論文のデータは一致していなければならない。しかし、導水路報告書と畜大論文のデータには重大な齟齬がある。
 すなわち、導水路報告書では、P4地点において2007年5月15日に新しいオシダの茎と葉がそれぞれ30本、24枚確認されている(63頁)にもかかわらず、畜大論文ではP4地点において痕跡がまったく確認されていないことになっている。
 ここで私たちは、導水路報告書と畜大論文の両方に係わっている株式会社森林環境リアラズの石山浩一・谷津繁芳の両氏の責任を問題にしなければならない。自らが発見したP4地点でのナキウサギの痕跡を隠蔽し、論文に著者として名を連ねる行為は、客観的データの収集を旨とすべき自然環境調査員としての資格が問われる事態である。当然のことながら、私たちは、このようなアセス会社の職員よって作成されてきたこれまで報告書のデータに隠蔽や捏造が存在することを疑わなければならない。
 今回、問題となったP4地点では、当初アセスメント会社は痕跡を認めていなかった。しかし私たちは2005年からここで痕跡(引き込み植物)を確認していた。このことは、アセスメント会社による意図的な見落とし、あるいは調査データの隠蔽を示唆する。
 このような事態を踏まえ、私たちは、この工事を凍結し、当該地域におけるナキウサギの抜本的再調査を貴職に求めるとともに、導水管報告書と畜大論文の齟齬およびアセスメント会社職員の責任について、貴職の見解を求めるものである。10月23日までに書面にて回答いただきたい。

  


Posted by 十勝自然保護協会 at 11:24Comments(0)美蔓ダム

2009年10月10日

美蔓地区のかんがい事業で農水相に要望書を送付

 美蔓地区の国営かんがい排水事業の中止を求めて、4団体が農林水産大臣に以下の要望書を送付しました。

********************


2009年10月9日

農林水産大臣 赤松 広隆 様

                       日本森林生態系保護ネットワーク(Confe Japan)
                       代表 河野 昭一(京都大学名誉教授、IUCN(国際自然
                       保護連合)生態系管理委員会北東アジア担当副委員長)
                       十勝自然保護協会
                       会長 安藤 御史
                       ザ・フォレストレンジャーズ
                       代表 市川 守弘
                       ナキウサギふぁんくらぶ
                       代表 市川 利美

美蔓地区国営かんがい排水事業の即時中止・凍結についての申し入れ


 現在、北海道開発局・帯広開発建設部が進めている美蔓地区の国営かんがい排水事業は、下記のとおり、その必要性に疑問がある無駄な公共事業の典型であると同時に、ナキウサギをはじめとする北海道の貴重な自然環境を大きく破壊する事業です。
 農水省が赤松大臣を中心として、今後、多くの事業の見直しに着手されることに私たちは敬意を表します。
 本事業もまた、無駄な公共事業として凍結されることを確信していますが、今年度、これから着手されようとしている工事は、「氷河期の生き残り」といわれ、北海道の主として高山帯に生息するエゾナキウサギの生息地を破壊し、大きな影響を与える恐れがあります。とりわけ、本地域は低標高地にあるナキウサギ生息地として重要な地域です。
 私たちは、本事業の即時中止・凍結を強く求めます。特にこの秋、予定されている工事の着工を緊急に中止し、ナキウサギ生息地を保全されますよう要望いたします。



1 必要性がないダム(頭首工・貯水池・導水管)計画
1)貯水量は平成5年当初計画の4.8%に減少。
2)水系の異なるペンケニコロ川の頭首工、そこからの導水管、及び美蔓地区の貯水池を建設する事業。畑灌費用総額は、268億8000万円と膨大である。
3)畑灌受益地は、当初の5つの町だったが現在は4つの町、2617haに減少。
4)農業用水の不足の実態は、不明。
受益農家も減少し、畑灌は116戸にすぎない。一戸あたりの費用は2億3000万円。
しかも受益農家のうちどれだけの農家が高額なスプリンクラーを実際に設置し水を利用するかも不明。

2 ナキウサギの貴重な生息地を破壊
1)ペンケニコロ川一帯に複数のナキウサギ生息地がある。
2)低標高地のナキウサギ生息地として貴重。
3)導水管の埋設工事により、ナキウサギの生息地を大きく破壊され、あるいはナキウサギの生息する環境に大きな影響の恐れ。
4)当局の環境調査においても、ナキウサギの保全が必要であることが当初より強調され、ナキウサギ調査が毎年、継続されている。      
5)保全策は全くのでたらめ。
 保全策として「日除けの設置と、代替生息地の創造」が言われているが、ナキウサギの生態の解明がないため、日除けと代替地で保全される保障は全くない。しかも代替地には既存のナキウサギが生息し縄張りを確立しているから、新たにナキウサギが移入し生息できる可能性は低い。

3 貴重な自然を破壊する恐れ 
大雪山国立公園、日高えりも国定公園に近く、緑の回廊にも接する地域で、絶滅危惧種の鳥類(シマフクロウ・クマタカ)の生息地でもある。
本工事及びその後の河川水量の減少によって、ペンケニコロ川の生態系及び上記動物の生息に大きな影響を与えることが懸念される。
<シマフクロウ>
 IUCN(国際自然保護連合)のレッドリスト(2000年)で絶滅危惧種(Endangered),環境省のレッドデータブック(2002年)で絶滅危惧種(Critically)に指定されている.本事業周辺で環境省が保護増殖事業を行っている。
<クマタカ>
 環境省のレッドデータブック(2002年)で絶滅危惧種(Endangered)に指定され,周辺に2番(つがい)が生息している。
以上

  


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2009年10月08日

エゾナキウサギ生息地の不正確な記述

 2005年にわが国で開催されたIMC9(第9回国際哺乳類学会議)を記念し、最新知見を盛り込んだガイドブック と銘打って“The Wild Mammals of Japan”が今年7月に刊行された。

 ナキウサギをめぐっては、いまも生息地破壊が止まらない状況にある。したがって、ナキウサギの生息地を保全する上で、実態を反映した記述が求められるのだが、このガイドブックの記述は最新の知見に基づくものとなっていない。

 ナキウサギのhabitat(生息地)の項は、次のように記述されている(原文は英語)。
「北海道でキタナキウサギは、標高400mから2290mまで(Kawamichi 1969)の標高800mより上の主に高山帯に出現する(Ishi 2005)。キタナキウサギは、岩の斜面を織り交ぜた蘚苔類がはえる森林のなかの岩石地帯に住む(Kawamichi 1969、Inukai and Shimakura 1930)。」

 川道氏の40年前の論文を引用し、エゾナキウサギの生息標高を400mからとしているのだが、エゾナキウサギが海岸近くの標高50mから生息し、標高400m未満のところにも多くの生息地があることは、ナキウサギの保護に関心をもつものならよく知っていることである。

 いうまでもなく低標高地は人間の生産活動が盛んなところである。かつてはナキウサギが低標高地に生息しないという思い込みのも手伝って、道路建設などによりナキウサギの生息地が消滅してしまったところも少なくない。そして、現在も低標高の生息地である日高山脈南部で大規模林道建設が、大雪山系南部のペンケニコロ川で灌漑施設建設が進められようとしている。したがって、低標高の生息地を無視することは、生息地破壊者には都合のよいことである。
 
 また、標高2290mまで生息するとされているのだが、2290mとは旭岳の頂上である。ここにエゾナキウサギが生息しないことは、ナキウサギウオッチャーにはよく知られている。無論、論文を引用された川道氏も旭岳山頂にエゾナキウサギがいないことを知っており、論文ではnear 2290mと記述している。したがって、最新知見を盛り込むならエゾナキウサギの生息標高は50mから2230m(白雲岳山頂)としなければならない。

 ついでに、気のついたことにもふれておく。エゾナキウサギは「主に高山帯に出現する」としながら「森林のなかの岩石地帯に住む」と文を続けているが、これでは、主要な生息地である高山帯のすみかの様子がわからない。また、鹿追町の岩の貯まった生息地、すなわち然別火山群の岩塊が積み重なる斜面(岩塊斜面)の写真が掲載され、ここをrocky bankと記述しているのだが、自然界で岩塊が貯まった状態は地形学的に注目すべき現象であり、地形学用語を尊重しblock slope(岩塊斜面)とすべきである。
  


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2009年07月12日

問題の多いナキウサギ論文

 われわれがナキウサギ生息地の破壊になるとして問題にしているペンケニコロ川のナキウサギのことにふれた論文があるというので、知人からコピーをもらい読みました。その論文とは、樋口輔三郎・谷津繁芳・石山浩一・山本英一著「十勝岳泥流地域のナキウサギ(Ochotona hyperborea yesoensis)の生息状況」です。この論文は、2006年に学術雑誌(森林野生動物研究会誌,32:20-26)に掲載されたのですが、曖昧な用語など論文として多くの問題を抱えていますので、問題点を指摘しておきます。

 この論文ではエゾナキウサギの生息地を表す言葉がいろいろ出てきます。岩場、ガレ場、溶岩堆積地(帯)、非溶岩堆積地、岩石堆積地、露岩(地帯)などです。そして「岩場,ガレ場の風穴」「溶岩堆積地[ガレ場] 」「岩石堆積地・ガレ場からはなれた」などと使われています。露岩については、砂礫により岩石がうずまり、頭の残された状態のもので、傾斜の緩いところに多く見られる、と定義していますが、他の用語には説明がありません。
 
 そこで当人たちに代わり解説すると、「岩場」というのは、「溶岩堆積地」と「岩石堆積地」の両方(注:後者は溶岩起源ではない岩石を指すようです)を、「ガレ場」というのは、岩塊が崩落して堆積したところを指しているようです。ただし、溶岩や岩石には大きさの概念がありませんから、溶岩岩塊堆積地や岩塊堆積地にすべきです。

 岩塊堆積地の岩塊と岩塊の間の空隙を風穴と小穴に分け、風穴とは、「岩石堆積内の穴の深さが10cm以上のもの」で、小穴とは、「10cm足らずの浅く閉塞しているもの」だといいます。風穴という用語は、穴の入口で空気の吹き出し現象が確認されたところを指すべきですが、彼らは、そのようなことに関係なく単に穴の深さが10cm以上のものを風穴としています。このような用語の使い方は風穴研究者にとってなははだ迷惑なことでしょう。
 
 「火山噴火による溶岩流(泥流)の溶岩堆積地に生息」との記述がありますが、これは「溶岩流の自破砕溶岩堆積地に生息」とし、泥流を削除すべきです。また、英文タイトルでは「泥流地域」がthe lava area(溶岩地域)になっているのはどうしたことでしょう。溶岩流=泥流と認識しているのかもしれません。

 「道内には岩石堆積地・ガレ場からはなれた、ガレ場でない環境での生息が報告されている。たとえば、・・・ペンケニコロ川、パンケニコロ川流域の峰筋の露岩地帯や、・・・・猿留川流域の露岩地帯である。」と露岩地帯という用語が使われていますが、露岩についての彼らの定義は、前述のように「砂礫により岩石がうずまり、頭の残された状態のもの」でした。しかしペンケニコロ川やパンケニコロ川、猿留川の岩塊堆積地の地形は、崖錐や地すべり地形ですから、彼らの定義する「露岩」ではありません。

 彼らは、小疇尚ほか(2003)を引用して「地中には永久凍土があるような岩石堆積地帯にのみ生息している」としていますが、南日高の幌満や豊似湖のように永久凍土の確認されていない岩塊堆積地にもナキウサギは生息しています。

 このように著者たちは、地質学や地形学に精通していないため適当に言葉をつかっています。科学論文は、きちんと定義された用語に基づいて記述されなければ、科学論文たりえません。彼らはいわゆるアセスメント会社の関係者です。普段は個人名を出すことなく行政から受託した調査報告書を執筆していますので、調査や取りまとめ能力が社会的に問われることなどありません。今回のように校閲も受けずに公表されると彼らのレベルが丸見えとなります。その意味では、この論文は貴重な資料となっています。ところで、この原稿を受領した編集者は、文章の意味を理解できたのでしょうか。この論文は、執筆者のみならず編集者の責任を問うものとなっています。
 
 最後に、たんなる思い違いではすまされない問題点を指摘します。
 「痕跡がみあたらず,・・・・長く生息が出来ると思われない」としているペンケニコロ川・パンケニコロ川流域、猿留川流域において、われわれは調査のたびに貯食などの痕跡を確認しています。
 ペンケニコロ川・パンケニコロ川流域では、1999年から帯広開発建設部がダム建設(後に頭首工に変更)のために環境調査を行なっていますが、調査のたびにナキウサギの生息が確認されています。また猿留川流域では、林野庁が大規模林道の建設のためにアセスメント調査を行っています。この調査でも痕跡が確認されています。とりわけ登沢の岩塊堆積地は重要な生息地と位置づけられており、一時的な生息地ではありません。
 著者らはこれらの調査に携わっているにも関わらず「アセスメントの関係で再度確認調査をおこなったが、痕跡はみあたらず」としているはどうしたことでしょう。データを無視あるいは隠蔽して議論をすることなど科学の世界では許されないことです。この点に関しては、雑誌発行者である森林野生動物研究会の見解を問わなければならないでしょう。
  


Posted by 十勝自然保護協会 at 16:29Comments(0)美蔓ダム

2009年07月11日

美蔓地区のかんがい事業の凍結を申入れ

 北海道開発局は1993年に、美蔓台地へのかんがいを目的として、然別川水系の第6上幌内川に貯水量630万立方メートルのダムを計画しました。その後、水需要の減少などに伴いダムの規模を縮小(貯水量340万立方メートル)し、建設地を十勝川水系のペンケニコロ川に変更しました。しかしさらに水需要が減少し、現在は上幌内地区にため池(貯水量30万立方メートル)をつくりペンケニコロ川から取水する計画になっています。昨年より貯水池の工事が始まっており、今年は導水管を埋設するペンケニコロ川流域で測量調査も開始されました。開発局はナキウサギの生息調査もしており、工事によって生息地が破壊されることを知りながら自然保護団体の意見を受け止めることなく工事を強行しています。
 このために、当会とナキウサギふぁんくらぶは開発局に以下の申入れをしました。

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2009年7月9日

北海道開発局長 様
帯広開発建設部長 様

十勝自然保護協会会長    安藤御史
ナキウサギふぁんくらぶ代表 市川利美


美蔓地区国営かんがい排水事業の凍結についての申し入れ


 十勝自然保護協会は、美蔓地区の国営かんがい排水事業について2005年より帯広開発建設部との話し合いを行い、この事業にかかわる問題点を指摘してきた。本年3月12日には、これまでの話し合いの不誠実さに抗議するとともに計画見直しの申し入れを行った(別添)。
 ナキウサギふぁんくらぶは、導水管埋設地一帯にナキウサギの生息地があることから、かねてよりこの事業について貴職に説明を求めるとともに、関係資料を開示請求し、現地調査も行ってきた。
 しかし、貴職らは自然保護団体の申入れを無視し昨年から貯水池造成工事を進め、本年は導水管を埋設するペンケニコロ川流域で測量工事を行なうなど強引に事業を進めている。
 これまでの貴職の調査およびわれわれの調査から、ペンケニコロ川一帯にナキウサギが生息していることが確認されている(林道入口から6.1キロメートル地点と9キロメートル地点の間に複数の生息地がある)。これらの場所では、貴職が環境調査を始めたときから本年(十勝自然保護協会が6月に確認)にいたるまでナキウサギの生息痕跡が確認されており、この地域一帯をナキウサギが頻繁に利用していることは明らかである。これらの生息地は低標高のナキウサギ生息地として貴重であり保護されなければならない。導水管の埋設工事はナキウサギの生息地を大きく破壊することになり、容認できるものではない。
 貴職の「平成19年度美蔓地区道水路国有林使用検討業務報告書」においても、ナキウサギ生息地の保護の必要性が明記されているが、保全策は「日除けの設置と、代替生息地の創造が模索されている」というものである。このような対策はナキウサギの生態に基づく科学的な検討による保全策とは言えず、ナキウサギの保全が図られるという保障はなにもない。「絵に描いた餅」のような提案である。
 十勝自然保護協会と帯広開発建設部との話し合いによって、取水河川の選定にあたり環境調査に基づいてペンケニコロ川を選定していなかったことが明らかになった。計画変更に伴う建設費の妥当性についても疑問が払拭されていない。受益地も減少しており、鹿追町では地下水の利用で農業用水の不足は解消したとされる。また、受益地の半数以上が牧草地への肥培かんがいとされており、必要性の面からも見直しが求められる。
 したがって、ここに本計画の凍結および見直しを強く要請する。
 なお、この申入れに対し、貴職の見解を7月25日までに書面にて回答していただきたい。


  


Posted by 十勝自然保護協会 at 11:30Comments(0)美蔓ダム