十勝自然保護協会 活動速報 › 地熱発電
2021年12月26日
トムラウシ地区地熱発電計画についての新得町長からの回答
2021年12月12日付けの「大雪山国立公園内トムラウシ地区地熱発電計画中止を求める要望および質問」に対し、新得町長から以下の回答がありました。
十勝自然保護協会
共同代表 安 藤 御 史 様
佐 藤 与志松 様
大雪山国立公園トムラウシ地区地熱発電計画中止を求める要望および質問について(回答)
令和3年12月12日付で照会のありました質問事項について、別紙のとおり回答いたします。
(別紙)
1.前提
この度、ご質問のあった書く質問事項については、令和3年12月17日時点での新得町の見解として回答いたします。
2.回答
次のとおり質問事項ごとに回答いたします。
なお、質問事項の内容は、送付文書から複写しています。
(1)2014年の計画中止要望書について貴職はどのようにお考えですか。
【回答1】
貴協会と平成26年10月27日に面会した際に説明したとおり、初期調査については問題ないと認識しております。
(2)計画を推進する理由をお聞かせください。
【回答2】
地熱発電を含めた再生可能エネルギーの導入は、カーボンニュートラルに向けた取組や地域振興に繋がる側面から必要であるとの認識から、導入可能性を調査・検討している段階であり、計画の推進ではありません。
(3)この時期に電源開発に要請されたことは、本年4月以降の環境省の施策と関係があるのでしょうか。
【回答3】
具体的な施策との関係が不明なため、質問と回答がかみ合わない可能性もありますが、従前からの考えを公的に掲げ、前に進めるようとしているものです。
********************
新 地 域 号
令和3年12月17日
令和3年12月17日
十勝自然保護協会
共同代表 安 藤 御 史 様
佐 藤 与志松 様
新得町長 浜 田 正 和
大雪山国立公園トムラウシ地区地熱発電計画中止を求める要望および質問について(回答)
令和3年12月12日付で照会のありました質問事項について、別紙のとおり回答いたします。
(地域戦略室地域戦略係 担当:佐藤)
(別紙)
1.前提
この度、ご質問のあった書く質問事項については、令和3年12月17日時点での新得町の見解として回答いたします。
2.回答
次のとおり質問事項ごとに回答いたします。
なお、質問事項の内容は、送付文書から複写しています。
(1)2014年の計画中止要望書について貴職はどのようにお考えですか。
【回答1】
貴協会と平成26年10月27日に面会した際に説明したとおり、初期調査については問題ないと認識しております。
(2)計画を推進する理由をお聞かせください。
【回答2】
地熱発電を含めた再生可能エネルギーの導入は、カーボンニュートラルに向けた取組や地域振興に繋がる側面から必要であるとの認識から、導入可能性を調査・検討している段階であり、計画の推進ではありません。
(3)この時期に電源開発に要請されたことは、本年4月以降の環境省の施策と関係があるのでしょうか。
【回答3】
具体的な施策との関係が不明なため、質問と回答がかみ合わない可能性もありますが、従前からの考えを公的に掲げ、前に進めるようとしているものです。
2021年12月26日
トムラウシ地区地熱発電計画についての要望と質問
トムラウシ地区地熱発電計画について、新得町長に以下の要望・質問書を送付しました。
新得町長 浜田 正利 様
大雪山国立公園内トムラウシ地区地熱発電計画中止を求める要望および質問
2014年10月27日付で、自然保護団体7団体(新得おもしろ調査隊、十勝川源流部を考える会、公益財団法人 日本自然保護協会、一般社団法人 北海道自然保護協会、北海道自然保護連合、大雪と石狩の自然を守る会、十勝自然保護協会)は、貴職および経済産業大臣・環境大臣・林野庁長官に宛て「大雪山国立公園内トムラウシ地区地熱発電計画中止の要望書」を提出しました。
要望書の骨子は次のようです。
(1) 大雪山国立公園は日本最大の国立公園であり、その原生的自然は国際的にきわめて高く評価される地域である。
(2) 計画されているトムラウシ山麓東部には生物多様性保全の屋台骨ともいえる原生自然環境保全地域があり、この隣接部での開発は大きな問題がある。
(3) 林野庁は十勝川源流部原生自然環境保全地域の周辺地域で更生プロジェクトに着手し、本来の森林を復元する取り組みを始めたところである。
そして要望書の末尾で以下のように訴えています。
「私たちの世代で、大雪山国立公園の自然環境をこれ以上衰退させないよう、トムラウシ地区の地熱発電計画については、計画段階の初期調査を含め、計画そのものを中止することを強く要望します。」
また、同趣旨の文書を電源開発株式会社(以下電源開発)にも提出しました。
その後、優良事例の条件たる「地元の合意形成」が作られず、2016年5月に電源開発が「一時(いっとき)間をとる」との意向を示していたことが明らかになりました。
しかしながら、貴職は本年の町長選挙において「地熱開発」を公約に掲げ、11月のトムラウシ地区における懇話会では引き続きその姿勢を明らかにし、11月17日には電源開発本社を訪れて調査実施を要望したことを町議会で行政報告をしています。
計画当該地域の自然環境は全く変わっておらず、引き続き計画中止を求めるものです。
ついては、以下の質問に回答いただきたく存じます。
(1)2014年の計画中止要望書について貴職はどのようにお考えですか。
(2)計画を推進する理由をお聞かせください。
(3)この時期に電源開発に要請されたことは、本年4月以降の環境省の施策と関係があるのでしょうか。
年末でご多忙とは存じますが、12月24日までに回答いただきたくお願いいたします。
********************
2021年12月12日
新得町長 浜田 正利 様
十勝自然保護協会 共同代表 安藤 御史
佐藤与志松
佐藤与志松
大雪山国立公園内トムラウシ地区地熱発電計画中止を求める要望および質問
2014年10月27日付で、自然保護団体7団体(新得おもしろ調査隊、十勝川源流部を考える会、公益財団法人 日本自然保護協会、一般社団法人 北海道自然保護協会、北海道自然保護連合、大雪と石狩の自然を守る会、十勝自然保護協会)は、貴職および経済産業大臣・環境大臣・林野庁長官に宛て「大雪山国立公園内トムラウシ地区地熱発電計画中止の要望書」を提出しました。
要望書の骨子は次のようです。
(1) 大雪山国立公園は日本最大の国立公園であり、その原生的自然は国際的にきわめて高く評価される地域である。
(2) 計画されているトムラウシ山麓東部には生物多様性保全の屋台骨ともいえる原生自然環境保全地域があり、この隣接部での開発は大きな問題がある。
(3) 林野庁は十勝川源流部原生自然環境保全地域の周辺地域で更生プロジェクトに着手し、本来の森林を復元する取り組みを始めたところである。
そして要望書の末尾で以下のように訴えています。
「私たちの世代で、大雪山国立公園の自然環境をこれ以上衰退させないよう、トムラウシ地区の地熱発電計画については、計画段階の初期調査を含め、計画そのものを中止することを強く要望します。」
また、同趣旨の文書を電源開発株式会社(以下電源開発)にも提出しました。
その後、優良事例の条件たる「地元の合意形成」が作られず、2016年5月に電源開発が「一時(いっとき)間をとる」との意向を示していたことが明らかになりました。
しかしながら、貴職は本年の町長選挙において「地熱開発」を公約に掲げ、11月のトムラウシ地区における懇話会では引き続きその姿勢を明らかにし、11月17日には電源開発本社を訪れて調査実施を要望したことを町議会で行政報告をしています。
計画当該地域の自然環境は全く変わっておらず、引き続き計画中止を求めるものです。
ついては、以下の質問に回答いただきたく存じます。
(1)2014年の計画中止要望書について貴職はどのようにお考えですか。
(2)計画を推進する理由をお聞かせください。
(3)この時期に電源開発に要請されたことは、本年4月以降の環境省の施策と関係があるのでしょうか。
年末でご多忙とは存じますが、12月24日までに回答いただきたくお願いいたします。
2015年04月22日
辻村千尋氏講演「国立公園における地熱開発の規制緩和の経緯と問題点」
4月19日に帯広市で開催された辻村千尋氏(日本自然保護協会 保護部主任)の講演「国立公園における地熱開発の規制緩和の経緯と問題点」の概要を紹介します。
国立公園における地熱開発の規制緩和の経緯と問題点 辻村千尋
日本自然保護協会の国立公園での地熱開発についての基本スタンスは、原子力発電をなくすこと、省エネを第一に進め、地域の自然にあったエネルギーシステムに転換することを前提とし、自然再生可能エネルギーとしての地熱発電や風力発電等の導入を否定するものではない。
しかし、自然環境や生物多様性に与える影響、温泉への影響など、問題点の議論が不十分であり、デメリットも含めたコンセンサスづくりが必要である。
2010年6月18日に再生可能エネルギーの導入促進に向け、環境省に対して国立公園での規制緩和を検討するよう閣議決定がなされた。これを受け、環境省は2011年6月から2012年2月にかけて5回にわたって「地熱発電事案に関わる自然環境影響検討会」を開催し、科学的な議論を実施した。日本自然保護協会はこの会議において専門家として以下の点について科学的な指摘をした。
①国立・国定公園と地熱発電との関係
国立・国定公園は特別保護地区、特別地域(第1種~第三種)、普通地域に区分されている(地種区分)。しかし、実際には自然度と地種区分が合致しておらず、バッファーのない特別保護地区や特別地域があったり、規制の弱い、あるいは保護されていない重要な自然環境がある。地熱発電所が計画されているトムラウシ地区(第三種特別地域)はすぐ隣りに原生自然環境保全地域があり、バッファーがない。地種区分の拡充や再編が必要である。
②持続可能性についての疑問
地熱発電を行うための生産井は寿命があり、次々と新しい井戸を掘り続けなければならない。また、生産井からの蒸気や熱水は還元井によって地下に戻すシステムだが、水蒸気として大気に出ていくものもあるので、すべて地下に還元できるわけではない。
③不確実性と予防原則について
蒸気が取り出せるかどうかは、実際に掘ってみないと分からないという不確実性があり、蒸気が出なければ堀り直すことになる。また地下2000~3000メートルのところに空気を嫌う微生物がいることが分かっており、このような微生物にどのような影響を及ぼすのか分からない。したがって予防原則の立場をとるべきである。
④地表部の自然保護上の問題点について
森林であったところにパイプラインだらけの工場が出現することになり、景観を破壊する。
⑤環境影響評価の手続きについて
資源探査は環境アセスメントの対象にならない。しかし、道路の開削や坑井などの開発行為が伴う。また試験井を掘って蒸気がでればそれを使うことになり、事業に移行する。
⑥自然保護上の解決を要する技術的課題
パイプラインの景観、ヒ素を含む還元水の地下への影響、火山景観への影響、大量の還元水の地盤変動への影響、噴気蒸気の不安定さと掘削井の持続性への疑問、人の健康に与える影響など、自然保護上解決しなければならない課題がある。
これらのことから、日本自然保護協会としては、地熱発電所は国立・国定公園内では行うべきではなく、規制緩和には反対であるとの意見を表明した。そして、検討会では普通地域での開発は個別判断で認める、第二種および第三種特別地域への地下へのななめ掘りは地表面に影響がなければ認める、これ以外については合意できず両論併記、の三点が合意された。
しかし、環境省としての結論は、①普通地域は認める、②地表でも、第二種および第三種特別地域での開発を優良事例に限り認める、③特別保護地区、第一種特別地域も調査は認める、ということになり、検討会での科学的議論が軽視されてしまった。これは政治的な判断がなされたことを意味する。
人口が減少していく中で、どれだけ電力が必要なのか、省エネがどこまで可能なのかという議論がない。国立・国定公園での地熱開発は公園指定を解除するに等しく、自然公園の風景と調和しない工作物は許可してはならない。生物多様性の保全上も、国立・国定公園での地熱開発許可は難しい。
地球温暖化への対処と生物多様性の保全は両立させなければならず、温暖化対策のために生物多様性を壊すのは矛盾する。
日本の山岳地帯は3000m級の山としては世界一の強風にさらされている。これは、ヒマラヤ山脈で分流したジェット気流が日本で合流するためである。また、日本は氷期に氷河で全体が覆われなかったため、植物の絶滅が免れた。地質も複雑である。このような要因が重なり、日本は生物のホットスポットとなっており、国立公園で守っていかなければならない。
2010年に名古屋で開催されたCOP10(生物多様性条約第10回締結国会議)で、「陸域及び内陸水域の17%の保全」が採択されたが、この17%は保安林も含めてようやくクリアされた。
歴史学者の色川大吉氏は著作で「風景が無くなるということは、その歴史がなくなるということ」と記しているが、この言葉をしっかりと受け止めていかなければならない。
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国立公園における地熱開発の規制緩和の経緯と問題点 辻村千尋
日本自然保護協会の国立公園での地熱開発についての基本スタンスは、原子力発電をなくすこと、省エネを第一に進め、地域の自然にあったエネルギーシステムに転換することを前提とし、自然再生可能エネルギーとしての地熱発電や風力発電等の導入を否定するものではない。
しかし、自然環境や生物多様性に与える影響、温泉への影響など、問題点の議論が不十分であり、デメリットも含めたコンセンサスづくりが必要である。
2010年6月18日に再生可能エネルギーの導入促進に向け、環境省に対して国立公園での規制緩和を検討するよう閣議決定がなされた。これを受け、環境省は2011年6月から2012年2月にかけて5回にわたって「地熱発電事案に関わる自然環境影響検討会」を開催し、科学的な議論を実施した。日本自然保護協会はこの会議において専門家として以下の点について科学的な指摘をした。
①国立・国定公園と地熱発電との関係
国立・国定公園は特別保護地区、特別地域(第1種~第三種)、普通地域に区分されている(地種区分)。しかし、実際には自然度と地種区分が合致しておらず、バッファーのない特別保護地区や特別地域があったり、規制の弱い、あるいは保護されていない重要な自然環境がある。地熱発電所が計画されているトムラウシ地区(第三種特別地域)はすぐ隣りに原生自然環境保全地域があり、バッファーがない。地種区分の拡充や再編が必要である。
②持続可能性についての疑問
地熱発電を行うための生産井は寿命があり、次々と新しい井戸を掘り続けなければならない。また、生産井からの蒸気や熱水は還元井によって地下に戻すシステムだが、水蒸気として大気に出ていくものもあるので、すべて地下に還元できるわけではない。
③不確実性と予防原則について
蒸気が取り出せるかどうかは、実際に掘ってみないと分からないという不確実性があり、蒸気が出なければ堀り直すことになる。また地下2000~3000メートルのところに空気を嫌う微生物がいることが分かっており、このような微生物にどのような影響を及ぼすのか分からない。したがって予防原則の立場をとるべきである。
④地表部の自然保護上の問題点について
森林であったところにパイプラインだらけの工場が出現することになり、景観を破壊する。
⑤環境影響評価の手続きについて
資源探査は環境アセスメントの対象にならない。しかし、道路の開削や坑井などの開発行為が伴う。また試験井を掘って蒸気がでればそれを使うことになり、事業に移行する。
⑥自然保護上の解決を要する技術的課題
パイプラインの景観、ヒ素を含む還元水の地下への影響、火山景観への影響、大量の還元水の地盤変動への影響、噴気蒸気の不安定さと掘削井の持続性への疑問、人の健康に与える影響など、自然保護上解決しなければならない課題がある。
これらのことから、日本自然保護協会としては、地熱発電所は国立・国定公園内では行うべきではなく、規制緩和には反対であるとの意見を表明した。そして、検討会では普通地域での開発は個別判断で認める、第二種および第三種特別地域への地下へのななめ掘りは地表面に影響がなければ認める、これ以外については合意できず両論併記、の三点が合意された。
しかし、環境省としての結論は、①普通地域は認める、②地表でも、第二種および第三種特別地域での開発を優良事例に限り認める、③特別保護地区、第一種特別地域も調査は認める、ということになり、検討会での科学的議論が軽視されてしまった。これは政治的な判断がなされたことを意味する。
人口が減少していく中で、どれだけ電力が必要なのか、省エネがどこまで可能なのかという議論がない。国立・国定公園での地熱開発は公園指定を解除するに等しく、自然公園の風景と調和しない工作物は許可してはならない。生物多様性の保全上も、国立・国定公園での地熱開発許可は難しい。
地球温暖化への対処と生物多様性の保全は両立させなければならず、温暖化対策のために生物多様性を壊すのは矛盾する。
日本の山岳地帯は3000m級の山としては世界一の強風にさらされている。これは、ヒマラヤ山脈で分流したジェット気流が日本で合流するためである。また、日本は氷期に氷河で全体が覆われなかったため、植物の絶滅が免れた。地質も複雑である。このような要因が重なり、日本は生物のホットスポットとなっており、国立公園で守っていかなければならない。
2010年に名古屋で開催されたCOP10(生物多様性条約第10回締結国会議)で、「陸域及び内陸水域の17%の保全」が採択されたが、この17%は保安林も含めてようやくクリアされた。
歴史学者の色川大吉氏は著作で「風景が無くなるということは、その歴史がなくなるということ」と記しているが、この言葉をしっかりと受け止めていかなければならない。
2015年04月21日
シンポジウム「大雪山国立公園トムラウシの地熱発電計画を問う」報告

4月18日に新得町で「シンポジウム大雪山国立公園トムラウシの地熱発電計画を問う」が開催され、在田一則氏(北海道自然保護協会会長)、寺島一男氏(大雪と石狩の自然を守る会代表)、辻村千尋氏(日本自然保護協会保護部主任)の講演が行われました。シンポジウムには約80人が参加し、後半のディスカッションでは多くの方から質問や意見が出され盛会に終わりました。また翌19日には帯広市で辻村千尋氏による講演会が開催されました。
以下にシンポジウムの講演要旨を掲載します。
地質学から見た地熱発電 在田一則
地球は現在も活発に活動している熱機関である。その熱源は、地球深部に残っている地球誕生時(46億年前)の熱と岩石に含まれている放射性元素の崩壊による熱とがほぼ半々であり、そのエネルギーによってプレート運動が生じ、その結果、火山活動や地震活動が生じ、大山脈が形成される。
地球深部から地表に運ばれてくる熱(地殻熱流量))は平均的には40~70mW/㎡程度であり、地球が太陽から受ける熱の約1/2,500に過ぎない。しかし、これは、岩石の熱伝導から産出されるものであり、大洋の中央海嶺や島弧などの火山帯においてはマグマやそれに関連する熱水系が、局所的ではあるが、地球内部の熱(地熱)を運ぶうえで重要な役割を果たしている。
たとえば、太平洋中央海嶺上にあり、さらにホットスポットでもあるアイスランドは地熱が豊富で、電力供給の26%が地熱発電によっており、地熱発電の宣伝によく使われる。ただし、人口はたったの32万人であることに注意すべきである。
太平洋プレートやオホーツクプレートがユーラシア大陸に沈み込むことによって、火山活動が活発な日本列島では、自然再生エネルギーである地熱も利用すべきであるが、世界的にも優れた生物多様性に富む日本では、設置場所などについて十分検討すべきである。
講演では以下の内容についてお話する予定です。
地球は熱機関である/地熱の熱エネルギーがもたらずプレート運動/地球・日本の地殻熱流量/マグマと熱水系/熱水系における循環/地熱発電の課題
地熱発電の仕組みと白水沢の現状 寺島一男
地熱地帯でもうもうと白煙を上げ自噴する水蒸気を見ると、誰しもエネルギーとして有効利用できないものかと考えます。膨大な地熱が地球内部に存在し、火山活動によってその現象が地表に現れているとするなら、世界きっての火山国である日本は無尽蔵のエネルギー資源を抱えていることになります。
もし、発電として利用するなら、季節に関係なく昼夜にとらわれず安定したベース電源を確保でき、しかも他の自然再生可能エネルギーと組み合わせて利用すれば、原発などに依存せずに安心して使うことができます。一律で画一的な発電源に頼るのではなく、それぞれの地域に依存した地産地消の多様なエネルギーを形成し、地域振興にも役立たせることができます。今地熱発電に関してこのようなことが語られています。果たして本当でしょうか。これらの言葉を額面通りに受け取れば、地熱発電に対する期待は大きく膨らみ、不安をかき立てているエネルギー問題にも一条の光が射し込んでいるように思われます。しかし、現実はすべてがバラ色の夢だとは言いませんが地熱発電開発にはたくさんのデメリットもあり、多くの問題や課題が横たわっています。そのギャップは私たちが想像する以上に大きいと考えられます。
自然現象として地熱活動が現れているときは、それは私たち人間にとっては尽きることのない現象ですが、いったんエネルギーとして活用するために施設化すれば、その時点から施設とエネルギーに寿命が生じ、環境の変化が起こります。また、地熱発電開発の多くは、国立公園や国定公園というわが国を代表する優れた自然の中で行われます。その価値との見合いはどうなるのか。これまでのエネルギーの大量生産・消費・廃棄等が、地球環境の危機を招くまでに至っている中で、また、大幅な人口減少が予測されている中でこれまでと同様のエネルギー確保が必要なのか、トータルな議論も必要と思われます。
これらのことを念頭に、地熱発電における電力のしくみと問題点について、また、大雪山国立公園ではトムラウシ地熱発電計画と同様に白水沢でも計画が進んでいることから、その現状についてもお話したいと考えています。
国立公園における地熱開発の規制緩和の経緯と問題点 辻村千尋
地熱発電は、持続可能な再生可能エネルギーもしくは、純国産エネルギーと認識され、今後のベース電源としての期待が高まっている。しかし、その開発可能地域の多くが国立公園として自然保護が優先される地域に存在している。演者は、環境省により地熱発電開発の国立公園での取り扱いを検討した委員会に専門家としてヒアリングを受けたが、その際に、地熱発電が自然環境に及ぼす悪影響について、科学的に指摘をし、国立公園での開発はするべきではないと提言した。
今回は、このヒアリングの際に提言した内容と、その後の環境省の通知が見直される過程において科学的な議論が軽視された経緯を明らかにしたい。同時に、今後の電力供給に関する方向性についても議論のきっかけになるような問題提起をさせて頂く。
2014年10月27日
自然保護団体がトムラウシ地区での地熱発電計画中止を要望
電源開発株式会社がトムラウシ地区に計画している地熱発電開発について、日本自然保護協会と道内の6団体が計画中止を求める要望書を関係省庁に送付し、地元自治体である新得町には面談のうえ手渡ししました。
書面の提出先は経済産業大臣、環境大臣、林野庁長官、新得町長です。中止を申し入れた団体は新得おもしろ調査隊、大雪と石狩の自然を守る会、十勝川源流部を考える会、十勝自然保護協会、公益財団法人日本自然保護協会、一般社団法人北海道自然保護協会、北海道自然保護連合(五十音順)です。
なお、事業者である電源開発に対しても、同主旨の文書を送付しました。
提出文書(本文)は以下です。
大雪山国立公園内トムラウシ地区において、電源開発株式会社により地熱発電開発が計画されています。
大雪山国立公園は、今年で国立公園指定80周年を迎えておりますが、生物多様性、希少性に恵まれ、ここでしか見られない種が多数生息し、我が国の至宝と言える日本最大の国立公園です。そのため、この国立公園は、世界自然遺産およびラムサール条約湿地の候補に挙げられるなど、国際的にきわめて高く評価される地域です。
とくに大雪山国立公園南部、トムラウシ山東麓の十勝川源流部には、国内で5地域指定されている原生自然環境保全地域があり、我が国ならびに北海道において、また大雪山国立公園においても、数少なくなった原生のままの亜高山針葉樹林が残されています。ところが、原生自然環境保全地域の西側に隣接する国立公園第二種および第三種特別地域に、問題の地熱発電開発が計画されています。ここは2013年4月には、北海道森林管理局によって、十勝川上流森林生物遺伝資源保存林に指定されております。しかも、北海道森林管理局は、すでに自然環境保全法による原生自然環境保全地域を「トドマツ・エゾマツ原生保護林」として、またその周辺地域を「大雪山原生林保護林」として指定しておりますので、この十勝川源流一帯が、我が国の中で、亜高山針葉樹林が良く残された重要な地域であることが明らかです。
地熱は、再生可能な持続性のあるエネルギー源として、とても大切な資源であることに異論はありません。しかし、この地域における地熱資源がたとえ豊かであったとしても、その開発の是非は総合的に検討されなければなりません。地熱発電によって現世代が利便を得たとしても、我が国の自然を代表する地域において、生物多様性の屋台骨である原生自然環境保全地域の周辺で、第二種および第三種特別地域と十勝川上流森林生物遺伝資源保存林に損失を与えて、後の世代の享受を妨げることが有益であるはずがありません。
大雪山国立公園では、かつて存在した原始的な森林が著しく減少した事実があり、その責任が私たちの世代にあることも認めなければなりません。このようななか、林野庁は十勝川原生自然環境保全地域の周辺地域で更生プロジェクトに着手し、本来の森林を復元する取り組みを始めたところです。
私たちの世代で、大雪山国立公園の自然環境をこれ以上衰退させないよう、トムラウシ地区の地熱発電計画については、計画段階の初期調査を含め、計画そのものを中止することを強く要望します。
書面の提出先は経済産業大臣、環境大臣、林野庁長官、新得町長です。中止を申し入れた団体は新得おもしろ調査隊、大雪と石狩の自然を守る会、十勝川源流部を考える会、十勝自然保護協会、公益財団法人日本自然保護協会、一般社団法人北海道自然保護協会、北海道自然保護連合(五十音順)です。
なお、事業者である電源開発に対しても、同主旨の文書を送付しました。
提出文書(本文)は以下です。
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2014年10月27日
大雪山国立公園内トムラウシ地区地熱発電計画中止の要望書
大雪山国立公園内トムラウシ地区において、電源開発株式会社により地熱発電開発が計画されています。
大雪山国立公園は、今年で国立公園指定80周年を迎えておりますが、生物多様性、希少性に恵まれ、ここでしか見られない種が多数生息し、我が国の至宝と言える日本最大の国立公園です。そのため、この国立公園は、世界自然遺産およびラムサール条約湿地の候補に挙げられるなど、国際的にきわめて高く評価される地域です。
とくに大雪山国立公園南部、トムラウシ山東麓の十勝川源流部には、国内で5地域指定されている原生自然環境保全地域があり、我が国ならびに北海道において、また大雪山国立公園においても、数少なくなった原生のままの亜高山針葉樹林が残されています。ところが、原生自然環境保全地域の西側に隣接する国立公園第二種および第三種特別地域に、問題の地熱発電開発が計画されています。ここは2013年4月には、北海道森林管理局によって、十勝川上流森林生物遺伝資源保存林に指定されております。しかも、北海道森林管理局は、すでに自然環境保全法による原生自然環境保全地域を「トドマツ・エゾマツ原生保護林」として、またその周辺地域を「大雪山原生林保護林」として指定しておりますので、この十勝川源流一帯が、我が国の中で、亜高山針葉樹林が良く残された重要な地域であることが明らかです。
地熱は、再生可能な持続性のあるエネルギー源として、とても大切な資源であることに異論はありません。しかし、この地域における地熱資源がたとえ豊かであったとしても、その開発の是非は総合的に検討されなければなりません。地熱発電によって現世代が利便を得たとしても、我が国の自然を代表する地域において、生物多様性の屋台骨である原生自然環境保全地域の周辺で、第二種および第三種特別地域と十勝川上流森林生物遺伝資源保存林に損失を与えて、後の世代の享受を妨げることが有益であるはずがありません。
大雪山国立公園では、かつて存在した原始的な森林が著しく減少した事実があり、その責任が私たちの世代にあることも認めなければなりません。このようななか、林野庁は十勝川原生自然環境保全地域の周辺地域で更生プロジェクトに着手し、本来の森林を復元する取り組みを始めたところです。
私たちの世代で、大雪山国立公園の自然環境をこれ以上衰退させないよう、トムラウシ地区の地熱発電計画については、計画段階の初期調査を含め、計画そのものを中止することを強く要望します。
2014年09月21日
今年も「とかち・市民環境交流会」で発表


昨日、帯広のとかちプラザで「とかち・市民環境交流会」が開催されました。今年は口頭の発表会はなかったのですが、展示に参加しました。
当会では「今、十勝の自然が危ない」とのタイトルで、十勝の自然保護問題を取り上げました。とくに大きく取り上げたのは、大雪山国立公園のトムラウシ地区で電源開発株式会社が計画している地熱発電問題です。ほかに、裁判になっている佐幌岳のナキウサギ生息地の破壊問題、居辺川に計画されている床固工群などの問題、帯広農高のカシワ林問題、更別村のヤチカンバ保護問題、外来種問題などを取り上げました。
タグ :とかち・市民環境交流会地熱発電