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2010年12月01日

セイヨウオオマルハナバチの侵入についての回答

 環境省所管地である十勝三股へのセイヨウオオマルハナバチの侵入についての質問書(11月20日付)に対する回答(11月30日付)が環境省北海道地方環境事務所長からありましたので掲載します。
 質問1(報道機関等に情報提供をしなかった理由)には答えていませんし、質問2(自然保護団体が指摘していたにも関わらずルピナスの駆除などの予防措置をとらなかった理由)については責任回避の回答となっているなど、納得しがたい内容となっています。
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大雪山国立公園、十勝三股におけるセイヨウオオマルハナバチの
侵入と駆除対策について(回答)

 日頃より環境行政、とりわけ大雪山国立公園の保護管理につきまして、ご理解ご協力を賜り有り難うございます。
 貴十勝自然保護協会および貴北海道自然保護連合より、平成22年11月20日付けでご質問を頂きましたことにつきまして、以下のとおりお答えいたします。
 今年8月後半に、大雪山国立公園の十勝三股でセイヨウオオマルハナバチの女王が発見されたことにつきましては、発見者の方から北海道地方環境事務所職員にご連絡を頂いております。ご案内のように、セイヨウオオマルハナバチは、在来種を圧迫するだけでなく、高山植物の受粉を阻害し影響が懸念されることから、特に高山帯への侵入を防ぐことが重要であり、そのためにも山麓部の十勝三股への定着を防がなければなりません。
 そこで当事務所では、セイヨウオオマルハナバチの防除は女王バチが営巣行動を行う4~6月に行うのが効果的とされていることを勘案し、十勝三股における防除を来年春の実施に向けて準備を進めることとしており、その際には報道機関等への情報提供も行いつつ、より多くの人の協力を仰いで実施してまいりたいと思います。
 環境省所管地のある十勝三股には、今回発見されたセイヨウオオマルハナバチや、ご指摘のルピナスに限らず、様々な自然環境保全上の問題や課題があります。これらの問題や課題は関連するものも少なくなく、総合的に取り組むことが必要となっております。当事務所では、現在、大雪山国立公園としての十勝三股を含む東大雪地域全体の整備基本計画を、地域の方々にも参画頂きながら策定中ですが、この地域に位置する十勝三股地区の自然環境の保全・管理のあり方についても、その中に位置づけることとしており、そのうえでルピナスやカラマツなどの除去を含め、問題と課題解決に向けた取り組みを実施してまいります。
 なお、セイヨウオオマルハナバチにつきましては、平成18年に黒岳、平成19年には旭岳で発見されており、既に高山帯への侵入が確認されています。このため当事務所では、平成18年度以降、大雪山国立公園パークボランティアの方々のご協力も頂いてモニタリング調査を実施してきたところです。その後、高山帯でのセイヨウオオマルハナバチは散発的に発見され、その都度防除しておりますが、引き続きこの地域でのモニタリングと防除を実施してまいります。
 また、平成19年からセイヨウオオマルハナバチが多数捕獲され、十勝三股を含む東大雪地域への供給源となるおそれがある士幌町において、士幌町や地元JAとともに防除活動を実施するとともに、防除や適正飼養に関する普及啓発に努めてきているところであり、今後も、地域住民の方々をはじめ関係者の方々とともに防除活動に取り組んでまいりたいと思います。
 以上、どうぞよろしくお願いいたします。
  


Posted by 十勝自然保護協会 at 22:22Comments(1)外来種問題

2010年11月20日

十勝三股にセイヨウオオマルハナバチ侵入

 今年8月、大雪山国立公園の十勝三股でセイヨウオオマルハナバチの女王が確認されていたことが明らかになりました。十勝三股ではルピナスが繁茂し、本種の侵入が懸念されていました。当会と北海道自然保護連合は、十勝三股の土地管理者である環境省北海道地方環境事務所に対し下記の質問書を11月20日付けで送付しました。
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大雪山国立公園、十勝三股におけるセイヨウオオマルハナバチの
侵入と駆除対策についての質問書

 すでに貴職もご承知のことと思いますが、今年8月、大雪山国立公園の環境省所管地である十勝三股でセイヨウオオマルハナバチの女王が採集されました。これに関し貴職にお尋ねしなければならないことがあります。以下の質問に回答していただきたくお願いいたします。ご多忙とは思いますが、回答は11月30日までに書面でお願いいたします。
 
質問1 特定外来生物の駆除にあたっては、個体数の少ない段階で駆除に取り組むことが有効であり、多くの人の協力を仰ぐためにも広く周知すべきと考えます。しかし貴職が本件について報道機関等への情報提供をしたという話は伝わってきません。なぜ各方面に周知しないのでしょうか、理由を明らかにしてください。

質問2 十勝三股には園芸種であるルピナスが野生化し大きな群落をつくっています。マメ科植物のルピナスの受粉にはマルハナバチ類の訪花が不可欠です。つまり十勝三股はセイヨウオオマルハナバチにとって多量の蜜源が存在する魅力的な空間であると認識しなければなりません。今年6月15日に、われわれはナキウサギふぁんくらぶ代表とともに貴所を訪れ、十勝三股のカラマツ駆除の申入れをしましたが、その際、セイヨウオオマルハナバチを誘引するルピナス駆除の必要性も指摘しました。それにもかかわらず、貴職はルピナス駆除などセイヨウオオマルハナバチ侵入防止の予防措置をとらなかったようですが、それはなぜですか、理由を明らかにしてください。

質問3 十勝三股でセイヨウオオマルハナバチが個体数を増加させると、高山帯への進入の危険性がより高まることになります。どのような対策を考えているか明らかにしてください。

 自らの所管地に特定外来生物の侵入を許したということを深く反省し、徹底した対策をとられるよう希望します。
  


Posted by 十勝自然保護協会 at 17:40Comments(0)外来種問題

2010年06月23日

生物多様性保全に対する環境省の意識レベル

 大雪山国立公園十勝三股の環境省所管地で野生化しているカラマツの駆除を求め、6月15日に札幌の北海道環境事務所へ行ってきました。申入れに参加したのは松田共同代表、川辺事務局長、大雪と石狩の自然を守る会の寺島代表、ナキウサギふぁんくらぶの市川代表。

 対応した国立公園・保全整備課長は、今年、三股の所管地の植生や生き物を調べ、これからの保全や活用について、地元の町・地域の方がたの意見を聞きたいと思っている。植生をどうしていくのが望ましいか合意形成を図りながら進めたい。時間を与えていただけるとありがたい、と弁明しました。10月の名古屋での生物多様性締約国会議までに十勝三股の環境省所管地のカラマツ駆除について態度を明らかにせよと迫りましたが、明確な意思を示しませんでした。

 「ふれあい自然塾」なる怪しげな事業をするといって、十勝三股の48ヘクタールが林野庁から環境省へ所管替えになったのは10年以上も前のこと。この時このふれあい自然塾を担当していたのが、現在、北海道環境事務所統括自然保護企画官をしている坂本真一さんでした。坂本さんは、北海道地方環境事務所の主催で5月22日に開催された「北海道の生物多様性フォーラム」のシンポジウム「生物多様性地域対話 in 北海道~市民・企業ができる生物多様性への取り組み~」のなかで「生物多様性政策とその動向」と題して話をしています。恐らく生物多様性保全のため、環境省はこんなことをやって努力しています、と語ったことでしょう。しかし、この坂本さん、自然保護NGOの 要請を受けた十勝三股のカラマツ駆除については、まったく取り組みをしていなかったのです。
 
 今月26日に、北大などの主催でシンポジウム「北方の文化と環境再生、生物多様性、北海道の環境政策」が開催されます。ここで生物多様性締約国会議に関わっている黒田大三郎環境省参与が「生物多様性の保全をめぐる国際的動向と日本の取組み」と題して講演をするそうです。十勝三股のカラマツ駆除について、当会は2007年に環境大臣宛に要請文を提出しましたが、このころ黒田さんは本省の幹部(自然環境局長か審議官)をしていましたので、この申入れのことは知っていたことでしょう。黒田さんは、かつて上士幌の大雪山国立公園管理事務所に勤務していましたので、十勝三股の事情をよく知る数少ない環境省の幹部でもありました。黒田さんは、26日の講演で生物多様性保全の意義について力説するのでしょうが、自分のところの所管地の外来種対応についても、きちんと態度を表明して欲しいものです。

 わざわざ札幌へ出向きましたが、期待は裏切られてしまいました(半分予想していましたが)。環境省は、生物多様性保全のため国民への啓発活動に取り組んでいるようですが、その前に必要なことは、自分のところの職員の意識改革への取り組みでしょう。この国の環境省の進化速度は極めて遅い、これが今回の交渉を通じて痛感したことでした。その意味でも、日本列島の自然環境保全は自然保護NGOの奮闘にかかっているといえましょう。
  


Posted by 十勝自然保護協会 at 16:56Comments(0)外来種問題

2010年06月13日

生物多様性締約国会議開催と環境省の見識

 今年10月に生物多様性条約第10回締約国会議が名古屋で開催されます。しかし、本当にこの国がこの会議を開催するに値する国であるかということに疑念を抱かざるをえません。環境省の所有地である大雪山国立公園の十勝三股では外来種のカラマツの野生化が放置されているのです。当会がカラマツの駆除を求め2007年に下の要請文を環境大臣に提出したにもかかわらず、見てみ見ぬ振りをして放置しているのです。締約国会議開催にあたり、事の重大性を理解してもらうため、15日に北海道環境事務所へ出向くことにしました(十勝から札幌は遠いナー。国民にこんな苦労をかけていいのかい)。交渉の結果については、後日報告いたします。乞うご期待。

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2007年11月14日


環境大臣 鴨下一郎 様
環境省北海道地方環境事務所所長 様

十勝自然保護協会会長 安藤御史



環境省所管地における外来種駆除の要請


 一昨年の「外来生物法」の施行に伴い、貴省がセイヨウオオマルハナバチ等外来種の駆除に取り組まれていることに対し、自然保護NGOとしても喜ばしく思っております。
 さて、大雪山国立公園の十勝支庁管内北部に十勝三股というところがあります。ここは先年、貴省が「ふれあい自然塾」なる事業を展開するとの目的で林野庁から土地を購入したところです。
 この十勝三股には、過去に林野庁が植栽したカラマツが少なからずあります。これらのカラマツのなかは胸高直径が30cmに達しているものもあり、多くの種子を生産しています。カラマツの種子は風により周囲の荒地に運ばれて発芽し、すでに人間の背丈を越えるまでに生育しているものもあります(別添写真1、2)。
 この十勝三股から南へ20kmほどのところに黒石平というところがあります。ここも大雪山国立公園に含まれています。黒石平は50年ほど前、ダム建設にともない水力発電関係者の集落が形成されましたが、現在居住者はおりません。ここでもカラマツが植栽されました。成木となったカラマツから野球場跡地へ種子が散布され、生育したカラマツが人工林のようになりました(別添写真3)。
 このことは、十勝三股においてもこのまま放置すると、黒石平のような状態になる可能性が極めて高いことを示唆しています。
 いうまでもなくカラマツは北海道自生種ではなく、本州中部から木材生産のため持ち込まれた外来種です。放置し成木が多くなればなるほど、周辺の天然林への動物による種子散布の危険性が高まります。つまり、本来の森林生態系に取り返しがつかない改変が引き起こされることになります。
 このようなことを十分配慮され、貴職におかれては国立公園内の自らの所管地に外来種であるカラマツを放置することなく、速やかに駆除されますよう要請いたします。
 なお、先述の黒石平のカラマツは、地権者である電源開発株式会社が自然保護NGOの要請を受け、自然公園法さらには生物多様性条約を遵守する観点から既にカラマツの駆除を終えておりますことを申し添えておきます。



写真2.大雪山国立公園十勝三股(環境省所管地)で野生化するカラマツ




写真3.大雪山国立公園上士幌町黒石平で野球グランド跡地に繁茂するカラマツ。ただしこのカラマツは2007年春に「駆除」された。


  


Posted by 十勝自然保護協会 at 10:26Comments(0)外来種問題