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十勝自然保護協会 活動速報 › ヤチカンバ保護問題

2023年12月13日

更別湿原のヤチカンバ保全についての回答

 11月13日付の「北海道指定天然記念物「更別湿原のヤチカンバ」保全についての質問」に対し、更別村教育長から以下の回答がありました。

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更   教   号
令和5年11月29日


十勝自然保護協会
共同代表 安藤 御 史  様
     佐藤 与志松  様
更別村教育委員会   
教育長 細 川  徹


北海道指定天然記念物「更別湿原のヤチカンバ」保全に関わる質問書への回答について

2023年11月13日付け標記質問書について、下記のとおり回答いたします。



1 前回の質問に対する回答以降の保全対策の進捗状況について
・前回の質問書への回答では2022(令和4)年度実施の調査等(保護地域内植生図作成、オオイタドリ駆除試験)の結果までご回答差し上げたところです。
・その後、2023(令和5)年度には、有識者の指導を受けながら大きく分けて3つの保全事業を実施いたしました。
・1つ目はヤチカンバ保護優先区画の設定です。2021年度実施のヤチカンバ保護地域内現況調査において、保護地域内のヤチカンバ個体数が大幅に減少していた実態に鑑み、ヤチカンバの種の保護のため、周囲の他の植物の影響を受けない区画を設定し、優先的に保護を進め、また、保護地域への来訪者がヤチカンバを視認できるようにすることを目的に実施しました。具体的には保護地域内に2カ所の優先区画を設定しました。1カ所目は平成20年度にヤチカンバを移植した区画、2カ所目は道道210号付近のヤチカンバが生育する区画です。具体的な方法としては、区画内に生育する草本類を鎌や除草機で刈り取りました。また、ヤチカンバ移植区画の北・東側(オオイタドリ分布範囲側)には幅6mの防草シートを敷設し、オオイタドリの除草後の再生を抑制するための対策を行いました。これらの区画のヤチカンバ個体についてはシュート本数や地際直径等を次年度以降にモニタリングしていく予定です。
・2つ目は植生再生試験(地盤掘り下げ)の実施です。保護地域が「更別湿原のヤチカンバ」として北海道の天然記念物に指定されていることを踏まえ、湿原として保全していくことの可否を検討するため、土壌の掘り下げにより湿原植生が回復していくかどうかを調査することを目的に実施しました。具体的な方法としては、他の湿原での調査事例を参考にして、2m四方の地盤掘り下げ区画を3カ所設定し、それぞれ10cm、20cm、30cmの深さに掘り下げました。当該区画は次年度以降にモニタリングしていく予定です。
・3つ目はエゾヤマナラシの防除(伐採)です。過去の調査よリヤチカンバを被陰する高さまで成長する植物によるヤチカンバの生育阻害が確認されていることから、その1種であり広範囲に生育しているエゾヤマナラシを伐採し、ヤチカンバヘの日照を確保するとともに、保護区域内の景観も保全することを目的に実施しました。具体的な方法としては、過去に実施した調査にて保護区域内に生育を確認したエゾヤマナラシ全個体を対象に伐採を行いました。根株からの萌芽を抑制するため、根の栄養分が少ない展葉時期である夏季に伐採を行いました。伐採後の樹木は、現地で自然風化させるために玉切り等を行いました。

2 今後の保全対策について
・現在、本年度に実施した保全事業の結果を取りまとめている最中であり、また、次年度の保全事業の内容について予算の確保を確約できる時期にないことから、明確な事業内容についてお示しすることはできません。
・しかしながら、本年度に実施した保護優先区画内のヤチカンバのモニタリング調査、植生再生試験(地盤掘り下げ)のモニタリング調査については継続して実施していく意向があり、また、道道210号沿いに設置している説明看板の内容が更新されていないため、掲載内容の更新の必要性も感じているところです。
・本年度の保全事業にて保護優先区画を設定したこと、また、エゾヤマナラシの防除を実施したことにより、他の植物の繁茂によりヤチカンバの視認が困難な状況を多少改善できたと考えております。今後は、地域や来訪者の方に広く貴重種ヤチカンバを認識していただき、保全の意識を醸成していくため、創意工夫を凝らしながら保全事業を推進してまいりたいと考えておりますので、ご理解・ご協力のほど宜しくお願い申し上げます。

(社会教育係)

  
タグ :ヤチカンバ


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2023年02月25日

ヤチカンバの保全について更別村教育長からの回答

 当会の2月6日付の『北海道指定天然記念物「更別湿原のヤチカンバ」保全についての質問』に対し、更別村教育長から回答がありました。

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更   教   号
令和5年2月15日


十勝自然保護協会
共同代表 安藤 御 史 様
     佐藤 与志松 様

更別村教育委員会
教育長 荻 原 正


北海道指定天然記念物「更別湿原のヤチカンバ」保全に関わる質問書への回答について

2023年2月6日付け標記質問書について、下記のとおり回答いたします。



1 2021年度実施の「指定地全域のヤチカンバ分布調査」の結果概要について
・「ヤチカンバ保護地域内現況調査」という名称にて実施いたしました。
・調査内容については大きく分けて2つあり、1つはヤチカンバ生育位置等調査、もう1つは土壌調査 です。いずれも前回平成16年度に実施した調査を再度実施したものです。
・ヤチカンバ生育位置等調査では保護地域内に生育する全てのヤチカンバの生育位置、樹高、樹冠径 (枝張り)、幹数を測定しました。
・調査の結果、確認したヤチカンバは1,494株であり、前回よりも1,745株(54%)減少していました。
・土壌調査では代表地点(ヤチカンバ生育密度「疎」「中」「密」の3地点)で深さ1mの試坑を人口掘削し、土壌断面等を確認しました。
・調査の結果、いずれの調査地点でも土壌構造や堅密度、pH等の土壌理化学性は、樹木の生育に適した状態と判断され、ヤチカンバの生育密度の地点間差に土壌条件が及ぼす影響は小さいと考えられました。また、水湿状態では、他地域の過湿地で見られる特徴である、多湿もしくは過湿の土層、地下水、斑紋および泥炭が出現せず、比較的乾燥した条件にあると結論付けられました。(いずれの地点も前回調査から大きな変化なし。)
2 上記調査結果に基づく保全対策について
・当該調査結果から、ヤチカンバの個体数減少傾向が極めて早く進行し、その要因にはエゾヤマナラシやオオイタドリによる被陰以外も関わっていることが示唆されました。このため原因解明に向けて、令和4年度には保護地域内で植生図作成調査、オオイタドリの駆除試験(環境影響が小さいとされる重曹を使用)を実施しました。
・植生図作成調査からは、保護地域内のほぼ全域に生育するミヤコザサが、ヤチカンバの枯死したシュートと置き換わる次世代の若いシュートを被陰し、成長を阻害していることが推測されました。また、衰退要因ではこれまで同様、オオイタドリとエゾヤマナラシ(高木)による被陰のほか、オオイタドリの地下茎(高密度な分布、小空洞の増加)が関与している可能性も推測されました。
・オオイタドリ駆除試験からは、重曹での枯殺効果が認められ、周辺植生への影響もありませんでした。しかし、本種は保護地域内の40%弱の広範囲に生育しており、また、地下茎を衰弱・枯死させるには複数年継続した駆除が必要となり、財政的な面での課題が残る形となりました。
・これらの結果を踏まえ、次年度以降にはヤチカンバの遺伝子保存のための保護優先区画の設定(下草等の除去)や、エゾヤマナラシの伐採、地盤掘り下げによる湿原環境生育種の再生試験の実施を検討してまいります。
3 2021年7月8日付質問書に対する回答以降の進展等について
① 専門的な有識者による組織の立ち上げについて
・本年度より外部有識者として浦幌町立博物館学芸員の持田誠様にご協力をいただいております。今後、各種保全策を実施するにあたり、必要に応じて他の分野の有識者の方にご協力いただくことも見込まれますが、現時点で組織化の予定はありません。
② 指定地内の十勝坊主群の保全及び啓発活動について
・前回の回答と同様に、指定地内のヤチカンバ以外の貴重な植物やその生育環境・地形なども含めた保全が必要と考えておりますが、解説板を設置する予定はございませんので、ご理解願います。
③ ヤチカンバの分布・特徴などの解説をした追加の掲示板の設置について
・来訪いただいた方にヤチカンバという貴重種の存在を確認いただけるよう、情報発信の取組の必要性は認識しております。現時点では具体的な掲示板の設置計画はございませんが、今後の保全活動 を進めるにあたり併せて検討してまいりたいと考えております。

(社会教育係)

  

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2023年02月20日

ヤチカンバ保全についての質問書

 ヤチカンバの保全について、更別村教育長に以下の質問書を送付しました。

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2023年2月6日


更別村教育委員会 教育長 荻原 正 様

十勝自然保護協会 共同代表 安藤 御史
佐藤与志松


北海道指定天然記念物「更別湿原のヤチカンバ」保全についての質問


 当会は、2014年以降、北海道指定天然記念物「更別湿原のヤチカンバ」の保全について、指定者である北海道教育委員会、管理者である貴委員会に対し要望等を提出し、回答をいただいてきました。
 つきましては、下記の質問についてご検討いただき、誠にご多忙とは存じますが、文書にて3月3日までにご回答いただきますようお願いいたします。



1 2021年7月8日付の質問書に対し、8月4日付でつぎのような回答をいただいております。

2020年に指定地内のオオイタドリ分布域内外の方形区においてヤチカンバの生育個体数調査を実施しました。調査結果から、オオイタドリ優占域に設置した方形区の生育個体数が、2004年の調査時よりも大幅に減少していることが明らかになりました。 この結果から、現況のヤチカンバ生育状況を把握することが喫緊の課題と考え、今年度には 2004年以来17年ぶりに指定地全域のヤチカンバ分布調査を実施しております。

以上について、
(1)2021年度実施した「指定地全域のヤチカンバ分布調査」の結果概要をご説明いただきたく存じます。
(2)調査結果に基づく保全対策についてご説明いただきたく存じます。

2 2021年7月8日付の質問書にあげた次の件について進展がございましたならばご説明いただきたく存じます。
(1)専門的な有識者による組織の立ち上げについて
(2)指定地内の十勝坊主群の保全及び啓発活動について
(3)ヤチカンバの分布・特徴などの解説をした追加の掲示板の設置について
以上

  

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2021年08月12日

更別湿原のヤチカンバ保全に関し更別村教育委員会より回答

 7月8日付の『北海道指定天然記念物「更別湿原のヤチカンバ」保全についての質問と要望』に対し、更別村教育委員会から以下の回答がありました。

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更  教  号
令和3年8月4日


十勝自然保護協会
共同代表 安 藤 御 史 様
     佐 藤 与志松 様

更別村教育委員会  
教育長 荻 原 正

北海道指定天然記念物「更別湿原のヤチカンバ」保全に関わる質問要望書への回答について

2021年7月8日付け標記質問要望書について、下記のとおり回答いたします。


1 2020年2月の質問書に対する回答以降の進展等について
①指定地域内の雑種についての専門家による調査について
・前回回答時と同様、専門家による調査までは実施できていません。
②指定地域内の乾燥化、ヤマナラシ・ミヤコザサ・オオイタドリなど他種の繁茂への対策について
・2020年に指定地内のオオイタドリ分布域内外の方形区においてヤチカンバの生育個体数調査を実施しました。調査結果から、オオイタドリ優占域に設置した方形区の生育個体数が、2004年の調査時よりも大幅に減少していることが明らかになりました。この結果から、現況のヤチカンバ生育状況を把握することが喫緊の課題と考え、今年度には2004年以来17年ぶりに指定地全域のヤチカンバ分布調査を実施しております。今後は、この結果を踏まえて対策の検討を進めてまいります。
・対策の実施に向けた具体的なスケジュールは未定です。ヤチカンバの生育個体や生育環境、他の植物等に悪影響を及ぼさぬよう、慎重に検討を進めてまいります。
③専門的な有識者による組織の立ち上げについて
・前回回答時同様、組織化できておりません。しかし、専門的な見地からの指導・助言や調査の必要性については変わらず認識しており、既に検討委員会を組織している別海町教育委員会と連絡を取り合い、有識者との連携方法を模索しております。
④指定地内の十勝坊主群の保全及び啓発活動について
・前回回答時より特に状況は変わっておりませんが、十勝坊主などの知識を広く周知するということは、教育的な観点でも有意義なことと考え、この度、貴協会の展示会へご協力させていただく次第です。
2 指定地に設置している看板への掲載内容の追加について
・ヤチカンバの貴重さや特徴など、広く住民や来訪者に知らせることは必要なことと考えます。昨今はインターネットやス マートフォンの普及など、情報発信の方法も多岐にわたりますので、方法も含め今後も検討してまいります。

(社会教育係)

  
タグ :ヤチカンバ


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2021年07月13日

更別湿原のヤチカンバの保全について質問と要望を送付

 以下の質問と要望を更別村教育長に送付しました。

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2021年7月8日


更別村教育委員会 教育長 荻原 正 様

十勝自然保護協会 共同代表 安藤 御史
佐藤与志松


北海道指定天然記念物「更別湿原のヤチカンバ」保全についての質問と要望

 当会は、2014年以降、北海道指定天然記念物「更別湿原のヤチカンバ」の保全について、指定者である北海道教育委員会、管理者である貴委員会に対し要望等を提出し、回答をいただいてきました。
 つきましては、下記の質問と要望についてご検討いただき、誠にご多忙とは存じますが、文書にて8月5日までにご回答いただきますようお願いいたします。



1 2020年2月には、下記の件について質問書を提出し、回答をいただいています。その後、進展がありましたらご説明いただきたく存じます。また、これ以外の今後の保全事業の計画も合わせてご説明いただきたく存じます。
① 指定地域内の雑種についての専門家による調査について
② 指定地域の乾燥化、ヤマナラシ・ミヤコザサ・オオイタドリなど他種の繁茂への対策について
③ 専門的な有識者による組織の立ち上げについて
④ 指定地内の十勝坊主群の保全及び啓発活動について
2 指定地には、指定当時の看板がありますが、この看板からは、その後の別海町西別のヤチカンバの発見などの変化が分かりません。また、ヤチカンバ以外にも多種の樹木があり、一般の方にはヤチカンバの特定が困難です。ヤチカンバの分布・特徴などの解説をした追加の掲示板の設置を要望いたします。
  
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2020年05月26日

ヤチカンバ保全に関する回答

 2月1日付の「北海道指定天然記念物「更別湿原のヤチカンバ」保全についての質問と要望」に対し、更別村教育委員会より以下の回答がありました。

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令和2年2月12日


十勝自然保護協会
共同代表  安藤 御史 様
      佐藤与志松 様

更別村教育委員会 
教育長 荻原 正


北海道指定天然記念物「更別湿原のヤチカンバ」保全に関わる質問要望書への回答について

 2020年2月1日付標記質問要望書について、下記のとおり回答いたします。


1 2019年度の保全に関わる事業について
・ 今後の保全作業の参考とするため、2008年度に移植したヤチカンバ苗の現在の生育状況の追跡調査を実施しました。前回、2014年度にも追跡調査を実施しており、5年の周期で追跡調査を実施しています。
2 2020年度以降の保全に関わる事業について 
・ これまでのヤチカンバ苗生育状況追跡結果より、日照不足による生育状況への悪影響が示唆されています。ヤチカンバ保護地域内では、日照不足の原因になるものとしてヤマナラシに注目していますが、ヤマナラシ以外にも草丈がヤチカンバと同程度まで生長しているオオイタドリによる影響が懸念されます。このため、オオイタドリの分布内外でヤチカンバの生育個体数の変化を把握する調査を実施予定です。
・ また、ヤチカンバ保護地域内の現況の植生等を把握することを目的として、UAV(無人飛行機)を用いて航空写真を撮影する調査を実施予定です。
3 指定地域内の雑種についての専門家による調査について
・ ヤチカンバ保護地区内に、ヤチカンバと他のカバノキ科との交雑の可能性のある個体があることは把握しておりますが、現状として専門家による調査までは実施できておりません。
4 指定地域の乾燥化、他樹種等の繁茂への対策について
・ 貴会のご指摘のとおり、ヤマナラシなどの高木の侵入やヤチカンバ種子の自然更新の妨げについては今後、必要に応じて対策を検討する必要があると考えております。しかしながら、地下水位の上昇の方策については、保護地域内の植生や周辺環境に与える影響が極めて大きいと考えられることから、極めて慎重に検討すべきと考えております。
・ 現時点で早急に対応し得る対策として、ヤチカンバの生育に影響を及ぼしている可能性のある日照不足を解消するため、草丈や樹高がヤチカンバより高くなっているオオイタドリやヤマナラシの除去を、先んじて実施してまいりたいと考えております。また、この実施に際しては、北海道教育委員会や専門機関などと協議を行いながら、ヤチカンバの生育に影響のない植物に害を及ぼさないよう、慎重に進めたいと考えております。できる限り早急な対応ができるよう努めて参りますので、ご理解のほど宜しくお願いいたします。
5 専門的な有識者による組織の立ち上げについて
・ これまでにもご要望いただいていることではございますが、現状として組織化できておりません。しかしながら、専門的な見地からの指導・助言や調査なくして保護対策を進めることは困難であるとの認識に変わりはございませんので、予算面等課題はありますが、今後も前向きに検討して参りたいと思います。
6 指定地内の十勝坊主群の保全及び啓発活動について
・ 北海道指定天然記念物はヤチカンバではございますが、ヤチカンバ以外の貴重な植物やその生育環境・地形なども含めた保全が必要と考えております。啓発活動に係るご要望について、現在、解説板を設置する予定はございませんので、ご理解願います。
7 その他
・ 質問要望をいただいた件ではございませんが、昨年10月に村内小学校3年生の総合的な学習の時間の授業において、ヤチカンバについての講話や質疑応答を行いました。少ない児童が対象ではございましたが、児童は積極的に興味を示し、自然を大切にすることの重要さやヤチカンバの貴重さについて理解を深めてくれました。
・ どこにでもあるものではないという認識を広く深めていく機会を、今後も持っていければと考えております。
(社会教育係)


  


Posted by 十勝自然保護協会 at 22:16Comments(0)ヤチカンバ保護問題

2020年05月26日

更別湿原のヤチカンバ保全についての質問と要望

 更別湿原のヤチカンバ保全に関する質問と要望を更別村教育委員会に送付しました。

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2020年2月1日


更別村教育委員会 教育長 様

十勝自然保護協会   
共同代表  安藤 御史
佐藤与志松


北海道指定天然記念物「更別湿原のヤチカンバ」
保全についての質問と要望


 当会は、2014年以降、北海道指定天然記念物「更別湿原のヤチカンバ」の保全について、指定者である北海道教育委員会、管理者である貴委員会に対し要望等を提出し、回答をいただいてきました。
 つきましては、下記の質問と要望についてご検討いただき、年度末で誠にご多忙とは存じますが、文書にて2月28日までにご回答いただきますようお願いいたします。



1 2019年度の保全に関わる事業についてご説明いただきたく存じます。
2 2020年度以降の保全に関わる事業についてご説明いただきたく存じます。
3 現在、指定地域内で植栽しているもののなかに雑種ができていることはすでに指摘されていますが、植栽以外にも雑種と考えられるものもあります。これらについて、専門家の調査は行われているのでしょうか。すでに調査が行われておればご説明いただきたく存じます。なお、別海町西別のヤチカンバ保護区ではダケカンバとの雑種が確認されているとうかがっています。
4 ヤチカンバの種子がこぼれても新しい発芽がなく自然更新が妨げられている要因として、乾燥化により、ヤマナラシなどの高木の侵入、ミヤコザサなどの繁茂などが以前より指摘されており、当会は根本的には地下水位の上昇の方策を求めてきました。また、その前段としてもヤマナラシやミヤコザサの除去も求めてきました。これらについてその後どのような方法が検討されているのでしょうか。専門家の調査や助言などがすでになされておればご説明いただきたく存じます。
5 当会は以前から保全に関わる事業について、専門的な有識者の方々による「保護対策検討委員会」のような組織が必要であると繰り返し要望してきました。再度立ち上げを要望いたしますのでご検討いただきたく存じます。
6 指定地は全面にわたって十勝坊主が広がっています。専門家からはその形状と広範囲な面積について指定地の十勝坊主群は極めて貴重であるとの評価があります。今、十勝管内では十勝坊主は開発により急速に姿を消しつつあります。また、勢雄学術自然保護地区のように樹木の侵入が進んで形状が不明瞭になった十勝坊主群も少なくありません。そのような状況のなか、指定地の十勝坊主群の保全が求められます。高木の除去は形状の維持にもつながります。また、現地に解説板を設置するなど啓発活動をおこなっていただきたく存じます。
以上

  


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2016年06月16日

更別湿原のヤチカンバ保全についての質問に対する回答

 「北海道指定天然記念物『更別湿原のヤチカンバ』保全についての質問」に対し、6月6日付けで以下の回答がありました。

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更   教   号
平成2 8年6月6日

十勝自然保護協会
共同代表 安 藤 御 史 様
       佐 藤 与志松 様
更別村教育委員会
教育長  荻原 正

北海道指定天然記念物「更別湿原のヤチカンバ」保全についての質問書への回答について

平成2 8年5月3 0日付け標記質問書について、下記のとおり回答いたします。



(1)今後の保全に係る事業について
 平成2 8年度は、ヤチカンバの成長を妨げる可能性のある樹木に対し、薬剤による枯殺試験を小規模に実施する予定でしたが、北海道教育委員会や文化財保護審議会等の専門家からの助言として、薬剤枯殺法の導入については慎重に判断すべきとの指摘を受けたことから、実施を見送ることとし、今後の競合種の駆除方策について改めて検討しているところです。

(社会教育係)

  


Posted by 十勝自然保護協会 at 21:16Comments(0)ヤチカンバ保護問題

2016年06月16日

更別湿原のヤチカンバ保全についての質問

 更別湿原のヤチカンバの保全について、更別村教育委員会に以下の質問を送付しました。

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2016年5月30日


更別村教育委員会 教育長 様

十勝自然保護協会
共同代表  安藤 御史
      佐藤与志松

 
北海道指定天然記念物「更別湿原のヤチカンバ」保全についての質問


 当会は、2014年以降、北海道指定天然記念物「更別湿原のヤチカンバ」について、指定者である北海道教育委員会、管理者である貴委員会に対し保全のために要望等を提出し、回答をいただいてきました。
 つきましては、2016年度を含め今後の保全に関わる事業についてご説明ください。
 ご多忙とは存じますが、6月9日までにご回答いただきますようお願いいたします。
  


Posted by 十勝自然保護協会 at 14:24Comments(0)ヤチカンバ保護問題

2016年02月20日

更別湿原ヤチカンバ群落の保全策についての提案

 2月18日付で北海道教育委員会に、以下の更別湿原ヤチカンバ群落の保全策についての提案を送付しました。

********

更別湿原ヤチカンバ群落の保全策についての提案


 当会の2016年1月21日付け要望書に対する平成28年1月28日付け回答で、貴職は別海町での保護対策検討委員会の議論を踏まえてヤチカンバの生育に関する見解を明らかにしました。今後、保護検討委員会でヤチカンバの保全策について議論が進むことと推察します。そこで、この機会に更別でのヤチカンバの生育環境を踏まえた当会の更別湿原ヤチカンバ群落保全策について提案します。ついては貴職において検討いただきたく存じます。

 発見時のヤチカンバ群落の様子
 ヤチカンバを発見し、新種として発表した渡辺定元・大木正夫の両氏は、1959年に発表した「北海道産カバノキ属の一新種」(植物研究雑誌34:329-332)で、ヤチカンバの生育地について次のように書いています。
「更別泥炭地は周囲約10㎞面積ほぼ600ha,流水の箇所にはハンノキ,ヤナギ林がみられる他大部分は“やちぼうず”によって占められている。ヤチカンバは湿原の外縁部の“やちぼうず”上に生じ,特に西側では幅20~100m,長さ1500mの大面積に亘り群落を形成している。したがってヤチカンバは,過湿な“やちぼうず”上には生えず,やや乾燥せる“やちぼうず”上に叢生している。5月初旬開花時に当地を訪ねた時は中央部は湿地であったがヤチカンバの生ずる“やちぼうず”の間は水が枯れていた。この地域の住民の話によると,6月になると湿地化するそうである。」
 つまり、更別ではヤチカンバは更別泥炭地の湿原の外縁部にある「やちぼうず」上に叢生していました(空中写真参照)。このような本来の生育環境を理解することが本種の保全策を考えるうえで重要です。

 これまでの保全の考え方の問題点
 更別村(教育委員会)が調査会社に委託して作った報告書(「平成16年度 ヤチカンバ保護地域内現況調査委託業務報告書」)によると、ヤチカンバ保護地域の土壌調査の結果、泥炭層や斑紋(当会注:酸化鉄や酸化マンガン化合物の土層中での沈積形態の総称)がなく、湿原にはない十勝坊主があったからここは湿原ではなかったとし、排水路の埋め戻し等によって水位を高め、以前の湿原状況を再現する方法は、保全地域内では妥当な対策とは考えられないから、保全対策案として、地掻き放置区(ミヤコザサを刈りはらった表層を耕起して放置)、播種区(地掻き放置区と同様の処理後播種)、苗移植区(地掻き放置区と同様の処理後苗を移植)をつくるべきだと主張しています。
 そして保全対策の項で「従来、文献などにおいては、保護地域は湿原内に形成された群落が、その後の農地造成事業などの排水整備により乾燥化を経て、現在のミヤコザサやイタドリの優占する状況に至ったものと述べられている。しかし、土壌調査の結果、まとめの項で述べてあるように保全地域は湿原であった可能性が低いと考えられる。」とし、だから、「排水路の埋め戻し等によって水位を高め、以前の湿原状況を再現する方法は、保全地域内では妥当な対策とは考えられない」とも主張しています。
 しかし渡辺・大木氏は、ヤチカンバが湿原の外縁部のやや乾燥したヤチ坊主上に生育し、(住民の話として)6月に湿地化するとしているのです。つまりヤチカンバの生育地は湿原の外縁部のヤチ坊主ができる湿地だったということです。湿地は水位が高いから湿地になるのです。水位の高さゆえ樹木の侵入が制限され森林へ移行できなかったと考えるのが妥当でしょう。もしそのような条件がなければ、森林化によって陽樹の低木であるヤチカンバは光を奪われ絶滅していたに違いありません。したがって保全地域が湿原でなかったから水位は関係ないというのは見当違いです。乾燥化が進んだから根萌芽するヤマナラシやミヤコザサなどが侵入し、危機が訪れているのです。つまり、高木やミヤコザサの侵入防止には地下水位を高く保つことが重要だということです。

 保全のための方策
 前述のような更別湿原でのヤチカンバの生育特性を踏まえると、ヤチカンバ群落の持続可能な保全対策は発見当時の生育環境に近づけること、すなわち地下水位を上昇させることだと考えます。
 保全地域の周りに矢板を打ち込んで仕切りをつくり、天水が周囲の明渠などに流れ出るのを防ぎ地下水を保つようにすることが一つの方策です。できるならば地下水を定期的にくみ上げて保全地域に入れ、地下水位を上昇させることも必要でしょう。
このような長期的保全対策とともに、ヤマナラシやミヤコザサなどの除去も緊急的対策として行われるべきでしょう。
 これを実行するためには少なくない経費が必要となります。これを文化財保護事業としてやることができれば問題ないのですが、もし経費負担が困難であるならば、自然再生事業として北海道開発局に実施してもらうことを検討すべきだろうと考えます。

 貴職の回答への見解
 貴職の平成28年1月28日付け回答について、当会の見解を述べておきます。
1.「昨年10月に開催されました別海町の保護対策検討委員会での現地調査や検討で、地点ごとに様相が大きく異なるため更に科学的なデータを得る必要があるとされておりますが、ヤチカンバの生育阻害要因で最も大きいのは、他の種に覆われて日照が不足することと考えられています。」について
 他の種に被圧されることがヤチカンバの生存上の最大の問題であるという当会の見解が共有されたのは幸いです。ただし被圧は生育阻害要因であるばかりでなく生存阻害要因になると理解すべきです。
2.「『更別湿原のヤチカンバ』指定地でミヤコザサが目立っていることは事実ですが、それによって他の樹木の種子が発芽することも妨げられているため、単純にササを刈ることが良いのかを含めて、充分な検討が必要です。」について
 前述のように、当会はササ刈の実施は緊急的な対策であり、抜本的対策とは考えておりません。
3.「『西別湿原のヤチカンバ群落』の現地調査で、最も高水位の地点にあるヤチカンバが、約40年前と比べて丈も伸びておらず、数も増えていないことが判明したことから、必ずしも高水位の環境が、実生を含めたヤチカンバの生育を促進させるとは言えません。」について
 高水位地点でもヤチカンバの丈が伸びず、数が増えていないから高水位環境がヤチカンバの生育に大きな意味を持たないと考えているのでしたら、それは的外れです。陽樹の低木であるヤチカンバは、シラカンバやヤマナラシなどの高木との光を巡る競争に勝つことができません。高木やササが侵入しえない高水位地点こそがヤチカンバが生きながらえる安住の地となっていると見るべきです。寒冷期の遺存種と考えられるヤチカンバは、特殊な立地で萌芽更新などにより粘り強く生きていると考えるべきであり、実生が沢山生育していなければ生存できないと考えるべきではありません。
以上


(空中写真は省略しています。)
  

Posted by 十勝自然保護協会 at 20:38Comments(0)ヤチカンバ保護問題