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2009年12月08日
業者のデータ操作に対する研究者と行政機関の責任
11月30日夜の帯広開発建設部の呆れた回答は、「平成19年度美蔓地区導水路国有林使用検討業務報告書」の問題点を十分理解できないことに起因するのかもしれない(いやとぼけているだけかもしれないが)。そこで、ブログの読者にも理解できるよう、ていねいに経過をたどって問題点を明らかにしてみよう。
1.2008年3月までに(あるいはそれ以降?)、林業土木コンサルタンツ北海道支所および株式会社森林環境リアライズにより作成された「平成19年度美蔓地区導水路国有林使用検討業務報告書」(以下「導水路報告書」)が、発注者である帯広開発建設部に納入された。この導水路報告書によると「本調査実施にあたっては、国立大学法人帯広畜産大学環境総合科学講座野生動物管理学研究室との共同調査として、調査データの統合を行い統計解析して岩塊地規模等の利用形態および季節変化などについて評価した」(111頁)とし、その結果を109・110頁に掲載した(表3.27~3.31)。
2.2009年3月に発行された「森林野生動物研究会誌」34号に、帯広畜産大学野生動物管理学研究室の佐藤周平・柳川久、株式会社森林環境リアライズの石山浩一・谷津繁芳の各氏の連名で「大雪山系低標高域におけるエゾナキウサギによる小規模岩塊地の利用」(以下「畜大論文」)と題した論文が掲載された。この論文の34・35頁に、ロジスティク回帰分析の結果として導水路報告書の109・110頁の表と全く同じもの(表4~8)を掲載した。そして、この論文の末尾には「本研究を行うにあたりデータの公表に関して御許可いただいた北海道開発局の高橋雄一氏ほか関係各位に厚くお礼申し上げます」との謝辞を載せた。
3.両者、すなわち導水路報告書と畜大論文の表が同じであるというのは、「共同調査として、調査データの統合を行い統計解析し」たというのであるから当然である。ところが、である。われわれが導水路報告書と畜大論文を丹念に読んだところ、両者の観察データには違いがあることが判明したのだ。導水路報告書では、P4地点において2007年5月15日に新しいオシダの茎と葉がそれぞれ30本、24枚確認されていた(63頁)。これに対し、畜大論文ではP4地点において2007年5月に痕跡がまったく確認されていなかったのである(33頁)。
4.異なるデータを入力して、ロジスティク回帰分析の結果が同じになることなどありえない。このことは、株式会社森林環境リアライズの石山浩一・谷津繁芳の両氏が、P4地点にはナキウサギの痕跡がなかったとしてロジスティク回帰分析された畜大論文の結果をそのまま導水路報告書に貼り付けたということを意味する。
注)畜大論文の方が導水路報告書より後に発行されているが、畜大論文の原型は、第一著者の佐藤氏の2007年度卒業論文(2008年2月に提出か)であった。したがって、ロジスティク回帰分析結果は導水路報告書の完成前に出ていたのである。
5.そこで、導水路報告書と畜大論文の両方にかかわっている株式会社森林環境リアライズの石山浩一・谷津繁芳の両氏の責任を問いただすため、十勝自然保護協会とナキウサギふぁんくらぶは、10月9日付で発注者である帯広開発建設部に「美蔓地区の国営かんがい排水事業に係わるナキウサギ調査の信憑性および調査員の適性についての質問書」を提出した。
6.これに対し11月30日夜、帯広開発建設部は「なお、質問書にあります『大雪山系低標高域におけるエゾナキウサギによる小規模岩塊地の利用』と題した論文については、研究者の名前で発表されたものであり回答する立場にないことをご理解願います」と、能天気に農業開発第1課佐藤善文課長名の書面を読み上げた。この日の話合いの中で、P4地点にはナキウサギの痕跡がなかったとしてロジスティク回帰分析した畜大論文の結果を導水路報告書にそのまま貼り付けたのはなぜか、との質問に対し、わからないので今、説明できないと答えた。
7. 12月2日、北海道新聞は十勝版で「ナキウサギ再調査要求」「説明能力の不足露呈」との見出しをつけ、6段ぬきで11月30日の話合いの様子を伝えた。さらに新聞社の取材に対し、帯広開発建設部は「報告書の信ぴょう性に問題はないと思っている。報告書と論文は解析はおなじだがデータの取扱い方が違うだけ。必要があればコンサルにも確認した上であらためて回答したい」と、また、環境コンサルタント会社は「ある時期にはナキウサギの痕跡と考えられるものがあったが、別の時期には違う動物の痕跡と考えられるものもあったため、畜大との論文では痕跡地に加えなかった」とコメントした。
コンサルタント会社のモラル崩壊
こうして経過をたどってくると、12月2日の北海道新聞に掲載された環境コンサルタント会社のコメントの重大性が理解できる。環境コンサルタント会社、すなわち森林環境リアライズは、開発建設部から受託した導水路報告書にはP4地点のナキウサギの痕跡を加えたが、帯広畜産大学との共同研究にはP4地点のナキウサギの痕跡を加えなかった、というのである。つまり、恣意的に取捨選択したデータを共同研究者に提供して、ロジスティク回帰分析をしてもらい、それをこともあろうに導水路報告書に掲載したのである。客観的事実を記載しなければならない報告書に、恣意的なデータに基づく分析結果を掲載することが、社会を欺く行為であることを理解していないのだ。こんなコメントをだせるのは、これに類したことが常態化していて感覚が麻痺しているのかもしれない。
研究者としての責任
帯広畜産大学の佐藤・柳川両氏は、森林環境リアライズが恣意的に取捨選択したデータを使って分析し、科学論文として学術雑誌に発表してしまったのである。もしデータ操作の事実を知らなかったのなら、欺かれた側として同情されるべきかもしれない。しかし、このようにデータを恣意的に取捨選択したものが科学論文に値しないことは論を待たない。研究者の責任において、全容を明らかにし、論文の訂正ないし抹消を掲載誌の編集責任者に申し出るべきである。
行政機関としての責任
「データの取扱い方が違うだけ」などいう帯広開発建設部のコメントは、科学論文におけるデータのもつ重要性に無知であることを自ら証明しているようなものである。このコメントからは、彼らにとって事業の遂行こそがすべてであり、環境調査など付随的なものにすぎないとの本音も読み取れる。
第三者が読んでもわかるように、ていねいに説明してきたので、帯広開発建設部農業開発第1課の課員も、「研究者の名前で発表されたものであり回答する立場にない」などということが、いかに無責任であるか気付いたであろう。公金による業務を受注した委託業者がデータを操作し、社会を欺く行為をしたのである。発注した公的機関としての責任を自覚し、厳正に対処すべきである。
1.2008年3月までに(あるいはそれ以降?)、林業土木コンサルタンツ北海道支所および株式会社森林環境リアライズにより作成された「平成19年度美蔓地区導水路国有林使用検討業務報告書」(以下「導水路報告書」)が、発注者である帯広開発建設部に納入された。この導水路報告書によると「本調査実施にあたっては、国立大学法人帯広畜産大学環境総合科学講座野生動物管理学研究室との共同調査として、調査データの統合を行い統計解析して岩塊地規模等の利用形態および季節変化などについて評価した」(111頁)とし、その結果を109・110頁に掲載した(表3.27~3.31)。
2.2009年3月に発行された「森林野生動物研究会誌」34号に、帯広畜産大学野生動物管理学研究室の佐藤周平・柳川久、株式会社森林環境リアライズの石山浩一・谷津繁芳の各氏の連名で「大雪山系低標高域におけるエゾナキウサギによる小規模岩塊地の利用」(以下「畜大論文」)と題した論文が掲載された。この論文の34・35頁に、ロジスティク回帰分析の結果として導水路報告書の109・110頁の表と全く同じもの(表4~8)を掲載した。そして、この論文の末尾には「本研究を行うにあたりデータの公表に関して御許可いただいた北海道開発局の高橋雄一氏ほか関係各位に厚くお礼申し上げます」との謝辞を載せた。
3.両者、すなわち導水路報告書と畜大論文の表が同じであるというのは、「共同調査として、調査データの統合を行い統計解析し」たというのであるから当然である。ところが、である。われわれが導水路報告書と畜大論文を丹念に読んだところ、両者の観察データには違いがあることが判明したのだ。導水路報告書では、P4地点において2007年5月15日に新しいオシダの茎と葉がそれぞれ30本、24枚確認されていた(63頁)。これに対し、畜大論文ではP4地点において2007年5月に痕跡がまったく確認されていなかったのである(33頁)。
4.異なるデータを入力して、ロジスティク回帰分析の結果が同じになることなどありえない。このことは、株式会社森林環境リアライズの石山浩一・谷津繁芳の両氏が、P4地点にはナキウサギの痕跡がなかったとしてロジスティク回帰分析された畜大論文の結果をそのまま導水路報告書に貼り付けたということを意味する。
注)畜大論文の方が導水路報告書より後に発行されているが、畜大論文の原型は、第一著者の佐藤氏の2007年度卒業論文(2008年2月に提出か)であった。したがって、ロジスティク回帰分析結果は導水路報告書の完成前に出ていたのである。
5.そこで、導水路報告書と畜大論文の両方にかかわっている株式会社森林環境リアライズの石山浩一・谷津繁芳の両氏の責任を問いただすため、十勝自然保護協会とナキウサギふぁんくらぶは、10月9日付で発注者である帯広開発建設部に「美蔓地区の国営かんがい排水事業に係わるナキウサギ調査の信憑性および調査員の適性についての質問書」を提出した。
6.これに対し11月30日夜、帯広開発建設部は「なお、質問書にあります『大雪山系低標高域におけるエゾナキウサギによる小規模岩塊地の利用』と題した論文については、研究者の名前で発表されたものであり回答する立場にないことをご理解願います」と、能天気に農業開発第1課佐藤善文課長名の書面を読み上げた。この日の話合いの中で、P4地点にはナキウサギの痕跡がなかったとしてロジスティク回帰分析した畜大論文の結果を導水路報告書にそのまま貼り付けたのはなぜか、との質問に対し、わからないので今、説明できないと答えた。
7. 12月2日、北海道新聞は十勝版で「ナキウサギ再調査要求」「説明能力の不足露呈」との見出しをつけ、6段ぬきで11月30日の話合いの様子を伝えた。さらに新聞社の取材に対し、帯広開発建設部は「報告書の信ぴょう性に問題はないと思っている。報告書と論文は解析はおなじだがデータの取扱い方が違うだけ。必要があればコンサルにも確認した上であらためて回答したい」と、また、環境コンサルタント会社は「ある時期にはナキウサギの痕跡と考えられるものがあったが、別の時期には違う動物の痕跡と考えられるものもあったため、畜大との論文では痕跡地に加えなかった」とコメントした。
コンサルタント会社のモラル崩壊
こうして経過をたどってくると、12月2日の北海道新聞に掲載された環境コンサルタント会社のコメントの重大性が理解できる。環境コンサルタント会社、すなわち森林環境リアライズは、開発建設部から受託した導水路報告書にはP4地点のナキウサギの痕跡を加えたが、帯広畜産大学との共同研究にはP4地点のナキウサギの痕跡を加えなかった、というのである。つまり、恣意的に取捨選択したデータを共同研究者に提供して、ロジスティク回帰分析をしてもらい、それをこともあろうに導水路報告書に掲載したのである。客観的事実を記載しなければならない報告書に、恣意的なデータに基づく分析結果を掲載することが、社会を欺く行為であることを理解していないのだ。こんなコメントをだせるのは、これに類したことが常態化していて感覚が麻痺しているのかもしれない。
研究者としての責任
帯広畜産大学の佐藤・柳川両氏は、森林環境リアライズが恣意的に取捨選択したデータを使って分析し、科学論文として学術雑誌に発表してしまったのである。もしデータ操作の事実を知らなかったのなら、欺かれた側として同情されるべきかもしれない。しかし、このようにデータを恣意的に取捨選択したものが科学論文に値しないことは論を待たない。研究者の責任において、全容を明らかにし、論文の訂正ないし抹消を掲載誌の編集責任者に申し出るべきである。
行政機関としての責任
「データの取扱い方が違うだけ」などいう帯広開発建設部のコメントは、科学論文におけるデータのもつ重要性に無知であることを自ら証明しているようなものである。このコメントからは、彼らにとって事業の遂行こそがすべてであり、環境調査など付随的なものにすぎないとの本音も読み取れる。
第三者が読んでもわかるように、ていねいに説明してきたので、帯広開発建設部農業開発第1課の課員も、「研究者の名前で発表されたものであり回答する立場にない」などということが、いかに無責任であるか気付いたであろう。公金による業務を受注した委託業者がデータを操作し、社会を欺く行為をしたのである。発注した公的機関としての責任を自覚し、厳正に対処すべきである。
ペンケニコロの導水管工事を視察
美蔓地区のかんがい事業で再質問書を送付
帯広開発建設部の回答漏れに対する申入れ
劣化進む帯広開発建設部
美蔓地区のナキウサギ調査で質問書を送付
美蔓地区のかんがい事業で農水相に要望書を送付
美蔓地区のかんがい事業で再質問書を送付
帯広開発建設部の回答漏れに対する申入れ
劣化進む帯広開発建設部
美蔓地区のナキウサギ調査で質問書を送付
美蔓地区のかんがい事業で農水相に要望書を送付
Posted by 十勝自然保護協会 at 11:32│Comments(0)
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