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2015年12月11日
然別湖北岸の風倒地の扱いについて要望書を送付
然別湖北岸の風倒被害の取扱について、11月2日付けの十勝西部森林管理署東大雪支所からの回答を受け、北海道森林管理局と十勝西部森林管理署東大雪支署に以下の要望書を送付しました。
北海道森林管理局長 様
十勝西部森林管理署東大雪支署長 様
2015年10月上旬の低気圧と台風23号によって然別湖北岸野営場の道道85号沿いの国有林で比較的規模の大きい風倒地が出現したことから、ここの取り扱いについて2015年10月25日付け文書で東大雪支署長に質問しました。
東大雪支署長からは2015年11月2日付で「今後の取扱いについては、当方としても天然更新を期待し、かつ、法令等に則った適切な管理を行ってまいります。」との回答がありました。
森林管理の地元の責任者から、天然更新を期待しているとの表明があったことを当会は評価しておりますが、念のため、当該地を天然更新に委ねることの妥当性について当会の考え方を伝えておきます。
1.当該地の林床には多くの稚樹・幼樹があります。このことは学術論文でも報告されています(丸山ほか,2004.北海道の針葉樹林におけるトドマツ・エゾマツ実生の定着に対する林床植生とリターの阻害効果. 日本生態学会誌54(2) 105-115)。
これに関連し、注目すべき報道がありました。2015年5月10日のNHKニュースは次のように伝えておりました。
「トドマツの生産コストを減らすため北海道森林管理局は伐採した後の山林で植林や下草刈りをせずに自然に林を回復させる試みを今年度から行うことになりました。78万4000ヘクタールと道内の人工林の半分以上を占めるトドマツの多くはこれから伐採期に入ります。北海道森林管理局によりますと、人工林を伐採したあとには植林もあわせて行うことになっていますが、費用をいかに減らせるかが課題となっているということです。最近の研究で、トドマツは自生する力が強く日陰でもよく育つことから伐採した後に植林や下草刈りをしなくても林が自然に回復する場合が多いことがわかってきました。このため森林管理局は、どのような条件であれば植林しなくても林が自然に回復するのか、今年度から本格的な調査を行うことにしました。伐採した後の林を自然に回復させると生産コストの最大4割ほどを軽減できるということで、北海道森林管理局は『すべてのトドマツの林でこの方法が採用できるかはまだわからないが、このやり方が実現すればコスト削減の上で画期的な方法になる』と話しています。」
つまり北海道営林局は一般的に天然林より後継樹が乏しいトドマツ人工林においても自然回復を期待するというわけです。この方針に沿うなら後継樹が多くある当該地での植栽が必要ないことはいうまでもありません。
2.風倒木を林外に運び出し地拵えをして植林すると、エゾシカの行動が自由となり、植栽木などが食害を受ける可能性が高くなります。つまり意図した成林は困難となります。
3.2013年に鹿追町は日本ジオパークに認定され、風穴などの然別湖周辺の自然現象を学習する場の提供に努めていると聞いています。北海道の針葉樹林は太古より台風による攪乱と再生を繰り返してきたと思われます。したがって風倒跡地が森林へと再生する過程を観察することは有意義なことでしょう。当該地は野営場にも近くアクセスが容易であることからジオパークの学習の場としても活用されるべきだと考えます。
国立公園の森林管理者として忘れてはならないことがあります。2004年の台風により発生した幌加とタウシュベツの風倒地の処理が自然保護の観点から大問題となったことです。2008年6月に札幌市で開催されたシンポジウムで、現地を訪れた海外の著名な生態学研究者がタウシュベツでの風倒木処理を厳しく批判したことが新聞で大きく報道されました。このような批判を受ける愚行を繰り返してはなりません。このことを肝に銘じ、自然の摂理にかなった森林の回復を目指していただきたく要望いたします。
なお、当該地の風倒処理の方針が決まりましたら、当会にもお知らせいただきたくお願いいたします。
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2015年12月8日
北海道森林管理局長 様
十勝西部森林管理署東大雪支署長 様
十勝自然保護協会
共同代表 安藤 御史
佐藤与志松
共同代表 安藤 御史
佐藤与志松
然別湖北岸の風倒地の取り扱いについての要望
2015年10月上旬の低気圧と台風23号によって然別湖北岸野営場の道道85号沿いの国有林で比較的規模の大きい風倒地が出現したことから、ここの取り扱いについて2015年10月25日付け文書で東大雪支署長に質問しました。
東大雪支署長からは2015年11月2日付で「今後の取扱いについては、当方としても天然更新を期待し、かつ、法令等に則った適切な管理を行ってまいります。」との回答がありました。
森林管理の地元の責任者から、天然更新を期待しているとの表明があったことを当会は評価しておりますが、念のため、当該地を天然更新に委ねることの妥当性について当会の考え方を伝えておきます。
1.当該地の林床には多くの稚樹・幼樹があります。このことは学術論文でも報告されています(丸山ほか,2004.北海道の針葉樹林におけるトドマツ・エゾマツ実生の定着に対する林床植生とリターの阻害効果. 日本生態学会誌54(2) 105-115)。
これに関連し、注目すべき報道がありました。2015年5月10日のNHKニュースは次のように伝えておりました。
「トドマツの生産コストを減らすため北海道森林管理局は伐採した後の山林で植林や下草刈りをせずに自然に林を回復させる試みを今年度から行うことになりました。78万4000ヘクタールと道内の人工林の半分以上を占めるトドマツの多くはこれから伐採期に入ります。北海道森林管理局によりますと、人工林を伐採したあとには植林もあわせて行うことになっていますが、費用をいかに減らせるかが課題となっているということです。最近の研究で、トドマツは自生する力が強く日陰でもよく育つことから伐採した後に植林や下草刈りをしなくても林が自然に回復する場合が多いことがわかってきました。このため森林管理局は、どのような条件であれば植林しなくても林が自然に回復するのか、今年度から本格的な調査を行うことにしました。伐採した後の林を自然に回復させると生産コストの最大4割ほどを軽減できるということで、北海道森林管理局は『すべてのトドマツの林でこの方法が採用できるかはまだわからないが、このやり方が実現すればコスト削減の上で画期的な方法になる』と話しています。」
つまり北海道営林局は一般的に天然林より後継樹が乏しいトドマツ人工林においても自然回復を期待するというわけです。この方針に沿うなら後継樹が多くある当該地での植栽が必要ないことはいうまでもありません。
2.風倒木を林外に運び出し地拵えをして植林すると、エゾシカの行動が自由となり、植栽木などが食害を受ける可能性が高くなります。つまり意図した成林は困難となります。
3.2013年に鹿追町は日本ジオパークに認定され、風穴などの然別湖周辺の自然現象を学習する場の提供に努めていると聞いています。北海道の針葉樹林は太古より台風による攪乱と再生を繰り返してきたと思われます。したがって風倒跡地が森林へと再生する過程を観察することは有意義なことでしょう。当該地は野営場にも近くアクセスが容易であることからジオパークの学習の場としても活用されるべきだと考えます。
国立公園の森林管理者として忘れてはならないことがあります。2004年の台風により発生した幌加とタウシュベツの風倒地の処理が自然保護の観点から大問題となったことです。2008年6月に札幌市で開催されたシンポジウムで、現地を訪れた海外の著名な生態学研究者がタウシュベツでの風倒木処理を厳しく批判したことが新聞で大きく報道されました。このような批判を受ける愚行を繰り返してはなりません。このことを肝に銘じ、自然の摂理にかなった森林の回復を目指していただきたく要望いたします。
なお、当該地の風倒処理の方針が決まりましたら、当会にもお知らせいただきたくお願いいたします。
以上
風倒被害について十勝西部森林管理署からの回答
風倒地の取り扱いについて十勝西部森林管理署に質問書を送付
大雪山・日高山脈森林生態系保護地域設定案の問題点
ミユビゲラ保護対策を要望
「新たな森林環境政策」(素案)に対する意見
青空裁判で出てきた驚くべき資料
風倒地の取り扱いについて十勝西部森林管理署に質問書を送付
大雪山・日高山脈森林生態系保護地域設定案の問題点
ミユビゲラ保護対策を要望
「新たな森林環境政策」(素案)に対する意見
青空裁判で出てきた驚くべき資料
Posted by 十勝自然保護協会 at 09:51│Comments(0)
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