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十勝自然保護協会 活動速報 › 日高山脈 › 日高山脈及び襟裳岬並びにその周辺地域を構成地域とする国立公園(名称未定)の指定等への意見

2023年12月13日

日高山脈及び襟裳岬並びにその周辺地域を構成地域とする国立公園(名称未定)の指定等への意見

 当会が環境省の「日高山脈及び襟裳岬並びにその周辺地域を構成地域とする国立公園(名称未定)の指定等への意見募集」(パブリックコメント)に提出した意見を掲載します。

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日高山脈及び襟裳岬並びにその周辺地域を構成地域とする国立公園(名称未定)の指定等への意見
十勝自然保護協会


はじめに
 日高山脈襟裳国定公園の特徴は、国際的国立公園の資質の可能性を有することと原始性にあります。
 これらの特徴を生かし、損なうことのないようにするには、国立公園の保護と利用の問題について、明確な見解をもって対処する必要があります。
 なお、本意見の対象は、日高山脈を対象の主眼とするものであることを予め承知願います。
 IUCN(国際自然保護連合)が定める新ガイドラインの国立公園に該当する資質の可能性を、日高山脈に発見したのは俵浩三さんであり、すでに当会から環境大臣宛要望書(2021年2月13日付け)の中で説明済みです。また、原始性についても、同様に説明済みですので、ここでは省略します。
 以下、具体的な項目を設け、意見を述べます。

1 公園の名称について
 十勝圏活性化推進期成会等(以下、「十勝の期成会等」)は、公園の名称に「十勝」を入れ「日高山脈襟裳十勝国立公園」とすることを要望しています。当会はこれに反対します。当会は「日高山脈国立公園」とすることを要望します。
〈理由〉
(1)十勝を入れる必然性がありません。
(2)十勝を入れることは、屋上屋を重ねる矛盾となります。
(3)名称に地名を併記した例はたくさんありますが、「日高山脈襟裳十勝」としたでは、全く意味合いが異なります。
(4)環境省原案のゾーニング全体図からも、十勝平野に独立した自然地域は認められません。
(5)結論として十勝を入れることは不適切です。
〈説明〉
(1)十勝の期成会等が十勝を入れようとする動機は、知名度にあやかり観光利用を図るという欲求からです。地元の関係者はその動機をあからさまに公言しています。
(2)日高山脈という名称は、伝統的に定着した地理的固有名詞です。日高山脈はその領域を日高と十勝で分け合っているので、日高山脈の名称の中に十勝が内包しているものと見るべきです(日高ポロシリと十勝ポロシリと区別して呼ぶように)。従って、十勝を併記して並べることは、ことばの重ね合わせとなることになります。
(3)例えば、「阿寒摩周」についてみると、併記された摩周は独立した自然地域であるという点です。
(4)環境省原案の全体図は国定公園の拡張(2.37倍)を示していますが、核心部を大きく特別保護地区とし、山麓を、日高側にも、十勝側にも付随的に拡張しており、これは言わば膨張であり、十勝平野に新たな自然地域を付加したものではありません。
(5)もしあえて十勝を入れるなら、異例のネーミングをすることになります。

2 日高山脈の取るべき道は保護優先の道
 2つの国立公園、「知床」と「支笏洞爺」の指定経緯は対照的です。知床は地元の陳情が全くなかった珍しいケースです。館脇操らの学術調査によってその自然の優れた価値が知られ、さらに当時の審議会委員がウィルダネス思想(1964年原始地域法成立 アメリカ)に傾倒して、「速やかに指定を」急いだのは、当時岬にロッジ建設の計画があったので、それを排除するためだったと伝えられています。
 支笏洞爺は戦後の第2号(第1号は伊勢志摩)として、(GHQへの忖度も多分にあって)札幌圏の観光集客の利便性を当て込んで、道南の温泉地を選定したと伝えられています。
 「知床」は保護型、「支笏洞爺」は観光利用型といえます。知床型を目指すべきです。

3 観光利用について
 十勝圏活性化推進期成会等の要望の本音は、観光利用にあります。国立公園という知名度にあやかり、経済的利益を得ることに傾倒しています。この観光利用に固執し、偏る傾向は、好ましいものではありません。保護の理念を欠いているからです。地元のこの熱心な傾向は、国(観光庁)の「明日の日本を支える観光ビジョン」や環境省の「満喫プロジェクト」と無縁ではなく、むしろ便乗したものと思われます。
 前者は外国人誘致と高級な施設設備を謳い、後者は阿寒摩周で行ったような非自然の、人工的演出を売り物にした、正常な観光・賢明な利用からほど遠い利用で、この傾向が十勝に今蔓延しようとしていることに危惧を覚えます。

4 保護の理念を欠いた観光利用がもたらす結果について
(1)「スニーカーを履いて日高の山を登ろうとする人がいたので、山岳会の人が注意した」(地元新聞に載った話)。安易な登山を目的とした観光利用は危険です。
(2)すでに建設が中止された日高横断道路の再開を望む動きを伝える地元新聞があります。日高横断道路は中止したものです。観光を目的とした動きは容認できません。
(3)「ロープウェイは観光の要」を見出しに地元新聞は黒岳のロープウェイに乗った老人が景観に感激した様子を掲載しました。原始境の日高山脈にロープウェイはふさわしくありません。ロープウェイ観光には反対します。
(4)多くの林道で車が入っているのが実態です。日高山脈を保護する上で車の侵入をさせないよう管理すべきです。
(5)利用拡大を目的とした、登山道の新たな開発や過剰な整備は抑制すべきです。

5 南端部の非指定区域について
 南端部に国立公園に指定されていない空白地があります。普通地域ですらありません、国立公園としてふさわしい資質に欠ける地域なのでしょうか。そうであれば経緯を公表すべきです。当会はこの地域も国立公園に指定することを要望します。
以上




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Posted by 十勝自然保護協会 at 16:39│Comments(0)日高山脈
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