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2008年10月22日

「えりもの森裁判」で裁判所が現地に

 2005年の12月28日に道民3人が提訴し、2007年2月2日の中間判決で勝訴してから本論にはいって審理してきた「えりもの森裁判」だが、10月31日に裁判所が現地を見ることになった。原告らが春から裁判所に申入れていたのだが、雪の季節になる前にようやく実現することになったのだ。

 裁判で対象としている皆伐地が伐採され、住民監査請求を起こしてから、およそ3年である。

 これまで裁判で説明してきた、地ごしらえの名の下の皆伐、支障になっていない支障木、ナキウサギの生息地破壊などなど、現場で裁判官に見てもらい、原告と被告の双方が説明をすることになってる。

 法廷で写真を示して「地ごしらえとはいえない伐採」とか「支障になっていない支障木」などと説明するより、実際に現場をみてもらったほうがはるかに理解しやすいはずだ。「百聞は一見に如かず」ということで、実現の運びとなったことは意味が大きい。

 自然破壊を問題にした裁判の現地検証といえば、士幌高原道路の中止を求めた「大雪山のナキウサギ裁判」があった。雪も舞う大嵐の中、裁判所、原告、被告、支援者、マスコミなどが連なって、道路のトンネル予定地となっている白雲山に登ったことが思い出される。

(M)
  


Posted by 十勝自然保護協会 at 16:12Comments(0)森林伐採

2008年10月14日

ナキウサギ生息地を破壊した林野庁

 8日は日本森林生態系保護ネットワークで足寄町(十勝東部森林管理署管内)の伐採地を調査した。というのは、情報開示でナキウサギの生息地があるあたりで大量の伐採をしていることが分かったからだ。



 足寄町にはナキウサギの生息地があちこちにあり、風穴も点在している。2006年には十勝東部森林管理署が天然林で大量の伐採をしていることが明らかになったため、当会は8月に十勝東部森林管理署に出向いて伐採計画などについて説明をしてもらった。

 その際に、管轄区域内には風穴地やナキウサギ生息地があることを指摘したのだが、対応した職員は風穴地があることを認識していないばかりか、ナキウサギやクマゲラなどについての調査もしていないという。これでは伐採によって風穴やナキウサギ生息地が破壊されかねない。

 この状況を受けて、9月11日には北海道の自然保護団体などが北海道森林管理局と十勝東部森林管理署に申入れを行った。

十勝東部森林管理署管内における伐採についての申入れ

 今回調査したのはこの申入れ書にも書いてある喜登牛山周辺である。林道を進んでいくとやがてナキウサギが生息できそうな岩塊地が出てきた。車を止めて調べると、岩穴にシダを貯食しているのが確認されたが、よく見るとそのすぐ上は土場がつくられ、作業道もある。ナキウサギのキチッ、キチッという声が聞こえてくる。近くにはクマゲラの食痕もある。




 少し先に進むと、やはりナキウサギの生息地がブルドーザーで壊されて作業道がつくられていた。2年前に申入れをしてあるにも関らず、重機を入れて伐採し、生息地を壊しているのだ。

 ナキウサギの生息地があることを知っていながら、風穴やナキウサギの調査もせずに生息地を無惨に破壊したのだ。自然保護団体の要請をあまりに軽くみているのではないか! このような伐採を続けていたなら、天然林の生物多様性はどんどん失われていくだろう。

(報告者M)  


Posted by 十勝自然保護協会 at 16:16Comments(0)森林伐採

2008年10月09日

日弁連が皆伐地を視察

 日本弁護士連合会の自然保護部会のメンバーが、大雪山国立公園の幌加とタウシュベツの皆伐地の視察に訪れた。6日は林野庁の職員から説明を受けたそうだが、翌7日には日本森林生態系保護ネットワークの河野昭一代表や事務局の市川守弘弁護士、自然保護団体などのメンバーが現地に同行して日弁連に説明を行った。



 林野庁は皆伐地の下部で説明するだけに留めたそうだが、自然保護団体は最上部まで登って全体の状況を見渡しながら問題点について説明した。皆伐地を下から見上げただけでは状況がきちんと把握できないのだ。



 タウシュベツの皆伐地は、昨年に比べるとエゾイチゴやハンゴンソウが入りこんでいるようだったが、林野庁は弁護士さんたちに「緑が回復してきた」と説明したそうだ。しかし、エゾイチゴやハンゴンソウは開けたところに侵入してくる植物で、針葉樹林の森林に生育しているものではない。ハンゴンソウはエゾシカが食べないために、すぐに繁茂するのだ。

 エゾイチゴもしばしば土場などに繁茂している。木本植物なので、これで覆われてしまうと樹木の種子が地面に落ちても芽生えることができなくなり、ササと同様に樹木の更新を困難にしてしまうと思われる。にも関らず「緑が回復してきた」とは驚くべき説明だ。

 昨年の10月に植えたトドマツの苗は葉の色が悪く、いかにも元気がない。完全に枯死してしまっているものもあるし、頂芽が枯れて枯死寸前のものや活着不良のものが目立つ。不良苗を植えたことは明らかだ。業者は苗が枯れても補償しなくていいので、不良苗であっても植えるのだ。



 皆伐地には飛んできた種を調べるためのシードトラップが設置されていた。これは6月に自然保護団体が現場で説明を求めた際、幌加の皆伐地の一部で「周囲の森林から種が飛んできて自然に更新するように掻き起こしをする」と説明があったために、自然保護団体側が提案したのだ。



 また、林野庁は天然林でも細い木が混みあっているところでは間伐しなければ木が育たないと説明したそうだ。しかし、それは木材生産のために効率的に木を太らせなければならない人工林のやり方だ。天然林の場合は、そのようなところでも自己間引きに任せるほうが賢明であり、間伐は必要ない。

 弁護士さんたちは質問も交えながら熱心に説明を聞いていたが、林野庁の説明と自然保護団体の説明が全く異なることにさぞかし驚いたのではなかろうか。

(報告者M)  


Posted by 十勝自然保護協会 at 21:43Comments(0)森林伐採