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2020年08月28日

一般道道モアショロ原野螺湾足寄停車場線について北海道知事に質問書を送付

 当会は北海道知事に一般道道モアショロ原野螺湾足寄停車場線の新規開削を中止するよう求めましたが、それに対する回答を踏まえ以下の質問書を送付しました。

********************


2020年8月25日


北海道知事 鈴木直道 様

十勝自然保護協会共同代表 安藤 御史
佐藤与志松


一般道道モアショロ原野螺湾足寄停車場線についての質問書


 当会の2020年5月22日付要望書に対し、7月17日付(道路第187号)で回答がありましたが、当会の意見・要望にきちんとお答えいただいておりません。つきましては、以下の6項目について質問いたします。それぞれに対し貴職の見解を明らかにして下さいますようお願いいたします。
 なお、お忙しいこととは存じますが、9月30日までに回答くださいますようお願い申し上げます。



1 火山噴火による山体崩壊や火砕流は流下速度が極めて速いため、発生してから避難をしても間に合いません。融雪型泥流も同様で、螺湾川沿いに流れ下った場合、道道モアショロ原野螺湾足寄停車場線は避難路として使えません。したがってこれらの噴火現象が発生した場合は避難のための道路を建設しても利用できません。これらの指摘に同意するか否かお答えください。同意できない場合は理由を具体的に説明してください。

2 溶岩の流下速度は歩く程度ですので、既存道路でも避難可能です。これについて同意できるか否かお答えください。同意できず新規開削が必要だという認識であれば、その理由を具体的に説明してください。

3 「足寄町雌阿寒岳防災マップ」(http://vivaweb2.bosai.go.jp/v-hazard/L_read/07meakandake/07meakan_2h02-L.pdf)によると、噴石は噴火の規模に関わらず火口から2kmの範囲が危険区域であり、雌阿寒温泉やオンネトー湯の滝付近にまで飛来する可能性があるとされています。また、国土交通省のサイト「火山災害に係わる検討について」(https://www.mlit.go.jp/kokudokeikaku/iten/information/council/shuto-research/kazan_kentou/c_kazan27.html#:~:text=Blong(1984)%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8C%E3%81%B0,%E6%95%B0km%E6%9C%AA%E6%BA%80%E3%81%A7%E3%81%82%E3%82%8B%E3%80%82)に「Blong(1984)によれば、噴石の平均的到達距離は約2km以上、最大で約5km以上とされ、1783年の浅間山噴火において約11kmの飛距離を記録している。」との記述があります。したがって、雌阿寒岳が噴火した場合、オンネトー周辺のほか、新規開削部分にも噴石が落下する可能性があります。噴石は速度が速く、発生した場合は避難する時間的猶予がないため、噴石が直接当たらない場所に身を寄せるしかありません。大きな噴石は自動車のフロントガラスや鉄板も貫通しますので、自動車に留まるのは危険です。道路に大きな噴石が落ちたら自動車の走行もできません。噴石による被害軽減はシェルターが最も有効です。
 噴石への対応として、シェルターの設置より道路の新規開削を優先する理由を説明してください。

4 「足寄町雌阿寒岳防災マップ」によると、大噴火では計画道路部分は降灰50センチの円内に入ります。内閣府は「大規模噴火時の広域降灰対策検討ワーキンググループ」による資料を公開しており、「降灰による影響の想定の考え方(交通分野)(案)平成31年3月22日」(http://www.bousai.go.jp/kazan/kouikikouhaiworking/pdf/2019322siryo1-1.pdf)に降灰による自動車への影響がまとめられています。この資料によると、有珠山では降灰の厚さが2cm以上でスリップが発生し、10cm以上で走行不能になったと報告されています。
 雌阿寒岳が噴火して火山灰が降下した場合視界不良となるため、二車線の舗装道路でも自動車が高速で走行することは不可能です。また、火山灰が厚く堆積した場合は、避難の車両も緊急車両も走行ができなくなる可能性があります。
 つまり二車線の舗装道路を整備しても、降灰が少なくて自動車走行ができる場合にのみわずかな時間短縮になるだけです。降灰が少ない小規模噴火であれば1分1秒を争って避難する必要はないので既存の道路で避難できます。既存の未舗装道路ではカーブが多く幅員が狭くてバスなどの大型車両の通行が困難ということであれば、多少の改良で対応できると考えます。
 なお、緊急車両は足寄町市街から現場に向かうことになりますが、足寄町市街から現道の二車線区間終点までは約37kmありますので、避難の車両と緊急車両が幅員の狭い部分ですれ違う可能性は低いと思われます。
 これらの指摘を踏まえた上で、降灰時の避難および緊急車両の走行において、どうしても新規開削による二車線の舗装道路が必要であるという理由を説明してください。

5 道路整備にあたり動植物の専門家などで構成するワークショップを開催し、自然環境への影響や保全措置などについて意見を聞いて進めているとの回答がありました。平成28(2016)年6月から動植物の専門家などで構成する懇談会が開催され、いくつかの路線案の検討があり、現計画路線の骨格がほぼ固まった段階で、平成29(2017)年11月から地域の代表者や自然環境団体等も参加するワークショップが開催されています。しかし、懇談会やワークショップでは噴火現象に対応した防災や避難と道路との関係について議論や検討はなされていません。
 当会も当初からワークショップに参加し、生態系・生物多様性の保全、景観の保全の立場から、アカエゾマツを主体とする独特の景観を有する針葉樹林とその林床の保護を訴え、直線化に拘泥した新規開削に伴って生じるほぼ全線にわたっての大規模な法面の出現が及ぼす自然環境の変化について多面的に問題点を指摘してきました。また、現道を利用しての整備案も提言しました。
 自然環境への影響が最も少なくてすむのは既存の道路の部分改修です。火山現象に即した現実的な防災や避難の視点から、現道の利用について再度の検討を求めます。これについて貴職の見解をお尋ねします。

6 「貴協会からご提案のありました立ち入り禁止体制の強化や噴石シェルターの設置については、雌阿寒岳火山防災協議会の中で議論されるものと考えております。」との回答がありましたが、雌阿寒岳火山防災協議会の構成員(委員)である北海道知事としては、これらに関して協議会に提案する意向をお持ちかご説明ください。


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