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2021年02月25日
環境省にモアショロ原野螺湾足寄停車場線について要望書を送付
当会は雌阿寒岳が噴火した際の避難路として一般道道モアショロ原野螺湾足寄停車場線を拡幅・新規開削する計画に対し、現道の改修で対応するよう北海道に要望してきましたが、国立公園内の事業の適否について最終的な判断をする環境省に以下の要望書を送付しました。
環境大臣 小泉進次郎 様
貴省の中央環境審議会自然環境部自然公園等小委員会は2015年12月22日に、町道雌阿寒オンネトー線(現在は道道に昇格し、一般道道モアショロ原野螺湾足寄停車場線の一部となる)の幅員を3.5mから5.5mへ変更することを認めました。これは足寄町が、本路線を雌阿寒岳が噴火した際の避難路とするために拡幅舗装を北海道や環境省に要望したことに基づいています。
道路管理者である北海道は、2015年から自然環境調査を始め、2017年にはワークショップを開催して検討を進めてきました。これはワークショップで道民の意見を聞く前に拡幅舗装化が前提となっていたと解されます。
当会もワークショップに参加して意見を述べてきましたが、その中で雌阿寒岳噴火の際の避難路として完全二車線の舗装道路が本当に必要なのかという疑問が生じました。噴火による避難は火山性微動の増加など噴火の前兆現象が見られた場合に噴火の前に避難する「事前避難」と、突然噴火した場合の「緊急避難」に分けることができます。前者の場合は噴火前ですから一分一秒を争って避難するという状況ではありません。後者の場合、噴火現象に対応した避難をすることになります。これをまとめると以下のようになります。
1.火山噴火による山体崩壊や火砕流は流下速度が極めて速いため、発生してから避難をしても間に合いません。融雪型泥流も同様で、螺湾川沿いに流れ下った場合、道道モアショロ原野螺湾足寄停車場線は避難路として使えません。したがってこれらの噴火現象が発生した場合は避難のための道路を建設しても利用できません。
2.溶岩の流下速度は歩く程度ですので、既存道路でも避難可能です。
3.噴石は速度が速く、発生した場合は避難する時間的猶予がないため、噴石が直接当たらない建物や岩陰等に身を寄せるしかありません。大きな噴石は自動車のフロントガラスや鉄板も貫通しますので、自動車に留まるのは危険です。道路に大きな噴石が落ちたら自動車の走行もできません。噴石による被害軽減はシェルターが最も有効です。
4.火山灰が降下した場合視界不良となるため、自動車が高速で走行することは不可能です。また、道路に火山灰が積もるとスリップしやすくなり、厚く堆積した場合は、避難の車両も緊急車両も走行ができなくなる可能性があります。
このように噴火現象に応じた避難を考えた場合、二車線の舗装道路を整備しても降灰がほとんどなく自動車走行に支障がないときにわずかな時間短縮になるだけです。そもそもそのような状況であれば一分一秒を争って避難する必要はありません。
当会は、この点について帯広建設管理部および北海道知事に質問書を送付しましたが、これらの指摘を否定する回答は示されませんでした(資料参照)。つまり、道路管理者である北海道は「噴火現象に対応した避難」について何ら検討することなく拡幅舗装化を計画したことになります。これは計画の妥当性の検討を怠ったということであり、あってはならないことです。
当会はその点ついて見直しを求め、新規開削ではなく現道の改修を提案しました。当会の提案は以下です。
1.幅員を広げることが可能な場所では幅員を広げ、対向車に備え待避場を多めに設ける。
2.カーブは基本的にそのままとし、カーブ部分の幅員を広くする。
3.路面はオンネトー湖岸の道路のような簡易舗装とする。
4.崩落の可能性がある場所に関しては、環境に配慮した上でできる限り小規模の崩落防止工事をする。
しかし北海道は、噴火現象に対応した避難について検討をしなかったことは認めようとせず、「雌阿寒岳火山防災計画」を引き合いに出して責任転嫁しています。また、当会の提案もワークショップで議題として取り上げず無視しています。
北海道は迅速性・安全性・確実性を理由にカーブや起伏がほとんどない完全二車線の舗装道路が必要だという主張のようですが、避難が必要な状況であれば速やかに一般車両の侵入を禁止することで交差は防げます。また、緊急車両も安全が確認されない限り現場に入ることはできません。仮に緊急車両とのすれ違いが生じても、当会の提案するような現道の改修を行えば、支障が生じるとは考えられません。
北海道が考えているような完全二車線の舗装道路を建設した場合、第2種特別地域の自然が大きく損なわれ希少な動植物の生息地が破壊されるばかりではなく、9万㎡という広大な天然林の伐採が行われ森林が大きく分断されることになります。路線変更によって国立公園内を回避したからといって、このような自然破壊は許されることではありません。
貴職におかれましては「噴火に対応した避難」を念頭に、北海道に本道路計画の妥当性について質し、不要な道路建設によって貴重な自然を損なうことがないよう賢明な判断をしていただくことを要望いたします。
なお、この要望に関して貴職のご見解を伺いたく存じます。年度末でご多忙のところ恐縮ですが3月22日までにご回答くださいますようお願い申しあげます。
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2021年2月22日
環境大臣 小泉進次郎 様
十勝自然保護協会 共同代表
安藤 御史
佐藤与志松
安藤 御史
佐藤与志松
一般道道モアショロ原野螺湾足寄停車場線についての要望書
貴省の中央環境審議会自然環境部自然公園等小委員会は2015年12月22日に、町道雌阿寒オンネトー線(現在は道道に昇格し、一般道道モアショロ原野螺湾足寄停車場線の一部となる)の幅員を3.5mから5.5mへ変更することを認めました。これは足寄町が、本路線を雌阿寒岳が噴火した際の避難路とするために拡幅舗装を北海道や環境省に要望したことに基づいています。
道路管理者である北海道は、2015年から自然環境調査を始め、2017年にはワークショップを開催して検討を進めてきました。これはワークショップで道民の意見を聞く前に拡幅舗装化が前提となっていたと解されます。
当会もワークショップに参加して意見を述べてきましたが、その中で雌阿寒岳噴火の際の避難路として完全二車線の舗装道路が本当に必要なのかという疑問が生じました。噴火による避難は火山性微動の増加など噴火の前兆現象が見られた場合に噴火の前に避難する「事前避難」と、突然噴火した場合の「緊急避難」に分けることができます。前者の場合は噴火前ですから一分一秒を争って避難するという状況ではありません。後者の場合、噴火現象に対応した避難をすることになります。これをまとめると以下のようになります。
1.火山噴火による山体崩壊や火砕流は流下速度が極めて速いため、発生してから避難をしても間に合いません。融雪型泥流も同様で、螺湾川沿いに流れ下った場合、道道モアショロ原野螺湾足寄停車場線は避難路として使えません。したがってこれらの噴火現象が発生した場合は避難のための道路を建設しても利用できません。
2.溶岩の流下速度は歩く程度ですので、既存道路でも避難可能です。
3.噴石は速度が速く、発生した場合は避難する時間的猶予がないため、噴石が直接当たらない建物や岩陰等に身を寄せるしかありません。大きな噴石は自動車のフロントガラスや鉄板も貫通しますので、自動車に留まるのは危険です。道路に大きな噴石が落ちたら自動車の走行もできません。噴石による被害軽減はシェルターが最も有効です。
4.火山灰が降下した場合視界不良となるため、自動車が高速で走行することは不可能です。また、道路に火山灰が積もるとスリップしやすくなり、厚く堆積した場合は、避難の車両も緊急車両も走行ができなくなる可能性があります。
このように噴火現象に応じた避難を考えた場合、二車線の舗装道路を整備しても降灰がほとんどなく自動車走行に支障がないときにわずかな時間短縮になるだけです。そもそもそのような状況であれば一分一秒を争って避難する必要はありません。
当会は、この点について帯広建設管理部および北海道知事に質問書を送付しましたが、これらの指摘を否定する回答は示されませんでした(資料参照)。つまり、道路管理者である北海道は「噴火現象に対応した避難」について何ら検討することなく拡幅舗装化を計画したことになります。これは計画の妥当性の検討を怠ったということであり、あってはならないことです。
当会はその点ついて見直しを求め、新規開削ではなく現道の改修を提案しました。当会の提案は以下です。
1.幅員を広げることが可能な場所では幅員を広げ、対向車に備え待避場を多めに設ける。
2.カーブは基本的にそのままとし、カーブ部分の幅員を広くする。
3.路面はオンネトー湖岸の道路のような簡易舗装とする。
4.崩落の可能性がある場所に関しては、環境に配慮した上でできる限り小規模の崩落防止工事をする。
しかし北海道は、噴火現象に対応した避難について検討をしなかったことは認めようとせず、「雌阿寒岳火山防災計画」を引き合いに出して責任転嫁しています。また、当会の提案もワークショップで議題として取り上げず無視しています。
北海道は迅速性・安全性・確実性を理由にカーブや起伏がほとんどない完全二車線の舗装道路が必要だという主張のようですが、避難が必要な状況であれば速やかに一般車両の侵入を禁止することで交差は防げます。また、緊急車両も安全が確認されない限り現場に入ることはできません。仮に緊急車両とのすれ違いが生じても、当会の提案するような現道の改修を行えば、支障が生じるとは考えられません。
北海道が考えているような完全二車線の舗装道路を建設した場合、第2種特別地域の自然が大きく損なわれ希少な動植物の生息地が破壊されるばかりではなく、9万㎡という広大な天然林の伐採が行われ森林が大きく分断されることになります。路線変更によって国立公園内を回避したからといって、このような自然破壊は許されることではありません。
貴職におかれましては「噴火に対応した避難」を念頭に、北海道に本道路計画の妥当性について質し、不要な道路建設によって貴重な自然を損なうことがないよう賢明な判断をしていただくことを要望いたします。
なお、この要望に関して貴職のご見解を伺いたく存じます。年度末でご多忙のところ恐縮ですが3月22日までにご回答くださいますようお願い申しあげます。
タグ :モアショロ原野螺湾足寄停車場線
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