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2022年11月13日

帯広市議会経済文教委員会における文化財担当者の発言ならびに文化財保護行政についての質問

 当会は帯広市議会に「帯広市泉町とかち帯広空港敷地内アースハンモック(十勝坊主)の市文化財指定に関する陳情書」を提出しました。陳情は経済文教委員会に付託されましたが、その審議における市の文化財担当者の発言に関して、以下の質問書を送付しました。

********************


2022年11月5日


帯広市教育委員会教育長  広瀬 容孝 様

十勝自然保護協会共同代表  安藤 御史
佐藤与志松



帯広市議会経済文教委員会における文化財担当者の発言ならびに文化財保護行政についての質問

 当会は、2020年10月5日付で貴職宛に「帯広市泉町とかち帯広空港敷地内アースハンモック(十勝坊主)の市文化財指定に関する要望書」を提出いたしました。以降、これに関し、貴職との間で文書のやり取りがありました。
 2020年12月5日質問(同年12月24日回答)
 2021年2月17日再質問(同年3月23日回答)
 2021年5月21日再々質問(同年6月1日回答)
 そのなかで「当該案件に関する公開データと同種の北海道指定文化財との関り等から、市教育委員会としては文化財審議委員会に諮問するには至らない段階と判断」しているとの回答(2021年3月23日付)があり、当会はその意味と根拠を求めましたが、具体的な回答はありませんでした。
 当会は、2021年12月8日付で帯広市議会あてに「帯広市泉町とかち帯広空港敷地内アースハンモック(十勝坊主)の市文化財指定に関する陳情書」を提出いたしました。陳情は経済文教委員会(以下、委員会という)に付託され、審査が2022年1月14日、2月18日、5月25日に行われました。そして、陳情は不採択になりました。
 本書面は、委員会で委員の質問に答えた文化財担当者の発言・説明には問題があるものが多く、その真意を質すものです。また文化財保護行政についても質問いたします。なお、発言は「帯広市議会議事録」より引用しています。
 ご多忙のところ誠に恐縮ですが、包括的な回答ではなく各項目について、12月7日までにご見解をいただきたくお願いいたします。



1 「公開データ」紀要論文について
 2月18日の委員会において、委員が、本案件に関する市教委の判断、文化財としての今日的評価を問うなかで「公開データ」「同種の北海道指定文化財」について取り上げましたが、それは当会と貴職との文書のやりとり(2021年5月再々質問、同6月回答)では全く回答されなかった部分で、委員会でやっと発言がありました。
 「公開データ」とは、帯広百年記念館紀要論文『帯広市泉町のアースハンモック(十勝坊主)』(No 38, 2020年3月)とのことが明確になりました。しかし、これについての文化財担当者の以下の答弁(以下、枠内。一部省略)は、看過できないものです。
…出されている根拠の文献などですけれども、それから実際に陳情者の方が理由として言われているものがなかなか導き出せないと、もう少し明確な数値、比較できる数値をいただきたい…。
…幾つかにつきましては、必ずしもその内容が、正しいものかどうかというのは疑われるところがございまして、もう少し検証が必要かなと考えているところでございます。

 この点について、5月25日、同じ委員が「明確な数値、比較できる数値」、「内容が正しいかどうか疑わしい」とは具体的に何を指しているのか質され「陳情における根拠を明示すべき数値」「陳情内容と陳情内容と公開データ及び公開データ間の内容不一致」について、さらなる具体性を問われ次のように答えています。
…調査の結果、敷地内に数千個あると記されてますけれども、ちょっと漠然としてるというところ。それから、その数値が公開データのほうからどうやって出されたのかよく分からないというところです。また、以平という地域名と十勝坊主の分布に関係があるというような説明をされていましたけれども、これは誤解を生じるところもあるかなと考えているところでございます。

 しかし、この「見解」は、陳情書と同趣旨の貴職宛「要望書」(2020年10月5日付)に対しても明らかにされず、以降、当会と貴職との文書のやりとり(2021年5月再々質問、同6月回答)では全く回答されなかった部分で、委員会での発言で初めて知ることになりました。
 委員会での文化財担当者の答弁も極めて曖昧で具体性に欠けるものです。文化財担当者の委員会で発言、すなわち、①「もう少し明確な数値、比較できる数値をいただきたい」、②「その内容が、正しいものかどうかというのは疑われるところ」③「その数値が公開データのほうからどうやって出されたのかよく分からない」について明確な説明を求めます。

2 「同種の北海道指定文化財」について
 2月18日の委員会において、委員からは、「既存の畜大構内の北海道指定天然記念物のほかにもうひとつ同種の文化財を指定することで、どのような影響があるのか?」「指定文化財として2つは要らないということなのか」という質問がありました。
 当会は、この点について書面のやり取りで問いただしていますが明確な説明がなかったものです。
 委員の質問に対して次のように答えています。
 そのお答えをする前に、やはり文化財、記念物はいろいろあります。そのほかにもいろいろ重要だというものもありますので、じゃあ果たして同じものだけを2つ指定することになるのか、それがほかの方々に理解していただけるのかというところも、少し考えていかないといけないところなんじゃないかなと考えているところでございます。

 具体的な回答とは言えないものです。5月25日、同じ委員が同趣旨の質問を繰り返して聞いており、次のように答えています。
…当然市民の皆様が十分に納得するような説明というのが必要になってきます。そうでありますが、現状ではそれができるのかというところの懸念がございます。

 「現状ではそれができるのかというところの懸念」とはどのようなものなのか、明確な説明をお願いいたします。

3 「十勝坊主」の名称、全国的な分布について
 5月25日の委員会において、委員から「十勝坊主という名称は、全国的に使われているものか」について問われ、文化財担当者は次のように答えています。
 十勝坊主の名前は、最初に関心を持たれた帯広畜産大学の先生によりつけられました仮の名前でして、それがそのまま使われているということでございます。一般的にはアースハンモックという名前で認知されているというところでございます。
 御質問につきましては、十勝坊主の名前が地学の解説書などで公式の名前として使用されてるものを私は承知してしておりませんので、ほぼ管内だけに限られると思われます。(原文のママ)

 「帯広畜産大学の先生」とは山田忍教授のことでしょう。氏の論文「野地坊主と十勝坊主について」(日本土壌肥料学雑誌第30巻第2号,1959年)のどこに「仮の名前」との記載があるのでしょうか。根拠をご提示ください。また、「十勝坊主の名前が地学の解説書などで公式の名前として使用されてるものを私は承知してしておりませんので、ほぼ管内だけに限られる」と発言していますが、十勝坊主は地形学辞典(二宮書店)や地学事典(平凡社)に掲載されています。本当に各種学術辞典・事典その他学術誌を確認なさったのでしょうか。ご説明ください。質問した委員はこの答弁に納得しており、審査に重大な影響を与えるものです。
 また、同じ委員の「全国的にはどのような分布状況なのか」との質問に対し次のように答えています。
 本州や九州などでも気温が低い標高が1,000メートル以上の場所での分布は確認されております。平地では青森県下北半島までと承知しております。

 当会は、この説明は「本州や九州などでも気温が低い標高が1,000メートル以上の場所」であればどこにでもあるかのような誤解を与える不十分なものと考えます。この発言の根拠をご提示ください。

4 文化財審議委員会について
 1月14日の委員会において、委員から、「意見交換、話し合い…じかに話し合う」「諮問云々は別にして…議論する場を設ける考え」について問われ、文化財担当者は次のように答えています。
…必要なときが来れば、それは検討してまいりたいと思います。

 これについて委員からは「今、まさに必要なとき」との意見がありました。
 また、5月25日の委員会において、別の委員から、文化財審議委員会のメンバーに関わり「例えば外部からのサジェスチョンといいますか、そういうものを受けた上で、例えばどこに出しても公平な審議というのが進められるのかどうか」と問われ、文化財担当者は次のように答えています。
その場合は、審議委員の皆様がそういう場が必要だというふうな判断をされれば、そういう方がすぐに探し出せるかどうかというのはちょっと別ですけれども、そのようなことも可能かと思います。

 貴職は、委員会の審査を通じ、各委員から指摘された要望について、今後どのように対処していこうとしているのか、ご説明ください。

5 文化財情報の収集について
 帯広市のホームページに「帯広市の国・道・市 文化財」というサイトがあります。
https://www.city.obihiro.hokkaido.jp/bunka/rekishi/bunkazai/index.html
 そこには次のような案内があります。
文化財・史跡 物件についての情報をお待ちしています
帯広市内の文化財や史跡など、歴史的価値の高い物件についての情報をお待ちしています。
いただいた情報は、今後の文化財保存・活用などの検討にあたってのデータといたします。
ご存知の物件がありましたら、下記のいずれかの方法にてご連絡ください。
1 文化財・史跡 物件連絡票を印刷し、必要事項を記入の上、郵送・ファクスまたはご持参ください。
2 お電話にてご連絡ください。
3 下記のフォームにてご連絡ください。

 2020年10月に、市教委に対して当会・十勝の自然史研究会・市民フォーラム十勝の3団体が個別に空港十勝坊主保存(指定文化財)の要望書を提出しました。3団体のそれぞれの要望は、上記ホームページのような方法を経ているものではありませんが、「必要事項」にある文化財・史跡についての「物件の名称」「物件の所有者」「物件の所在地」「物件の歴史的背景や概要」などに相当するものを記載しております。
 しかし、どの団体に対しても何の対応もありませんでした。
 当会が、その後、貴職へ質問書を送り、やりとりをすることによって初めてこれらの要望の取り扱いの状況が一定程度分かったのであって、結局、市教委からはどの団体へも要望に対する説明は何もなかったのです。
 さらに、2021年8月の文化財審議委員会では、議事録によれば、審議会委員に対して経過説明や「現状では北海道エアポートや市長部局からの同意が得られる見込みがないことから、審議委員会の場において指定にかかる議論はできない旨を説明した。」とあり、審議会委員から「同意を得られる見込みがない」ことについて詳細を求められ説明していますが、その内容は2021年6月までの当会との文書のやりとりでは説明されておらず、そのような理由(状況の把握)だったのかとこの議事録で知った次第です。
 その他、今回の3回の審査によって初めて要望の取り扱いの状況が分かったことが多く、このことは要望をしている3団体に対して不誠実であり極めて問題であると言わざるを得ません。
 「市民からの情報」に対して実際にどのような対応が行われているのでしょうか。ご説明ください。

6 市教委の姿勢について
 当会は、2020年10月以降のやりとりの中で、回答の文書には「…適切に評価する」「…確認する」「…検討する」という言葉が多数出てきます。また、委員会答弁でも「…慎重に議論する必要がある」「調査が進んでいない」などとの発言もあります。主語・主体は市教委であるはずです。しかし、実態としては市教委自らがそのような行動を積極的にやっているのか、見えません。
 それは、空港開発事業の現実的な見通しが立たないなか、市も市教委も『具体的な整備計画がわかるまで何もしない』という内容の答弁に如実に表れていると思います。
 当会は、当該地形の文化財としての評価を求めていますが、積極的な立場で検討していただくことを改めてお願いするものです。ご見解をいただきたくお願いいたします。
以上



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Posted by 十勝自然保護協会 at 14:59│Comments(0)アースハンモックの保全
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