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十勝自然保護協会 活動速報 › アースハンモックの保全 › とかち帯広空港敷地内十勝坊主の保存に関わる文化財保護行政について要望

2023年03月09日

とかち帯広空港敷地内十勝坊主の保存に関わる文化財保護行政について要望

 当会はとかち帯広空港敷地内の十勝坊主の保存に関し、帯広市議会に文化財指定を求める陳情をしました。また、教育長に文化財保護行政について質問書を提出しました。それに対する回答について、以下の要望書を送付しました。

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2023年3月6日


帯広市教育委員会 教育長  広瀬 容孝 様

十勝自然保護協会 共同代表  安藤 御史
佐藤与志松

とかち帯広空港敷地内十勝坊主(アースハンモック)の保存に関わる文化財保護行政についての要望

 当会は、とかち帯広空港敷地内十勝坊主(アースハンモック)の公的な保存を要望する立場から、2022年11月5日付で「帯広市議会経済文教委員会における文化財担当者の発言ならびに文化財保護行政についての質問」を提出しました。これに対し、貴職より、同年12月6日付で回答をいただきました。
 回答の全体において、本件に関わる文化財保護行政について、積極的な姿勢が見られなかったのは極めて残念です。
 とくに、質問6「市教委の姿勢について」に対する回答では、「当該敷地内の文化財に関する今後の学術的評価につきましては、調査研究の結果並びにそれに対する研究者間の議論を踏まえたうえでの検討が必要」、「文化財の評価は一般的に、定着を見定めるための時間という審査も必要」とありますが、それまでの一連の経過から見ても、市教委は、依然として、自らが積極的に本件への評価作業や多数の研究者(自然地理学、地形学、雪氷学など)と共同して議論に取り組むという姿勢が全く見られません。
 当会は、引き続き、当該地の十勝坊主(アースハンモック)の希少性について、市教委自らが積極的に早急に評価作業を開始することを強く要望いたします。
 なお、「以平」について(回答1に関わり)、また、十勝坊主の名称と分布について(回答3に関わり)の当会の見解は以下の通りです。
「以平」について
 質問1は、経済文教委員会(2022年5月25日)での文化財担当者の答弁の曖昧さに関してのものです。そのうち「その内容が、正しいものかどうかというのは疑われるところ」としたものの一つとして「以平という地域名と十勝坊主の分布に関係があるというような説明をされていましたけれども、これは誤解を生じるところもあるかなと考えているところでございます。」について明確な説明を求めたものです。貴職からの回答は次のようになっています。
《なお、地名に関しましては提唱者の『十勝アイヌ語地名手帳』(2008年 制作協力北海道新聞社出版局)のうち、「第6章帯広空港のある『似平』は十勝坊主」などからも改めてご検討いただきたく存じます。》
 しかしながら、指摘された箇所からは「誤解」を読み取ることはできません。当会が、保存を求める要望書や委員会での説明で参考にした帯広百年記念館紀要第38号(2020)「帯広市泉町のアースハンモック(十勝坊主)」には、「現在の以平の地名の基になったイタラタラキの解釈には諸説」があるとしており、そこで早田国光氏の説を紹介しています(参考文献:2015 『イタラタラキ』は『十勝坊主』である.アイヌ語地名研究,18,37-54)。この文献は2015年発行のもので、前述『十勝アイヌ語地名手帳』(2008年)を基本としており、筆者の体験も加えた新しいものです。
 回答がどのようなことを意味するのか理解できませんので指摘しておきます。
「十勝坊主」の名称について
 「「帯広畜産大学の先生」とは山田忍教授のことでしょう。氏の論文「野地坊主と十勝坊主について」(日本土壌肥料学雑誌第30巻第2号,1959年)のどこに「仮の名前」との記載があるのでしょうか。根拠をご提示ください。」との当会の問いに対し、市教委は「山田忍(1959)先生の『野地坊主と十勝坊主について(北海道におけるPatterned Groundに関する研究第1報)』『日本土壌肥料学雑誌第30巻第2号』でご理解いただけるものと存じます。」と回答し、付記で「便宜的な命名(仮称)だったと理解されます。」と憶測しています。はっきりしたのは山田教授の前述の論文あるいは山田教授の関連論文に十勝坊主を「仮の名前」あるいは「仮称」とする記述を市教委は示すことができなかったということです。
なお、地形学辞典(二宮書店)では十勝坊主は「構造土の一種でアースハンモックに相当する」とされ、アースハンモックは「thufur(アイスランド語)・芝塚・凍結坊主・十勝坊主ともいわれる」としています。また新版地学事典(平凡社)ではアースハンモックは「十勝坊主・芝塚と呼ばれることもある」とされています。つまり十勝坊主とアースハンモックは同義であり、十勝坊主は仮の名前などではありません。
 アースハンモックは欧米を中心に使用され世界標準の用語といえますが、十勝坊主はローカルであるものの定着した用語です。そのため、帯広畜産大学の十勝坊主はアースハンモックではなく十勝坊主として1974年に北海道の天然記念物に指定されたのです。
全国的な分布について
 「この説明は『本州や九州などでも気温が低い標高が1,000メートル以上の場所』であればどこにでもあるかのような誤解を与える不十分なものと考えます。この発言の根拠をご提示ください」との当会の問いに対し、「道外事情につきましては、貴会陳情書の資料として添付されている紀要の「はじめに」や新聞記事などと同程度の内容と存じます。」と居直りのような回答をしてきました。「本州や九州などでも気温が低い標高が1000メートル以上の限られた場所で分布が確認されております。」くらいの説明はしてもらいたいものです。


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Posted by 十勝自然保護協会 at 14:37│Comments(0)アースハンモックの保全
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