十勝自然保護協会 活動速報 › サホロスキー場問題
2010年06月10日
サホロスキー場北斜面開発で再調査を申入れ
加森観光株式会社は、サホロスキー場北斜面にスキーコースを拡張する計画を打ち上げ、2回にわたり住民説明会を開催した。この席上、当会が追求した結果、調査を請負った株式会社森林環境リアライズの社員の口から驚くべき事実が語られた。すなわち、北斜面にナキウサギの生息地があることを知っていたが報告書には書かなかった、というのである。このことは、ほかに重大な事実を隠蔽しているといわれても、この会社には反論の余地がないことを意味する。環境調査は儀式ではない。生物多様性条約締約国会議を開催する国の「品格」として、社会の評価に耐えうるまともな調査がなされなければならないのである。そこで当会は、調査の発注者である加森観光株式会社代表加森公人氏と報告書を受取り許可を与える北海道森林管理局長山﨑信介氏に下の申入れ書を提出した。
加森観光株式会社代表 加森公人 様
貴職が新たにコース増設を計画している佐幌岳北斜面は、前の経営者である西洋環境開発株式会社が住民や自然保護団体の反対によって開発を断念したところであるということをまず申し上げておきたい。
今回のスキーコース拡張の事前協議において、貴職は環境調査と事前協議が必要であることを林野当局から指示された(2007年9月12 日)。これを受けて株式会社森林環境リアライズ(以下、リアライズ)に発注し環境調査を行なった。そして、「2008年 十勝・北海道サホロリゾート北斜面開発行為に伴う森林施業のあり方調査 調査報告書」(以下、調査報告書)を林野当局に提出した。
貴職は、新得町において4月12日に住民説明会、5月17日に意見交換会を開催したが、ここでリアライズが作成した調査報告書に重大な瑕疵のあることが明らかになった。
すなわち、調査報告書において佐幌岳北斜面のナキウサギの生息のことが全くふれられていないと当会が問いただしたのに対し、リアライズの担当者は、佐幌岳北斜面でナキウサギの生息が確認されていたことは知っていたと証言した。知っていながら報告書にはまったく佐幌岳北斜面のナキウサギの生息について言及しなかったのである。これはまさに不都合な事実の隠蔽である。この一事は、この報告書の信頼性が皆無であることを意味する。
生物多様性の保全は、今日重要な課題となっており、10月にはわが国で生物多様性条約第10回締約国会議が開催されるのである。このようないい加減な調査をもとに自然環境に問題なしとする主張が社会に通用しないことは、貴職にも理解できるであろう。したがって、当会は、貴職が問題の重大性を自覚し、信頼に足る再調査を行うよう申入れる。
当会の申入れに不同意の場合は、その理由を速やかに書面で明らかにしていただきたい。
加森観光株式会社(以下、加森)が新たにコース増設を計画している佐幌岳北斜面は、前の経営者である西洋環境開発株式会社が住民や自然保護団体の反対によって開発を断念したところである。
今回のスキーコース拡張の事前協議において、貴職は環境調査と事前協議が必要であることを加森に指示した(2007年9月12 日)。これを受けて、加森は株式会社森林環境リアライズ(以下、リアライズ)に発注し環境調査を行なった。そして、「2008年 十勝・北海道サホロリゾート北斜面開発行為に伴う森林施業のあり方調査 調査報告書」(以下、調査報告書)が貴職に提出された。
加森は、新得町において4月12日に住民説明会、5月17日に意見交換会を行ったが、ここでこの調査報告書に重大な瑕疵のあることが明らかになった。
調査報告書において佐幌岳北斜面のナキウサギの生息のことが全くふれられていないと問いただされたのに対し、リアライズの担当者は、佐幌岳北斜面でナキウサギの生息が確認されていたことは知っていたと証言したのである。つまり知っていながら報告書にはまったく佐幌岳北斜面のナキウサギの生息についてふれなかったということである。これはまさに不都合な事実の隠蔽である。
このようないい加減な調査をもとに自然環境に問題なしとする主張が社会に通用しないことは明らかである。したがって、当会は、貴職が問題の重大性を加森に指摘するとともに信頼に足る再調査を行うよう指導することを申入れる。
当会の申入れに不同意の場合は、その理由を速やかに書面で明らかにしていただきたい。
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2010年6月10日
加森観光株式会社代表 加森公人 様
十勝自然保護協会
サホロリゾート北斜面開発行為に伴う再調査の申入れ
貴職が新たにコース増設を計画している佐幌岳北斜面は、前の経営者である西洋環境開発株式会社が住民や自然保護団体の反対によって開発を断念したところであるということをまず申し上げておきたい。
今回のスキーコース拡張の事前協議において、貴職は環境調査と事前協議が必要であることを林野当局から指示された(2007年9月12 日)。これを受けて株式会社森林環境リアライズ(以下、リアライズ)に発注し環境調査を行なった。そして、「2008年 十勝・北海道サホロリゾート北斜面開発行為に伴う森林施業のあり方調査 調査報告書」(以下、調査報告書)を林野当局に提出した。
貴職は、新得町において4月12日に住民説明会、5月17日に意見交換会を開催したが、ここでリアライズが作成した調査報告書に重大な瑕疵のあることが明らかになった。
すなわち、調査報告書において佐幌岳北斜面のナキウサギの生息のことが全くふれられていないと当会が問いただしたのに対し、リアライズの担当者は、佐幌岳北斜面でナキウサギの生息が確認されていたことは知っていたと証言した。知っていながら報告書にはまったく佐幌岳北斜面のナキウサギの生息について言及しなかったのである。これはまさに不都合な事実の隠蔽である。この一事は、この報告書の信頼性が皆無であることを意味する。
生物多様性の保全は、今日重要な課題となっており、10月にはわが国で生物多様性条約第10回締約国会議が開催されるのである。このようないい加減な調査をもとに自然環境に問題なしとする主張が社会に通用しないことは、貴職にも理解できるであろう。したがって、当会は、貴職が問題の重大性を自覚し、信頼に足る再調査を行うよう申入れる。
当会の申入れに不同意の場合は、その理由を速やかに書面で明らかにしていただきたい。
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2010年6月10日
北海道森林管理局長 山﨑信介様
十勝西部森林管理署東大雪支署長 諏訪幹夫様
十勝西部森林管理署東大雪支署長 諏訪幹夫様
十勝自然保護協会
サホロリゾート北斜面開発行為に伴う再調査の申入れ
加森観光株式会社(以下、加森)が新たにコース増設を計画している佐幌岳北斜面は、前の経営者である西洋環境開発株式会社が住民や自然保護団体の反対によって開発を断念したところである。
今回のスキーコース拡張の事前協議において、貴職は環境調査と事前協議が必要であることを加森に指示した(2007年9月12 日)。これを受けて、加森は株式会社森林環境リアライズ(以下、リアライズ)に発注し環境調査を行なった。そして、「2008年 十勝・北海道サホロリゾート北斜面開発行為に伴う森林施業のあり方調査 調査報告書」(以下、調査報告書)が貴職に提出された。
加森は、新得町において4月12日に住民説明会、5月17日に意見交換会を行ったが、ここでこの調査報告書に重大な瑕疵のあることが明らかになった。
調査報告書において佐幌岳北斜面のナキウサギの生息のことが全くふれられていないと問いただされたのに対し、リアライズの担当者は、佐幌岳北斜面でナキウサギの生息が確認されていたことは知っていたと証言したのである。つまり知っていながら報告書にはまったく佐幌岳北斜面のナキウサギの生息についてふれなかったということである。これはまさに不都合な事実の隠蔽である。
このようないい加減な調査をもとに自然環境に問題なしとする主張が社会に通用しないことは明らかである。したがって、当会は、貴職が問題の重大性を加森に指摘するとともに信頼に足る再調査を行うよう指導することを申入れる。
当会の申入れに不同意の場合は、その理由を速やかに書面で明らかにしていただきたい。
2010年05月22日
サホロリゾートスキー場の今は
3月2日の新聞に、サホロリゾートスキー場(以下、サホロスキー場と記す)の北斜面開発計画の記事が載った。地元新得の方がたが運営している加森観光と交渉して、住民との意見交換会を2回開かせた。いずれも新聞で報道されたので、スキーを趣味としている方は、驚きと期待をもって読まれた方も多いと思う。私は、ここ15年ほど年間40日くらいサホロスキー場に通ってスキーを楽しんでいるので、大いなる関心を持ってこの会に参加した。そこでサホロリゾート側の説明を聞いていて、開発計画と実態との差に大きな違和感を覚えたので、利用者の立場から、この計画に対する質問と意見をのべた。関心を持っておられる方々にこの問題を考える材料を提供する意味で、私の見るところを記したいと思う。
バブル期にリゾート法(1987)に踊らされて、日本中にゴルフ場・スキー場・温泉付リゾートホテルなどが造成された。だが数年を経ずしてバブルが崩壊すると、経営難から、倒産・撤退・企業譲渡などで廃業した。大型のものでは公共リゾートとして各地に展開したグリーンピアや宮崎のシーガイアが記憶に残っていると思う。身近なところでは、糠平のスキー場がコクドの撤退で、存続が危ぶまれたが、地元の温泉経営者の努力と町の援助で何とか運営されているとか、あのオーストラリアのスキー客で賑わっていたニセコヴィレッジリゾートが売りに出され、マレーシアの大手建設コングロマリットのYTLに身売りした、など似た例は日本全土に見られる。こうゆう経済環境の中での今回の計画発表だということを念頭においておく必要がありそうである。
さて、私から見ると、今年のサホロスキー場の運営は異常であった。大きなものを3点あげよう。まずオープン早々、スキー場の顔である第6ペアリフト(ゴンドラ乗り場の隣にある。このリフトかゴンドラに乗ることからスキーが始まる)が故障のため10日以上運休した。その理由はスキー客には知らされなかった。2点目は、今年のパンフレットには林間滑走可能地域が例年の3倍くらいに増やされていたので、心待ちにしていた客も多かったのだが、シーズン中滑走不能であった。理由は知らされなかったが、脇から聞いたところでは、林野庁に許可申請を出し忘れていたというお粗末なことだったらしい。3点目は、第4リフト(頂上近くまで行くリフト)が土日のみの運転、それも3月に入ると運休となった。シーズンは4か月余だから四分の一が運休となる。ホームページ上では雪崩の危険があるとのコメントだが、実態は故障。これも脇からの情報だが、修理代は3000万円とのこと。こうゆう中で、私もその一人である常連のスキー客は加森観光の運営の熱意が感じられなかった。リゾート地の最大の商品はサービス、それが品切れだったのだから。
サホロスキー場の一般客の入り込み数は発表がないのでわからないが、肌で感ずるところでは非常に少ないといえる。一にクラブメッド、二に合宿、三に学校のスキー授業か。そのクラブメッドがルスツに進出を考えているとか。こんな状況の中で、加森は中国の資本と接触しているといううわさも聞こえてくる。
加森は、近年一般日帰りスキー客より、長期滞在型の客が増えてきているので、欧米型の長期滞在可能な質の高いリゾート地にすることが求められている。そのために、北斜面の開発が必要であるという。因みに現在のスキー場面積は70ha、北斜面開発面積は約30ha。現在の面積の約半分が増えることになる。そこには大径木の美林がある。開発予定地内の樹木は約4万本で、そのうちのどれだけを伐らなければならないか検討中とのことだが、天然林は1本も伐らないが原則。どんな動物が生息しているか、調査は不十分。加森側は、希少種動物の営巣を確認した場合は全面開発は出来なくなるが、営巣に影響のない範囲での部分開発は可能といっている。
私は、過去に何度も当該地域を滑ったことがあるが、急傾斜の深雪林間斜面で、現スキー場内の林間斜面とほぼ同じである。ということは、加森側のいう自然志向型のスキーヤーは、人工的な構造物を作らなくても、地域を開放するだけで、自分好みのスキーをするだろうと思う。
今年の異常な状態をシーズン中に解消できなかった経営側が、相当な資本を投下しなければならない新規の開発計画を発表するというこの違和感を、今年のサホロを知っている人は解消できないだろうと思う。(N記)
バブル期にリゾート法(1987)に踊らされて、日本中にゴルフ場・スキー場・温泉付リゾートホテルなどが造成された。だが数年を経ずしてバブルが崩壊すると、経営難から、倒産・撤退・企業譲渡などで廃業した。大型のものでは公共リゾートとして各地に展開したグリーンピアや宮崎のシーガイアが記憶に残っていると思う。身近なところでは、糠平のスキー場がコクドの撤退で、存続が危ぶまれたが、地元の温泉経営者の努力と町の援助で何とか運営されているとか、あのオーストラリアのスキー客で賑わっていたニセコヴィレッジリゾートが売りに出され、マレーシアの大手建設コングロマリットのYTLに身売りした、など似た例は日本全土に見られる。こうゆう経済環境の中での今回の計画発表だということを念頭においておく必要がありそうである。
さて、私から見ると、今年のサホロスキー場の運営は異常であった。大きなものを3点あげよう。まずオープン早々、スキー場の顔である第6ペアリフト(ゴンドラ乗り場の隣にある。このリフトかゴンドラに乗ることからスキーが始まる)が故障のため10日以上運休した。その理由はスキー客には知らされなかった。2点目は、今年のパンフレットには林間滑走可能地域が例年の3倍くらいに増やされていたので、心待ちにしていた客も多かったのだが、シーズン中滑走不能であった。理由は知らされなかったが、脇から聞いたところでは、林野庁に許可申請を出し忘れていたというお粗末なことだったらしい。3点目は、第4リフト(頂上近くまで行くリフト)が土日のみの運転、それも3月に入ると運休となった。シーズンは4か月余だから四分の一が運休となる。ホームページ上では雪崩の危険があるとのコメントだが、実態は故障。これも脇からの情報だが、修理代は3000万円とのこと。こうゆう中で、私もその一人である常連のスキー客は加森観光の運営の熱意が感じられなかった。リゾート地の最大の商品はサービス、それが品切れだったのだから。
サホロスキー場の一般客の入り込み数は発表がないのでわからないが、肌で感ずるところでは非常に少ないといえる。一にクラブメッド、二に合宿、三に学校のスキー授業か。そのクラブメッドがルスツに進出を考えているとか。こんな状況の中で、加森は中国の資本と接触しているといううわさも聞こえてくる。
加森は、近年一般日帰りスキー客より、長期滞在型の客が増えてきているので、欧米型の長期滞在可能な質の高いリゾート地にすることが求められている。そのために、北斜面の開発が必要であるという。因みに現在のスキー場面積は70ha、北斜面開発面積は約30ha。現在の面積の約半分が増えることになる。そこには大径木の美林がある。開発予定地内の樹木は約4万本で、そのうちのどれだけを伐らなければならないか検討中とのことだが、天然林は1本も伐らないが原則。どんな動物が生息しているか、調査は不十分。加森側は、希少種動物の営巣を確認した場合は全面開発は出来なくなるが、営巣に影響のない範囲での部分開発は可能といっている。
私は、過去に何度も当該地域を滑ったことがあるが、急傾斜の深雪林間斜面で、現スキー場内の林間斜面とほぼ同じである。ということは、加森側のいう自然志向型のスキーヤーは、人工的な構造物を作らなくても、地域を開放するだけで、自分好みのスキーをするだろうと思う。
今年の異常な状態をシーズン中に解消できなかった経営側が、相当な資本を投下しなければならない新規の開発計画を発表するというこの違和感を、今年のサホロを知っている人は解消できないだろうと思う。(N記)
2010年04月13日
森林環境リアライズ、サホロスキー場調査でも事実隠蔽
4月12日夜、加森観光が計画しているサホロスキー場の拡張についての住民説明会が新得町の公民館で開催された。このサホロスキー場は、バブル期に西武セゾングループの西洋環境開発株式会社により運営されたが、その後経営破綻し、加森観光が経営権を引き取り今日に至っている。今回、加森観光が新たに森林を伐開しコース増設を計画している佐幌岳北斜面は、西洋環境開発が住民や自然保護団体の反対によって開発を断念した地域である。
今回のスキーコース拡張にあたり土地管理者の林野庁北海道森林管理局は、環境調査と事前協議が必要であることを加森観光に指示した(2007年9月12日)。これを受けて、加森観光は森林環境リアライズに発注し環境調査を行った。あの美蔓ダム・美蔓地区国営かんがい排水事業でお馴染みの森林環境リアライズである。国有林内での開発行為にともなう環境調査が必要になると林野庁はなぜかここに発注するよう仕向けるのである。森林環境リアライズは林野庁の退職者が関わる、林野庁官僚と関連の深い企業なのだろう。
きちんとまともな調査をするならば、あえて森林環境リアライズが受注しても文句をいうつもりはないのだが、美蔓地区国営かんがい排水事業の際の「平成19年度美蔓地区導水路国有林使用検討業務報告書」で判明したように、この業者にはきちんとまともな調査ができない体質があるのだ(業者のデータ操作に対する研究者と行政機関の責任を参照)。
そこで、林野庁の指示によって行われた調査をとりまとめた「2008年 十勝・北海道サホロリゾート北斜面開発行為に伴う森林施業のあり方調査 調査報告書」に眼を通した。
同報告書の145ページに「ナキウサギについては、既存資料(川辺、1983)により佐幌岳南東斜面で生息痕跡が確認されているが、アセスメント調査および昨年度、本年度調査では、生息および生息痕跡の確認はなかった」と記述しているのである。
「川辺」とは十勝自然保護協会理事の川辺百樹氏のことであるが、川辺氏は1983年にはまだナキウサギの調査に着手しておらず、ナキウサギの論文など書いていないと証言している。さらに悪質なのは、今回コースが計画されている佐幌岳北斜面でナキウサギの生息地が発見されたことを、1991年12月11日付北海道新聞が大きく報道し、道の環境審議会でもこの生息地のことが議論となっていた。その後2000年に「北海道中央部、佐幌岳とその周辺におけるエゾナキウサギの生息地」(ひがし大雪博物館研究報告第22号)として論文にもなっている。それにも関わらず今回の開発行為がナキウサギに関して問題がないように報告書を仕上げているのである。まさに不都合な真実の隠蔽である。
2008年9月16日、加森観光の安田総支配人は新得町役場での新得町長との面談において「調査費用も300~400万円程度と安価で出来そう」と発言しているのだが、彼はいい加減な調査かもしれないと認識していたのかもしれない。もしそうなら、彼の予感は的中したといえよう。
なにはともあれ、このようないい加減な調査をもとに自然環境に問題ありませんなどという主張は社会に通用しないことを宣告しておこう。
今回のスキーコース拡張にあたり土地管理者の林野庁北海道森林管理局は、環境調査と事前協議が必要であることを加森観光に指示した(2007年9月12日)。これを受けて、加森観光は森林環境リアライズに発注し環境調査を行った。あの美蔓ダム・美蔓地区国営かんがい排水事業でお馴染みの森林環境リアライズである。国有林内での開発行為にともなう環境調査が必要になると林野庁はなぜかここに発注するよう仕向けるのである。森林環境リアライズは林野庁の退職者が関わる、林野庁官僚と関連の深い企業なのだろう。
きちんとまともな調査をするならば、あえて森林環境リアライズが受注しても文句をいうつもりはないのだが、美蔓地区国営かんがい排水事業の際の「平成19年度美蔓地区導水路国有林使用検討業務報告書」で判明したように、この業者にはきちんとまともな調査ができない体質があるのだ(業者のデータ操作に対する研究者と行政機関の責任を参照)。
そこで、林野庁の指示によって行われた調査をとりまとめた「2008年 十勝・北海道サホロリゾート北斜面開発行為に伴う森林施業のあり方調査 調査報告書」に眼を通した。
同報告書の145ページに「ナキウサギについては、既存資料(川辺、1983)により佐幌岳南東斜面で生息痕跡が確認されているが、アセスメント調査および昨年度、本年度調査では、生息および生息痕跡の確認はなかった」と記述しているのである。
「川辺」とは十勝自然保護協会理事の川辺百樹氏のことであるが、川辺氏は1983年にはまだナキウサギの調査に着手しておらず、ナキウサギの論文など書いていないと証言している。さらに悪質なのは、今回コースが計画されている佐幌岳北斜面でナキウサギの生息地が発見されたことを、1991年12月11日付北海道新聞が大きく報道し、道の環境審議会でもこの生息地のことが議論となっていた。その後2000年に「北海道中央部、佐幌岳とその周辺におけるエゾナキウサギの生息地」(ひがし大雪博物館研究報告第22号)として論文にもなっている。それにも関わらず今回の開発行為がナキウサギに関して問題がないように報告書を仕上げているのである。まさに不都合な真実の隠蔽である。
2008年9月16日、加森観光の安田総支配人は新得町役場での新得町長との面談において「調査費用も300~400万円程度と安価で出来そう」と発言しているのだが、彼はいい加減な調査かもしれないと認識していたのかもしれない。もしそうなら、彼の予感は的中したといえよう。
なにはともあれ、このようないい加減な調査をもとに自然環境に問題ありませんなどという主張は社会に通用しないことを宣告しておこう。