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2016年09月22日

当縁湿原とその周辺の自然環境の保全に関する要望書

 当縁湿原とその周辺の自然環境の保全に関し、大樹町長に以下の要望書を送付しました。

********************

2016年9月17日
 
大樹町長 酒森 正人 様

十勝自然保護協会
共同代表 安藤 御史
佐藤与志松

当縁湿原とその周辺の自然環境の保全に関わる要望書


 当協会は本年6月13日付で貴職あてに「大樹町海岸とその周辺の貴重な自然の保全についての要望」を提出したところ、同年6月23日付でご回答をいただきました。その中で「当縁湿原を含む『十勝海岸湖沼群』が環境省の『生物多様性の観点から重要度の高い湿地』に選定されていることも承知しておりますし、貴重な資源と考えている」との認識をお示しになりました。さらに貴町が推進中の航空宇宙産業基地の事業においても「自然環境にも配慮すること」を明言した誠意あるご回答をいただいたところであります。
 しかしながらこの期、貴町が推進中の航空宇宙産業の形成に係る支援事業の一つと考えられる民間企業・インターステラテクノロジス社(以下、IST社)への便宜供与に関し、上記要望書へのご回答の観点からして看過できない状況が見られましたので、当協会事務局が貴町担当職員との2度にわたる面談の中でそのことを指摘し、当協会の要望を口頭でお伝えしたところですが、改めて書面をもってこの間の経過と問題点を整理し、要望書として提出するものです。

(1)IST社の実験(姿勢制御実験)において、複数回、湿原周辺に落下した機体を回収した重機のキャタピラによりガンコウランなどの海岸植生、ミズゴケ類・ヤチヤナギなどの湿地性植生が破壊されています。マット状になったミズゴケ類の回復には10年前後を要するといわれます。
 湿原周辺に落下することを想定しているのであれば、事前に植生調査をしておくべきです。IST社の高度な技術力で落下場所を射場内に制限できたはずです。
(2)IST社から、本年11月に発射するロケットに関わり、「打上指令所」及び「レーダータワー」の仮設の要望があり、設置場所案が示されたとして、事務局に対し上記面談の中で同案件が提示されました。
 提示された「当初案(第1案)」は、ドローンによって撮影された画像を見て適地と判断したとのことでしたが、その画像からは明らかにハンノキ等に囲まれた中層ないしは高層湿原と思われる場所であったため、事務局は懸念を伝えたところです。
 その後、事務局が現地を踏査したところ、やはり同場所はミズゴケ、サワギキョウ、ヤチヤナギ、スゲ類を含む高層湿原であることが判明し、同踏査結果を担当職員に伝えたところです。
 IST社でも現地踏査をして検討した結果、新候補地が当協会に示されました(第2案)。それによると、第1案より水分が少なく、ササを主体とした植生がみられ、幾分高い位置に退いた場所であり、かつ保安林解除手続きを必要としない場所である、とのことでした。(別添写真の3)
 2つの案とも植生調査が不十分なまま候補としていることは問題です。第1案は撤回されたものの、踏査をせずに画像から判断することは許されることではありません。
 また、指令所の図面(別添写真の2)を見る限り、プレハブ1棟のみではなく、駐車スペース等を含む広い敷地面積を持ち、滑走路先端から敷設する簡易道路の幅も3.4m程度、長さ220mも必要であるとのことであり、仮に一時的な仮設であっても自然環境への負荷が考えられます。
 面談の中で事務局は、自然環境への負荷の軽減を第一に考えるべきとの立場から、司令所はさらに滑走路近く(別添写真の1の「当協会提示案」)まで後退させれば、動線が短くなることによりむしろ経済性・利便性は高まることにもなり、再検討を求めました。
 これに対し、担当職員からは、滑走路近くの設置には、保安林指定解除とのあい路があるとの説明がありましたが、事務局が提案した場所は保安林指定地域内であるが、周囲には木立がなく実質的に指定解除の問題が存しないと思われるので、この点からも再検討に値することを主張しました。
(3)発射時、安全性を考えて射場から関係者(操作者)等が立ち入りできる距離は、500m以上、また、見学者等は1.5km必要とされているとの説明がありました。事務局はこれに関して、万が一、発射時・発射後に爆発し破砕部が飛散したとき破砕部が500m飛散するとすれば当然湿原内に落下する。その場合、湿原に入って回収するのか。微小なものまで回収できるのか。と質しました。しかしながら、担当職員からはそのことを想定はしていないとの回答がありました。事前の植生調査がいっそう必要となってくることを事務局は主張しました。

 以上の面談での経過を踏まえ、下記のとおり要望いたします。
 ご多忙とは存じますが、ご検討のうえ9月30日までにご見解をいただきたくお願いいたします。



1 貴職からは、当縁湿原とその周辺の自然環境の貴重性を認識しているとのご回答がありましたが、その裏付けとなる専門家による学術的な植生調査が実際に行われていないようですので是非早急に行っていただきたい。
2 とくにIST社の仮設場所候補地の選定に当たっては、事前の植生調査が行われずに進められているので植生調査を行って慎重に決めるべきです。そしてその記録を保存していただきたい。
3 当協会事務局が提案した滑走路近接に設置する案は、湿原から離れて自然環境への影響を軽減し、さらに貴町の財政にも負担をかけないものです。十分検討していただきたい。
4 9月中にも、IST社との間で、同社が示した案を基に協定書を交わすとのことですが、本件の便宜供与には自然環境保全の面で多くの問題があることか
らより慎重に行われるべきものです。協定書の作成に当たっては、自然環境への負荷軽減が最大限考慮されるべきことを明記していただきたい。
以上
 
  


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Posted by 十勝自然保護協会 at 21:32│Comments(0)大樹町航空宇宙開発
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