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2024年02月16日

日高山脈を含む新国立公園の名称について環境省に要望

 当会および北海道自然保護連合は、日高山脈を含む新国立公園の名称について環境省に以下の要望書を提出しました。

********************


2024年2月14日


環境大臣 伊藤信太郎 様

十勝自然保護協会         
北海道自然保護連合        
構成団体            
大雪と石狩の自然を守る会   
十勝自然保護協会       
南北海道自然保護協会     
ユウパリコザクラの会     
一般社団法人北海道自然保護協会



日高山脈を含む新国立公園の名称についての要望


 十勝自然保護協会と北海道自然保護連合は、今回の「日高山脈及び襟裳岬並びにその周辺地域を構成地域とする国立公園(名称未定)の指定及び公園計画」に関わって、すでにそれぞれ意見を提出していますが、本要望書において、とくに名称について改めて意見を提出します。

 北海道自然保護連合は、2006年3月18日に当連合を含む道内の11の自然保護団体の連名で当時の小池百合子環境大臣に「日高山脈と夕張山地を新たな国立公園に指定することの要望書」を提出し、日高山脈(日高山脈襟裳国定公園)と夕張山地(富良野芦別道立自然公園)を合わせて一つの国立公園に指定することを要望しております。さらに、今般のパブリックコメントへの提出意見のなかでも、名称について「日高山脈国立公園」が適切であると述べました。
 また、十勝自然保護協会は、2021年2月13日に当時の小泉進次郎環境大臣に提出した「日高山脈襟裳国定公園の国立公園化に伴う名称についての要望書」において「名称に十勝を入れることの不適切さ」を示しました。パブリックコメントへの提出意見のなかでも、名称について「日高山脈国立公園」が適切であると述べました。

 貴省は、2023年11月9日発表の「日高山脈及び襟裳岬並びにその周辺地域を構成地域とする国立公園(名称未定)の指定及び公園計画の決定並びに日高山脈襟裳国定公園の指定の解除及び公園計画の廃止に関する意見の募集(パブリックコメント)について」の中で「1.背景」として、次のように述べています。
 「北海道中央南部に位置する日高山脈は、新第三紀以降に大陸プレート同士の衝突によって生じた大起伏山地です。稜線部から山麓部にかけては自然度の高い森林や河川が存在しており、シマフクロウやクマタカ等の生態系上位種や、特異な地質や環境に対応した固有種及び希少種の生育地等となっています。海岸部には襟裳岬等の発達した海食崖や海成段丘が見られ、浅海域から高山帯に至る生態系が流域単位で健全な状態で存在しているなど、多様で良好な自然環境を擁しています。
 日高山脈の稜線部には北海道で唯一の典型的な氷食地形が分布しており、カール(圏谷)などのダイナミックな地形と高山植物や雪氷とが織りなす山岳景観は、当該地域における景観要素の核心です。(中略)
 このように、本公園は地殻変動を受けて形成された非火山性連峰を基盤に、山地を核として育まれた深く原生的な森林生態系及び我が国最大の原生流域面積を持つ河川を軸として、これらが海域まで一体的につながる景観を有する、我が国を代表する傑出した自然の風景地であることから、国立公園として新たに指定するものです。(後略)」

 まさに、これが日高山脈の国立公園化の意義のすべてを述べています。原生的自然が現国定公園よりも大きく拡大し日本最大になり、また、飛び地状態だった襟裳岬周辺、アポイ岳周辺と一体化したことにより、私たちは上記の観点から、国立公園化に当たって名称は「日高山脈国立公園」が最適であることを改めて申し上げます。
 パブリックコメントの結果公表以降、2月になってから、貴省(環境省北海道地方環境事務所)に名称を「日高山脈襟裳十勝国立公園」とし、「十勝」を入れるべきとする要望が一部から提出されていますが、以下にその非合理性を指摘し、「日高山脈国立公園」が最適である理由を改めて述べます。
1 日高山脈という名称は、定着した地理的固有名詞です。日高山脈はその領域が日高と十勝にまたがっているので、日高山脈の名称の中にすでに十勝が内包しており、十勝を入れることは、屋上屋を架すこととなります。
2 日高山脈という名称は、小学生の地図帳にも明確に記載されており、十勝を加えることで「観光客や利用者に地理的な位置を分かりやすくする」必要もありません。そもそも「十勝」もまた、農作物・酪農を特色とする「農業王国」として全国的な知名度も高く、むしろ加えることによって上記の原生的環境を特色とする本質が極めてあいまいになります。
3 「十勝平野から眺める山並みは雄大」です。しかし、十勝平野中央部からは、北方には、十勝岳連峰、トムラウシ山、東大雪を含め大雪山の雄大な山並みが見えます。これらの山々は大雪山国立公園に含まれ、位置的には十勝の新得町、鹿追町、士幌町、上士幌町の各町の範囲に入ります。しかし、この大雪山国立公園の名称に十勝を加えよとの声は全くありません。東方の阿寒摩周国立公園の雌阿寒岳・阿寒富士・オンネトー周辺は足寄町です。雌阿寒岳・阿寒富士は本別町からも見えます。しかし、阿寒摩周国立公園に十勝を加えよという声は全くありません。眺望を理由に名称に「十勝」を加えることは奇異と言ってもよいでしょう。
 以上のように、十勝を入れる必然性がありません。

 十勝を入れない名称こそが、「日高山脈の価値を認識し、かけがえのない財産を次世代へ引き継いでいく意識」を作っていくものになると考えます。
 貴職の賢明なるご判断を望みます。

  

Posted by 十勝自然保護協会 at 20:36Comments(0)日高山脈

2023年12月13日

日高山脈及び襟裳岬並びにその周辺地域を構成地域とする国立公園(名称未定)の指定等への意見(北海道自然保護連合)

 北海道自然保護連合(構成団体:大雪と石狩の自然を守る会 十勝自然保護協会 一般社団法人北海道自然保護協会 南北海道自然保護協会 ユウパリコザクラの会)が環境省の「日高山脈及び襟裳岬並びにその周辺地域を構成地域とする国立公園(名称未定)の指定等への意見募集」(パブリックコメント)に提出した意見を掲載します。

********************


環境大臣
伊藤信太郎さま

北海道自然保護連合(共同代表:安藤御史・菊地宏治・西畑智光)


日高山脈及び襟裳岬並びにその周辺地域を構成地域とする国立公園(名称未定)の指定等への意見

 北海道自然保護連合では、今回の日高山脈襟裳国定公園の国立公園化に関わって、2006年3月18日に当連合を含む道内の11の自然保護団体の連名で当時の小池百合子環境大臣に「日高山脈と夕張山地を新たな国立公園に指定することの要望書」を提出し、日高山脈(日高山脈襟裳国定公園)と夕張山地(富良野芦別道立自然公園)を合わせて一つの国立公園に指定することを要望しております。

 このたび日高山脈襟裳国定公園が国立公園に昇格することで私たちの長年の要望の一端が実現し、喜んでおります。新たな国立公園が我が国最大の国立公園になることは大いに評価されます。貴職および関係者各位のご尽力に感謝申し上げます。

 今回の意見募集対象の「イ 日高山脈襟裳国定公園の指定の解除及び公園計画の廃止案」については特に意見はありません。「ア 日高山脈及び襟裳岬並びにその周辺地域を構成地域とする国立公園(名称未定)の指定及び公園計画決定案」については、日高山脈襟裳国定公園よりも面積が約2.4倍、特別保護地区は約3.8倍となるなど、評価すべきと考えていますが、以下のように意見を申し上げますので、ご検討くださるようお願いいたします。


1. 名称は「日高山脈国立公園」とすることを要望します。

 そもそも「日高山脈襟裳国定公園」は、襟裳岬周辺とアポイ岳周辺を合わせて指定された「襟裳道立自然公園」(1950年8月15日指定、1958年4月1日襟裳道立自然公園に移行)と、保護地域として未指定であった「日高山脈主稜部」を合わせて1981年10月1日に指定されました。この国定公園は襟裳岬周辺、アポイ岳周辺および「日高山脈主稜部」という互いに離れている3地域から出来ています。このことから、国定公園の名称は「日高山脈」と「襟裳」が併記されることになりました。

 しかし、今回の公園計画においては指定地域の大幅な拡大により飛び地状態は解消されて一体化し、新たな国立公園の範囲は日勝峠付近から襟裳岬に至る日高山脈を中核としてその東西の山麓を含む地域になっております。したがって、「日高山脈国立公園」が最適な名称と考えます。


2. IUCNが認める国際的基準の国立公園として我が国最高レベルの保全を要望します

 IUCN(国際自然保護連合)は、 『保護地域管理カテゴリーを適用するためのガイドライン』(2013)において、世界の保護地域を管理目的に応じて7つのカテゴリーに区分しています。日本の国立公園は、その多くが私有地などを含むためカテゴリーⅤ(景観保護地域)に区分されています。それに対して、新たな国立公園はそのほぼ全域を国有地(86.8%)と道有地(11.3%)が占め、地域住民の集落も存在しないため、カテゴリーⅡ(国立公園)、すなわち、「保護地域とは、その地域に特徴的な種や生態系の保全とともに大規模な生態学的プロセスを保護するための大規模な自然地域あるいは自然に近い地域で、それはまた環境と文化に調和した精神的、科学的、教育的活動およびレクリエーションと観光客の機会のための基盤を提供する」という国際的な国立公園の定義に合致します。日高山脈は、知床や大雪山の国立公園とともに、日本では数少ないカテゴリーⅡ(国際基準の国立公園)に該当すると判断されます。

 また、環境庁の第5回自然環境保全基礎調査 河川調査報告書(2000)によりますと、日高山脈襟裳国定公園の原生流域数は22河川を数え、原生流域総面積は約44,043haに及び、ともに全国第1位です。第2位の大雪山国立公園(流域数7河川,面積約16,820ha)に比べ、その原生流域の広大さは突出しています。現行の国定公園から面積を2倍以上と拡張する新たな国立公園はより明確な全国第1位となります。

 このように、日高山脈襟裳国定公園は未来に残すべき日本最大の原始境と言えますので、「公園の指定目的に反する開発や居住を排除する」(私有地がありますので、例外もありますが)など国の責任で厳正な保全と管理を図り、日高山脈の自然保護と生物多様性保全に効果的な対策が現状以上に講じられ、自然保護重視型の国立公園となることを要望しています。

 なお、管理にあたっては、国立公園の大部分が国有林および道有林であることから、林業・国土保全・生物多様性保全を目的に挙げている林野庁や北海道と連携を密にし、日高山脈を我が国最高レベルの国立公園にされることを期待します。


3. 夕張山地(富良野芦別道立自然公園)の編入を希望します 

 日高山脈と夕張山地は地質学的に見て「兄弟の山地」と言え、超塩基性岩(かんらん岩・蛇紋岩)、緑色岩類ならびに石灰岩という植物の分布・生育にとって「特殊岩」と呼ばれる地質が共通し、それぞれの地質に対応した固有植物や隔離分布種が非常に多く、しかも多くが共通する特徴があります。北海道固有植物(固有種・固有植物)の数も、日高山脈、夕張山地においては、大雪山や知床と比較しても圧倒的に数が多くあります。また、夕張山地は芦別川上流部、トナシベツ川上流部などに日高山脈に劣らない原生流域があります。1996年6月19日には天然記念物「夕張岳の高山植物群落および蛇紋岩メランジュ帯」として国の天然記念物に指定されています。

 環境省は、2007年〜2009年に国立・国定公園総点検事業を行い、その結果2010年10月に全国18か所の新規指定・大規模拡張候補地を公表しました。その後のフォローアップを経て、「日高山脈・夕張山地」が新規指定候補として選定されました。貴職にあっては引き続きこの考えのもとに両山地を合わせた国立公園にすることを望みます。


4. 公園計画(原案)に関わる要望および意見

(1)日高山脈南端部(幌満川流域)に見られる大きな非指定地域について

 公園計画図(全体図)を見ますと、様似町のポンニカンベツ川最上流からフチミ川、オピラルカオマップ川、キリプネイ川中流部、幌満川上流部、およびパンケ川上流部にかけて大きな非指定地域があります。この地域は道有林(一部は民有林?)と思われます。国立公園の中にこのような大きな空白地(非指定地)があるのはいかにも不自然で、奇妙に感じられます。このようになった理由を説明していただくとともに、この部分を速やかに新規国立公園に指定されるよう要望いたします。また、その一部は特別保護地区にも接しているようですが、特別保護地区がバッファーゾーンもなく、直接非指定地に接するのは、生態系および生物多様性の保全の上からも極めて大きな問題と思います。

(2)豊似湖周辺の整備について

 豊似湖周辺に園地あるいは歩道・散策路を設ける予定のようですが、この辺りには氷期の遺存種であるエゾナキウサギや高山植物のリシリシノブなどが生息・生育しており、湖畔に多様な自然林がみられ、生物多様性保全上非常に貴重なところです。しかし、近年マナーの悪い訪問者がみられ、当連合構成団体を含む4団体は、環境省北海道地方自然環境事務所長、北海道知事ほかに「日高山脈襟裳国定公園の『豊似湖』周辺における自然環境保全に関する要望」を提出しております。したがって、豊似湖周辺における生物多様性に悪影響を及ぼさない詳細な利用計画が必要です。そのためには、園地と歩道の整備を実施する前に、事前調査を実施し、その結果により利用計画を検討することを要望いたします。

(3)静内中札内線における車道整備について

 公園計画(原案)では、静内中札内線の日高側車道として、起点(静内高見・国立公園境界)から、終点(静内高見・東の沢橋)までの車道整備が挙げられています。この区間は脆弱な岩石から出来ており、過去に大規模な崩落・崩壊があったところです。今後も大規模な崩落・崩壊が予想されますので、安全に通行できる車道として環境省が整備するには相当の出費を覚悟する必要があります。したがって、ペテガリ山荘へのアプローチとしては、現在皆さんが使っているニシュオマナイ川上流の「神威山荘」からべッピリガイ沢へ尾根を乗っ越すルートが、アプローチが長くはなりますが、より安全なものと思います。

 なお、静内中札内線の十勝側車道は、起点の南札内・国立公園境界から終点の七ノ沢・歩道合流点までを整備するとされておりますが、札内川ヒュッテを過ぎると、札内川右岸沿いの砂利道です。地質的には日高側ほど脆いとは言えませんが、急崖ぞいの車道の維持・管理にはそれなりの費用の負担が懸念されます。

(4)稜線上の歩道(登山道)の整備について

 日高山脈は大雪山ほかの火山性の国立公園とは違い、その切り立った細い稜線がその魅力の一つです。そして痩せ尾根の根曲ザサの下や露岩帯にも高山植物や希少植物も見られます。沢登りが日高山脈の特徴的な登山形態となったのは、清冽な沢自体の魅力もありますが、その獰猛な根曲ザサの藪漕ぎが敬遠されたことにもあります。計画されている登山道がどのようなものなのか不明ではありますが、その利用形態、利用によるそれぞれの場所の自然への影響をあらかじめ調査・検討して造成計画を作成すべきです。

1)1839峰への登山道整備について

 日高山脈中部のコイカクシュサツナイ岳から1839峰への登山道整備については現時点では反対いたします。特に主稜線から支稜をたどり1839峰へ至る道は反対です。少なくとも、今回は造成せず、登山者による既存の登山道(これまでの踏み跡道)の利用形態を観察し、それによる周辺の生態系への影響をモニタリングし、その結果を検討してからにすべきです。

2)カムイエクウチカウシ山への歩道(登山道)の整備について

 この登山道は、起点が七ノ沢出合・車道合流点、終点はカムイエクウチカウシ山山頂とあるのみで、そのルートは不明ですが、現在登山者がルートとしている八ノ沢を遡行し、上流部の岩壁状の滝を高巻きしてカールにでるコースを想定しますと、結構危険なところもあり、中級者以上、あるいは初級者の場合は高度な登山技術を有した山岳ガイドを必要とするルートと思います。したがって、登山道の設定にあたっては現地に詳しい登山関係者の意見を聴取すべきです。

(5)日本最大の面積を有する国立公園にもかかわらず、自然保護官(レンジャー)が2名しかいないという問題について

 南北延長約140kmある広大な日高山脈の国立公園に自然保護官が2名しか予定されないことは大きな疑問です。新たな国立公園には、13 市町村が関わっており、日高山脈への入山口は概ね日高側では日高町・新ひだか町・浦河町・様似町・えりも町、十勝側では中札内村・帯広市・大樹町・広尾町などがあります。しかし、公園計画(原案)では、自然保護官事務所は帯広市と新ひだか町(静内)の2か所のみです。広大な面積とアプローチの長さを考えると、十分な管理を行えないことは明らかです。少なくても5か所は必要と考えます。

(6)国立公園の保護と保存および利用に関して、地域住民ほか多様な関係者などによる討議や協働ができる場について

 新たな国立公園は、道民や国民の貴重な財産であるとともに、地球規模において未来の世代に残すべき宝と言えます。その公園計画(保護・保存と賢明な利用)の策定にあたっては、道民や国民はもとより、日高山脈に慣れ親しんでいる地域住民の意見の反映が極めて重要です。一方国立公園の保全の意義とその実施についての地域住民の理解も欠かせません。そのため,国立公園の自然の保護と保全および利用と管理にあたっては、地域住民、自然保護関係団体、登山関係団体、あるいは日高山脈の自然を知る研究者等の意見を広く聞き,公園計画や管理運営計画の策定に活かすために,それらのステークホルダーも国立公園の管理運営にも参画する機会を設けていただきたい。

以上

  

Posted by 十勝自然保護協会 at 16:42Comments(0)日高山脈

2023年12月13日

日高山脈及び襟裳岬並びにその周辺地域を構成地域とする国立公園(名称未定)の指定等への意見

 当会が環境省の「日高山脈及び襟裳岬並びにその周辺地域を構成地域とする国立公園(名称未定)の指定等への意見募集」(パブリックコメント)に提出した意見を掲載します。

********************


日高山脈及び襟裳岬並びにその周辺地域を構成地域とする国立公園(名称未定)の指定等への意見
十勝自然保護協会


はじめに
 日高山脈襟裳国定公園の特徴は、国際的国立公園の資質の可能性を有することと原始性にあります。
 これらの特徴を生かし、損なうことのないようにするには、国立公園の保護と利用の問題について、明確な見解をもって対処する必要があります。
 なお、本意見の対象は、日高山脈を対象の主眼とするものであることを予め承知願います。
 IUCN(国際自然保護連合)が定める新ガイドラインの国立公園に該当する資質の可能性を、日高山脈に発見したのは俵浩三さんであり、すでに当会から環境大臣宛要望書(2021年2月13日付け)の中で説明済みです。また、原始性についても、同様に説明済みですので、ここでは省略します。
 以下、具体的な項目を設け、意見を述べます。

1 公園の名称について
 十勝圏活性化推進期成会等(以下、「十勝の期成会等」)は、公園の名称に「十勝」を入れ「日高山脈襟裳十勝国立公園」とすることを要望しています。当会はこれに反対します。当会は「日高山脈国立公園」とすることを要望します。
〈理由〉
(1)十勝を入れる必然性がありません。
(2)十勝を入れることは、屋上屋を重ねる矛盾となります。
(3)名称に地名を併記した例はたくさんありますが、「日高山脈襟裳十勝」としたでは、全く意味合いが異なります。
(4)環境省原案のゾーニング全体図からも、十勝平野に独立した自然地域は認められません。
(5)結論として十勝を入れることは不適切です。
〈説明〉
(1)十勝の期成会等が十勝を入れようとする動機は、知名度にあやかり観光利用を図るという欲求からです。地元の関係者はその動機をあからさまに公言しています。
(2)日高山脈という名称は、伝統的に定着した地理的固有名詞です。日高山脈はその領域を日高と十勝で分け合っているので、日高山脈の名称の中に十勝が内包しているものと見るべきです(日高ポロシリと十勝ポロシリと区別して呼ぶように)。従って、十勝を併記して並べることは、ことばの重ね合わせとなることになります。
(3)例えば、「阿寒摩周」についてみると、併記された摩周は独立した自然地域であるという点です。
(4)環境省原案の全体図は国定公園の拡張(2.37倍)を示していますが、核心部を大きく特別保護地区とし、山麓を、日高側にも、十勝側にも付随的に拡張しており、これは言わば膨張であり、十勝平野に新たな自然地域を付加したものではありません。
(5)もしあえて十勝を入れるなら、異例のネーミングをすることになります。

2 日高山脈の取るべき道は保護優先の道
 2つの国立公園、「知床」と「支笏洞爺」の指定経緯は対照的です。知床は地元の陳情が全くなかった珍しいケースです。館脇操らの学術調査によってその自然の優れた価値が知られ、さらに当時の審議会委員がウィルダネス思想(1964年原始地域法成立 アメリカ)に傾倒して、「速やかに指定を」急いだのは、当時岬にロッジ建設の計画があったので、それを排除するためだったと伝えられています。
 支笏洞爺は戦後の第2号(第1号は伊勢志摩)として、(GHQへの忖度も多分にあって)札幌圏の観光集客の利便性を当て込んで、道南の温泉地を選定したと伝えられています。
 「知床」は保護型、「支笏洞爺」は観光利用型といえます。知床型を目指すべきです。

3 観光利用について
 十勝圏活性化推進期成会等の要望の本音は、観光利用にあります。国立公園という知名度にあやかり、経済的利益を得ることに傾倒しています。この観光利用に固執し、偏る傾向は、好ましいものではありません。保護の理念を欠いているからです。地元のこの熱心な傾向は、国(観光庁)の「明日の日本を支える観光ビジョン」や環境省の「満喫プロジェクト」と無縁ではなく、むしろ便乗したものと思われます。
 前者は外国人誘致と高級な施設設備を謳い、後者は阿寒摩周で行ったような非自然の、人工的演出を売り物にした、正常な観光・賢明な利用からほど遠い利用で、この傾向が十勝に今蔓延しようとしていることに危惧を覚えます。

4 保護の理念を欠いた観光利用がもたらす結果について
(1)「スニーカーを履いて日高の山を登ろうとする人がいたので、山岳会の人が注意した」(地元新聞に載った話)。安易な登山を目的とした観光利用は危険です。
(2)すでに建設が中止された日高横断道路の再開を望む動きを伝える地元新聞があります。日高横断道路は中止したものです。観光を目的とした動きは容認できません。
(3)「ロープウェイは観光の要」を見出しに地元新聞は黒岳のロープウェイに乗った老人が景観に感激した様子を掲載しました。原始境の日高山脈にロープウェイはふさわしくありません。ロープウェイ観光には反対します。
(4)多くの林道で車が入っているのが実態です。日高山脈を保護する上で車の侵入をさせないよう管理すべきです。
(5)利用拡大を目的とした、登山道の新たな開発や過剰な整備は抑制すべきです。

5 南端部の非指定区域について
 南端部に国立公園に指定されていない空白地があります。普通地域ですらありません、国立公園としてふさわしい資質に欠ける地域なのでしょうか。そうであれば経緯を公表すべきです。当会はこの地域も国立公園に指定することを要望します。
以上


  

Posted by 十勝自然保護協会 at 16:39Comments(0)日高山脈

2021年06月25日

「日高山脈襟裳国定公園の国立公園化準備に伴う動きについての再質問書」への回答

 6月9日付の「日高山脈襟裳国定公園の国立公園化準備に伴う動きについての再質問書」に対し、環境省から以下の回答がありました。

********************


環北地国第2106181号
令和 3 年 6 月 18 日

十勝自然保護協会
共同代表 安藤 御史 様
     佐藤 与志松 様

北海道地方環境事務所長
安田 直人
(公印省略)


「日高山脈襟裳国定公園の国立公園化準備に伴う動きについての再質問書」に対する回答について

 平素より自然保護行政の推進にあたり多大なるご理解とご協力をいただき、ありがとうございます。
 2021年6月9日付けで送付いただいた質問書について、以下のとおり回答します。

(1)について
 環境省が整理した「国立公園としてふさわしい資質」については、別添資料「日高山脈襟裳地域における景観要素」を参照ください。

(2)について
①公園名称を含む公園計画については、自然公園法第7条第1項及び同条第3項に基づき、環境大臣が関係都道府県及び中央環境審議会自然環境部会の意見を聴いた上で、官報告示により決定されます。
②公園名称を含む公園計画の作成過程については、以下を参照ください。
「国立公園及び国定公園の候補地の選定及び指定について(平成25年5月17日付け環自国発第1305171 号、環境省自然環境局長通知)」
http://www.env.go.jp/park/doc/law/keikaku01.pdf
「国立公園の公園計画等の見直し要領について(平成25年5月17日付け環自国発 第 1305174 号、環境省自然環境局長通知)」
http://www.env.go.jp/park/doc/law/keikaku04.pdf
③関係自治体連絡会議において、現時点では環境省から公園名称を議題にする予定はありません。
④公園名称を含む公園計画に関する意見や要望については、②に基づいて関係都道府県及び市町村を対象に聴取することになります。貴団体におかれましては既に要望書を提出いただいておりますので、公園計画作成の際のご参考とさせていただきます。
⑤公園計画の環境省原案が作成された段階で行政手続法第39条に基づくパブリックコメントを行い、広く一般の意見を求める予定です。

(3)について
・ビジョン骨子案については、関係自治体連絡会議において作成します。その検討過程において、必要に応じて専門家等の意見を聴取します。

          <本件担当>
           環境省 北海道地方環境事務所 国立公園課
           電話:011-299-1953
           Mail : REO-HOKKAIDO@env.go.jp
  

Posted by 十勝自然保護協会 at 20:58Comments(0)日高山脈

2021年06月16日

日高山脈襟裳国定公園の国立公園化に伴う名称についての再要望書

 当会は2021年2月13日付けで環境大臣に「日高山脈襟裳国定公園の国立公園化に伴う名称についての要望書」を送付しましたが、補足説明を加えた再要望書を送付しました。

********************


2021年6月13日


環境大臣 小泉 進次郎 様

十勝自然保護協会 共同代表 安藤 御史
佐藤与志松


日高山脈襟裳国定公園の国立公園化に伴う名称についての再要望書


 先に、当会から要望書(2021年2月13日付)を提出しましたが、その後の北海道地方事務所の国立公園化の動き等を踏まえ、要望書の趣旨について補足説明を加え、ここに「再要望書」として提出いたします。
 先の要望書において、次のように記述しました。
 《そもそも、「日高山脈」の有する価値とは、原始性と国際的国立公園資質といえるでしょう。広域概念の「十勝」を併記することで、「日高山脈」のこれらの原始性と国際的国立公園資質を損なうのではないかと危惧されます。》
 この記述について説明を加えます。なお、広域にわたる日高山脈襟裳国定公園の核心部分は日高山脈ですので、専ら日高山脈についての論考です。
 2006年10月、当協会を含む4団体が、当該国定公園を国立公園化する要望書を関係機関に提出しており、その中で7項目の特徴を挙げましたが、その7項目を要約的にまとめたものが「原始性と国際的国立公園資質」ということです。
(1)原始性について
 原始性を測る尺度に、植生自然度があり、日高山脈は知床や大雪山と共に、高い自然度を有しています。また、環境省の「環境白書」(2001年)において、日高山脈は原生流域保護地域の第1位であると発表されました。しかも第2位の大雪山と比較して、群を抜く優れた値を示していることに注目する必要があります。現地の実態を観察しますと、大雪山は三方(旭岳温泉、層雲峡、銀泉台)に車とゴンドラで入山できる利便性がありますが、日高山脈は長い林道のアプローチと徒歩で沢をこぎ入林する不便さがあります。この大きな差異が、日高山脈の際立った原始性という特徴を如実に示しています。
(2)国際的国立公園資質について
 IUCN(国際自然保護連合)は、自然保護地域を6つのカテゴリーに区分し、カテゴリーⅡを国立公園としております。2003年に各国の国立公園リストの公表を行いましたが、日本の国立公園28のうち23がカテゴリーⅤの「環境保護地域」に分類されております。これは、日本の国立公園の大半が、私有地を含む地域制公園であるため開発の手が入ったことによるものです。しかし、北海道の国立公園・大雪山や知床は、90%以上が国有林と道有林地帯であり、近年、林野庁の経営目的が木材生産から公益機能に転換したことにより、実質的な造営物公園となり、開発を排除したカテゴリーⅡの区分に入る可能性を有しております。日高山脈は、2003年に日高中央横断道路の凍結・中止がなされ開発の排除が実現し、その原始性の特徴を保護する条件が完全に整った公園として、カテゴリーⅡに入る資質を有していると言えます。
(3)資質を損なう危惧について
 「十勝」を併記することは、それに見合った自然地域を十勝平野に求め、公園の拡大を図ることになります。名称改変のため、その整合性を求めるという動機は本末転倒です。果たして十勝平野に国立公園としての適地が見つかるかどうか疑問です。阿寒国立公園の例では、阿寒横断道路の開発によって劣化したところへ、摩周湖という優れた自然地域を拡大して阿寒摩周国立公園としました。また、厚岸道立自然公園の例では、昆布森海岸、別寒辺牛湿原、霧多布湿原という優れた自然地域を大幅に拡大して厚岸霧多布昆布森国定公園としました。これらの例のような理にかなった名称変更が日高山脈襟裳国定公園の場合できるでしょうか。無理に選定地域を設けて公園拡大することによって、日高山脈の特徴を損ねることはないでしょうか。
 更に、「十勝」併記を要望する自治体の意図は、日高山脈の知名度に依存して観光集客を図ろうとする以外の何物でもありません。そのことは利活用のみを重視し保護を軽視する傾向を引き起こし、日高山脈の優れた特徴を損なうおそれがあります。
 以上のことを勘案して、「十勝」併記と、そのための安易な公園拡大については賛成しがたいというのが当会の考えです。
  

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2021年06月11日

日高山脈襟裳国定公園の国立公園化準備に関わる再質問

 日高山脈襟裳国定公園の国立公園化準備に関し、環境省北海道地方事務所に再質問書を送付しました。

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2021年6月9日


環境省北海道地方環境事務所長  安田 直人 様

十勝自然保護協会 共同代表 安藤 御史
佐藤与志松


日高山脈襟裳国定公園の国立公園化準備に伴う動きについての再質問書


 当会は、本年3月27日付で貴職あてに日高山脈襟裳国定公園の国立公園化準備に伴う動きについての質問書を提出し、4月26日付(環北地国第 2104264 号)で回答をいただいたところです。
 5月21日、新設された帯広自然保護官事務所の自然保護官と面談し、当会の国立公園化に対する意見要望を伝えました。その点も踏まえ、以下に質問をいたします。

(1)自然保護官との面談において、「国立公園化にあたり区域の拡張を検討している」との説明があり、その観点は「国立公園にふさわしい資質」とのことでした。当該地域における「国立公園にふさわしい資質」について具体的にご教示いただきたく存じます。
(2)新しい国立公園の名称について、当会は2月13日付で環境大臣あてに「十勝の名称を入れる」ことには反対の要望書を提出しているところですが、以下の点について、お答えいただきたく存じます。
① 名称はどこが決定するのか。その法的な根拠は何か。
② 決定する過程はどのようになっているのか。その法的な根拠は何か。
③ 関係自治体連絡会議で名称が議題になるのか(なったのか)。
④ 自然保護団体を含め、さまざまな意見や要望をどのように聴取するのか。
⑤ 名称は案として公表され、国民の意見聴取を行うのか。
(3)回答では、『ビジョン』の骨子案は、「関係自治体連絡会議の結果を踏まえて作成し、協議会で提示する」とあります。もちろん、協議会が発足してからも議論はされるべきではありますが、骨子案作成の過程で、関係自治体以外のさまざまな団体や専門家から意見を聴取しないのでしょうか。

 ご多忙とは存じますが、貴職のご見解を6月30日までに回答くださいますようお願い申しあげます。
  

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2021年04月27日

日高山脈襟裳国定公園の国立公園化準備に関わる質問への回答

 3月27日付の「日高山脈襟裳国定公園の国立公園化準備に伴う動きについての質問書」に対し、環境省北海道地方環境事務所から回答がありました。

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環北地国第2104264号
令和 3年 4月 26日

十勝自然保護協会
 共同代表 安藤 御史 様
      佐藤 与志松 様
北海道地方環境事務所長
安田 直人
(公印省略)


「日高山脈襟裳国定公園の国立公園化準備に伴う動きについての質問書」に対する回答について

 平素より自然保護行政の推進にあたり多大なるご理解とご協力をいただき、ありがとうございます。
 2021年3月27日付けで送付いただいた質問書について、以下のとおり回答します。

(1)~(3)について
・環境省自然環境局長通知「国立公園における協働型管理運営の推進について」(平成26 年7月7日環自国発1407073号)において、国立公園の価値や保全・利用の目標を示したビジョンを決定し、その実現に向けた取組の進捗管理等を行う組織として、関係者が参画する常設の協議会を設置することが規定されています。
・日高山脈襟裳地域の国立公園に関する協議会の発足時期や具体的な構成員については現在検討中ですが、協議会が発足する際には当該地域に関係する事業や活動を行っている民間団体等についても協議会に参画し意見をいただけるよう、環境省から依頼を行う予定です。
・令和3年5月を目途に開催される関係自治体連絡会議の結果を踏まえて作成するビジョンの骨子案は、上記の協議会で提示する予定です。


            <本件担当>
            環境省 北海道地方環境事務所 国立公園課
            電話:011-299-1953
            Mail:REO-HOKKAIDO@env.go.jp
  

Posted by 十勝自然保護協会 at 21:38Comments(0)日高山脈

2021年04月01日

日高山脈襟裳国定公園の国立公園化準備に関わる質問

 日高山脈襟裳国定公園の国立公園化に向けて準備が進められていますが、これに関して環境省北海道地方環境事務所に質問書を送付しました。

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2021年3月27日


環境省北海道地方環境事務所長 様

十勝自然保護協会 共同代表 安藤 御史
佐藤与志松


日高山脈襟裳国定公園の国立公園化準備に伴う動きについての質問書


 当会は、本年2月13日付で環境大臣あてに日高山脈襟裳国定公園の国立公園化に伴う名称についての要望書を提出し、このことについて2月15日付で貴職あてにお知らせしたところです。
 日高山脈襟裳国定公園の国立公園化について、報道によれば2月17日に「日高山脈襟裳地域の国立公園指定に関する関係自治体連絡会」が発足したとあります。この連絡会は、「国立公園指定に向けた連絡調整や、指定後の公園管理の在り方を検討する。」とあり、さらに「『国立公園ビジョン』の策定について意見交換した。ビジョンは事務局で骨子案をまとめ、5月の連絡会議で検討する。」とあります。
 環境省は、現在、全国の国立公園の在り方・「ビジョン」については、関係自治体や関係行政機関だけでなく、民間団体、自然保護団体、研究者など多様な意見を反映する「協働型」「総合型」の「協議会」を主体にして、それをもとに運営することを主流にしようとしているのではないでしょうか。現在、このような体制を持つ国立公園はすでに10数か所あるとうかがっています。当会も、2018年に立ち上げられた「大雪山国立公園連絡協議会(総合型)」に参画し、生物多様性を保全する立場から提言などを行っています。
 ご承知のように「日高山脈を国立公園に」の声は古くからあり、2006年、北海道自然保護協会と、その提案に賛同した当会も加盟する北海道自然保護団体連合など10団体が、「日高山脈襟裳国定公園と夕張山地を新たな国立公園にすることの要望書」を小池百合子環境大臣、林野庁長官および北海道知事に提出しています。
 以下の質問にお答えいただきたく存じます。

(1)「ビジョン」を策定するための意見の聴取は「関係自治体」「関係行政機関」からしか行わないのでしょうか。
(2)自然保護団体からの意見の聴取は「パブリックコメント」のみで、直接聴取することは考えていないのでしょうか。
(3)5月の連絡会議で検討される「骨子案」は公表されないのでしょうか。
 年度末、年度初めでご多忙とは存じますが、貴職のご見解を4月30日までに回答くださいますようお願い申しあげます。

  

Posted by 十勝自然保護協会 at 10:52Comments(0)日高山脈

2021年04月01日

日高襟裳国定公園の国立公園化に伴う名称について環境省に要望書を送付

 日高襟裳国定公園の国立公園化に伴って十勝管内の自治体から名称に「十勝」を加えてほしいとの要望がなされています。これに関して環境省に以下の要望書を送付しました。

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2021年2月13日


環境大臣 小泉 進次郎 様

十勝自然保護協会 共同代表 安藤 御史
佐藤与志松



日高山脈襟裳国定公園の国立公園化に伴う名称についての要望書


 報道によれば、十勝管内の自治体が「十勝」という名称を付加することを日高管内の自治体に要望し、日高管内の自治体は、これを受け容れるとの意向が伝えられているところです。
 自然公園の指定は、対象となる自然地域を指定するものです。「日高山脈襟裳国定公園」とは、「日高山脈」と「襟裳」という自然地域を対象に指定したものです。
 名称の中核となる「日高山脈」は、日高と十勝の分水嶺となる山脈に命名され、長年地理的名称として定着した固有名詞です。地理的固有名詞には、年月をかけた伝統が染みついており、みだりに変えるべきものではありません。「日高山脈」には、日高と十勝が内包されていると見るべきです。例えば、ポロシリ岳を日高ポロシリ岳と十勝ポロシリ岳と区別して呼ぶことは、その内包状態をよく示しています。
 公園地域の面積は、日高と十勝は約半々で分け合っています。「日高山脈」に「十勝」が入っていないからといって、日高の住人が独り占め意識を持つわけでもなし、十勝の住人が劣等感を持つわけでもないでしょう。
 ここで、仮に「十勝」の名称を付加して「日高山脈十勝襟裳国立公園」としたとすると、人は「十勝」の名について十勝の広い地域を想定するはずです。広尾海岸と札内川ピョータンの滝周辺の限定的地域を指して「十勝」と名づけてしまうのは無理があり適当とは思われません。
 そもそも、「日高山脈」の有する価値とは原始性と国際的国立公園資質といえるでしょう。広域的概念の「十勝」を併記することで、「日高山脈」のこれら原始性と国際的国立公園資質を損なうのではないかと危惧されます。
 また、環境省は、現行の国定公園より区域を拡大して指定する意向を公表しています。もし、拡大がなされたとしても、このことの意味を覆すことにはならないでしょう。
 このようなことから、当会では、「十勝」という名称を付加することは、認めるべきではないと考えております。

  

Posted by 十勝自然保護協会 at 10:47Comments(0)日高山脈