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2010年12月17日

十勝三股・糠平地区整備計画策定にあたっての意見書

 環境省北海道地方環境事務所は、十勝三股・糠平地区整備基本計画策定のためとして、関係団体から人を募りワークショップを行っています。新聞報道(北海道新聞・十勝毎日新聞)によると、環境省は2007年に糠平集団施設地区基本計画をまとめビジターセンターを設置することとしていたが、国内情勢の変動などで凍結状態となったので、以前のプランを再構築するためワークショップを開催したといいます。当会は、この基本計画策定に対し12月16日付で環境省北海道地方環境事務所長に下記の意見書を送付しました。
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十勝三股・糠平地区整備計画策定にあたっての意見書

1.北海道地方環境事務所のワークショップについて
 貴所が行っている「ワークショップ」は、山北育実自然保護官からの説明により以下のように理解されました。
 (1)話し合う事柄
  (大テーマ)
 「東大雪地域全体と各地区(十勝三股地区、糠平地区等)での望ましい活動形態と求められる機能」
「活動形態」とは、各々の地区ごとで、どんな活動を目指していくか。例として、自然体験、植生復元の活動等が想定されます。また、「機能」とは、各々の地区での望ましい活動形態を具現化するための仕組みづくりや、ソフト・ハード面のことを考えています。
  (小テーマ)
○東大雪地域での連携した望ましい活動形態について
○十勝三股地区の活動形態とそのゾーニングについて
○糠平地区の活動形態とそのゾーニングについて
 (2)話し合いの方法
 はじめに、過去の検討経緯等について、事務局からご説明いたします。
 第1回ワークショップでは、小テーマについてグループに分かれ、望ましい活動形態や求められる機能等についてご意見を出していただき、発表していただきます。各班で決めていただいた方から発表をしていただく予定です。
 第2回ワークショップでは、第1回ワークショップで出されたご意見のより具体的な活動内容、管理運営等に関してご意見を出していただき、発表していただきます。
 第3回ワークショップは、まとめといたします。第1回及び第2回ワークショップで出された意見等を第3回ワークショップにおいて整理し、とりまとめたいと考えています。なお、このワークショップでは、参加者の意見を基にその場で結論を出すものではございません。
 (3)計画の確定
   ワークショップ終了後、ワークショップのご意見も参考に、北海道地方環境事務所にて当該基本計画案を作成し、地元説明会にてご説明いたします。これらの過程を踏まえ、当該基本計画を策定いたします。

2.当会がワークショップに参加しない理由
 貴所は計画案作成のため「ワークショップ」を実施するとのことですが、一般にワークショップは、団体の意思を反映させる手段として適切ではありません。また、今回のワークショップは、各グループの選ばれた代表者が意見を発表するとのことですが、当会の意見を第三者に発表してもらう必要はありません。また、ワークショップであれば主催者が原案を提示すべきと思いますが、基本計画案の作成のための意見集約との位置付けにして原案を提示しないのであれば環境省の基本的な考え方が分からず、無責任なやり方と言わざるを得ません。このような場が必要なのかという疑問も生じます。しかも、このワークショップ参加呼びかけが団体に限定されており、広く国民の声を聞くというものではありません。
 以上のような理由から、当会はこのワークショップへ参加せず、整備計画に対して意見を書面で提出することとしました。

3.十勝三股・糠平地区整備計画に対する当会の考え方
 当会は、2007年の大雪山国立公園計画策定にあたり意見(パブリックコメント)を提出しました。このなかで大雪山国立公園の管理に関し多くの意見を述べましたが、十勝三股および糠平地区にかかわる部分は下記のとおりです。

10.47ページ ⑦博物館
要約 博物館前のパークゴルフコースの芝はエゾシカを誘引するので,検討すべきである.
意見および理由
「既存のパークゴルフコースは,草地状の休憩園地の機能を損なわない範囲で利用するものとし,コースの造成は行わないものとする」とあるが,このパークゴルフ場の芝は早春から夏にかけてエゾシカの採食地となっている.人為的な植生がエゾシカを誘引するのはエゾシカの増殖や交通事故にもつながり好ましくないので,エゾシカを誘引しないような植生に替えるべきである.
11.47ページ 8博物展示施設
要約 糠平に計画されているビジターセンターは,自然保護や自然復元を目的とした「自然保護センター」にすべきである.
意見および理由
当会は「十勝三股ふれあい自然熟整備検討会」や「十勝三股・糠平ふれあい自然熟検討会」で糠平のビジターセンターの目的を自然保護や自然復元,自然保護教育とし,「自然保護センター」とすることを要望してきた.これからの国立公園の管理でもっとも力を入れていく必要があるのは「自然保護」と「自然復元」またそのための「自然保護教育」や「環境教育」であり,環境省はその目的を達成するために必要な施設の整備を計画すべきである.
12.48ページ 十勝三股集団施設地区
要約 十勝三股集団施設地区は積極的に森林を復元する地域とし,外来種を早急に除去すべきである.施設は基本的に必要ない.集団施設地区を返上すべきである.
意見および理由
「自然の回復を目指しつつ,自然体験及び学習活動フィールドとして活用する地区として位置づけた」としているが,ここは原生林が伐り開かれ,森林破壊の中心となった地域である.このような森林破壊によって,かつて生息していたミユビゲラなどの希少動物が絶滅の危機に瀕している.したがってかつての森林を復元する場として捉えるべきである.森林の復元を自然に委ねても容易に樹木が芽生え生長できるような状況にはないので,掻き起こしや周辺からの植栽を行うなど積極的に森林の復元を図るべきである.
また,ここに繁茂するルピナスやキショウブ,その他の外来種はセイヨウオオマルハナバチを誘引するほか,本来の生態系を撹乱するものであり,早急な駆除が望まれる.そのような場所なので,自然体験のための整備は基本的に必要ない.そもそもここの集団施設地区の指定は「十勝三股ふれあい自然塾」の設置が目的であったが,この計画は中止になったのであるから集団施設地区を返上し,特別地域にもどすべきである.

 当会は、わが国の国立公園がよりよいものとなることを願うという大局的視点から意見を提出しました。当会の意見を真摯に検討され、今回の十勝三股・糠平地区整備計画に反映されることを期待しております。
 最後に言及しなければならないことがあります。今年8月に環境省所管地である十勝三股でセイヨウオオマルハナバチの女王蜂が確認されました。しかも十勝三股での女王蜂侵入の情報は8月下旬に北海道地方環境事務所の職員にもたらされていたのにも関わらず、その事実を速やかに公表しなかったことが明らかとなりました。もし当会の意見を受入れルピナスの駆除などに迅速に取り組んでいたなら本種の侵入を防げたのではないでしょうか。自らの所管地の管理責任を放棄し、特定外来生物の侵入を招いたという今回の事態は、わが国の環境行政の汚点として記録されることでしょう。この事例を深刻に受け止め教訓としていただきたく思います。
以上




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Posted by 十勝自然保護協会 at 22:39│Comments(0)その他
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