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2012年04月29日

音更川堤防流失についての帯広開発建設部の 調査報告書

 昨年9月の大雨で、音更町を流れる音更川の堤防が洗掘をうけたことについて、河川を管理する帯広開発建設部が堤防洗掘の原因を分析し論文にまとめたとの記事が北海道新聞(2月10日付)に掲載された。そこで帯広開発建設部にこの論文の閲覧を要望したところPDFが送られてきた。
 
 この論文、「音更川における出水時の堤防一部流出の原因分析について」の結論部分である「8.まとめ」と「9.今後に向けて」を以下に抜粋する。

8.まとめ
 本報告により分析された「今回の出水における音更川の状況」は以下のとおりである。
・当該区間は、急な河床勾配を持つ川幅の広い河道となっている。
・高水敷の河岸沿いに護岸は少なく、堤々間を流路が移動しやすい条件にある。
・低水路および高水敷は主に砂礫で構成されており、容易に流水による侵食を受ける。
・長時間の洪水流出によって大量の土砂が流送される。
このように、今回の出水では急流河川において流路変動を生じさせる基本的な条件を満たしていた。これらの条件は堤防の一部流出が生じた前後区間のみならず、音更川の上中流区間全体にあてはまる状況であり、実際に図-8-1に示す侵食幅のヒストグラムのとおり上中流部の至る所で河岸侵食が発生している。堤防の一部流出区間を含め広範囲で河岸侵食が発生したのは、これらの要因が揃ったことにより、蛇行外湾部の河岸侵食が堤防に達し、その結果、支持力を失った堤体が自然崩落することで堤防の一部流出が進行したものと考えられる。
また、堤防が一部流出したKP18.2地点では、その上流の高水敷上の洗掘によって新たな流路が生じており、この現象がKP18.2周辺の流路蛇行の波長や振幅の増幅に影響を与えている可能性もある。
9.今後に向けて
今回の堤防の一部流出に至る被害を踏まえ、今後新たな河道防護ラインの設定を含む、河岸浸食対策を検討し実施していく必要がある。また、このような急流河川の管理においては、出水時の河川水位だけではなく、河岸侵食量に影響を与える洪水継続時間などにも留意した、河川監視を行っていく必要がある。

 淡々と事実を記載し核心に迫っていない、いや迫ろうとしていないのではないかというのが、一読しての感想だった。彼らの論理はこうだ。音更川は流路変動(筆者注:流れがかわること)を生じさせる基本的条件を満たしていた。だから流路変動により上中流部のいたるところで河岸侵食が発生した。それで堤防の一部も流失した。しかしこれだけでは、今回の問題の分析にならないと思ったようで、堤防が流出したことについて、「堤防が一部流出したKP18.2地点では、その上流の高水敷上の洗掘によって新たな流路が生じており、この現象がKP18.2周辺の流路蛇行の波長や振幅の増幅に影響を与えている可能性もある。」と付け足し的に書いている。
 
 流路変動により上中流部のいたるところで河岸侵食が発生したにもかかわらず、なぜKP18.2地点でのみ堤防の流失が生じたかが今回の問題の核心である。この論文の著者たちは、KP18.2地点「の上流の高水敷上の洗掘によって新たな流路が生じ」、KP18.2地点周辺の流路蛇行の波長や振幅の増幅に影響し堤防が流失した可能性までは考察した。それではなぜここで「新たな流路が生じ」たのか。ここの洞察があって初めて学術的論文となる。
 
音更川堤防流失についての帯広開発建設部の 調査報告書
 上の図はこの論文から引用したものである。この図から次のようなことが読み取れる。
 1)今回堤防が流失したKP18.2地点(図の一番小さい円のところ)の1.6kmほど上流のKP19.8地点付近から上流の右岸(下流に向かって右手の岸)は堤防がなく「山付き」というべき地形である。つまりぶつかった水流をはね返すところである。
 2)今回堤防が流失したKP18.2地点の上流600mのKP18.8地点から下流は堤防の幅が狭くなっていく。つまり蛇行幅が大きくなると堤防が洗掘される可能性が高くなるところである。
 3)KP18.2地点から下流にむかって堤防が湾曲している。つまり水流がぶつかる水衝部になる可能性の高いところである。
 
 このように地形と水流の関係を分析すると、ここで堤防が洗掘された要因がみえてくる。水流は右岸で跳ね返され、左岸側の高水敷を流下した。そしてここの砂礫を洗掘し、下流で大きく蛇行して堤防に達し、堤防を侵食したのである。地形を読み取ることのできる人間なら、この付近の左岸側堤防はほかのところよりも洗掘にさらされる危険性が高いと予測できたはずだ。
 
 たぶん彼らも事件発生後すぐに問題の核心を悟ったと思う。しかしこれを認めてしまうと自分たちの過去の仕事の責任が問われることになる。それで調査報告書では核心に迫ることを避けたのだろう。


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Posted by 十勝自然保護協会 at 13:26│Comments(0)河川・ダム
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