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2012年09月14日

治水事業計画についての質問への帯広開発建設部の回答

 当会が7月18日付で帯広開発建設部へ提出した「平成24年度治水事業計画についての質問書」への回答が、9月10日付でありました(ごく一部の回答が8月3日にあり)。
 不十分な回答ですが、とりあえず回答全文を掲載し、回答の問題点については、改めて指摘したいと思います。
********


1.池①、池②の築堤工事について
 a.この築堤工事の計画の全容、すなわちこれまでどこで工事し、今後どこで工事を予定しているかを明らかにしていただきたい。

 回答)堤防については、十勝川水系河川整備計画に基づき整備を進めているところです。整備区間については十勝川水系河川整備計画のP75を参照下さい。

 b.工事目的を治水安全度の向上としているが、現在の堤防の天端の標高(以下、堤防天
端標高)、・計画高水位(以下、HWL)、戦後最大規模の洪水流量の水位(以下、戦後最大流量水位)を明らかにした上で、貴職が治水安全度を向上させなければならないと考える理由を説明いただきたい。

 回答)旅来地区、十勝太地区の天端標高は以下のとおりです。
 ○旅来地区(KP13.0)
 ・現況堤防天端標高 10.56m
 ・計画堤防天端標高 11.38m

 ○十勝太地区(KP0.6)
 ・現況堤防天端標高 2.66m
 ・計画堤防天端標高 3.72m

 旅来地区及び十勝太地区は堤防が未完成のため、堤防整備を行って治水安全度を向上させる必要があります。

c.築堤後、種子散布をすることになっているが、どのような種子をいつ散布するのか。

 回答)ケンタッキーブルーグラス、クリービングレッドフェスク、ハードフェスクの種子を8月頃に散布します。

d.築堤のための盛土はどこからもってくるのか。

 回答)幌岡(左岸KP13付近)及び大津(右岸KP5付近)の置土箇所から運搬します。

2.池③の河道掘削工事について
 a.流下断面確保を目的に河道掘削を行うということだが、まず堤防天端標高、HWL、戦後最大流量水位を明らかにしていただきたい。そしてこの河道掘削により水位がどの程度下がるのかを明らかにしていただきたい。

 回答)育素多地区、礼作別地区の天端標高等は以下のとおりです。
 ○育素多地区(KP28)
 ・計画堤防天端標高 16.04m
 ・HWL       14.04m
 ・戦後最大流量水位 14.34m
 ○礼作別地区(KP29.6)
 ・計画堤防天端標高 16.61m
 ・HWL       14.61m
 ・戦後最大流量水位 14.89m
 河道掘削の完了により、育素多地区及び礼作別地区では約0.5m程度水位が低下します。

b.掘削土はどこへ持っていくのか。

 回答)幌岡(左岸KP13付近)及び大津(右岸KP5付近)の置土箇所へ運搬します。

3.池⑤の堤防耐震対策工事について
 a.今年度3箇所でドレーン工を行うとのことだが、当該箇所が特に水分含量が多いということか。もしそうなら、なぜそのような状態となったのか、説明していただきたい。

 回答)下流部の堤防は広く分布する泥炭地盤上に築造されたものが多く、堤防内に浸透した水が抜けにくいため、水位が高い状態となっています。ドレーン工を実施する箇所は、他の箇所にくらべて地下水が高いことなどから、地震時に安全性を確保できないため、実施するものです。

4.池⑨の施設補修工事について
 a.護岸補修の工事内容を明らかにしていただきたい。

 回答)既設護岸の補修です。既設護岸を一度撤去し、護岸裏の埋め戻しを行い再設置します。

5.池⑩の伐開工事について
 a.流下断面確保のため河畔林を伐採するとのことだが、まず堤防天端標高、HWL、戦後最大流量水位を明らかにしていただきたい。そしてこの伐採により水位がどの程度下がるのかを明らかにしていただきたい。

 回答)事業説明会で説明したとおり、カメラで監視をする際に支障となる範囲を伐開するものです。資料中の記載の誤りです。

6.帯①~⑥の災害復旧・河岸保護工事(音更川・札内川)について
 a.音更川の17.5~19KPで河道掘削を行うという説明であったが、掘削部分は現流路の右岸側か。あるいは両岸か。

 回答)右岸側です。

b.音更川では5箇所で河岸保護工を行うことになっているが、この5箇所はどのような考えに基づいて選定したのか。

 回答)平成23年9月出水で被災を受けた箇所の内、緊急性の高い5箇所で行うこととしました。

c.昨年の音更川18.2KPの堤防洗掘は、糠平ダムからの大量放流によってもたらされたと当会は認識しているが、貴職も同様の認識であると考えてよいか。

 回答)被災原因については、調査報告書にとりまとめています。こちらを参照下さい。
 

d.糠平ダムなどのダムがないとした場合、この時の降雨パターンから、音更川18.2KP付近でどのような流量変動があったと推測されるか明らかにしていただきたい。

 回答)そのような検討は行っていません。

e.当会は音更川18.2KPの堤防洗掘の要因について以下のように考えている。当会の見解に異論があれば、貴職の見解を明らかにしていただきたい。
1)今回堤防が流出したKP18.2地点の1.6kmほど上流のKP19.8地点付近から上流の右岸は堤防がなく「山付き」というべき地形である。つまりぶつかった水流をはね返すところである。2)今回堤防が流出したKP18.2地点の上流600mのKP18.8地点から下流は堤防の幅が狭くなっていく。つまり蛇行幅が大きくなると堤防が洗掘される可能性が高くなるところである。3)KP18.2地点から下流にむかって堤防が湾曲している。
 つまり水流がぶつかる水衝部になる可能性の高いところである。このように地形と水流の関係を分析すると、ここで堤防が洗擬された要因がみえてくる。水流は右岸で跳ね返され、左岸側の高水敷を流下した。そしてここの砂礫を洗掘し、下流で大きく蛇行して堤防幅が狭くなり湾曲した箇所を侵食したのである。地形を読み取ることができれば、この付近の左岸側堤防はほかのところよりも洗掘にさらされる危険性が高いと予測できたはずである。

 回答)6.cと同様です。

7.帯⑧の河道掘削工事(十勝川中流部)について
 a.河道掘削部分の河畔林面積を明らかにしていただきたい。

 回答)約10haです。

b.十勝大橋上流側(公募伐採箇所)は河畔林伐採のみで流下断面を確保し、ここでは河道掘削まで行うことになっているが、両者で対策が異なる理由を明らかにしていただきたい。

 回答)上流側は高水敷の伐開で流下断面を確保することができるため、河道掘削を行わないこととしました。

e.堤防天端高、HWL、戦後最大流量水位を明らかにしていただきたい。そしてこの工事
 により水位がどの程度下がるか明らかにしていただきたい。

 回答)当地区の天端標高等は以下のとおりです。
 ○KP53.8
 ・計画堤防天端標高 35.42m
 ・HWL       33.92m
 ・戦後最大流量水位 35.11m
 ○KP51
 ・計画堤防天端標高 32.15m
 ・HWL       30.65m
 ・戦後最大流量水位 31.37m
河道掘削の完了により、KP53.8では約1.5m程度、KP51では約0.9m程度水位が低下します。

d.河道掘削1の掘削位置が河岸ではなく高水敷であることの理由を説明していいただきたい。

 回答)左岸と同様に河岸も掘削します。(標準図1が間違いでした)

8.帯⑨の堤防保護工事(札内川)について
 a.2箇所で工事を行うことになっているが、この2地点が選定された理由を明らかにしていただきたい。

 回答)河川整備計画にも位置づけられていますが、急流河川であり堤防決壊の危険性が高く、氾濫した場合の影響が大きい札内川左岸で整備を進めています。

9.帯⑪砂防施設工事(戸蔦別川)について
 a.目的として「洪水時の土砂流出による被害の防止・軽減のため、既存の砂防堰堤の改良(スリット化)を実施する」とのことだが、堰堤のスリット化によって、洪水時の土砂流出による被害の防止・軽減が図られる場所は堰堤下流の河床という理解でいいのか。もしそうであるなら、今後堰堤下流部における床固工について見直しが必要になると考えるが、貴職の見解を明らかにしていただきたい。

 回答)堰堤のスリット化は、流水にせき上げ背水を生じさせて掃流力を低減させることにより、流れてきた土砂を一時的に堆積させることを目的に行うものです。床固工は、河床の縦侵食防止、河床堆積物の再移動防止により河床を安定させるとともに、河岸の浸食又は崩壊などの防止又は軽減を目的に設置するものです。それぞれを適切に整備することにより、土砂災害の防止・軽減を図るものです。

b.昨年度スリット化が行われたが、土砂の移動について明らかになったことを説明いただきたい。

回答)6号堰堤は整備中です。整備終了後、目視等によるモニタリングを実施する予定です。

10.帯⑬の帯広河川事務所維持修繕について
 a.音更川と札内川で河道整正を行うということだが、この工事を行わなければならない理由と、工事個所を選定した理由を説明いただきたい。

 回答)河道整正を行う箇所は、水位観測所の水位測定に支障のある箇所及び澪筋が河岸や堤防に接近し、今後の洪水により堤防等に危険がおよぶ可能性が高い箇所です。

11.帯⑭の帯広河川事務所維持修繕(河道内樹木伐採)①について
 a.目的として「流下断面を確保するため、河道内の樹林伐採を行う。伐採は地域からの公募を活用して実施する」となっているが、貴職は、2010年10月に設置した「十勝川中流部川づくりワークショップ」の第6回(2011年3月開催)において、「河道内の樹木が年々増加傾向にあるのに対し、草原や河原環境が減少傾向にあることから、第5回で提案した『左岸の樹木を伐採し草原環境とし、河原は保全する案』を提案したい」とし、2011年10月の第8回ワークショップで伐採を決定した。今回、当初の草原環境をつくるという目的を取り消したわけだが、その理由を明らかたしていただきたい。

 回答)伐採して、抜根および表土敷均しの作業を行うことにより、草原環境を形成することを期待しています。

b.当会は公募による河畔林伐採について本年3月12日付で貴職に要望書を提出した。これに対し貴職から、伐採後の再森林化抑制に向けた知見がえられてきたとの回答があったが、その後の問合せで、これは後志利別川下流部での1例ということが明らかになった。この事例について、どのような工事を行なって、再森林化が抑制されたのか具体的に説明いただきたい。また、外来種対策として、在来草本の箇所から表土をとってくるから外来種の侵入を防げるとのことだが、整地後の「表土」に風散布などで飛来する外来種の種子対策をどのように考えているか明らかにしていただきたい。

 回答)前回回答の補足でお知らせしましたが、後志利別川の事例は河道掘削後の裸地に表土復元を行ったところ、草本の植被率が高くヤナギ類の進入抑制に有効であったものです。飛来する外来種種子対策を実施する予定はありませんが、表土を復元することで、ある程度抑制できると考えています。

12.帯⑭の帯広河川事務所維持修繕(河道内樹木伐採)②について
 洪水時に河岸の侵食等の状況を堤防から目視点検するため、河畔林を伐採するということだが、これは昨年の音更川での堤防洗掘を踏まえ、堤防が洗掘されないか目視点検しなければならないということで立案されたと推測する。200m間隔で10m幅の伐開をするとの説明であったが、これには異を唱えなければならない。なぜなら、昨年程度の流量では分厚い河畔林部分が侵食され、流路が堤防まで迫るとは考えにくいからである。それが証拠に昨年の堤防洗掘現場は河畔林のない堤防から流路を見通せるところであった。したがって、単純に一定間隔で伐採することはその後の維持を考えても無駄である。流路は蛇行部からも一定程度見通せるのであり、仮にどうしても伐採が必要であるというのなら、蛇行状態を勘定して伐採すべきである。これに対する貴職の見解をうかがいたい。なお伐採計画が具体化した段階で説明いただきたい。

 回答)200m間隔で10m幅の伐採を示したのは、伐採箇所の目安を示したものです。河道状況を確認しながら、有識者のご意見も踏まえて具体的な伐採箇所を決めていきたいと考えています。

3.流木の処理について
 北海道新聞(7月6日付夕刊)に「流木を無料提供」との記事が掲載されたが、7月3日の治水事業計画説明会でこの事業に触れなかった理由を説明していただきたい。流木は日本列島の固有種であり北海道では分布が限定されるセグロセキレイの営巣場所として重要な意味をもっている。したがって、流木を無闇に河川から持ち出すことは避けなければならない。このことについて貴職の見解を明らかにしていただきたい。

 回答)河道内の塵芥処理と同様に、流木の撤去は具体的に実施箇所が定まったものでなく、事業概要として取り上げておりません。流木を放置すると、流出により河川管理施設、漁業等への悪影響が生じるおそれがあるため行っています。
  


Posted by 十勝自然保護協会 at 21:25Comments(0)河川・ダム

2012年09月04日

新岩松発電所新設工事環境影響評価準備書への意見書

 当会は、9月2日に新岩松発電所新設工事環境影響評価準備書への意見書(下記)を事業者に送付した。
 このあと事業者は道民からの意見に対する見解書を作成し、これを縦覧することになる。そして見解に対する意見を募る手続きが行われる。

*********

1.虚偽記載について
 準備書の第11章において「方法書P15『6.事業計画の立案に際して行った環境への配慮』に野生生物への配慮の項がないのは問題である。工事場所の立地を考えるならば、野生生物への配慮を記述すべきである」との道民意見に対し、「既存資料(方法書の段階)では、対象事業による野生生物への影響を確認することができなかったため記載していません。なお、配慮すべき野生生物については、その種の生息・生育状況を確認(調査)後に、事業実施による影響を予測し、配慮方法を検討し、準備書に記載しました。」との見解を述べている。
 しかし、この見解は事実に反する。なぜなら、昨年(2011年)4月14日に北電の担当者から相談を受けた北海道環境推進課の職員が、その担当者に対し「工事の実施により、希少猛禽類に対する影響は評価する必要があると思われる。よってH23年1月の『アセス必要』の判定が覆ることはないと考える」(同日付「相談処理表」による)と告げているからである。
 また北海道環境推進課の職員は2011年7月8日に開催された環境影響評価審議会で、次のように述べている。
 「今回の事業及び規模(当会注:新岩松発電所建設のこと)は道条例の第二種事業に該当するものなので、アセス手続きが必要か、必要でないか判断を行うことになっています。ただし、今回は事業者である北海道電力が自ら、判定を受けずにアセス手続を行うこととなりました。これは、既存文献等の調査からこの水系には希少動植物の生息の記録があったこと、企業の社会的責任から判断したことによるものと聞いています。」(「第117回北海道環境影響評価審議会議事録」より)。
 つまり、北電が配慮すべき希少動植物の存在を知りながら野生生物への配慮を記載しなかったのは否定しようない事実である。「既存資料(方法書の段階)では、対象事業による野生生物への影響を確認することができなかったため」と「配慮」を「影響」にすり替えての言い訳は、見苦しい限りである。包み隠さず事実関係を明らかにし、道民に謝罪すべきである。

2.シマフクロウ調査の瑕疵について
 岩松では、かつて世界ラリー選手権が行われていた。このため当会はシマフクロウをはじめとする野生生物に悪影響を与えるとしてラリーの中止を求めて運動した。ラリー問題では道内の鳥類研究者ら6名が2004年8月18日付けで、主催者である毎日新聞社に対しシマフクロウに影響があるとしてコースの使用中止を求めた。この要請書ではコースの近くにシマフクロウの重要な生息地があると指摘している。この事実は8月18日の北海道新聞に掲載された。また、2011年1月7日付けの北海道新聞の記事では、美蔓地区国営かんがい排水事業の工事でペンケニコロ川沿いの電柱にシマフクロウの止まり木が取り付けられていること、地域住民が環境省の依頼でシマフクロウに餌を与えていることを報じている。つまりこの岩松地域はシマフクロウの生息地として、自然保護に関わる市民や環境行政関係者には良く知られているところである。したがって、シマフクロウの生息地で発破を含む大掛かりな土木建築工事をするというのが、今回の環境影響評価の核心である。このことは前述の北海道環境推進課の相談処理表および第117回北海道環境影響評価審議会議事録からも裏付けられる。
 北電は今回の調査によりシマフクロウの生息を確認したことまでは認めた(準備書7-2-182頁)が、いつどこで確認したかについては、「シマフクロウについては種の保護のため、現地確認状況は準備書(別冊)に記載する」とだけ書いて非公開とした。しかし、8月7日に新得町で開催された新岩松発電所建設工事環境影響評価準備書説明会において、重大な事実が判明した。
 準備書では「地域を特徴づける注目種・群集」の上位性としてオジロワシとクマタカを選定しているが、シマフクロウを選定しないのはなぜかと当会が質問したところ、北電は調査対象範囲では確認されなかったからと回答した。これに対し、出席者から調査対象範囲でシマフクロウの声を何度も聞いているとの指摘があったが、北電は、2011年3月から2012年2月までの調査では確認されなかったと繰り返し、調査対象範囲おけるシマフクロウの存在を否定した。
 前述のとおり北電の調査対象範囲がシマフクロウの行動圏に含まれることは周知の事実である。したがって、調査対象範囲でシマフクロウを確認できなかった北電の調査には重大な瑕疵があったということである。社会の信頼を得られるきちんとした調査で現状を把握せずに環境影響評価をおこなうのは論外である。シマフクロウの調査をやりなおすべきである。

3.肝心な情報の非公開について
 繰り返すが、今回の環境影響評価の最大のポイントは、シマフクロウの繁殖あるいは生息に対する建設工事の影響である。ところが「シマフクロウについては種の保護のため、現地確認状況は準備書(別冊)に記載する」と書いているだけである。調査対象範囲で確認されなかったということすら記述しなかった。北海道の「環境影響評価技術指針の解説」は、「盗掘、密猟又は繁殖阻害等が懸念されるような特に希少な生物種については、その生育(生息)環境が維持されるよう、種の生態等を勘案して存在場所が特定されないよう慎重な配慮が求められる」としているのであって、調査対象範囲で確認されていないと書くことまで制限してはいない。行政の「慎重な配慮」を拡大解釈して、シマフクロウに関するいっさいの情報を非公開にしてしまうのは、不都合な事実の隠蔽といわれてもしかたがない。北海道環境影響評価条例は道民の参加を前提に成り立っているのであり、肝心なことがいっさい非公開というのは、この制度を形骸化させるものである。シマフクロウへの影響がどのように評価されているか、道民が意見を述べられるようにすべきである。

4.要約書の欠陥について
 「新岩松発電所新設工事環境影響評価準備書要約書」は一般の道民がアセスメントの概要を知るために作成され、新得町での説明会でも配布されたが、要約書の「環境影響評価の結果」には本事業で最も影響が懸念されるシマフクロウについて一切書かれていない。これでは事業予定地一帯がシマフクロウの生息地であることを無視ないし否定しているようなものである。アセスメントの要約書として欠陥があるといわなければならない。

5.選択肢の追加について
 今回の発電所新設工事は、既存の発電所の水車・発電機の老朽化に伴うものとのことだが、シマフクロウという希少猛禽類への影響が懸念される以上、既存の規模のまま水車や発電機を新しいものに交換するという選択肢が検討されてしかるべきである。これを選択肢に加えて再度環境影響評価を行うべきである。

6.類似工事の前例について
 シマフクロウの営巣地あるいは採餌場の近くでこのような発破を伴う大規模な工事によって、ストレスなどの影響を与えなかったと断定できるデータが得られているのか明らかにすべきである。

7.上位性の種の選定について
 準備書では「地域を特徴づける注目種・群集」の上位性としてオジロワシとクマタカを選定しているが、シマフクロウが選定されていない。8月7日に新得町で行われた説明会においてその理由を質問したところ、シマフクロウは調査対象範囲で確認できなかったと説明した。しかし準備書7-2-182の「表7-2-150 予測対象の選定(1)」では文献調査結果、現地調査結果ともにシマフクロウに丸印がついている。したがって、シマフクロウを上位性に加えたうえで評価をやり直すべきである。

8.工事計画等の調整で対処することについて
 シマフクロウについては、「重要な行動が確認された場合には専門家の意見を踏まえて、工事計画等の調整を行う」とのことだが、ここでいう「重要な行動」とは具体的にどんな行動を指すのか。たとえば「営巣の放棄」であれば、「工事計画等の調整」では対処できない。だからこそ事前に影響を予測するのがアセスであり、本末転倒である。

9.猛禽類に与えるストレスについて
 猛禽類は騒音、振動、人や自動車の往来、環境の変化に極めて敏感であり、これらがストレスを与える(具体的には当会のHP参照http://city.hokkai.or.jp/~kagami/WRC/WRC_Menu.html#anchor4)。準備書では騒音や振動については「低減に努める」としているが、低減するだけでは猛禽類にストレスを強いることに変わりなく影響が懸念される。また人や自動車の往来などについて評価がなされておらず不十分である。

10.曖昧なあるいは不正確な調査結果について
 クマゲラについて、平成23年11月に対象事業実施区域西側の山林で飛翔が1例確認されたとし、地図上に飛翔経路を書き込んでいるが、飛翔経路の矢印が対象事業実施区域の寸前で止まっている。これはこの個体が観察時間中ここに留まり続けたということになるが、不自然なことである。したがって、きちんとした調査がなされたのかとの疑念を払拭できない。
 なお、いちいち指摘しないが、おかしな文言が散見される。誤解を招きかねないので十分なチェックをすべきである。

11.重要な種の影響予測について
 文化財保護法やレッドリストなどに基づき、重要な種を選定し、これらの種への影響予測をしている。例えば、フクジュソウについては、確認された20箇所(約1,300個体)のうち、8箇所(258個体)は対象事業実施区域に位置し改変により消失又は縮小する可能性があるけれど、生育環境に適する落葉広葉樹林の林床は周囲に広くあるから、地形改変及び施設の存在による本種の生育環境に及ぼす影響は小さいと予測されるとし、クマゲラについては、対象事業によって本種が利用する可能性のある樹林が縮小することが予測されるが、本種の生息環境である樹林は対象事業実施区域外に広く分布する。よって、地形改変及び施設の存在による本種の生息環境に及ぼす影響は小さいと予測されるとしている。
 このように、ほかにも生育(生息)環境があるから大丈夫との論法で行けば、環境改変地域にいかに多数の重要な種が存在しようとも開発行為による影響が小さいということになる。したがって、「本種の生育(生息)環境に及ぼす影響は小さい」との評価は不適切である。

12.騒音の予測・評価を行った地点について
 建設作業騒音の予測・評価は「近傍民家」のものであり、事業区域周辺に生息する野生生物に対応したものではない。現地での予測・評価を行わなければ意味がない。

13.騒音の数値について
 騒音に関して特定騒音レベルを使用しており、平均値となっている。これでは発破工事などの爆音の影響が見えなくなってしまう。最大騒音を出すべきである。

14.専門家の氏名の公表について
 北海道の「環境影響評価技術指針の解説」では専門家について専門分野などをあきらかにすることを求めている。しかし準備書にはその記述がみられない。シマフクロウについては専門家に非公開の情報を提供し、指導を受けていると推測される。指導内容に責任をもたせるため、専門家の氏名を明らかにすべきである。
以上

  


Posted by 十勝自然保護協会 at 18:32Comments(0)河川・ダム

2012年08月10日

シマフクロウを消してしまった北電の環境影響評価

 北海道の主催により、8月7日、新得町で新岩松発電所建設工事環境影響評価準備書の説明会が開催された。質疑をとおして、事業者である北海道電力の環境影響評価の意図が見えてきた。それは徹底したシマフクロウ隠しであった。

 この環境影響評価対象地域では、かつて世界ラリー選手権が行われていた。このため当会はシマフクロウをはじめとする野生動物に悪影響を与えるとしてラリーの中止を求めて運動した。つまりこの岩松地域はシマフクロウの生息地として、自然保護に関わる市民や環境行政関係者には良く知られているところである。したがって、シマフクロウの生息地で発破を含む大掛かりな土木建築工事をするというのが、今回の環境影響評価の核心である。

 ところが、昨年、北電が縦覧に供した環境影響評価方法書では、事業計画の立案に際して行った環境への配慮に野生生物への配慮の項を設けなかったのである。環境影響評価の核心であるシマフクロウの存在を隠して方法書を作成したというわけである。

 では、北電はシマフクロウの存在を知らなかったのであろうか。断じてノーである。なぜなら、北電から相談を受けた北海道環境推進課の職員が昨年7月8日に開催された環境影響評価審議会で次のように述べているからである。

 今回の事業及び規模(注:新岩松発電所建設のこと)は道条例の第二種事業に該当するものなので、アセス手続きが必要か、必要でないか判断を行うことになっています。ただし、今回は事業者である北海道電力が自ら、判定を受けずにアセス手続を行うこととなりました。これは、既存文献等の調査からこの水系には希少動植物の生息の記録があったこと、企業の社会的責任から判断したことによるものと聞いています。(第117回北海道環境影響評価審議会議事録より)

 説明会でこのことを質したところ、まともに答えようとしなかったが、本音の一端を語った。道の判定を受けると、時間がかかるので自主的にアセス手続きをすることにしたというのだ。北海道はここにシマフクロウがいることを知っているから判定の結果アセスをさせられる、と読んだということだろう。

 今回縦覧された準備書では「地域を特徴づける注目種・群集」の上位性としてオジロワシとクマタカを選定しているのだが、シマフクロウは選定されていない。そこで説明会でその理由を質問したところ、北電は調査対象範囲では確認されなかったからと回答した。

 これには、このあたりのことをよく知るほかの出席者も驚いたようで、調査対象範囲でシマフクロウの声を何度も聞いていると指摘した。これに対し北電は、2011年3月から2012年2月までの調査では確認されなかったと回答した。とうとう北電は準備書で岩松にはシマフクロウがもはや存在しないことにしてしまったのである。

 準備書の7-2-115ページ以下に「重要な鳥類」として猛禽類などの記載がある。クマタカについては、調査箇所での確認状況として、「平成23年3月~平成24年1月(平成23年6月を除く)に岩松ダムからくったり湖にかけての広い範囲で118例が確認された。とまり行動などが確認された。対象事業実施区域以外で営巣木が確認されており、・・・・・・調査対象範囲には営巣地は確認されなかった。」(7-2-120ページ)とことこまかに書き、オオタカなどほかの猛禽類についても「調査対象範囲に営巣地は確認されなかった」などと書いて、確認位置図も掲載していている。

 しかし「シマフクロウについては種の保護のため、現地確認状況は準備書(別冊)に記載する」とだけ書いているのである(ただし、この別冊なるものは一般道民には非公開)。調査対象範囲で確認されなかったということすら記述していない。北海道の指針は、「盗掘、密猟又は繁殖阻害等が懸念されるような特に希少な生物種については、その生育(生息)環境が維持されるよう、種の生態等を勘案して存在場所が特定されないよう慎重な配慮が求められる」としているのであって、調査対象範囲で確認されていないと書くことまで制限してはいない。行政からの「慎重な配慮」を逆手にとって、シマフクロウに関するいっさいの情報を隠し、一般道民が知りえないのをいいことに事を運んでいるのだ。もし説明会で質問しなければ、調査対象範囲にはシマフクロウはもはやいないものとして、アセス手続きが進んでいくことになったであろう。

 シマフクロウを工事前からいなかったことにすれば、たとえ工事によってシマフクロウがいなくなっても責任を問われることもないとでも踏んでいるのだろうか。近くに活断層が存在する可能性があるにもかかわらず、知らぬふりをして泊原発を建設したのもこの電力会社だった。不都合なことを隠蔽する性分が染み付いているようだ。シマフクロウ隠しの意図のもと作成されたこの準備書およびアセス手続きに大きな欠陥があることはもはや隠蔽のしようがない。
  


Posted by 十勝自然保護協会 at 17:56Comments(0)河川・ダム

2012年08月05日

今年度の河川整備計画について帯広開発建設部から回答

 当会が7月18日付で提出した「平成24年度治水事業計画についての質問書」
への回答が、8月3日に帯広開発建設部治水課長補佐からメールでありました。回答を下に掲載します。
 事実関係について確認ができた項目について取り急ぎ回答したとのことですが、この程度の事実関係の確認に半月もかかるというのには、あきれてしまいました。
 余りに忙しくて時間がかかったのか、問題処理能力の欠如で時間がかかったのか、国民へ情報を出し惜しみするため時間をかけているのか、はたまた国民に事業の必要性の言い訳を考えるのに時間がかかるのか分かりませんが、残りの質問に速やかに回答しないようであれば、北海道開発局長あるいは国交省水管理・国土保全局長に問合せたいと思います。

*********

7月15日の質問のうち、事実関係が確認できた項目について、取り急ぎ回答いたします。
残りの質問については追って回答いたしますので、よろしくお願いいたします。
1.池①、池②の築堤工事について
c.築堤後、種子散布をすることになっているが、どのような種子をいつ散布するのか。
回答)ケンタッキーブルーグラス、クリーピングレッドフェスク、ハードフェスクの種子を8月頃に散布します。
d.築堤のための盛土はどこからもってくるのか。
回答)幌岡(左岸KP13付近)及び大津(右岸KP5付近)の置土箇所から運搬します。
2.池③の河道掘削工事について
b.掘削土はどこへ持っていくのか。
回答)幌岡(左岸KP13付近)及び大津(右岸KP5付近)の置土箇所へ運搬します。
4.池⑨の施設補修工事について
a. 護岸補修の工事内容を明らかにしていただきたい。
回答)既設護岸の補修です。既設護岸を一度撤去し、護岸裏の埋め戻しを行い再設置します。
6.帯①~⑥の災害復旧・河岸保護工事(音更川・札内川)について
a. 音更川の17.5~19KPで河道掘削を行うという説明であったが、掘削部分は現流路の右岸側か。あるいは両岸か。
回答)右岸側です。
7.帯⑧の河道掘削工事(十勝川中流部)について
a. 河道掘削部分の河畔林面積を明らかにしていただきたい。
回答)約10haです。
  


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2012年07月31日

新岩松発電所新設工事環境影響評価準備書縦覧中

 8月21日まで新岩松発電所新設工事環境影響評価準備書が縦覧されます。昨年、当会は新岩松発電所新設工事環境影響評価方法書に対し下記の意見書を提出しました。事業者である北電は、当会の意見を無視できず、この準備書で一定の修正をしていることが判明しました。当会の意見に対する北電の見解は下記でみることができます。
http://www.hepco.co.jp/shiniwamatsu_assess/pdf/assess_01_14.pdf
では、この準備書に問題はないのかというとそうではありません。いま意見書を準備中です。
この準備書はhttp://www.hepco.co.jp/shiniwamatsu_assess/assess_01.htmlでみることができます。意見書の締め切りは9月4日です。


新岩松発電所新設工事環境影響評価方法書への意見書

Ⅰ.方法書の不備について
 新岩松発電所新設工事環境影響評価方法書(以下、「方法書」という)には、見逃せない欠陥があるので指摘する。
1.方法書15頁「6事業計画の立案に際して行った環境への配慮」に野生動物への配慮の項がないのは問題である。工事場所の立地を考えるならば、野生動物への配慮を記述すべきである。
2.同頁「(3)緑化」で「緑地に復元する計画である」としているが、「緑地に復元」では意味をなさない。「復元」というのであれば、「かつての植生に復元」あるいは「本来の植生に復元」とでもすべきである。
3.33頁「5動植物の生息又は生育、植生等の状況(既存資料調査結果)」は既存資料の対象範囲を対象事業実施区域近隣としているが、近隣の定義がなされていないので対象範囲が曖昧である。対象範囲を明確にすべきである。
4.美蔓地区国営かんがい排水事業の実施区域は、上記の既存資料の対象範囲に含まれるが、同事業の調査報告書が参考文献として挙げられていないのは問題である。文献調査に不備があるといわなければならない。
5.52頁「5の3)生態系の状況(1)生態系の概況」②河畔林⑥水域」にシマフクロウの記載がないのは問題である。隣接する水系に繁殖個体が存在するという事実を無視すべきではない。
6.同頁「5の3)生態系の状況(2)地域を特徴付ける生態系の抽出及び注目種・群集の抽出」にナキウサギの記載がないのは問題である。

Ⅱ.方法書の不備と事業者の姿勢
 Ⅰで指摘した記述の不備は、この方法書作成者である北海道電力株式会社の環境保全あるいは自然保護への姿勢と関係しているといわなければならない。
 120頁の表5-2-1(10)において重要な種としてナキウサギ、シマフクロウ、イトウをあげているにも関わらず、上記Ⅰの5および6で指摘したようにシマフクロウやナキウサギを記載していない。これは、今回の工事がこれらの種に影響を与えることを隠そう、あるいは知られまいとの意図が読み取れる。また、上記Ⅰの4で指摘したように、重要な情報が記載されている文献を無視している。このようなアンフェアーな姿勢で、はたして客観的な野生動物への影響評価ができるのであろうか、大いに疑問である。

Ⅲ.結論
 Ⅱで指摘した当会の疑念を払拭するためにも、Ⅰで指摘した事項を真摯に検討し、この方法書を書き直すことを求める。
 また、方法書の縦覧において、複写を禁止していたが、このことについて一言いっておきたい。
 広い北海道において、限定された縦覧場所に出向くのは時間を要するものである。そして、それなりのボリュームがある方法書をきちんと読むためには多くの時間を要するものである。もし、多くの道民にこの方法書を読んでもらい、広く意見を求める姿勢があるのなら、少なくとも複写を禁止するようなことはやめるべきである。
 当会の意見書に異論があるのであれば、北海道電力株式会社の見解を明らかにしていただきたい。
  


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2012年07月16日

治水事業計画についての質問書

当会は、7月15日付で帯広開発建設部長に今年度の治水事業計画について質問書(下記)を送りました。

平成24年度治水事業計画についての質問書

 さる7月3日に平成24年度治水事業計画説明会が開催されたが、時間不足のため疑問点を質問できなかったので本書により質問したい。昨年の当会からの質問に対する回答は、3ヵ月半も要した。治水対策上不可欠との立場で事業を計画しているのであろうから、質問にはすみやかに回答していただきたい。なお、特に時間が要する質問事項については、その旨連絡いただきたい。

1.池①、池②の築堤工事について
a.この築堤工事の計画の全容、すなわちこれまでどこで工事をし、今後どこで工事を予定しているかを明らかにしていただきたい。
b.工事目的を治水安全度の向上としているが、現在の堤防の天端の標高(以下、堤防天端標高)、計画高水位(以下、HWL)、戦後最大規模の洪水流量の水位(以下、戦後最大流量水位)を明らかにした上で、貴職が治水安全度を向上させなければならないと考える理由を説明いただきたい。
c.築堤後、種子散布をすることになっているが、どのような種子をいつ散布するのか。
d.築堤のための盛土はどこからもってくるのか。

2.池③の河道掘削工事について
a.流下断面確保を目的に河道掘削を行うということだが、まず堤防天端標高、HWL、戦後最大流量水位を明らかにしていただきたい。そしてこの河道掘削により水位がどの程度下がるのかを明らかにしていただきたい。
b.掘削土はどこへ持っていくのか。

3.池⑤の堤防耐震対策工事について
a.今年度3箇所でドレーン工を行うとのことだが、当該箇所が特に水分含量が多いということか。もしそうなら、なぜそのような状態となったのか、説明していただきたい。

4.池⑨の施設補修工事について
a.護岸補修の工事内容を明らかにしていただきたい。

5.池⑩の伐開工事について
a.流下断面確保のため河畔林を伐採するとのことだが、まず堤防天端標高、HWL、戦後最大流量水位を明らかにしていただきたい。そしてこの伐採により水位がどの程度下がるのかを明らかにしていただきたい。

6.帯①~⑥の災害復旧・河岸保護工事(音更川・札内川)について
a.音更川の17.5~19KPで河道掘削を行うという説明があったが、掘削部分は現流路の右岸側か。あるいは両岸か。
b.音更川では5箇所で河岸保護工を行うことになっているが、この5箇所はどのような考えに基づいて選定したのか。
c.昨年の音更川18.2KPの堤防洗掘は、糠平ダムからの大量放流によってもたらされたと当会は認識しているが、貴職も同様の認識であると考えてよいか。
d.糠平ダムなどのダムがないとした場合、この時の降雨パターンから、音更川18.2KP付近でどのような流量変動があったと推測されるか明らかにしていただきたい。
e.当会は音更川18.2KPの堤防洗掘の要因について以下のように考えている。当会の見解に異論があれば、貴職の見解を明らかにしていただきたい。
1)今回堤防が流失したKP18.2地点の1.6kmほど上流のKP19.8地点付近から上流の右岸は堤防がなく「山付き」というべき地形である。つまりぶつかった水流をはね返すところである。2)今回堤防が流失したKP18.2地点の上流600mのKP18.8地点から下流は堤防の幅が狭くなっていく。つまり蛇行幅が大きくなると堤防が洗掘される可能性が高くなるところである。3)KP18.2地点から下流にむかって堤防が湾曲している。つまり水流がぶつかる水衝部になる可能性の高いところである。このように地形と水流の関係を分析すると、ここで堤防が洗掘された要因がみえてくる。水流は右岸で跳ね返され、左岸側の高水敷を流下した。そしてここの砂礫を洗掘し、下流で大きく蛇行して堤防幅が狭くなり湾曲した箇所を侵食したのである。地形を読み取ることができれば、この付近の左岸側堤防はほかのところよりも洗掘にさらされる危険性が高いと予測できたはずである。

7.帯⑧の河道掘削工事(十勝川中流部)について
a.河道掘削部分の河畔林面積を明らかにしていただきたい。
b.十勝大橋上流側(公募伐採箇所)は河畔林伐採のみで流下断面を確保し、ここでは河道掘削まで行うことになっているが、両者で対策が異なる理由を明らかにしていただきたい。
c. 堤防天端標高、HWL、戦後最大流量水位を明らかにしていただきたい。そしてこの工事により水位がどの程度下がるか明らかにしていただきたい。
d.河道掘削1の掘削位置が河岸ではなく高水敷であることの理由を説明していただきたい。

8.帯⑨の堤防保護工事(札内川)について
a.2箇所で工事を行うことになっているが、この2地点が選定された理由を明らかにしていただきたい。

9.帯⑪砂防施設工事(戸蔦別川)について
a.目的として「洪水時の土砂流失による被害の防止・軽減のため、既存の砂防堰堤の改良(スリット化)を実施する」とのことだが、堰堤のスリット化によって、洪水時の土砂流失による被害の防止・軽減が図られる場所は堰堤下流の河床という理解でいいのか。もしそうであるなら、今後堰堤下流部における床固工について見直しが必要になると考えるが、貴職の見解を明らかにしていただきたい。
b.昨年度スリット化が行われたが、土砂の移動について明らかになったことを説明いただきたい。

10.帯⑬の帯広河川事務所維持修繕について
a.音更川と札内川で河道整正を行うということだが、この工事を行わなければならない理由と、工事箇所を選定した理由を説明いただきたい。

11.帯⑭の帯広河川事務所維持修繕(河道内樹木伐採)①について
a.目的として「流下断面を確保するため、河道内の樹木伐採を行う。伐採は地域からの公募を活用して実施する」となっているが、貴職は、2010年10月に設置した「十勝川中流部川づくりワークショップ」の第6回(2011年3月開催)において、「河道内の樹木が年々増加傾向にあるのに対し、草原や河原環境が減少傾向にあることから、第5回で提案した『左岸の樹木を伐採し草原環境とし、河原は保全する案』を提案したい」とし、2011年10月の第8回ワークショップで伐採を決定した。今回、当初の草原環境をつくるという目的を取り消したわけだが、その理由を明らかにしていただきたい。
b.当会は公募による河畔林伐採について本年3月12日付で貴職に要望書を提出した。これに対し貴職から、伐採後の再森林化抑制に向けた知見がえられてきたとの回答があったが、その後の問合せで、これは後志利別川下流部での1例ということが明らかになった。この事例について、どのような工事を行なって、再森林化が抑制されたのか具体的に説明いただきたい。また、外来種対策として、在来草本の箇所から表土をとってくるから外来種の侵入を防げるとのことだが、整地後の「表土」に風散布などで飛来する外来種の種子対策をどのように考えているか明らかにしていただきたい。

12.帯⑭の帯広河川事務所維持修繕(河道内樹木伐採)②について
洪水時に河岸の侵食等の状況を堤防から目視点検するため、河畔林を伐採するということだが、これは昨年の音更川での堤防洗掘を踏まえ、堤防が洗掘されないか目視点検しなければならないということで立案されたと推測する。200m間隔で10m幅の伐開をするとの説明であったが、これには異を唱えなければならない。なぜなら、昨年程度の流量では分厚い河畔林部分が侵食され、流路が堤防まで迫るとは考えにくいからである。それが証拠に昨年の堤防洗掘現場は河畔林のない堤防から流路を見通せるところであった。したがって、単純に一定間隔で伐採することはその後の維持を考えても無駄である。流路は蛇行部からも一定程度見通せるのであり、仮にどうしても伐採が必要であるというのなら、蛇行状態を勘案して伐採すべきである。これに対する貴職の見解をうかがいたい。なお伐採計画が具体化した段階で説明いただきたい。

13.流木の処理について
北海道新聞(7月6日付夕刊)に「流木を無料提供」との記事が掲載されたが、7月3日の治水事業計画説明会でこの事業に触れなかった理由を説明していただきたい。流木は、日本列島の固有種であり北海道では分布が限定されるセグロセキレイの営巣場所として重要な意味をもっている。したがって、流木を無闇に河川から持ち出すことは避けなければならない。このことについて貴職の見解を明らかにしていただきたい。
  


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2012年06月22日

居辺川砂防事業計画と治山事業計画の問題点

 十勝平野北部の居辺川で大掛かりな砂防事業と治山事業が計画されています。この計画の問題点を指摘し、計画の見直しをもとめる文書を5月6日付で十勝総合振興局長に送付しました。
 
居辺川砂防事業計画についての申入れ

 当会は、3月21日に帯広建設管理部において、居辺川砂防事業計画案について説明を受けました。担当者の説明によると、居辺川では土砂が移動することにより洪水被害があったので、これを防ぐため、上士幌町の居辺橋から上流6kmの区間に遊砂地と12基の床固工などを設置するということでした。
 しかし、この計画案について当会は下記の点を懸念しています。
1.すでに河床侵食が進んでいる下居辺付近から下流において、さらなる激しい河床侵食が予想される。
2.床固工によって流路を遮断すると魚類の移動が妨げられるばかりでなく、砂礫がふるい分けられ河床環境が変化し、水生昆虫や魚類の生息に悪影響を及ぼす恐れがある。
3.砂礫の移動が制限されると川原の森林化が進み、川原を生息地とする動植物の生存が困難となる恐れがある。
4.森林化が進んだ後に大雨にみまわれると多量の流木が発生し、洪水被害を一層拡大する恐れがある。
 居辺川は、古期扇状地から砂礫が供給される礫床河川です。この礫床河川の集水域(居辺橋から上流)において、森林から農地への転換および農地の排水工事が行われてきました。その結果、雨水が急速に流入するようになり砂礫の移動を激しくさせている、と当会は考えております。したがって「洪水被害」なるものは居辺川が集水域の変化に応答した河道拡大現象であって、これを砂防ダムで押さえ込もうという発想は、長い目で見ると賢明な方法とはいえないでしょう。
 このようなことから、当会は床固工によって砂礫の移動を止めれば問題が解決するとの認識を改め、河川生態系を損なうことのない方法で洪水対策を講ずるよう求めます。

居辺川治山事業計画についての要望書

 当会は、昨年12月29日付文書で、貴職に「植栽による森林化をめざすならば、本工事においても近隣の森林から苗木を確保すべきだと考えます。また、崩壊斜面の表土の安定化には林床植生の復元も欠かせません。ついては、理にかなった森林復元をどのようにするのがいいのか、道立総合研究機構林業試験場など専門機関とも相談し知恵を絞ることを求めます」との申入れをしました。
 これに対し、1月31日付で林務課長から「植栽木の選定に当たっては、適地適木の観点からこの地区周辺で生育しているものや、今回と同じ様な痩せ地でも活着や成長が良いなどの適性から判断し、イタヤカエデとケヤマハンノキを予定しています」との回答がありました。さらに3月26日に治山係長から地方独立行政法人北海道林業試験場の清水研究員と相談したとし、①居辺川河畔の植栽について、森林の早期再生に向けて植栽することは全く問題ない ②植栽木として当係で選定しているケヤマハンノキおよびイタヤカエデは一般的に山間部で植栽される樹種で、現地付近にも自生しており適正な樹種と言える、とのアドバイスをもらったとメールで回答がありました。
 当会は、林業試験場の清水研究員に質問書を送付し、回答をもらいました(別添)。
 清水研究員の回答は、森林化にあたっては先駆樹種の活用が良いかもしれないとし、この地域の先駆樹種はケヤマハンノキである。またイタヤカエデについては一斉林を形成することはなく、イタヤカエデ人工林から自然林への移行にどれだけの年月を要するかはっきりとしたことはいえない、というものでした。
 さる4月30日に現地の崩壊斜面における樹木の侵入状況を観察したところ、崩壊斜面南縁のやや安定した部分ではケヤマハンノキが生育し、崩壊斜面末端の堆積部分ではヤナギ(オノエヤナギらしい)の若木が生育していました。
 清水研究員の見解および現地の樹木の侵入状況を踏まえ、当会は、この崩壊地の森林化に当たってイタヤカエデの植栽を見合わせ、先駆樹種であるケヤマハンノキおよびヤナギ類(おもにオノエヤナギ)を活用し、本来の森林に導くことが最良の方法であろうと考えます。
 貴職におかれては、当会の見解をご理解いただき、計画を変更するよう要望いたします。
  


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2012年06月22日

平成24年度治水事業計画説明会開催にあたって要望

 治水事業計画説明会開催に先立ち、6月21日付で帯広開発建設部長に以下の要望書を提出しました。

平成24年度治水事業計画説明会開催にあたっての要望書

 今年度の治水事業計画説明会が7月3日に開催されるとの案内がありましたが、開催に先立ち、貴職に下記の2点を要望いたします。

1.過去の説明会では、当日に事業計画に関する極めて簡略な資料が配布され、詳細はパワーポイントで説明するという形で事業計画の説明が行われてきました。しかし、このやり方では、一般市民にとって計画している治水事業の内容を理解するのが難しい面があります。つきましては、パワーポイントのファイルをプリントして配布していただくか、事前に貴職のホームページにこのファイルを掲載してください。
 なお、帯広建設管理部からは、貴職の配布資料よりも詳細な事業概要が配布されています。このことも参考にしていだきたく思います。

2.当会は、昨年および一昨年に説明会において、事業内容について質問いたしましたが、その場で回答できず後日文書等で回答が寄せられました。速やかに回答いただけるのならまだしも、昨年は回答まで3ヶ月半も要しました。このことは国民に十分説明できない事業を計画していると解釈せざるをえません。つきましては、説明会で出された質問には、説明会で回答するよう万全の準備をしてください。
  


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2012年05月09日

河畔林伐採についての帯広開発建設部の回答

 当会の3月12日付申入れに対し帯広開発建設部から4月13日付で回答がありましたので掲載します。
 回答によれば、伐採後の再森林化抑制に向けた知見がえられてきたとのこと。その知見を拝聴したいものです。
 外来種対策として、在来草本の箇所から表土をとってくるからなんとかなりそうとのこと。整地後の「表土」に風散布などで飛来する外来種の種子のことは頭にないようです。
 「十勝大橋で水位が0.5m下がるという根拠について丁寧に説明していただきたくお願いいたします」と丁重に頼んだのですが、手法については「河道計画の手引き」に掲載されているので、それを見てくれとのこと。開いた口がふさがりません。国民に説明する能力がないのでしょうか。



  


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2012年04月29日

十勝大橋上流の河畔林伐採の問題点

 希望者を募り十勝大橋付近の河畔林を伐採するという記事が北海道新聞(2012年1月26日付朝刊)に掲載された。昨年7月5日に平成23年度十勝川治水計画説明会が開催されたが、この時の説明および配布資料にはこの伐採は取り上げられていなかった。
 このため自然保護NGOとして今回の伐採の区域設定の妥当性、必要性について検証すべく、2月29日に現地で説明を受けた。この伐採の一番の目的が流下断面の確保だというのに、今回伐採するとどれほど水位の低下が見込まれるか具体的に説明できないのには驚いた。2010年9月に策定した十勝川水系河川整備計画では、このあたりは河道掘削で流下断面を確保することになっていたのだが、急にこの方針を変更し河川敷に草原環境をつくるということになったという。なんとも思いつき的事業であることから、3月12日付で下記の要望書を帯広開発建設部長に送付した。



十勝大橋上流部における公募による河畔林伐採についての要望書

 さる2月29日に、治水課福田課長補佐および帯広河川事務所小原計画課長より、現地で今回の河畔林伐採について以下の説明を受けました。
1.伐採の目的は、流下断面の確保である。ただし水位がどれほど下がるか即答できない。(3月2日に福田課長補佐から十勝大橋で0.5m水位が下がるとの連絡があった)
2.伐採箇所は十勝大橋上流の左岸730mまでの約5ha。
3.公募したが応募者が少ないため、伐採対象地の2割ほどで伐採を実施する。
4.公募伐採後、開発建設部が抜根し、その周辺の土や在来種の種子が多いと思われる地表部分の土砂を均して、草原となるようにする。
5.伐採対象となる河畔林については、樹種構成は把握しているが、密度や材積などは調査していない。
6.伐採跡地にオオアワダチソウなど外来種が入り込む懸念がある。

 今回の伐採の問題点
1.十勝川水系河川整備計画の形骸化
 2010年9月に十勝川水系河川整備計画(以下、整備計画という)が策定され、これをうけて、貴職は「十勝川中流部川づくりワークショップ」を2010年10月に設置しました。このワークショップの第6回(2011年3月開催)において、「河道内の樹木が年々増加傾向にあるのに対し、草原や河原環境が減少傾向にあることから、第5回で提案した『左岸の樹木を伐採し草原環境とし、河原は保全する案』を提案したい」とし、2011年10月の第8回ワークショップで伐採を決定しました。しかし、今回の伐採箇所は、整備計画では河道掘削区間とされていたところです。つまり公聴会や流域委員会を開催し2年8ヶ月かけて策定した整備計画をわずか半年で、特別緊急性が高いとも思えない理由により変更してしまったのです。
2.十勝川水系河川整備計画の無視
 整備計画では「樹木の大きさ、密度、成長速度等を踏まえた効果的な樹木管理方法、流木対策について、関係機関と連携しつつ、引き続き調査・検討を進める。」とされているにもかかわらず、今回伐採する河畔林については、樹木の大きさ、密度、成長速度といった基礎的データも収集していません。つまり自ら決めたことを無視しているのです。
3.無責任な対応
 第3回ワークショップ(2010年12月2日)において、伐採にあたっては「河畔林に依存する生物への配慮が必要」と言っているもかかわらず、伐採対象地での生物の調査もしていません。生物の生息実態を知らずして配慮などできません。
4.外来植物侵入のリスク
 われわれは、河川敷に多くの外来植物が繁茂しているという事実を知っていますし、外来植物の多くが河畔林の林床ではなく林外の開放地を好むことも知っています。河畔林伐採後の開放地は外来種に格好の生育地を提供することになるでしょう。外来種の侵入を防ぎ草原化が本当に可能なのか。また、その場合の草原はどのような種構成になるのか。こういった基礎的な調査や検討も行なわず、河畔林を伐採するのは無謀というものです。
5.伐根の除去について
 伐採後、草原をつくるためと称して、埴土をあつめ地ごしらえすることは、融雪時の出水や多雨による異常出水などで埴土が流失する危険性が高くなります。埴土が流下したなら水生昆虫はもとより淡水魚の生存を脅かすことになり、河川生態系への悪影響が懸念されます。また予算縮減で民間に伐採を依頼するとしながら、抜根に公費を使うのは矛盾しているといわなければなりません。
6.流域委員会委員の短絡的意見
 2009年9月の第9回流域委員会で委員から「草原性の鳥類の生息地としては、農耕地があるもののかならずしも適しておらず、河跡湖周辺の草原の他は河川敷くらいしかない。そのため、鳥の生息環境として、草原環境を維持することが重要である」。「樹木の伐採に関して、やむを得ず切るというのではなく、積極的に草原環境を維持するという側面もあってよいのではないか」。「原案では、できるだけ木を切らないように、というニュアンスが強いが、逆に積極的に木を切って草原環境を維持していく面があってもよいのではないか」といった意見が表明されました。
今回の拙速な河畔林伐採がこれらの意見に影響されたのではないかと懸念されますので、これらの意見の問題点に言及しておきます。
 彼らは、河畔林を伐って非森林的空間(草原的なもの)を造ることを主張しているのですが、植生学の教えるところによれば、北海道で草原が出現するのは強風にさらされる海岸や高山などきわめて限られた立地だということです。もし十勝川水系の氾濫原にかつて草原的な環境があったとしたなら、どのような群落であったかを解明し、そのような群落をどうしたら復元できるかを検討すべきであって、伐採して非森林空間にすればいいというものではありません。
 第3回ワークショップ(2010年12月2日)において、治水課は「伐採跡地の再樹林化を防ぎ、草原として維持していくための工夫や維持管理が必要となる。」と発言し、河畔林を伐採して人工的草原を維持することの難しさを認めています。

 結 論
 今回の河畔林伐採は整備計画を形骸化するものであり、河畔林に依存する生物への配慮にも欠けるものでした。伐採して草原にしたいというものの、どのような草原環境を実現しようとしているのかも明らかではありません。また外来種の侵入を防ぐ確信ももっていません。つまり今回の河畔林伐採は場当たり的、思いつき的な事業と判定せざるを得ません。
 このようなことから、当会は今回の河畔林伐採については中断し、流下断面確保という目標を達成するよりよい方策を緻密に検討するよう、貴職に要望いたします。
 なお、当会はかねてから指摘しているように、貴職が治水事業の拠りどころとしている計画高水流量や目標流量の数値に納得しているわけではないことを申し添えるとともに、貴職が十勝大橋で水位が0.5m下がるという根拠について丁寧に説明していただきたくお願いいたします。また今回の抜根にかかる経費の総額について明らかにしてください。                             
以上


  


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