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2010年12月02日

十勝川水系河川整備計画に関する質問書

 当会は、先ごろ策定された十勝川水系河川整備計画に関して、帯広開発建設部長に対し11月24日付けで下記の質問書を送付しました。

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十勝川水系河川整備計画に関する質問書

 当会および当会役員が昨年10月の公聴会で意見を述べた十勝川水系河川整備計画(以下、計画という)が9月に策定されましたが、この計画について、以下の5点について質問いたします。ご多忙とは存じますが、12月20日までに回答くだるようお願いいたします。

質問1.「氷河期の遺存種であり国内でもごく限られた地域にしか生育していない貴重な種であるケショウヤナギが分布している。」(計画P.43)と記述されていますが、ケショウヤナギが氷期からの遺存種であるという根拠資料を明らかにしてください。

質問⒉.当会は、相生中島地区の掘削工事について昨年6月に質問書を、同7月に再質問を提出しました。この中で、相生中島地区の水路掘削による周辺の河川形態への影響について質問したのに対し、「当該工事は、現在の低水路を残したうえで右岸側の高水敷に洪水時のみ流れる水路を掘削するものであり、洪水時の水位低下により治水安全度は向上しますが、通常時の流れは現在と変わらないことから、上下流域や流入する支川等への影響はないと考えています。」との回答がありました。しかし、今回策定された計画では「整備中の相生中島地区では洪水時の流れの状況がこれまでと変化することから、河床の低下や土砂堆積、河岸の侵食等の土砂動態について注意深く監視する必要がある」と書かれています。回答と計画の記述は同じ行政機関が作成したのかと疑わざるを得ないほどの違いがあります。このような齟齬が生じた理由を明らかにしてください。

質問3 当会は、公聴会において、洪水防御に関する計画の基本である洪水のピーク流量(基本高水のピーク流量)が過大に見積もられたものではない、という科学的根拠を示すことを求めました。
 これに対し、貴職は次のような見解を明らかにしました。

 河川整備基本方針は、治水安全度の全国バランス等を考慮しつつ、長期的な視点に立って定める河川整備の目標であり、その内容の客観性及び公平性を確保するため、十勝川などの一級河川においては河川について専門的知見を持った学識経験者等から構成された社会資本整備審議会の意見を聴いて、国土交通大臣が定めるものです。平成19年3月に策定した河川整備基本方針は、このような手続きを経た上で、昭和55年に改定した十勝川水系工事実施基本計画の流量を検証のうえ踏襲し、上流基準地点帯広においては基本高水のピーク流量を6,800m3/sとし、洪水調節施設により700m3/sの調節を行い、計画高水流量を6,100m3/sとするとともに、下流基準地点茂岩においては基本高水のピーク流量15,200m3/sとし、洪水調節施設により1,500m3/s の調節を行い、計画高水流量を13,700m3/sとした(P.21)ものです。
 平成19 年の河川整備基本方針の策定時における流量の検証は、以下に示すとおりです。
・年最大流量と年最大降雨量の経年変化から、昭和55年の計画策定後に、計画を変更するような大きな出水が発生していないこと。
・近年のデータを含めて流量を確率処理して検証した結果、1/150確率で起こると想定される流量は下記のとおりであること。
帯広基準点( 6,800m3/s):1/150確率の流量の推定範囲は 6,000m3/s ~ 7,400m3/s
茂岩基準点(15,200m3/s):1/150 確率の流量の推定範囲は12,100m3/s ~15,600m3/s
・既往洪水からの検証として、既往洪水の降雨でも洪水前に流域が湿潤状態であったと仮定した場合には、基本高水のピーク流量を上回る流量が起こりうること。
帯広基準点:昭和56 年8 月の降雨で約 7,900m3/s と推定
茂岩基準点:大正11 年8 月の降雨で約16,900m3/s と推定
・以上の検証により、既定計画の流量を踏襲することとしたものです。

 貴職は、基本高水のピーク流量をどのような手続きで決めたかということと1/150確率の流量の数値について明らかにしましたが、1/150確率の流量の数値をどのような確率処理によって決めたかという核心部分については、まったくふれていません。この点について具体的に明らかにしてください。

質問4 当会は、公聴会で河道掘削・河畔林伐採と計画高水位について、以下のように指摘しました。
 ・原案の72頁には、「河道への分配流量を安全に流下させることができるよう河道の掘削を行う」と述べ、73頁には河道掘削のイメージ図(図2-3、図2-4)が載せられている。そして、このイメージ図には計画高水位の線が引かれている。今後30年の河川整備にあたっては、計画高水流量が過大であることから、戦後最大規模の洪水流量を安全に流下させる「目標流量」と「河道への分配流量」 を設定したはずである。ならばこのイメージ図には「分配流量の水位」がなければならない。「分配流量の水位」を記載しないのは、不都合な事実の隠蔽といわれてもしかたがない。河道掘削の必要性は「分配流量の水位」との関係で判断するのが合理的である。したがって、当会は、この河道掘削の必要性が低いと考えており、再検討を求める。
 ・原案では、「河道内の樹木は、・・・・・・洪水時には水位の上昇や流木の発生の原因になる」ので「樹木が繁茂する前に伐採を行う」とし、河道内樹木の管理イメージ図(図2-17)を掲載している。ここでも計画高水位の線が引かれ、樹木が繁茂すると計画高水位よりも水位が上昇するとの説明がなされている。 河道掘削同様、河畔林伐採の必要性は「分配流量の水位」との関係で判断するのが合理的である。また特に下流域の河畔林には流木捕捉効果が知られている。したがって、当会は、この河畔林伐採について、再検討を求める。

 これに対して、貴職は「現在の堤防の整備状況等を踏まえ、河川整備計画(案)では河道への配分流量を計画高水位以下で安全に流下させることができる整備内容を検討し、その結果を示しています。」との見解を明らかにしました。
 しかし、この河川整備計画は「十勝川水系河川整備基本方針に則し、十勝川水系を総合的に管理するため、河川整備の目標及び実施に関する事項を定めるもので、その対象期間は概ね30年とするものであり、洪水による災害の発生防止又は軽減に関しては、河川整備基本方針で定めた目標に向けて段階的に整備を進めることとし、十勝川流域において甚大な被害をもたらした戦後最大規模の洪水である昭和37年8月降雨(帯広地点より下流域)、昭和56年8月 降雨(帯広地点より上流域)、昭和63年11月降雨(浦幌十勝川流域)により発生する洪水流量(以下「目標流量」と言う)を安全に流下させることを目標」 (P.66)としているのです。
 これを無視して、現在の治水の最終目標である十勝川水系河川整備基本方針にある計画高水位を持ち出すのは、論理に一貫性がありません。このことに対する貴職の見解を明らかにしてください。

質問5 当会は、公聴会において現在相生中島地区で行われている掘削工事は、安全に名を借りた不必要な公共土木工事であり、原案から相生中島地区の掘削工事を削除することを求めました。
 これに対し、貴職は、工事の妥当性を次のように説明しました。

 本計画では、十勝川流域において甚大な被害をもたらした戦後最大規模の洪水である昭和37 年8 月降雨(帯広地点より下流域)、昭和56 年8 月降雨(帯広地点より上流域)、昭和63 年11 月降雨(浦幌十勝川流域)により発生する洪水流量(以下「目標流量」と言う)を安全に流下させることを目標(P.66)とし、本支川や上下流の関係を踏まえた治水安全度のバランス等を考慮(P.62)した上で、河道断面が不足している区間として相生中島地区や帯広周辺の河道を掘削するものです。
 ご指摘のあった昭和56年8月洪水時の状況と本計画との関係については、以下に示します。
 現在の河道は、昭和56年8月洪水当時と比べ、河道断面が異なるとともに、河道内樹木が繁茂し、その範囲も増加しています。河道内樹木については、洪水時には流速の低減や流木を捕捉する効果が期待できる一方で、水位の上昇や流木の発生の原因とも(P.92)なります。流下能力を確保する方法としては、河道の掘削のほか、樹木を伐採する方法などが考えられますが、河畔林の環境面なども含めた多様な機能や今後の維持管理等を考慮し、河道の掘削により対処することとしたものです。

 貴職の説明によれば、河道断面が昭和56年当時と異なるとのことですので、昭和56年以降河道断面がどのように変化したのか図を用いて明らかにしてください。
以上



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Posted by 十勝自然保護協会 at 20:36│Comments(0)河川・ダム
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