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十勝自然保護協会 活動速報 › 河川・ダム › 「シマフクロウ保護は住民参加型で」は当然のこと

2013年05月06日

「シマフクロウ保護は住民参加型で」は当然のこと

 シマフクロウの保護は住民参加型の保護事業へと拡大していかなければならない、とシマフクロウ研究者が主張しているのを最近知った。シマフクロウの数少ない研究者である早矢仕有子さんが、「北海道の自然」50号(2012年3月刊行)の「シマフクロウを守る施策と圧迫要因」の中で述べているのだ。その論旨は次のようなものである。

 シマフクロウは非公開で守られてきた。しかしインターネットで瞬時に情報が拡散するようになった現在、隠して守る方針を貫くのは不可能だ。地域住民と自治体が国や研究者と協力してシマフクロウを見守る体制を作るべきだ。

 隠して守れなくなったから住民参加型だという論理には研究者のエゴを感じないでもないが、シマフクロウ研究者が従来の秘密主義一辺倒から、住民参加型での保護を主張しはじめたことに注目したい。早矢仕さんは、この論説の中でツアーガイドやカメラマンが繁殖中の巣箱に接近していることを厳しく批判し、こうした無法者には多くの目で監視する必要があるといっている。

 北海道環境影響評価条例の環境影響評価技術指針は、「盗掘、密猟又は繁殖阻害等が懸念される希少生物の生育又は生息に関する情報を記載するときは、種及び生育地又は生息地が特定されないよう配慮すること」としている。これを根拠にシマフクロウに関する情報は一切合財秘密にできるとしているのである。北電はこれを逆手に取って、新岩松発電所新設工事ではシマフクロウを無きものとしてアセス手続きを進めようとした。シマフクロウ研究者の早矢仕さんが指摘しているように繁殖阻害を理由とした秘密主義はもはやほとんど効果がないのである。いや効果がない以上に開発事業者が悪用する弊害の方が大きいのである。もはやこの技術指針は見直されなければならない。

 シマフクロウに限らず、開発事業者や行政は絶滅危惧種の情報を非公開としている(文書を開示請求すると絶滅危惧種は黒塗りにされる)。これは彼らにとって実に都合のいいことである。開発行為によって絶滅危惧種がどうなろうと、住民に知られなくて済むからである。開発事業者の勝手な振る舞いを防ぐためにも、絶滅危惧種の情報を住民と共有し、多くの住民の目で監視することが必要なのだ。

 絶滅危惧種を隠して守れる時代ではない。すべてオープンにせよと言うわけではないが、本気で保護するためには、絶滅危惧種の秘密主義は正さなければならない。秘密にして済ませようというのは、悪しき行政の事なかれ主義である。
 
 早矢仕さんの論説を最近知ったため、新岩松発電所新設工事の公聴会や意見書で、この問題にふれられなかったのは残念なことであった。


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Posted by 十勝自然保護協会 at 21:51│Comments(0)河川・ダム
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