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十勝自然保護協会 活動速報 › 河川・ダム › 「音更川の河岸侵食対策について」の申入れ

2013年07月18日

「音更川の河岸侵食対策について」の申入れ

 帯広開発建設部長が3月に公表した「音更川の河岸侵食対策について」には不可解な記述が散見されることから、当会は、7月7日付で帯広開発建設部長に以下の文書を送付した。 

**********


 専門的な知見や経験を有する学識者・研究者を交えて検討した結果をまとめたものだという「音更川の河岸侵食対策について」が3月28日に公表された。
 当会は音更川の堤防洗掘に見解を明らかにしてきたことでもあり、この「音更川の河岸侵食対策について」に目を通したが、不可解な記述が目につくことから問題点を指摘する。なお、当会の指摘に納得のいかない場合は、反論いただきたい。

1.4枚目で「音更川は、『急な河床勾配を持ち速い流れが生じること、河岸や高水敷が侵食には弱い砂礫質の土質であること、流路変動を拘束する低水護岸の整備率が低いこと』など蛇行が発達しやすい河道条件にあることが原因と考えられます。」と述べている(「原因」の前に「今回の堤防洗掘の」を補うと理解できる)。
 音更川の河床勾配が急なことも、河岸が砂礫質であることも、低水護岸の整備率が低いことも、分かりきったことである。学識者・研究者を交えて検討した結果、こんな分かりきったことを堤防洗掘の原因だといわれると困惑すら覚える。もし本当に学識者などから指摘されるまで分からなかったのなら、河川を管理する者としての見識が欠落しているといわざるを得ない。

2.5枚目で「図-7に示すように、音更川では出水時に蛇行の振幅を増大させながら、蛇行流路そのものが下流側へと移動する傾向があることがわかりました。」と述べている。
 音更川は砂礫の多い網状流河川である。このような河川では出水に伴う砂礫の運搬と堆積によって蛇行が振幅を増大させ、下流へ移動することは釣り人など川を見ている人間ならば経験的に知っていることである。「音更川では出水時に蛇行の振幅を増大させながら、蛇行流路そのものが下流側へと移動する傾向があることがわかりました。」と、河川管理者がいまさら新知見であるかのように言うのは言葉を失うばかりである。

3.6枚目で「平成23年9月出水時には流路短絡や蛇行発達など特徴的な現象が発生しています。シミュレーション解析や模型実験の結果からも、音更川においては、
・平成23年9月出水の様な中規模出水によっても著しい流路の蛇行が容易に生じる
・流量ピーク前後で流路の短絡が生じ、洪水の低下期に蛇行が発達している
・蛇行振幅が増大すると共に蛇行流路そのものが下流に移動する
等の特徴があることが明らかとなりました。」と述べている。
 音更川の特徴として3点挙げているが、これらは網状流河川では一般的にみられる現象であろう。もし音更川の特徴というのなら、ほかの網状流河川と比較のうえで結論付けなければならない。1点目の中規模出水によっても著しい流路の蛇行が容易に生じることが音更川の特徴であるというのなら、そのメカニズムについて学識者・研究者を交えた検討会で解明すべきであった。そうしてこそ、適切な音更川の河岸浸食対策が立てられるのである。

4.この「音更川の河岸侵食対策について」の最大の特徴は、河川管理者が常識として知っておかなければならない河川の特性を学識者・研究者を交えて検討した結果、はじめて明らかになったかのように記述している点にある。このような体裁をとったのは、中規模出水による堤防洗掘という河川管理の責任が問われかねない問題を曖昧にしたいとの意図が働いたためであろう。

5.9枚目で「河畔林の繁茂によって堤防上から河岸まで見通せない箇所において、見通し線を確保するための伐採を行います」としている。これに関して、当会は昨年7月に伐採計画の説明を求めたが、個別に説明する予定はないとの回答があった(2013年3月21日付)。国民が河川生態系に関心をもち説明を求めているにもかかわらず、説明を拒否する姿勢は河川法の趣旨にも反することであり、猛省すべきである。
以上



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Posted by 十勝自然保護協会 at 21:03│Comments(2)河川・ダム
この記事へのコメント
メディア関係の仕事をしている田中と申します。ときどき十勝自然保護協会さんページを拝見させていただいていおり、知らないことを調べるきっかけにさせていただいております。ありがとうございます。

詳細な論点については、専門でないため良く分かりませんが、今回の記事を読ませていただいて情報発信という観点から気になった点がありましので、投稿させていただきます。
私はときどき川釣りをしますので、十勝自然保護協会さんの指摘が分かる気もします。ただ、意図的なのかよくわかりませんが、情報発信の仕方が何かを解決しようとしているようには感じられませんでした。

自然保護協会さんは、「行政がやっていることが悪い」ということをいいたいのでしょうか?それとも、自然保護に繋がる何かをしたいのでしょうか?投稿されている文章を拝見すると、喧嘩を売っているようにしかみえません。喧嘩を売るような情報発信をしても、良い方向には動きません。要は、自然保護どころか、単に十勝自然保護協会さんのストレス発散・うっぷん晴らしにしかならないと思いますが、いかがでしょうか?

昨今、核心を適切に表現し、世の中に動かすようなメディアが激減しています。表面的に文句を言っているだけで、飲みのネタにしかならないような記事ばっかりです。かなり残念です。今後メディアに関わる人間として、しっかり考え行動していかねばと思っています。

と自分のことを書いてしまいましたが、十勝自然保護協会さんの今回の記事も、同じような感じがします。自然保護という尊いことを目的として設立、活動されている団体と思います。勝手な期待かもしれませんが、我々よりも専門的な知見を持ち合わせた団体にこそ、世の中がより良い方向に動かせるような情報発信を行ってもらいたいと考えています。

行政に文句を言って、対応させたあげく、結果的に何も変わらないとなれば、それこそ税金の無駄ですね。行政であれ、民間であれ、人が仕事するということは、タダではないのですから。残念な結果にならないよう、そして尊い自然を保護することにつながるよう活動されることを期待しています。
Posted by tanaka at 2013年07月31日 23:17
田中さんから、この申入れに対し意図がよく分からないとコメントがあったので、補足したい。

彼らが検討した音更川の堤防洗掘とは、高水敷をわずかに上回る程度の氾濫危険水位にも達していない増水で生じた特異な事例であった。これについては以下の記事を参照していただきたい。
http://nctokachi.sapolog.com/e354399.html
このようなことが今後、他の河川でも発生する危険性がないのかも含めて、真剣に分析がなされなければならなかったのだが、帯広開発建設部は堤防洗掘について河川管理上まったく問題がないかのような安直な報告書を作成した。これは河川のことなどわからないだろうと国民を見くびった態度である。そしてこのような態度は河川生態系を破壊して止まない土木事業とも繋がっている。当会はこのような国民を愚弄する帯広開発建設部の姿勢を厳しく批判し、国民の目が節穴ではないということを知らしむるため申入れをしたのである。責任あるまともな河川行政を実現するためには国民の怒りを伝える必要があると思う。このような意図があることを踏まえて再度、申入れを読んでいただけるとありがたい。なお、音更川の堤防洗掘については以下の記事も参考にしていただきたい。
http://onigumo.cocolog-nifty.com/blog/2011/09/post-2924.html
http://onigumo.cocolog-nifty.com/blog/2011/09/post-4054.html
Posted by 十勝自然保護協会 at 2013年08月15日 21:23
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