十勝自然保護協会 活動速報 › 河川・ダム
2010年07月09日
十勝川水系河川整備計画(案)に当会の意見は反映されたか(2)
3.多自然川づくり
当会は、「多自然川づくり」の記述には問題があるとして、次のように指摘しました。
原案の18ページには「平成2年からは、現在の多自然川づくりの先駆けともいえるAGSの思想が、河道設計や河岸保護工等に活かされてきた」とし、下頃辺川の例が掲載されています。
下頃辺川の例とは、低平地の小河川である下頃辺川に巨石を配置したものです。巨石の供給源となる山岳地帯から遠く離れた、この小河川には本来巨石など存在しません。このような「多自然川づくり」は、庭園作りの発想であり、自然の対極にある「不自然」川づくりとでもいうべきものです。
原案でも、多自然川づくりについて、河川が本来有している生物の生息・生育・繁殖環境および多様な河川景観を保全・創出するための河川管理、と定義しているのであって、本来ないものを創出することなど、原案の定義とも反します。したがって、この下頃辺川の事例は削除するか、不適切な反省例として掲載されなければなりません。
これに対して、開発建設部は次のような見解を明らかにしました。
下頃辺川のAGS については、現在の多自然川づくりの先駆けとも言えるものであることから、これを治水事業の沿革として紹介したものですが、試行的に取り組んだ事業であり、本文を以下のように修正するとともに、横断図を削除しました。
平成2 年からは、現在の多自然川づくりの先駆けともいえるAGS(Aqua Green Strategy)の取り組みを行ってきた。(P.18)
このように、こちらの指摘により「AGSの思想が、河道設計や河岸保護工等に活かされてきた」を削除したのですが、「不自然川づくり」である「多自然川づくり」については反省することを拒否しています。
当会は、「多自然川づくり」の記述には問題があるとして、次のように指摘しました。
原案の18ページには「平成2年からは、現在の多自然川づくりの先駆けともいえるAGSの思想が、河道設計や河岸保護工等に活かされてきた」とし、下頃辺川の例が掲載されています。
下頃辺川の例とは、低平地の小河川である下頃辺川に巨石を配置したものです。巨石の供給源となる山岳地帯から遠く離れた、この小河川には本来巨石など存在しません。このような「多自然川づくり」は、庭園作りの発想であり、自然の対極にある「不自然」川づくりとでもいうべきものです。
原案でも、多自然川づくりについて、河川が本来有している生物の生息・生育・繁殖環境および多様な河川景観を保全・創出するための河川管理、と定義しているのであって、本来ないものを創出することなど、原案の定義とも反します。したがって、この下頃辺川の事例は削除するか、不適切な反省例として掲載されなければなりません。
これに対して、開発建設部は次のような見解を明らかにしました。
下頃辺川のAGS については、現在の多自然川づくりの先駆けとも言えるものであることから、これを治水事業の沿革として紹介したものですが、試行的に取り組んだ事業であり、本文を以下のように修正するとともに、横断図を削除しました。
平成2 年からは、現在の多自然川づくりの先駆けともいえるAGS(Aqua Green Strategy)の取り組みを行ってきた。(P.18)
このように、こちらの指摘により「AGSの思想が、河道設計や河岸保護工等に活かされてきた」を削除したのですが、「不自然川づくり」である「多自然川づくり」については反省することを拒否しています。
2010年07月08日
十勝川水系河川整備計画(案)に当会の意見は反映されたか(1)
十勝川水系河川整備計画原案に対する公聴会での当会の3氏の意見陳述がどのように扱われたか気になっていたのですが、7月2日にようやく「寄せられたご意見の十勝川水系河川整備計画(案)への反映状況等」として、帯広開発建設部のホームページで公表されました。彼らがどれほど真剣に私たちの意見に耳を傾けたか検証してみましょう。
1.網状流
「十勝川水系の河川形態の最大の特徴は、帯広構造盆地に展開する網状流にあります。北海道において、これほど網状流が集中するところは他にありません。(中略)網状流は、多量の砂礫の供給と移動により出現します。これが札内川に『清流日本一』(41ページ)をもたらし、『川のダイナミズムを感じ』(53ページ)させる秘密なのです。しかし、砂礫の多さゆえに網状流は、ときに『暴れ川』ともなる宿命をもっています。十勝川水系の河川の特性をこのように理解するのが大事であって、砂礫の多さを『河川を荒廃させ河川災害を大きくしており』(13ページ)などと捕らえるのは、河川の特性の理解力不足といわなければなりません。」との当会の理事の意見に対し、開発建設部は次のような見解を明らかにしました。
「網状流については、河川の特性として重要なものと認識しており、ご意見を踏まえ、以下のように修正しました。
急流河川である十勝川上流部、札内川及び音更川では、河床が砂礫で構成され土砂移動が激しく網状に蛇行しながら流れているのが最大の特徴である。(P.13)
さらにその下流には、礫河原を網状に蛇行する流れがみられ、氷河期の遺存種であるケショウヤナギが広く分布しているなど変化に富む河川環境を有する。(P.53)
札内川は日本有数の清流河川であり、河畔林と広い礫河原を網状に蛇行する流れを見ることができ、川のダイナミズムを感じることができる。(P.53)
十勝川上流部、札内川の礫河原等に分布しているケショウヤナギは、氷河期の遺存種であり、国内でもごく限られた地域にしか生育していない貴重な種であることから、保全する必要がある。(P.60)
急流河川である札内川は、広大な礫河原の中を網状に蛇行しながら流下し、ケショウヤナギ等の河畔林が広がる、特徴的な景観を有していることから、その保全・形成に努める。(P.86)
また、ご指摘を踏まえ、「河川を荒廃させ」という表現については、以下のように本文を修正しました。
一方、水源地域からの生産土砂、河岸侵食によって流下する土砂を抑制するため、昭和30年代より札内川流域各所において砂防えん堤等の整備が行われ、国の事業としては、昭和47 年より札内川の上流域において、砂防えん堤や床固工群の整備を実施している。(P.13)」
一読すると、こちらの指摘に素直に従ったかのような印象を受けるかもしれません。しかし、河川工学の「プロ」としてのプライドが許さないのでしょうか、おかしな言い換えをしてこちらの指摘をかわそうとしています。
開発建設部は、「網状流」という学術用語を意識的に避け「網状に蛇行する」と言い換えています。網状流とは、「網の目状に分岐・合流を繰り返す水流」のことです(地形学辞典:二宮書店)。一方、蛇行とは、「河道が屈曲している状態が、ヘビの移動している状態に似ていることから、蛇行」というのです(地形学辞典)。つまり、網状流は河道の中の水流(流路)の状態を表し、蛇行は河道の状態を表すのが一般的なのです。ですから、網状流のことを網状に蛇行するというのは、地形学的にはとてもおかしな言い方ということになります。
それから、こちらが「砂礫川原」としているのに対し、開発建設部は「礫河原」と言い換えています。先の地形学辞典は「川原」を採用していますので、特別な理由がなければ、この用法に従うのが混乱を防ぐという意味からも妥当です。また、礫が目立つ川原を開発建設部は「礫河原」と言っていますが、砂を含まない礫川原はありませんから、砂礫川原とするほうがより正確です。
2.遺存種など
「氷河期の遺存種および着目種の説明文は、不適切なので、それぞれ『氷河期に広く分布していたが、現在限られたところに生息・生育している種』『十勝川水系を特徴づける種』などと書き直す必要があります。44ページの「土壁」は誤用であり、河岸の小崖とでもすべきです。また、「動植物の生息・生育・繁殖の場」との記述が各所にでてきますが、第三次生物多様性国家戦略では、「生育・生息環境」に含まれる概念として扱い、繁殖の場を略す、としています。この原案もこの見解に従うべきです。」との当会の意見に対し、開発建設部は次のような見解を示しました。
「河川整備計画(案)では、遺存種に関する文献をもとに、氷河期の遺存種を氷河期に分布していた種が現在も残って生息・生育している種(P.43)として定義しています。
ケショウヤナギは遺存種(P.43 5行目の記述)と認識していますが、よりわかりやすくするため、P.60と同様に、地域的に限定されて生息・生育している種であることを以下のように加筆しました。
氷河期の遺存種であり国内でもごく限られた地域にしか生育していない貴重な種であるケショウヤナギが分布している。(P.43)
※遺存種:過去の気候、その他の環境条件から現在までこれらの変化に耐えて生き残った生物種。『生態学事典』(築地書館)より抜粋。なお、現時点で『氷河期に広く分布していたこと』を示す根拠資料が得られていない。」
「生態学事典」(築地書館)には、開発建設部が引用した文のあとに「残存種。一般には現在種に抑圧されているものが多い」と書いてあります。つまり遺存種は一般に局所的に分布することを示唆しています。
遺存種のなかでも、氷期(氷河期)の遺存種と考えられる植物は、高山植物の例からもわかるように、現在(後氷期)、点在的に分布(隔離分布)しているのですが、過去には連続的に分布していたであろうと考えられます。つまり今よりも広く分布していたが、気候やその他の環境条件の変化により、分布が途切れたと解釈しなければ、隔離分布を説明できないからです。このようなことから、こちらが「広く分布していた」と加筆するように求めたことについて、開発建設部は「『氷河期に広く分布していたこと』を示す根拠資料が得られていない」と反論しました。言い訳のために「根拠資料」をもちだしたのでしょうが、ならばケショウヤナギが氷期から十勝地方に分布していたという根拠資料はあるのでしょうか。氷期の十勝の地層からケショウヤナギの化石が見つかったという話を聞いたことがありません。
そもそも「氷河期の遺存種を氷河期に分布していた種が現在も残って生息・生育している種」という日本語のおかしさに気がつかないというのが困ったことなのですが。
「土壁」の取扱いについて、開発建設部は「ご意見を踏まえ、より一般的と考えられる「土崖」(P.44,48)に修正しました」というのですが、土崖などという言い方は全く「一般的」ではありません。
「繁殖の場」の取扱いについて、開発建設部は「平成18 年10 月に策定された多自然川づくり基本指針(国交省)では、『繁殖環境』が河川を特徴づける重要な環境であると明記しています。また、第三次生物多様性国家戦略では、繁殖環境については、『ここでは、[生息・生育環境]に含まれる概念として扱い略します。』とされています。このことから、河川整備計画(案)では、一般の方にとってもより分かりやすい表現とするため、略さず明記しています」というのです。しかし第三次生物多様性国家戦略が閣議決定されたのは平成19年11月です。つまり、第三次生物多様性国家戦略を作文した本省の担当者は、これまで使っていた「動植物の生息・生育・繁殖の場」という言い回しが、なんとも調子が悪いと判断し「繁殖の場」を削除したのでしょう。しかし、帯広開発建設部は、このような判断はまずいのであり、「生息・生育・繁殖の場」を復活させなければならないというのです。本当にそう思うのなら、このことを第三次生物多様性国家戦略の作文にあたった本省の担当者に指摘しなければなりません。
このように、こちらの意見を素直に聞き入れず、おかしなプライドにこだわるためみっともない記述の多い計画書になってしまったのです。
1.網状流
「十勝川水系の河川形態の最大の特徴は、帯広構造盆地に展開する網状流にあります。北海道において、これほど網状流が集中するところは他にありません。(中略)網状流は、多量の砂礫の供給と移動により出現します。これが札内川に『清流日本一』(41ページ)をもたらし、『川のダイナミズムを感じ』(53ページ)させる秘密なのです。しかし、砂礫の多さゆえに網状流は、ときに『暴れ川』ともなる宿命をもっています。十勝川水系の河川の特性をこのように理解するのが大事であって、砂礫の多さを『河川を荒廃させ河川災害を大きくしており』(13ページ)などと捕らえるのは、河川の特性の理解力不足といわなければなりません。」との当会の理事の意見に対し、開発建設部は次のような見解を明らかにしました。
「網状流については、河川の特性として重要なものと認識しており、ご意見を踏まえ、以下のように修正しました。
急流河川である十勝川上流部、札内川及び音更川では、河床が砂礫で構成され土砂移動が激しく網状に蛇行しながら流れているのが最大の特徴である。(P.13)
さらにその下流には、礫河原を網状に蛇行する流れがみられ、氷河期の遺存種であるケショウヤナギが広く分布しているなど変化に富む河川環境を有する。(P.53)
札内川は日本有数の清流河川であり、河畔林と広い礫河原を網状に蛇行する流れを見ることができ、川のダイナミズムを感じることができる。(P.53)
十勝川上流部、札内川の礫河原等に分布しているケショウヤナギは、氷河期の遺存種であり、国内でもごく限られた地域にしか生育していない貴重な種であることから、保全する必要がある。(P.60)
急流河川である札内川は、広大な礫河原の中を網状に蛇行しながら流下し、ケショウヤナギ等の河畔林が広がる、特徴的な景観を有していることから、その保全・形成に努める。(P.86)
また、ご指摘を踏まえ、「河川を荒廃させ」という表現については、以下のように本文を修正しました。
一方、水源地域からの生産土砂、河岸侵食によって流下する土砂を抑制するため、昭和30年代より札内川流域各所において砂防えん堤等の整備が行われ、国の事業としては、昭和47 年より札内川の上流域において、砂防えん堤や床固工群の整備を実施している。(P.13)」
一読すると、こちらの指摘に素直に従ったかのような印象を受けるかもしれません。しかし、河川工学の「プロ」としてのプライドが許さないのでしょうか、おかしな言い換えをしてこちらの指摘をかわそうとしています。
開発建設部は、「網状流」という学術用語を意識的に避け「網状に蛇行する」と言い換えています。網状流とは、「網の目状に分岐・合流を繰り返す水流」のことです(地形学辞典:二宮書店)。一方、蛇行とは、「河道が屈曲している状態が、ヘビの移動している状態に似ていることから、蛇行」というのです(地形学辞典)。つまり、網状流は河道の中の水流(流路)の状態を表し、蛇行は河道の状態を表すのが一般的なのです。ですから、網状流のことを網状に蛇行するというのは、地形学的にはとてもおかしな言い方ということになります。
それから、こちらが「砂礫川原」としているのに対し、開発建設部は「礫河原」と言い換えています。先の地形学辞典は「川原」を採用していますので、特別な理由がなければ、この用法に従うのが混乱を防ぐという意味からも妥当です。また、礫が目立つ川原を開発建設部は「礫河原」と言っていますが、砂を含まない礫川原はありませんから、砂礫川原とするほうがより正確です。
2.遺存種など
「氷河期の遺存種および着目種の説明文は、不適切なので、それぞれ『氷河期に広く分布していたが、現在限られたところに生息・生育している種』『十勝川水系を特徴づける種』などと書き直す必要があります。44ページの「土壁」は誤用であり、河岸の小崖とでもすべきです。また、「動植物の生息・生育・繁殖の場」との記述が各所にでてきますが、第三次生物多様性国家戦略では、「生育・生息環境」に含まれる概念として扱い、繁殖の場を略す、としています。この原案もこの見解に従うべきです。」との当会の意見に対し、開発建設部は次のような見解を示しました。
「河川整備計画(案)では、遺存種に関する文献をもとに、氷河期の遺存種を氷河期に分布していた種が現在も残って生息・生育している種(P.43)として定義しています。
ケショウヤナギは遺存種(P.43 5行目の記述)と認識していますが、よりわかりやすくするため、P.60と同様に、地域的に限定されて生息・生育している種であることを以下のように加筆しました。
氷河期の遺存種であり国内でもごく限られた地域にしか生育していない貴重な種であるケショウヤナギが分布している。(P.43)
※遺存種:過去の気候、その他の環境条件から現在までこれらの変化に耐えて生き残った生物種。『生態学事典』(築地書館)より抜粋。なお、現時点で『氷河期に広く分布していたこと』を示す根拠資料が得られていない。」
「生態学事典」(築地書館)には、開発建設部が引用した文のあとに「残存種。一般には現在種に抑圧されているものが多い」と書いてあります。つまり遺存種は一般に局所的に分布することを示唆しています。
遺存種のなかでも、氷期(氷河期)の遺存種と考えられる植物は、高山植物の例からもわかるように、現在(後氷期)、点在的に分布(隔離分布)しているのですが、過去には連続的に分布していたであろうと考えられます。つまり今よりも広く分布していたが、気候やその他の環境条件の変化により、分布が途切れたと解釈しなければ、隔離分布を説明できないからです。このようなことから、こちらが「広く分布していた」と加筆するように求めたことについて、開発建設部は「『氷河期に広く分布していたこと』を示す根拠資料が得られていない」と反論しました。言い訳のために「根拠資料」をもちだしたのでしょうが、ならばケショウヤナギが氷期から十勝地方に分布していたという根拠資料はあるのでしょうか。氷期の十勝の地層からケショウヤナギの化石が見つかったという話を聞いたことがありません。
そもそも「氷河期の遺存種を氷河期に分布していた種が現在も残って生息・生育している種」という日本語のおかしさに気がつかないというのが困ったことなのですが。
「土壁」の取扱いについて、開発建設部は「ご意見を踏まえ、より一般的と考えられる「土崖」(P.44,48)に修正しました」というのですが、土崖などという言い方は全く「一般的」ではありません。
「繁殖の場」の取扱いについて、開発建設部は「平成18 年10 月に策定された多自然川づくり基本指針(国交省)では、『繁殖環境』が河川を特徴づける重要な環境であると明記しています。また、第三次生物多様性国家戦略では、繁殖環境については、『ここでは、[生息・生育環境]に含まれる概念として扱い略します。』とされています。このことから、河川整備計画(案)では、一般の方にとってもより分かりやすい表現とするため、略さず明記しています」というのです。しかし第三次生物多様性国家戦略が閣議決定されたのは平成19年11月です。つまり、第三次生物多様性国家戦略を作文した本省の担当者は、これまで使っていた「動植物の生息・生育・繁殖の場」という言い回しが、なんとも調子が悪いと判断し「繁殖の場」を削除したのでしょう。しかし、帯広開発建設部は、このような判断はまずいのであり、「生息・生育・繁殖の場」を復活させなければならないというのです。本当にそう思うのなら、このことを第三次生物多様性国家戦略の作文にあたった本省の担当者に指摘しなければなりません。
このように、こちらの意見を素直に聞き入れず、おかしなプライドにこだわるためみっともない記述の多い計画書になってしまったのです。
2010年06月30日
帯広開発建設部の治水事業計画の問題点
帯広開発建設部による平成22年度の治水事業計画説明会が6月29日に帯広市でおこなわれました。今年度計画しているという19事業について簡単な説明があったのですが、黙って見過ごせない事業が少なからずあります。
1.トッタベツ川の床固工事と帯工工事
トッタベツ川では河床浸食を防ぐとして、床固工と帯工をするのだといいます。この計画について、「河床浸食は上流からの砂礫の供給が絶たれていることが要因ではないか」と質問しました。すると、治水課長の的を射ない発言にはじまり、課長補佐、さらに数人の職員がああだこうだと発言しました。この床固工と帯工の工事根拠を国民にきちんと説明できないというお粗末ぶりでした。そんなわけで、後日書面で回答をもらうことにしました。清流日本一という札内川の主要な支流であるトッタベツ川を砂防ダム・床固工・帯工などコンクリートで固めて水路のようにしてしまっていいのでしょうか。災害防止を錦の御旗にどんな工事でも許されると思うのは心得違いといわなければなりません。
2.相生中島地区の河道掘削工事
当会が十勝川水系河川整備計画策定の公聴会において、工事の不必要性を指摘した相生中島地区の河道掘削について、今年度も引き続き行うとのことです。十勝川水系河川整備計画は北海道知事に提出し同意を得て、効力を発することになるのですが、まだ内部決裁が終わらないので知事にも提出していないとのこと。にもかかわらず今年もやりますというのはフライングでしょう。帯広開発建設部が想定している「目標流量」(戦後最大規模の洪水を安全に流下させる流量のこと)では現状でも氾濫しないので河道掘削の必要性はない、と当会が指摘していることについて、説明を求めましたが、まだ十勝川水系河川整備計画が公表されていないからできないと言って説明責任を放棄しました。これは、自分たちのやっていることを国民に納得させられる自信がないということの証です。なお、説明のなかで、河道掘削した土は築堤の盛り土と高規格道(高速道路のようなもの)に使うと述べました。その利用割合を質問しましたがはっきりと答えることができませんでした。引き続きこの事業の不合理性について追求していきます。
3.猿別川の河道掘削工事
猿別川では下流の曲流部で河畔林を伐採し、土砂を平常の水面レベルまで掘削して水を速く流したいといいます。現場は十勝川との合流点近くであり、水勢が弱まるため掘削による流水速度の増加は望めないのではないかと指摘すると、いくらかでも速く流すことにより樋門を閉めることによる内水の増加を防ぎたいと説明しました。しかしその効果はデータによって裏付けられていないとのこと。つまり言い逃れでしょう。この事業は、然別川の河畔林皆伐と同様の発想により進められているのです。こんないい加減な理由で河畔林を伐採することは認められません。
当会は、帯広開発建設部治水課にこれまで何度か、面談を申入れてきましたが、彼らは応えようとはしませんでした。今回の説明会に参加してその理由がわかりました。彼らは上部で決定されたり、上部から割り振られた事業あるいは予算をこなす立場の人であり、事業決定の裁量権などないのです。だから彼らは国民に対し説明責任を果たす自信などなく、面談に応じられないのです。
1.トッタベツ川の床固工事と帯工工事
トッタベツ川では河床浸食を防ぐとして、床固工と帯工をするのだといいます。この計画について、「河床浸食は上流からの砂礫の供給が絶たれていることが要因ではないか」と質問しました。すると、治水課長の的を射ない発言にはじまり、課長補佐、さらに数人の職員がああだこうだと発言しました。この床固工と帯工の工事根拠を国民にきちんと説明できないというお粗末ぶりでした。そんなわけで、後日書面で回答をもらうことにしました。清流日本一という札内川の主要な支流であるトッタベツ川を砂防ダム・床固工・帯工などコンクリートで固めて水路のようにしてしまっていいのでしょうか。災害防止を錦の御旗にどんな工事でも許されると思うのは心得違いといわなければなりません。
2.相生中島地区の河道掘削工事
当会が十勝川水系河川整備計画策定の公聴会において、工事の不必要性を指摘した相生中島地区の河道掘削について、今年度も引き続き行うとのことです。十勝川水系河川整備計画は北海道知事に提出し同意を得て、効力を発することになるのですが、まだ内部決裁が終わらないので知事にも提出していないとのこと。にもかかわらず今年もやりますというのはフライングでしょう。帯広開発建設部が想定している「目標流量」(戦後最大規模の洪水を安全に流下させる流量のこと)では現状でも氾濫しないので河道掘削の必要性はない、と当会が指摘していることについて、説明を求めましたが、まだ十勝川水系河川整備計画が公表されていないからできないと言って説明責任を放棄しました。これは、自分たちのやっていることを国民に納得させられる自信がないということの証です。なお、説明のなかで、河道掘削した土は築堤の盛り土と高規格道(高速道路のようなもの)に使うと述べました。その利用割合を質問しましたがはっきりと答えることができませんでした。引き続きこの事業の不合理性について追求していきます。
3.猿別川の河道掘削工事
猿別川では下流の曲流部で河畔林を伐採し、土砂を平常の水面レベルまで掘削して水を速く流したいといいます。現場は十勝川との合流点近くであり、水勢が弱まるため掘削による流水速度の増加は望めないのではないかと指摘すると、いくらかでも速く流すことにより樋門を閉めることによる内水の増加を防ぎたいと説明しました。しかしその効果はデータによって裏付けられていないとのこと。つまり言い逃れでしょう。この事業は、然別川の河畔林皆伐と同様の発想により進められているのです。こんないい加減な理由で河畔林を伐採することは認められません。
当会は、帯広開発建設部治水課にこれまで何度か、面談を申入れてきましたが、彼らは応えようとはしませんでした。今回の説明会に参加してその理由がわかりました。彼らは上部で決定されたり、上部から割り振られた事業あるいは予算をこなす立場の人であり、事業決定の裁量権などないのです。だから彼らは国民に対し説明責任を果たす自信などなく、面談に応じられないのです。
2010年03月18日
三の沢砂防ダム改修工事で国交大臣に申入れ
さる3月6日、三の沢砂防ダム改修工事の工法を巡って帯広土現と話し合いを行ないました。1981年の豪雨の際、土石流が現在のダム地点の下流に流れ下った写真はないので証明できないが、直径60cm以上の巨礫が流下するのを防ぐため鋼鉄の横棒が絶対必要だ「横桟併用スリット(コンクリートスリット)」で工事をすると譲りません。そこで当会はダム問題に熱心な前原国交大臣に下の申入れをしました。真摯な対応を期待したいと思います。
国土交通大臣 前原誠司様
時下益々ご清祥のこととお喜び申し上げます。
さて、北海道十勝地方北部の然別川水系の三の沢砂防ダムにおいて、北海道帯広土木現業所(以下、帯広土現)によって魚道整備を名目に「横桟併用スリット(コンクリートスリット)」工事が計画されています。しかし、当会は三の沢川の流況実態から横桟は不要であると考えており、帯広土現にその旨申し入れましたが、帯広土現はこれを聞き入れず、新年度早々に北海道開発局を経由して貴職に工事申請をするとの態度を表明しました。
つきましては、本川の実態を詳細に把握のうえ、無駄な税金が投入されることのないようこの工事の妥当性を評価していただきたく申し入れます。
なお、当会が横桟を不要としましたのは、以下の理由によります。
この流域は、1981(昭和56)年に300年に1度の降雨確率とされる大洪水に見舞われました。このためこの水系には多数の砂防ダムが建設されました。帯広土現は、これらの砂防ダム群のひとつである三の沢砂防ダムにおいて、当初「鋼製スリット」による工事をしたいと説明しましたが、当会が本川の流況実態から鋼製工作物は不要であると指摘し、「横桟併用スリット」に変更することになりました。
さらに当会が横桟の必要性について質問したところ、帯広土現は1981年の大雨の際に土石流が三の沢砂防ダム地点の下流にまで達しており、横桟を入れることで巨礫の流下を止める必要があると主張しています。しかし、三の沢砂防ダムの下流の河岸には、1981年以前からの立木が存在し、土石流堆積物とおぼしき地形は認められません。当会が帯広土現に1981年の土石流の実態を示す写真を見せるよう求めたところ、帯広土現は三の沢砂防ダム下流の1981年洪水直後の写真はないので土石流の発生があったことを証明できないと明言しました。このように土石流による巨礫の流下防止に必要という横桟の必要性が十分説明されていません。不要なものの取り付け工事は、税金の無駄使い以外の何物でもありません。
なお、然別川水系には三の沢ダムと同様の魚道のない砂防ダムが他にもあり、今後、三の沢ダムと同じ工法で改修工事が行われる可能性が高いと考えられます。不要なものに税金を投入しないためにも、現時点で工事の妥当性をきちんと評価することを重ねて求めます。
******************
2010年3月15日
国土交通大臣 前原誠司様
十勝自然保護協会会長 安藤御史
北海道然別川水系三の沢砂防ダム改修工事についての申入れ
時下益々ご清祥のこととお喜び申し上げます。
さて、北海道十勝地方北部の然別川水系の三の沢砂防ダムにおいて、北海道帯広土木現業所(以下、帯広土現)によって魚道整備を名目に「横桟併用スリット(コンクリートスリット)」工事が計画されています。しかし、当会は三の沢川の流況実態から横桟は不要であると考えており、帯広土現にその旨申し入れましたが、帯広土現はこれを聞き入れず、新年度早々に北海道開発局を経由して貴職に工事申請をするとの態度を表明しました。
つきましては、本川の実態を詳細に把握のうえ、無駄な税金が投入されることのないようこの工事の妥当性を評価していただきたく申し入れます。
なお、当会が横桟を不要としましたのは、以下の理由によります。
この流域は、1981(昭和56)年に300年に1度の降雨確率とされる大洪水に見舞われました。このためこの水系には多数の砂防ダムが建設されました。帯広土現は、これらの砂防ダム群のひとつである三の沢砂防ダムにおいて、当初「鋼製スリット」による工事をしたいと説明しましたが、当会が本川の流況実態から鋼製工作物は不要であると指摘し、「横桟併用スリット」に変更することになりました。
さらに当会が横桟の必要性について質問したところ、帯広土現は1981年の大雨の際に土石流が三の沢砂防ダム地点の下流にまで達しており、横桟を入れることで巨礫の流下を止める必要があると主張しています。しかし、三の沢砂防ダムの下流の河岸には、1981年以前からの立木が存在し、土石流堆積物とおぼしき地形は認められません。当会が帯広土現に1981年の土石流の実態を示す写真を見せるよう求めたところ、帯広土現は三の沢砂防ダム下流の1981年洪水直後の写真はないので土石流の発生があったことを証明できないと明言しました。このように土石流による巨礫の流下防止に必要という横桟の必要性が十分説明されていません。不要なものの取り付け工事は、税金の無駄使い以外の何物でもありません。
なお、然別川水系には三の沢ダムと同様の魚道のない砂防ダムが他にもあり、今後、三の沢ダムと同じ工法で改修工事が行われる可能性が高いと考えられます。不要なものに税金を投入しないためにも、現時点で工事の妥当性をきちんと評価することを重ねて求めます。
2010年02月19日
然別川水系三の沢砂防ダム改修工事のその後動き
帯広土木現業所の昨年12月7日付け新提案について、昨年12月22日付けで当会の見解を送付しました。これに対し1月5日付けで下記の文書が帯広土木現業所から届きました。これによると、自分たちの提案通りダム中央にスリットをいれて鉄棒を横に入れる「鋼製横桟併用スリット」でやりたいとのことでした。その理由は1981年(昭和56年)の大洪水規模に対応するために必要とのことです。そこで当会は、その時の現場の災害状況を写真で明らかにしてもらいたいと口頭で要請しました。もし本当に現場が大災害に見舞われたのなら速やかに写真で説明することでしょう。
十勝自然保護協会会長
安 藤 御 史 様
厳冬の候、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
さて、2009年12月7日付け「然別川水系三の沢砂防ダム改修工事新提案についての見解」について、当方の見解を示します。
ご承知のとおり、既存の三の沢砂防ダムは、土砂礫の流下を調節する事を主目的に設置されたものです。
今回、当方が提案した「鋼製横桟※1併用スリット」への改修も土砂礫の流下を調節する事を主目的としています。
「鋼製横桟併用スリット」は、スリット部が土砂礫で閉塞することによって土砂礫を捕捉する施設であることから流下する土砂礫の捕捉機能を確実に確保するためスリット上下方向にも鋼製横桟が必要となります。
今回、貴会から「鋼製横棒は不要である」旨の見解が示されたことに対し当方の見解を以下に示します。
○貴会の見解
1.三の沢ダムの1Kmほど上流に曲流部があるが、この曲流は岩体に流路が妨げられることによって生じている。このため三の沢川の土石運搬力はここでそがれると考えられる。つまり上流からの巨磯の移動はここで制限され、砂防ダム堤体にまで到達するものはごく限られると推測される。
◇当方の見解
当方で想定している土砂礫の流下は、昭和56年の土砂移動実態より土石流を想定しています。
土石流は、水の力で流れ下るものではなく、土砂の力でながれ下るもので一度にどっと流れ下る集合運搬の形態をとることから通常の流水による土砂移動とは違います。
土石流は計り知れないエネルギーを持っている事から、貴会の推測を肯定することは難しいと考えています。
○貴会の見解
2.砂防ダム堤体にスリットを入れると、ボトルネック効果が働き洪水時の流速が減少することが予想される。このため上流からの巨礫の移動は抑制されると推測される。
◇当方の見解
今回、設置を予定している「鋼製横桟併用スリット」は、土砂礫の捕捉を目的に設置するもので、貴会ご指摘のとおり砂防ダム地点においてボトルネック効果を最大限発現させるためにスリット上下方向にも鋼製横桟を配置して土砂礫を確実に捕挺することが必要となります。
○貴会の見解
3.仮に巨磯がこのスリットを抜けたとしても、下流において人的被害が発生する状況にない。
◇当方の見解
「下流において人的被害が発生する状況にない」には同意しかねます。
砂防ダム下流には、道道然別峡線があることや昭和56年に土砂礫の流下実績があることから予見不可能な条件下における人的被害の発生についても配慮が必要と考えています。
当該ダムは、昭和56年の土砂礫の流下を契機に建設されたダムであることから、再度の土砂礫の流下を調節する事を主目的としていますが、今回のスリット化に伴い魚道並びにその他の諸効果も期待するものです。
したがいまして、当ダムの改隆は、前回お示ししたとおり「鋼製横桟併用スリット」による改善を行う事と致します。ご理解いただけます様お願い申し上げます。
(※1:貴会表現の「鋼製横棒」は当方の表現として「鋼製横桟」とした。)
****************
平成22年1月5日
帯土鹿出第674号
帯土鹿出第674号
十勝自然保護協会会長
安 藤 御 史 様
帯広土木現業所
鹿追出張所 山田芳弘
鹿追出張所 山田芳弘
「然別川水系三の沢砂防ダム改修工事新提案についての見解」
に対する当方の見解について
に対する当方の見解について
厳冬の候、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
さて、2009年12月7日付け「然別川水系三の沢砂防ダム改修工事新提案についての見解」について、当方の見解を示します。
ご承知のとおり、既存の三の沢砂防ダムは、土砂礫の流下を調節する事を主目的に設置されたものです。
今回、当方が提案した「鋼製横桟※1併用スリット」への改修も土砂礫の流下を調節する事を主目的としています。
「鋼製横桟併用スリット」は、スリット部が土砂礫で閉塞することによって土砂礫を捕捉する施設であることから流下する土砂礫の捕捉機能を確実に確保するためスリット上下方向にも鋼製横桟が必要となります。
今回、貴会から「鋼製横棒は不要である」旨の見解が示されたことに対し当方の見解を以下に示します。
○貴会の見解
1.三の沢ダムの1Kmほど上流に曲流部があるが、この曲流は岩体に流路が妨げられることによって生じている。このため三の沢川の土石運搬力はここでそがれると考えられる。つまり上流からの巨磯の移動はここで制限され、砂防ダム堤体にまで到達するものはごく限られると推測される。
◇当方の見解
当方で想定している土砂礫の流下は、昭和56年の土砂移動実態より土石流を想定しています。
土石流は、水の力で流れ下るものではなく、土砂の力でながれ下るもので一度にどっと流れ下る集合運搬の形態をとることから通常の流水による土砂移動とは違います。
土石流は計り知れないエネルギーを持っている事から、貴会の推測を肯定することは難しいと考えています。
○貴会の見解
2.砂防ダム堤体にスリットを入れると、ボトルネック効果が働き洪水時の流速が減少することが予想される。このため上流からの巨礫の移動は抑制されると推測される。
◇当方の見解
今回、設置を予定している「鋼製横桟併用スリット」は、土砂礫の捕捉を目的に設置するもので、貴会ご指摘のとおり砂防ダム地点においてボトルネック効果を最大限発現させるためにスリット上下方向にも鋼製横桟を配置して土砂礫を確実に捕挺することが必要となります。
○貴会の見解
3.仮に巨磯がこのスリットを抜けたとしても、下流において人的被害が発生する状況にない。
◇当方の見解
「下流において人的被害が発生する状況にない」には同意しかねます。
砂防ダム下流には、道道然別峡線があることや昭和56年に土砂礫の流下実績があることから予見不可能な条件下における人的被害の発生についても配慮が必要と考えています。
当該ダムは、昭和56年の土砂礫の流下を契機に建設されたダムであることから、再度の土砂礫の流下を調節する事を主目的としていますが、今回のスリット化に伴い魚道並びにその他の諸効果も期待するものです。
したがいまして、当ダムの改隆は、前回お示ししたとおり「鋼製横桟併用スリット」による改善を行う事と致します。ご理解いただけます様お願い申し上げます。
(※1:貴会表現の「鋼製横棒」は当方の表現として「鋼製横桟」とした。)
2009年12月29日
富村ダム堆砂処理で環境大臣に要望書
環境庁(当時)は富村ダム建設時にダム本体以外の工事を許可しませんでした。このことを踏まえ、北電が計画している富村ダムの堆砂処理に伴うトンネル工事を許可しないよう環境大臣に要望書を送付しました。
環境大臣 小沢 鋭仁様
2007年7月17日、当会に対し北海道電力より富村発電所調整池(富村ダム)の堆砂処理計画について説明がありました。それによると、堆砂処理のためにポントムラウシ取水堰近辺から調整池に運搬用トンネルを掘削し、浚渫した堆砂をダンプカーで国立公園内の土砂置場まで運びたいというものでした。
この調整池は大雪山国立公園の第3種特別地域で十勝川源流部原生自然環境保全地域にも隣接しており、生物多様性の保全が最優先されるべきところであることから、当会は、計画の再検討を申入れました(添付資料参照)。
申入れから2年を経た本年12月15日、北海道電力は当会に計画について説明を行いましたが、当会が申入れた事項についてはまともに答えず、近く当初の計画通りに堆砂処理を実施することを表明しました。
北海道電力は説明のなかで「重大な変化や河川生態系全体の維持機能の衰退は認められず、(中略)事後生態調査の目的はほぼ達成したものと考えられる。」と述べましたが、その根拠はまったく示されていません。また、今回、北海道電力の行った調査では、シマフクロウ、クマタカ、オジロワシなどが周年確認されています。これらの猛禽類は人の立ち入りや環境変化などにきわめて敏感な種であり、繁殖期の工事や運搬を回避しただけで影響がないとすることは納得できません。
また、富村調整池の建設に当たり、ダム本体以外の施設整備の工事については、自然保護上の観点から環境庁から許可しないと言われたことを北海道電力は明らかにしました。したがって、北海道電力は将来堆砂処理が生じることを十分認識していたにも関わらず、堆砂処理のための道路などの施設の許可が出ないことを知った上でダム建設を強行したのです。通常ダムは堆砂に対して十分な余裕を持って計画されますが、30年足らずで有効貯水量の41%に達してしまったことは、堆砂の予測も甘かったといわざるを得ません。このように、今回の堆砂処理は、改変不許可を知ったうえでの強引なダム建設と甘い堆砂予測に起因しています。
生物多様性の保全を優占すべき国立公園内であり、しかも堆砂処理も容易にできない急峻な地形の場所にダムを造ったこと自体を問わなければなりません。
以上の理由により、貴職の当初の判断に則り堆砂処理に関わる工事に許可を出さないことを求めます。
なお、ダムの設計はきわめて高い安全性が確保されており、堆砂によってダムが決壊することはないとされていますことを申し添えます。
**********
2009年12月28日
環境大臣 小沢 鋭仁様
十勝自然保護協会
会長 安藤 御史
会長 安藤 御史
富村ダムの堆砂処理工事に関わる許認可についての要望書
2007年7月17日、当会に対し北海道電力より富村発電所調整池(富村ダム)の堆砂処理計画について説明がありました。それによると、堆砂処理のためにポントムラウシ取水堰近辺から調整池に運搬用トンネルを掘削し、浚渫した堆砂をダンプカーで国立公園内の土砂置場まで運びたいというものでした。
この調整池は大雪山国立公園の第3種特別地域で十勝川源流部原生自然環境保全地域にも隣接しており、生物多様性の保全が最優先されるべきところであることから、当会は、計画の再検討を申入れました(添付資料参照)。
申入れから2年を経た本年12月15日、北海道電力は当会に計画について説明を行いましたが、当会が申入れた事項についてはまともに答えず、近く当初の計画通りに堆砂処理を実施することを表明しました。
北海道電力は説明のなかで「重大な変化や河川生態系全体の維持機能の衰退は認められず、(中略)事後生態調査の目的はほぼ達成したものと考えられる。」と述べましたが、その根拠はまったく示されていません。また、今回、北海道電力の行った調査では、シマフクロウ、クマタカ、オジロワシなどが周年確認されています。これらの猛禽類は人の立ち入りや環境変化などにきわめて敏感な種であり、繁殖期の工事や運搬を回避しただけで影響がないとすることは納得できません。
また、富村調整池の建設に当たり、ダム本体以外の施設整備の工事については、自然保護上の観点から環境庁から許可しないと言われたことを北海道電力は明らかにしました。したがって、北海道電力は将来堆砂処理が生じることを十分認識していたにも関わらず、堆砂処理のための道路などの施設の許可が出ないことを知った上でダム建設を強行したのです。通常ダムは堆砂に対して十分な余裕を持って計画されますが、30年足らずで有効貯水量の41%に達してしまったことは、堆砂の予測も甘かったといわざるを得ません。このように、今回の堆砂処理は、改変不許可を知ったうえでの強引なダム建設と甘い堆砂予測に起因しています。
生物多様性の保全を優占すべき国立公園内であり、しかも堆砂処理も容易にできない急峻な地形の場所にダムを造ったこと自体を問わなければなりません。
以上の理由により、貴職の当初の判断に則り堆砂処理に関わる工事に許可を出さないことを求めます。
なお、ダムの設計はきわめて高い安全性が確保されており、堆砂によってダムが決壊することはないとされていますことを申し添えます。
2009年12月29日
トムラダム堆砂処理で北電に再検討を求めました
北電は、富村ダムの堆砂処理問題で当会の申入れを真摯に検討することなく、希少動植物の生育・生息地で生物多様性の保全を最優先しなければならない国立公園内にトンネルを掘る堆砂処理計画を強行しようとしています。そこで当会は北電に下記の申入れを送付しました。
北海道電力株式会社社長 佐藤佳孝 様
当会は、2007年7月17日に貴社から富村調整池(トムラダム)堆砂処理計画について説明を受け、2007年11月22日付で3点の問題、すなわち原生自然環境保全地域隣接地でのトンネル掘削、国立公園内での頻繁なダンプの往来、国立公園内での土砂の山積みについて問題を指摘し、計画を再検討するよう申入れた。
これから2年経た2009年12月15日、貴社からの申入れにより再度この計画について説明を受けた。その内容は、環境省の指示によりシマフクロウ・クマタカ・オジロワシなどの希少生物について2年間の調査を行い、工事による影響は小さいとの結論が得られたので、2010年2月には工事に着手したいというものであった。そして、当会が指摘した3つの問題については、土砂置き場についてのみ、学校の近くを通行することを避けるため当初の計画地にしたと弁明した。このように、貴社は当会の申入れに回答するためではなく、環境省から課せられた猛禽類などの調査が終ったので認可申請することを報告するために説明会を設定したのである。
今回の説明会において重大なことが明らかとなった。このダムの建設許可申請時に堆砂処理のための道路などの設置許可が環境庁(当時)から認められなかったということである。このことは、環境庁においても大雪山国立公園の心臓部とでも言うべきこの地域にダムをつくることの妥当性を問題視していたからにほかならない。
このような経緯からも、当会はダムによる発電が二酸化炭素排出削減に寄与するとの一般論によって、この富村調整池の堆砂処理を判断すべきではなく、かけがえのない国立公園の自然を未来に繋ぐとの観点から判断するのが現代に生きる私たちの責務であると考える。この立場からするなら、このトムラダムを将来にわたって存続させることの妥当性には大いに疑問があるといわざるを得ない。
貴社は、当会が申入れた3つの問題について真摯に検討し、広く社会に問わなければならない。よって、当会は現時点で貴社の富村調整池堆砂処理計画を容認することはできない。
***********
2009年12月28日
北海道電力株式会社社長 佐藤佳孝 様
十勝自然保護協会会長 安藤御史
富村調整池(トムラダム)堆砂処理計画についての再申入れ
当会は、2007年7月17日に貴社から富村調整池(トムラダム)堆砂処理計画について説明を受け、2007年11月22日付で3点の問題、すなわち原生自然環境保全地域隣接地でのトンネル掘削、国立公園内での頻繁なダンプの往来、国立公園内での土砂の山積みについて問題を指摘し、計画を再検討するよう申入れた。
これから2年経た2009年12月15日、貴社からの申入れにより再度この計画について説明を受けた。その内容は、環境省の指示によりシマフクロウ・クマタカ・オジロワシなどの希少生物について2年間の調査を行い、工事による影響は小さいとの結論が得られたので、2010年2月には工事に着手したいというものであった。そして、当会が指摘した3つの問題については、土砂置き場についてのみ、学校の近くを通行することを避けるため当初の計画地にしたと弁明した。このように、貴社は当会の申入れに回答するためではなく、環境省から課せられた猛禽類などの調査が終ったので認可申請することを報告するために説明会を設定したのである。
今回の説明会において重大なことが明らかとなった。このダムの建設許可申請時に堆砂処理のための道路などの設置許可が環境庁(当時)から認められなかったということである。このことは、環境庁においても大雪山国立公園の心臓部とでも言うべきこの地域にダムをつくることの妥当性を問題視していたからにほかならない。
このような経緯からも、当会はダムによる発電が二酸化炭素排出削減に寄与するとの一般論によって、この富村調整池の堆砂処理を判断すべきではなく、かけがえのない国立公園の自然を未来に繋ぐとの観点から判断するのが現代に生きる私たちの責務であると考える。この立場からするなら、このトムラダムを将来にわたって存続させることの妥当性には大いに疑問があるといわざるを得ない。
貴社は、当会が申入れた3つの問題について真摯に検討し、広く社会に問わなければならない。よって、当会は現時点で貴社の富村調整池堆砂処理計画を容認することはできない。
2009年12月22日
然別川水系砂防ダムスリット化工事の見解
北海道新聞12月18日付朝刊は、「スリット式ダム道内で着々」との大きな見出しを掲げ、砂防ダムにスリット(切れ込み)を入れる改修工事が道内各地で広がっていることを伝えました。
十勝地方では初めての例となるであろう然別川水系の砂防ダムのスリット化をめぐり、当会は帯広土木現業所と昨年から議論してきました。この間の議論を踏まえ、改めて当会の見解を帯広土木現業所長に送付しました。
帯広土木現業所長 佐伯繁樹 様
同 鹿追出張所長 山田芳弘 様
当会は、2008年12月10日付で、貴職に対し三の沢川砂防ダム改修工事の趣旨に賛成するものの開口部に鉄製工作物を設置することに同意できない旨の申入れを行った。これに対し、2009年2月13日付で貴職から当会の申入れを受入れられないとの回答があった。当会は2009年3月2日付でこれに反論し、その後6月に貴職から見解が出され、9月7日には当会が見解を出した。このように議論は、ややこう着状態にあったが、さる10月5日に、貴職から当会に対し、鉄製工作物の設置を止め、2列のスリットに鉄製の横棒を入れる工事に変更したいとの新たな提案がなされた。
これを受けて、当会はこの新提案について検討を行ってきた。その結果、「鉄製横棒」については不要であるとの結論に達した。理由は以下の通りである。
1. 三の沢川砂防ダムの1kmほど上流に曲流部があるが、この曲流は岩体に流路が妨げられることによって生じている。このため三の沢川の土砂運搬能力はここでそがれると考えられる。つまり上流からの巨礫の移動はここで制限され、砂防ダムの堤体にまで到達するものはごく限られると推測される。
2. 砂防ダム堤体にスリットを入れると、ボトルネック効果が働き洪水時の流速が減少すると考えられる。このため上流からの巨礫の移動は抑制されると推測される。
3. 仮に巨礫がこのスリットをすり抜けたとしても、下流において人的被害が発生する状況にない。
当会は三の沢砂防ダムの堤体中央部を開口(1列のスリット)し、河床を魚類の往来が可能となるよう改善すべきであるという当初の提案を改めて提案する。
この状態で推移を観察し、土石流被害が避けがたいとの確たる証拠が得られたなら、鉄製の横棒を設置するのが良いと考える。
いま、わが国の河川行政は、明治以来の大きな転換期を迎えている。前原国土交通大臣は、ダムの中止や凍結を指示するとともに、海岸侵食の原因ともなっている従来の河川管理のあり方を見直す考えを明らかにしている(11月18日衆院国土交通委員会での答弁など)。このような状況も踏まえ、貴職が当会の提案を真摯に検討されることを期待したい。
十勝地方では初めての例となるであろう然別川水系の砂防ダムのスリット化をめぐり、当会は帯広土木現業所と昨年から議論してきました。この間の議論を踏まえ、改めて当会の見解を帯広土木現業所長に送付しました。
2009年12月7日
帯広土木現業所長 佐伯繁樹 様
同 鹿追出張所長 山田芳弘 様
十勝自然保護協会長 安藤御史
然別川水系三の沢川砂防ダム改修工事新提案についての見解
当会は、2008年12月10日付で、貴職に対し三の沢川砂防ダム改修工事の趣旨に賛成するものの開口部に鉄製工作物を設置することに同意できない旨の申入れを行った。これに対し、2009年2月13日付で貴職から当会の申入れを受入れられないとの回答があった。当会は2009年3月2日付でこれに反論し、その後6月に貴職から見解が出され、9月7日には当会が見解を出した。このように議論は、ややこう着状態にあったが、さる10月5日に、貴職から当会に対し、鉄製工作物の設置を止め、2列のスリットに鉄製の横棒を入れる工事に変更したいとの新たな提案がなされた。
これを受けて、当会はこの新提案について検討を行ってきた。その結果、「鉄製横棒」については不要であるとの結論に達した。理由は以下の通りである。
1. 三の沢川砂防ダムの1kmほど上流に曲流部があるが、この曲流は岩体に流路が妨げられることによって生じている。このため三の沢川の土砂運搬能力はここでそがれると考えられる。つまり上流からの巨礫の移動はここで制限され、砂防ダムの堤体にまで到達するものはごく限られると推測される。
2. 砂防ダム堤体にスリットを入れると、ボトルネック効果が働き洪水時の流速が減少すると考えられる。このため上流からの巨礫の移動は抑制されると推測される。
3. 仮に巨礫がこのスリットをすり抜けたとしても、下流において人的被害が発生する状況にない。
当会は三の沢砂防ダムの堤体中央部を開口(1列のスリット)し、河床を魚類の往来が可能となるよう改善すべきであるという当初の提案を改めて提案する。
この状態で推移を観察し、土石流被害が避けがたいとの確たる証拠が得られたなら、鉄製の横棒を設置するのが良いと考える。
いま、わが国の河川行政は、明治以来の大きな転換期を迎えている。前原国土交通大臣は、ダムの中止や凍結を指示するとともに、海岸侵食の原因ともなっている従来の河川管理のあり方を見直す考えを明らかにしている(11月18日衆院国土交通委員会での答弁など)。このような状況も踏まえ、貴職が当会の提案を真摯に検討されることを期待したい。
2009年11月01日
十勝川水系河川整備計画公聴会
10月29日、北海道開発局帯広開発建設部の「十勝川水系河川整備計画(原案)」についての公聴会が帯広市で開催され、安藤会長が当会の意見を述べました。75人から意見書が寄せられましたが、公述したのは9人だけでした。公述した意見は、後日、帯広開発建設部のホームページで公開されるそうです。これらの意見についての論評は、ホームページ公開後にすることにしましょう。
傍聴席は満席(50席ほどか)でしたが、一般市民と思われる人は少ないようでした。一番いい所にマスコミの席が用意されていましたが、空席のままでした。全国的には、ダム建設の中止や凍結で河川行政に注目があつまっているというのに、十勝の新聞社の感度の鈍さはどうしたことでしょう。ニュース価値のないセレモニーと思っているのでしょうか。
帯広開発建設部の部長以下、河川管理の責任者が公述人の発言に神妙に聞き入っていました。当会は、原案の欠陥を具体的に指摘しました(10月20日の十勝川水系河川整備計画(原案)に関する意見書をご覧ください)。神妙に聞けばいいと言うものではありません。彼らには、大いなる説明責任が生じたということを自覚してもらわなければなりません。公聴会は単なる通過儀礼の場ではないのです。
それにしても引っかかりを感じるのが流域委員会の存在意義です。冒頭の主催者の説明によると、この原案は、9月8日開催された第9回流域委員会で承認を得たとのこと。一応それぞれの分野の専門家が委員となり、審議しているはずですが、ホームページに載せられた第9回流域委員会の議事録を読むと、
「草原性の鳥類の生息地としては、農耕地があるもののかならずしも適しておらず、河跡湖周辺の草原の他は河川敷くらいしかない。そのため、鳥の生息環境として、草原環境を維持することが重要である」。「樹木の伐採に関して、やむを得ず切るというのではなく、積極的に草原環境を維持するという側面もあってよいのではないか」。「原案では、できるだけ木を切らないように、というニュアンスが強いが、逆に積極的に木を切って草原環境を維持していく面があってもよいのではないか」。
一面的な議論が展開され驚かされました。もし委員の中に学識に秀でた者がいたのなら、「十勝川水系の氾濫原にあった草原的環境とはどのようなものであったかを解明し、そのような場をどうしたら復元できるかを検討すべきであって、ただ闇雲に河畔林を伐って非森林的空間(草原的なもの)を造ればいいというものではないのではありませんか」と諭したに違いありません。大局的視点から議論できる自然保護NGOの参加を求めなかったばかりに、このような短絡的な議論になったようです。
もう一点、興味深い議論を紹介すると、某委員「外来種、貴重種について、整備計画(原案)P43 以降の注釈には記載があるが、本文中でも記載すべきではないか」。事務局「外来種については、十勝川でも特定外来種が確認されているが、現状では大きな影響が発生していないと認識しており、水辺の国勢調査などにより引き続きモニタリングをしていきたい。なお、記載の方法については、相談させていただきたい」。この委員は、一応外来種を取り上げるよう突っ込んだのですが、原案には全く反映されていません。事務局に軽くいなされ、引込んでしてしまったようです。
やらなくてもいい公共土木事業で自然を破壊し、税金を食い物にしてきた政官財の利権マフィアもどうやら年貢の納め時となりつつあります。食い物にする金が底をついたのですから当然です。これからは自然を食い物にした「学者」にもお呼びがかからなくなるでしょう。いやそうしなければなりません。自然保護NGOの頑張り時です。
傍聴席は満席(50席ほどか)でしたが、一般市民と思われる人は少ないようでした。一番いい所にマスコミの席が用意されていましたが、空席のままでした。全国的には、ダム建設の中止や凍結で河川行政に注目があつまっているというのに、十勝の新聞社の感度の鈍さはどうしたことでしょう。ニュース価値のないセレモニーと思っているのでしょうか。
帯広開発建設部の部長以下、河川管理の責任者が公述人の発言に神妙に聞き入っていました。当会は、原案の欠陥を具体的に指摘しました(10月20日の十勝川水系河川整備計画(原案)に関する意見書をご覧ください)。神妙に聞けばいいと言うものではありません。彼らには、大いなる説明責任が生じたということを自覚してもらわなければなりません。公聴会は単なる通過儀礼の場ではないのです。
それにしても引っかかりを感じるのが流域委員会の存在意義です。冒頭の主催者の説明によると、この原案は、9月8日開催された第9回流域委員会で承認を得たとのこと。一応それぞれの分野の専門家が委員となり、審議しているはずですが、ホームページに載せられた第9回流域委員会の議事録を読むと、
「草原性の鳥類の生息地としては、農耕地があるもののかならずしも適しておらず、河跡湖周辺の草原の他は河川敷くらいしかない。そのため、鳥の生息環境として、草原環境を維持することが重要である」。「樹木の伐採に関して、やむを得ず切るというのではなく、積極的に草原環境を維持するという側面もあってよいのではないか」。「原案では、できるだけ木を切らないように、というニュアンスが強いが、逆に積極的に木を切って草原環境を維持していく面があってもよいのではないか」。
一面的な議論が展開され驚かされました。もし委員の中に学識に秀でた者がいたのなら、「十勝川水系の氾濫原にあった草原的環境とはどのようなものであったかを解明し、そのような場をどうしたら復元できるかを検討すべきであって、ただ闇雲に河畔林を伐って非森林的空間(草原的なもの)を造ればいいというものではないのではありませんか」と諭したに違いありません。大局的視点から議論できる自然保護NGOの参加を求めなかったばかりに、このような短絡的な議論になったようです。
もう一点、興味深い議論を紹介すると、某委員「外来種、貴重種について、整備計画(原案)P43 以降の注釈には記載があるが、本文中でも記載すべきではないか」。事務局「外来種については、十勝川でも特定外来種が確認されているが、現状では大きな影響が発生していないと認識しており、水辺の国勢調査などにより引き続きモニタリングをしていきたい。なお、記載の方法については、相談させていただきたい」。この委員は、一応外来種を取り上げるよう突っ込んだのですが、原案には全く反映されていません。事務局に軽くいなされ、引込んでしてしまったようです。
やらなくてもいい公共土木事業で自然を破壊し、税金を食い物にしてきた政官財の利権マフィアもどうやら年貢の納め時となりつつあります。食い物にする金が底をついたのですから当然です。これからは自然を食い物にした「学者」にもお呼びがかからなくなるでしょう。いやそうしなければなりません。自然保護NGOの頑張り時です。
2009年10月20日
十勝川水系河川整備計画(原案)に関する意見書
10月18日に会長名で以下の意見書を提出しました。
十勝川水系河川整備計画(原案)に関する意見書
1.基本高水のピーク流量の科学的根拠について
十勝川水系河川整備計画原案(以下、原案という)によると、帯広地点における基本高水のピーク流量および計画高水流量は、昭和41年にそれぞれ4800㎥/s、4100㎥/sに設定され、その後昭和55年にそれぞれ6800㎥/s、6100㎥/sに大幅に引上げられた。そして、この数値は、「検証のうえ踏襲し」ているとして、現在も引き継がれている(21頁)。
しかし、昭和55年の大幅な引上げの理由について、原案では「昭和47年9月洪水を契機として、流域の開発の進展、特に中流部における人口・資産の増大を踏まえ」(16頁)と記述されているに過ぎない。
また、10月8日の音更町での説明会では、昭和55年の大幅引上げの根拠についての質問に対し、福田計画官は、過去の洪水を踏まえて、と原案に書かれていることを述べた。しかし、昭和41年から昭和55年までの間の帯広地点での最大流量は、昭和47年9月洪水の2880㎥であり(表1-2)、大幅な引上げの根拠とはならないと指摘されると、原案に明記されていない、1 50年に1度の降雨量から設定したと説明した。
原案に述べられているように、洪水のピーク流量(基本高水のビーク流量)は、洪水防御に関する計画の基本である(18頁)。それにもかかわらず、この原案において、この数値の算出根拠が十分説明されていないのは、この河川整備計画の根幹にかかわる重大な問題である。
よって当会は、この数値が過大に見積もられた洪水ピーク流量ではない、という科学的根拠を示すことを求める。なぜなら、洪水ピーク流量が過大に設定されるならば、洪水対策と称して無駄な公共土木工事が営々と行われることになるからである。
2.目標流量と基本高水のピーク流量との関係について
この度、今後30年にわたっての指針となるこの原案が作成され、ここでは、戦後最大規模の洪水流量を安全に流下させる「目標流量」を設定している。帯広地点における目標流量は5100㎥/s、十勝ダムでの調整により河道への分配流量は、4300㎥/sとされている(66頁)。つまり、昭和55年に設定された基本高水のピーク流量6800㎥/s、計画高水流量6100㎥/sと比較すると1700から1800㎥/sも少ない数値となっている。
もしこの数値が原案に述べられているような、「コストの縮減」(30頁)という観点から設定されたとするならば、流域住民を不安に落としいれるものであり、再検討を求めなければならない。
しかし、その必要はないだろう。なぜなら、6800㎥/s、6100㎥/sという基本高水のピーク流量および計画高水流量が過大見積りであった、ということを取り繕う手立てとして、目標流量が提案されていると見なされるからである。帯広地点で4952㎥/sの流量が観測された1981年、昭和56年8月の洪水は、「記録的な強い降雨」(22頁)とされ、芽室町での日降雨量は382年に1度の確率であり、集水域全体でも数百年に1度の降雨確率であって、戦後最大の洪水流量などというレベルのものではなかったのである。したがって、今後30年以内に1981年8月の規模の洪水が発生する確率は0.5%以下であろう。
よって当会は、これら目標流量・河道への分配流量と基本高水のピーク流量・計画高水流量との関係について納得のいく説明を記述することを求める。
3.流下能力不足区間の説明について
10月8日の音更町での説明会で、十勝川流域委員会(第5回 平成20年11月28日開催)の資料を転用し、流下能力不足区間の存在についてスライドで説明した。流下能力不足区間の詳細な実態を知ることは、流域住民が洪水に備えるという点からも不可欠な事柄であり、この原案の妥当性を評価する上で欠かせない事柄である。そのような事項が欠落したこの原案には、欠陥があるということである。したがって、当会は、このような治水の根幹にかかわる事柄を原案に記載することを求める。
4.相生中島地区の掘削工事について
原案には、河道への配分流量を安全に流下させるとして、相生中島地区で右岸高水敷の一部を掘削することが明記されている(72頁)。しかし、現状の危険度、つまりどの程度の洪水で災害が生じるかについて具体的説明はない。
前述のとおり、昭和56年8月の洪水のときの日降雨量は、芽室町では382年に1度の確率とされ、集水域全体でも数百年に1度の降雨確率と考えられる記録的なものであった。この時の帯広地点での流量は4952㎥/sに達したが、相生中島地区では、堤防から洪水流の氾濫はなかった(22頁)。その後、昭和60年に十勝ダムが完成したことにより、今回の戦後最大規模の洪水流量を安全に流下させる、というこの原案において、帯広地点の河道への分配流量は4300㎥/sとされている。つまり、現状の堤防でも想定した洪水流が溢れ出る可能性はないのである。
また、当会は、帯広開発建設部に今年6月に質問書を、7月に再質問書を提出し、この掘削工事による洪水防止効果について具体的説明を求めたが、治水課長からの回答は、安全度の向上を繰り返すだけで、具体的根拠を示すことができなかった。
以上のことから、相生中島地区の掘削工事は、安全に名を借りた不必要な公共土木工事である、と判断せざるを得ない。よって当会は、原案から相生中島地区の掘削工事を削除することを求める。
5.河道掘削と計画高水位について
原案の72頁には、「河道への分配流量を安全に流下させることができるよう河道の掘削を行う」と述べ、73頁には河道掘削のイメージ図(図2-3、図2-4)が載せられている。そして、このイメージ図には計画高水位の線が引かれている。
今後30年の河川整備にあたっては、計画高水流量が過大であることから、戦後最大規模の洪水流量を安全に流下させる「目標流量」と「河道への分配流量」を設定したはずである。ならばこのイメージ図には「分配流量の水位」がなければならない。「分配流量の水位」を記載しないのは、不都合な事実の隠蔽といわれてもしかたがない。
河道掘削の必要性は「分配流量の水位」との関係で判断するのが合理的である。したがって、当会は、この河道掘削の必要性が低いと考えており、再検討を求める。
6.河畔林伐採と計画高水位について
原案では、「河道内の樹木は、・・・・・・洪水時には水位の上昇や流木の発生の原因になる」ので「樹木が繁茂する前に伐採を行う」とし、河道内樹木の管理イメージ図(図2-17)を掲載している。ここでも計画高水位の線が引かれ、樹木が繁茂すると計画高水位よりも水位が上昇するとの説明がなされている。河道掘削同様、河畔林伐採の必要性は「分配流量の水位」との関係で判断するのが合理的である。また特に下流域の河畔林には流木捕捉効果が知られている。したがって、当会は、この河畔林伐採について、再検討を求める。
7.河川行政のあり方について
原案によれば、「十勝川水系の河川整備は、・・・地域住民や関係機関、関係団体と連携・協働しながら、・・・推進する」と記されている(61頁)が、この点に関し、指摘しなければならないことがある。
当会は、相生中島地区の掘削工事について今年6月に質問書を、7月に再質問を提出した。しかし治水課から的外れな回答が寄せられたため、面談を求めたところ、回答済みにつき会う必要はないと面談を拒否した。このような対応がここに明記された「地域住民や関係団体との連携・協働」と矛盾することはいうまでもない。
また、当会の質問に対する回答とまったく異なることが今回の原案に記述されているのには、驚くばかりである。つまり、相生中島地区の水路掘削による周辺の河川形態への影響について質問したのに対し、「当該工事は、現在の低水路を残したうえで右岸側の高水敷に洪水時のみ流れる水路を掘削するものであり、洪水時の水位低下により治水安全度は向上しますが、通常時の流れは現在と変わらないことから、上下流域や流入する支川等への影響はないと考えています。」との回答が寄せられた。しかし、この原案では「整備中の相生中島地区では洪水時の流れの状況がこれまでと変化することから、河床の低下や土砂堆積、河岸の侵食等の土砂動態について注意深く監視する必要がある」と書かれている。このような不誠実かつ無責任な態度は、「地域住民や関係団体との連携・協働」を阻害するものである。
新政権によるダム計画の凍結にみられるように河川管理の根本が変わろうとしている。今後、公共土木事業を行うにあたっては、住民に対し情報を包み隠さず公開し、十分な説明をするとともに十分な議論をすることが前提となる。これまでの不誠実な態度を深く反省し、公明正大な河川行政へ転換しなければならない。
8.結論
以上具体的に指摘したように、今回の十勝川水系河川整備計画原案は、洪水防御に関する計画の基本となる洪水のピーク流量や流下不足区間についての説明が欠落し、計画高水位の取り扱いをめぐって混乱がみられるなど、住民議論に耐えうるものではない。よって、十勝自然保護協会は、原案を練り直し再提出することを要求する。
十勝川水系河川整備計画(原案)に関する意見書
1.基本高水のピーク流量の科学的根拠について
十勝川水系河川整備計画原案(以下、原案という)によると、帯広地点における基本高水のピーク流量および計画高水流量は、昭和41年にそれぞれ4800㎥/s、4100㎥/sに設定され、その後昭和55年にそれぞれ6800㎥/s、6100㎥/sに大幅に引上げられた。そして、この数値は、「検証のうえ踏襲し」ているとして、現在も引き継がれている(21頁)。
しかし、昭和55年の大幅な引上げの理由について、原案では「昭和47年9月洪水を契機として、流域の開発の進展、特に中流部における人口・資産の増大を踏まえ」(16頁)と記述されているに過ぎない。
また、10月8日の音更町での説明会では、昭和55年の大幅引上げの根拠についての質問に対し、福田計画官は、過去の洪水を踏まえて、と原案に書かれていることを述べた。しかし、昭和41年から昭和55年までの間の帯広地点での最大流量は、昭和47年9月洪水の2880㎥であり(表1-2)、大幅な引上げの根拠とはならないと指摘されると、原案に明記されていない、1 50年に1度の降雨量から設定したと説明した。
原案に述べられているように、洪水のピーク流量(基本高水のビーク流量)は、洪水防御に関する計画の基本である(18頁)。それにもかかわらず、この原案において、この数値の算出根拠が十分説明されていないのは、この河川整備計画の根幹にかかわる重大な問題である。
よって当会は、この数値が過大に見積もられた洪水ピーク流量ではない、という科学的根拠を示すことを求める。なぜなら、洪水ピーク流量が過大に設定されるならば、洪水対策と称して無駄な公共土木工事が営々と行われることになるからである。
2.目標流量と基本高水のピーク流量との関係について
この度、今後30年にわたっての指針となるこの原案が作成され、ここでは、戦後最大規模の洪水流量を安全に流下させる「目標流量」を設定している。帯広地点における目標流量は5100㎥/s、十勝ダムでの調整により河道への分配流量は、4300㎥/sとされている(66頁)。つまり、昭和55年に設定された基本高水のピーク流量6800㎥/s、計画高水流量6100㎥/sと比較すると1700から1800㎥/sも少ない数値となっている。
もしこの数値が原案に述べられているような、「コストの縮減」(30頁)という観点から設定されたとするならば、流域住民を不安に落としいれるものであり、再検討を求めなければならない。
しかし、その必要はないだろう。なぜなら、6800㎥/s、6100㎥/sという基本高水のピーク流量および計画高水流量が過大見積りであった、ということを取り繕う手立てとして、目標流量が提案されていると見なされるからである。帯広地点で4952㎥/sの流量が観測された1981年、昭和56年8月の洪水は、「記録的な強い降雨」(22頁)とされ、芽室町での日降雨量は382年に1度の確率であり、集水域全体でも数百年に1度の降雨確率であって、戦後最大の洪水流量などというレベルのものではなかったのである。したがって、今後30年以内に1981年8月の規模の洪水が発生する確率は0.5%以下であろう。
よって当会は、これら目標流量・河道への分配流量と基本高水のピーク流量・計画高水流量との関係について納得のいく説明を記述することを求める。
3.流下能力不足区間の説明について
10月8日の音更町での説明会で、十勝川流域委員会(第5回 平成20年11月28日開催)の資料を転用し、流下能力不足区間の存在についてスライドで説明した。流下能力不足区間の詳細な実態を知ることは、流域住民が洪水に備えるという点からも不可欠な事柄であり、この原案の妥当性を評価する上で欠かせない事柄である。そのような事項が欠落したこの原案には、欠陥があるということである。したがって、当会は、このような治水の根幹にかかわる事柄を原案に記載することを求める。
4.相生中島地区の掘削工事について
原案には、河道への配分流量を安全に流下させるとして、相生中島地区で右岸高水敷の一部を掘削することが明記されている(72頁)。しかし、現状の危険度、つまりどの程度の洪水で災害が生じるかについて具体的説明はない。
前述のとおり、昭和56年8月の洪水のときの日降雨量は、芽室町では382年に1度の確率とされ、集水域全体でも数百年に1度の降雨確率と考えられる記録的なものであった。この時の帯広地点での流量は4952㎥/sに達したが、相生中島地区では、堤防から洪水流の氾濫はなかった(22頁)。その後、昭和60年に十勝ダムが完成したことにより、今回の戦後最大規模の洪水流量を安全に流下させる、というこの原案において、帯広地点の河道への分配流量は4300㎥/sとされている。つまり、現状の堤防でも想定した洪水流が溢れ出る可能性はないのである。
また、当会は、帯広開発建設部に今年6月に質問書を、7月に再質問書を提出し、この掘削工事による洪水防止効果について具体的説明を求めたが、治水課長からの回答は、安全度の向上を繰り返すだけで、具体的根拠を示すことができなかった。
以上のことから、相生中島地区の掘削工事は、安全に名を借りた不必要な公共土木工事である、と判断せざるを得ない。よって当会は、原案から相生中島地区の掘削工事を削除することを求める。
5.河道掘削と計画高水位について
原案の72頁には、「河道への分配流量を安全に流下させることができるよう河道の掘削を行う」と述べ、73頁には河道掘削のイメージ図(図2-3、図2-4)が載せられている。そして、このイメージ図には計画高水位の線が引かれている。
今後30年の河川整備にあたっては、計画高水流量が過大であることから、戦後最大規模の洪水流量を安全に流下させる「目標流量」と「河道への分配流量」を設定したはずである。ならばこのイメージ図には「分配流量の水位」がなければならない。「分配流量の水位」を記載しないのは、不都合な事実の隠蔽といわれてもしかたがない。
河道掘削の必要性は「分配流量の水位」との関係で判断するのが合理的である。したがって、当会は、この河道掘削の必要性が低いと考えており、再検討を求める。
6.河畔林伐採と計画高水位について
原案では、「河道内の樹木は、・・・・・・洪水時には水位の上昇や流木の発生の原因になる」ので「樹木が繁茂する前に伐採を行う」とし、河道内樹木の管理イメージ図(図2-17)を掲載している。ここでも計画高水位の線が引かれ、樹木が繁茂すると計画高水位よりも水位が上昇するとの説明がなされている。河道掘削同様、河畔林伐採の必要性は「分配流量の水位」との関係で判断するのが合理的である。また特に下流域の河畔林には流木捕捉効果が知られている。したがって、当会は、この河畔林伐採について、再検討を求める。
7.河川行政のあり方について
原案によれば、「十勝川水系の河川整備は、・・・地域住民や関係機関、関係団体と連携・協働しながら、・・・推進する」と記されている(61頁)が、この点に関し、指摘しなければならないことがある。
当会は、相生中島地区の掘削工事について今年6月に質問書を、7月に再質問を提出した。しかし治水課から的外れな回答が寄せられたため、面談を求めたところ、回答済みにつき会う必要はないと面談を拒否した。このような対応がここに明記された「地域住民や関係団体との連携・協働」と矛盾することはいうまでもない。
また、当会の質問に対する回答とまったく異なることが今回の原案に記述されているのには、驚くばかりである。つまり、相生中島地区の水路掘削による周辺の河川形態への影響について質問したのに対し、「当該工事は、現在の低水路を残したうえで右岸側の高水敷に洪水時のみ流れる水路を掘削するものであり、洪水時の水位低下により治水安全度は向上しますが、通常時の流れは現在と変わらないことから、上下流域や流入する支川等への影響はないと考えています。」との回答が寄せられた。しかし、この原案では「整備中の相生中島地区では洪水時の流れの状況がこれまでと変化することから、河床の低下や土砂堆積、河岸の侵食等の土砂動態について注意深く監視する必要がある」と書かれている。このような不誠実かつ無責任な態度は、「地域住民や関係団体との連携・協働」を阻害するものである。
新政権によるダム計画の凍結にみられるように河川管理の根本が変わろうとしている。今後、公共土木事業を行うにあたっては、住民に対し情報を包み隠さず公開し、十分な説明をするとともに十分な議論をすることが前提となる。これまでの不誠実な態度を深く反省し、公明正大な河川行政へ転換しなければならない。
8.結論
以上具体的に指摘したように、今回の十勝川水系河川整備計画原案は、洪水防御に関する計画の基本となる洪水のピーク流量や流下不足区間についての説明が欠落し、計画高水位の取り扱いをめぐって混乱がみられるなど、住民議論に耐えうるものではない。よって、十勝自然保護協会は、原案を練り直し再提出することを要求する。